韓国・仁川空港からソウル駅へ乗り換えなしで移動できる空港鉄道A’REXに乗車しました。運賃・所要時間・乗り心地をご紹介します。
仁川空港・実は成田並みに都心から遠い
仁川国際空港は、2001年に開港した比較的新しい空港です。長崎空港などと同じく島を切り崩して埋め立てた海上空港で、その広大さは日本の主要空港を大きくしのいでいます。そのお陰で東アジアのハブ空港としての地位を確立し、貨物取扱量は世界トップ3に入るのだとか。
その仁川空港に降り立ち、出発ロビーなどを少しうろついてみます。確かに新しくて広いですし、所々に映えるオブジェも配されていますが、チャンギ空港のように歩き回るだけで面白いという訳ではなさそうですし(Jewelのような商業施設もないし)、空港散歩は最終日に回すことにしてまずはソウル市内に向かうことにしました。
ところで、仁川空港は広大な敷地を確保するため、ソウル市内から50km近くも離れており、遠い遠いと文句を言われがちな成田空港とほぼ同じレベルです。幸いソウル駅までA’REXという電車が通じていますが、第1ターミナルからソウル駅までノンストップの直通で43分、各駅停車だと1時間掛かります。このあたりも成田と同等です。
ただ、運賃は直通が11000ウォン、各駅停車が4450ウォン(T-money利用)と、成田空港へアクセスする各路線に比べるとずいぶん安いです。運転本数は直通が40分おき、各駅停車が毎時5本(区間列車除く)となっています。
ちなみにこの鉄道は空港開業に際して全路線を新規に敷設したそうで、このあたりもなかなか気合が入っています。(成田空港へアクセスする鉄道は成田~成田空港・印旛日本医大~成田空港間のみ新設で、あとは既存路線を流用)
まずは腹ごしらえ…早くも韓国の洗礼
40分少々後に発車する直通列車を予約し、まずは空港ビル3階のフードコートで腹ごしらえをすることにします。筆者は韓国語を全く話せないので、せめて外人客の多い空港の方が、市中のレストランよりハードルが低いだろうと思ってのことです。
どうにか英語で注文を済ませ、トッポギ(8000ウォンぐらいだったか)を受け取ります。トッポギはお餅というより太いうどんのような食感です。平べったい物体は魚のすり身を薄くしたもののようで、蒲鉾に似ています。
辛さは最初のうちはそれほど強く感じなかったのですが、ずっと食べ続けているとダメージが蓄積してきて、汗が止まらなくなってきます。しかも、追い打ちをかけるように付け合わせは「カクテキ」… 辛い料理に辛い付け合わせで追い打ちするパターンはこの後何度も経験することになりました。
空港第2ビル駅のよう?複雑な運用の仁川空港1ターミナル駅
空港ターミナルから地下通路を通って、空港駅に向かいます。空港駅も非常に立派な建物ですね。屋根から吊り下げられているのは伝統家屋を模したオブジェでしょうか。乗り場付近にはA’REXの車両を模した「ゆるキャラ」もいました。
鉄道乗り場は「直通列車」と「各駅停車」で分かれていました。どちらの券売機もかなり長い列ができていましたが、T-moneyカードの券売機は比較的空いていたのでここで入手しておきました。ちなみに各列車の乗り方は別ページにまとめてありますので、そちらをご覧ください。
筆者は直通列車の乗車券をネットで購入済みだったので、QRコードを改札機にかざして入場します。
改札を通って地下のホームに降りると、隣には使われていない真っ暗なホームが… このホーム、かつてソウル駅方面から空港に直通してきていたKTXが使用していたらしいのですが、KTX乗り入れは数年前に廃止になり、現在は使われていないのだとか。まるで東成田駅のようです。
列車が来るまで時間があるのでホームを観察していると、ホームの途中に謎の柵が…実はこの先が、各駅停車の乗り場になっています。直通と各駅停車は改札口こそ分かれていますが、ホームは共有しており、停車位置を変えることで双方の客が混じらないようにしています。まるで京成の空港第2ビル駅のようです。
なお、ホーム長の関係で直通の1,2号車はホームからはみ出してしまうようで、ドアカットが行われるようです。このあたりも成田とよく似ています。
直通はおよそ40分間隔の運転で、ソウル駅と仁川空港1ターミナル、2ターミナルしか停車しません。駅名標にもこの3つの駅しか記載されていませんね。
ソウル市内の地下鉄と同じく、A’REXの各駅もスクリーン式のホームドアを完備しています。おかげで車体の撮影や観察は非常に難しいです。
そうやって駅構内を観察していると、一角に大量のガスマスクがあるのを発見… もし北朝鮮が毒ガス攻撃をしてきたらこれを使え、という意味なのかと思いましたが、どうやらこれは大邱の地下鉄火災事故の対策として設置されたようです。この後、ソウル市内の大半の地下鉄駅で同じような棚が設置されているのを見ました。
直通列車の乗り心地は?
仁川国際1ターミナル12:48→ソウル駅13:34 空港鉄道(直通)
しばらく待つと直通列車が入線してきました。例のホームドアのせいで車体が撮影できないため、途中の留置線に停車していた車両の写真で代用します。大きなトランクを持った客が多いことを想定してか、ドアが両開きになっているのが特徴的。
車内の様子はこんな感じ。座席はかつての成田エクスプレスのような集団離反式(車両の真ん中を境に座席の向きが逆となる)で、転換はできないので半分の席は逆向きとなります。順方向の席は早い者勝ちなので、仁川着陸後に早めにネットで席を予約しておくのがよいでしょう。
ちなみにシート自体は柔らかく座り心地はよいですが、シートピッチはスカイライナーの方が広かったので、純粋な座り心地は五分五分といったところでしょうか。
入り口付近にはトランクを収納できる棚が備えられていますが、ここに荷物を入れようとする客で乗客の流れが遮られ、乗車に時間が掛かるのはスカイライナーと同じでした。車内は欧米系、中国系、それに少数の日本人の客でほぼ満席の状態で発車します。
客室内にはディスプレイが設けられ、行き先案内が日本語でも流れます。このディスプレイには観光案内など各種ビデオも流れます。その中に、「竹島(独島)は韓国固有の領土!」みたいなビデオもあって、入国して一発目の列車でわざわざ流すかね、と思わず苦笑…
空港を出た列車はしばらく地下を走った後、地上に出て太い高速道路と並走します。このあたりはソウル市内から遠く離れているので、一部ビルはあるものの田舎びた風景が続きます。
空港のある島をしばらく走ると、本土との間に掛けられた長い長い鉄橋に差し掛かります。この橋は実に2kmもあるらしく、関空連絡橋を思い出しました。橋を渡って本土に入ってもしばらく荒涼としたところを進み、コマムという駅を通過。ここは待避線があり、各駅停車を追い越します。ここは仁川2号線という地下鉄との乗換駅らしいですが、その割には建物は多くありませんでした。
コマムの次の桂陽という駅は仁川1号線との乗換駅です。このあたりまで来ると高層のマンションも見え、ソウルに近づいてきたことを実感します。列車はこの先で金浦空港の地下を進むため、長いトンネルに入ります。
ここまでは100km/h超のスピードで順調に走ってきた列車ですが、この先は各駅停車がつかえているようで減速や駅間での停車も見られました。ソウル駅到着が大きく遅れているわけではなかったので、普段からこんな感じなのでしょうか。
長い地下トンネルで金浦空港を抜けると、列車は再び地上に出て漢江を通過します。漢江はソウルを東西に貫く大河で、パリのセーヌ川やロンドンのテムズ川のような存在感を誇っています。川幅が1km近くもあるので、地下鉄路線もわざわざ地上に上がってきて通過することが多いです(地下トンネルで通過する路線もあり)。ここを超えるといよいよソウルに来た、いう実感がわいてきます。
列車は程なく再び地下に入り、地下トンネルを長々と進んでようやくソウル駅に到着です。
A’REXソウル駅は六本木並みのモグラ駅
大きなトランクを抱えた外国人客に混じり、エスカレーターで地上に出ます。すると、駅ホームの上部には何やら巨大な空間が…このソウル駅、何と地下7階というとんでもない深さにあり、改札口まで長いエスカレーターで延々と登る必要があります。しかし、この程度の深さはまだまだ序の口であることを後々実感することになります。
改札口を出て「KTX」の案内に従って進んでいくと、まるで空港のような巨大な屋根を備えたソウル駅の地上ターミナルに到着です。この後は、手始めにソウル駅を発着する長距離列車を試乗してみることにします。
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