BRTって何?謎の新路線・東京BRTに乗って終点まで行ってみた(2022/6)

東日本大震災で一躍有名になったBRT(Bus Rapid Transit)

コロナ禍真っ只中だった2020年10月、東京BRTなる新路線が開通しました。気にはなっていたのですがコロナのゴタゴタでなかなか乗りに行けておらず、先日ようやく初乗車してきました。

| TOKYO BRT

そもそもBRTなる言葉になかなか馴染みがないという方が多いかと思いますが、BRTはBus Rapid Transitの略で、世界的に幅広く用いられている概念のようです。英語版Wikipediaでは以下の通り定義されています。

従来のバスシステムよりも優れた容量と信頼性を持つように設計されたバスベースの公共交通システム。通常、BRTシステムにはバス専用の道路が含まれており、交差点においてはバスが優先されます。また、乗客がバスに乗り降りし、運賃を支払うことによって引き起こされる遅延を減らす設計がなされています。

10年ほど前までは日本ではほぼ聞くことのなかったBRTという概念ですが、あの東日本大震災をきっかけに一躍有名になりました。津波で甚大な被害を受けたJR気仙沼線・大船渡線の復旧にBRTという形態を用いることになったのです。津波での崩壊を免れた線路敷をバス専用道路に改修する一方、被災区間や市街地ではバスを一般道路に通すことで、復旧費用や運営費の削減、利便性と速達性の両立を図る取り組みでした。

その他、茨城県にも廃止となった鉄道(日立電鉄・鹿島鉄道)の廃線跡を利用したBRTが存在します。東京BRTは果たしてどんな乗り物なのでしょうか?

東京BRT実乗:普通の路線バスと変わらない??

そんな訳で、6月の土曜日の昼下がりに虎ノ門ヒルズへとやってきました。まだまだ再開発が続く虎ノ門ヒルズですが、一足早く完成した虎ノ門ヒルズビジネスタワーの一階に東京BRTの乗り場があります。「ビジネスタワー」の名の通りオフィス中心のテナント構成であるためか、土曜日の昼間は人の姿がほとんど見られません。バス乗り場からは東京BRTの他、空港リムジンバスも発着するようです。

虎ノ門ヒルズビジネスタワー外観
バス停はちょっと駅名標っぽい

発車直前のバスに乗り込むと先客は5人ほど。バス自体は燃料電池を使用した最新型で、固めのシートはヨーロッパ製のバスを思い起こさせますが国産車とのこと。一部の便にはより大きい連接バスが使用されるとのこと。運転士さんの接客は至極丁寧で、「後ろのドアを閉めます」と一声かけて後ろのドアを閉めた後、「発車いたします」と言って前のドアを閉める、といった具合に対応されていました。

虎ノ門ヒルズを出たバスは環状2号線に出て新橋へ。新橋バス停はゆりかもめの駅の下にあり、JRなどからはやや離れた静かな位置にあります。ここで数名が乗車して再び環状2号線へ。環状2号線は現在、汐留から築地まで地下トンネルを作っていますが完成はまだのようで、何度も信号に引っ掛かりながら地上を進みます。取り壊された築地市場の跡地に敷かれた道路を進み、築地大橋を渡った先に勝どきバス停があります。ここで数人が下車しました。

勝どきを過ぎるとバスは左に曲がり、ちょうど大江戸線の上を月島まで進みます。ここまでBRTらしいところはなく、単に停車駅の少ない路線バスに乗ってるな、という感じしかしません。月島を過ぎると右に曲がって晴海に入り、運河の上に掛かる晴海橋梁(かつての貨物線の廃線跡)が見えると程なく終点の晴海BRTターミナルに到着です。だだっ広い駐車場のようなところで降ろされ、現在地を確認しているうちに地元住民はあっという間に四散してしまい、一人ぽつんと残されてしまいました。

バスは最新の燃料電池バスを使用
だだっ広い晴海BRTターミナル

ちなみに、バスのルートは以下の通りです。ちと見にくくて恐縮ですが、「虎ノ門ヒルズ」から「晴海BRTターミナル」まで、「BRT」と書かれた赤のラインを追いかけるとルートをトレースできます。

© OpenStreetMap contributors

晴海ってどんな所?

バス停周辺を少し歩いてみると、高層マンションがいくつか建っており、住民はそこそこいるようです。また、オフィスビル数棟が立ち並ぶ「晴海トリトンスクエア」も至近にあります。(トリトンスクエアには勝どき駅から徒歩で通う人が多いようですが)

南西へと10分ほど歩くと、巨大な煙突が目立つ中央清掃工場と、テレビで見慣れた東京オリンピック選手村の跡地が見えてきました。選手村は建物の内外装を大幅に改修した上で「HARUMI FLAG」という住宅街に変わるようです。現在は改修工事が行われていて立ち入りはできません。フェンスの隙間から中をのぞくと、選手村時代の名残も残っていました。

改修工事中のHARUMI FLAG
選手村時代に使われていた行先案内板

犬の散歩をさせる近隣住民ぐらいしか歩いてない寂しい道をさらに進むと、晴海客船ターミナルが見えてきました。ここはお台場の夜景が見渡せるデートスポットとして知られていましたが、この3月をもって廃止となり、今は閉鎖されています。長年大型客船のターミナルとして使われていましたが、近年はレインボーブリッジをくぐれないサイズのクルーズ船も増えてきたことから、レインボーブリッジ手前のお台場にできた新ターミナルに役目を譲り、今後は解体されるようです。今はバスの折返場としての機能のみが残り、東京駅などへの都営バスが発着しています。このバスに乗って勝どき駅まで戻りました。やってきたバスは新型の燃料電池バスで、東京BRTとほぼ同型のようでした。

廃止となった晴海客船ターミナル(左)

結局、東京BRTとは何なのか

上記の通り、BRTという大層な名前に反して、実際乗ってみると停車駅の少ない路線バスという程度の印象しか持たなかったこのバス。実はまだ「プレ運行」という位置づけのようで、今後は下図のように路線網を拡張するとともに、環状2号線の整備や信号の制御(バス側が優先的に青信号となる)によって新交通システム(「ゆりかもめ」など)並みの速度の実現を目指すようです。専用レーンの設置はさすがに都心では難しく、当面計画されていないようです。

東京都都市整備局「都心と臨海地域とを結ぶ東京BRTについて」より抜粋

環状2号線や東京オリンピック選手村跡地(HARUMI FLAG)の整備が終わらないまま、見切り発車のような形で「プレ運行」が始まった理由はわかりませんが、晴海エリアの開発が年々進んでいるにもかかわらず公共交通網の整備が立ち遅れており、取り急ぎ開業させたのでしょうか。元々晴海エリアには豊洲からゆりかもめが延伸してくる計画がありましたが(豊洲駅も晴海延伸を見越した設計となっている)、銀座方面から地下鉄を引っ張ってくるプランもあり、その調整に時間が掛かっていたようです。(現在は後者の地下鉄案が本命となっているようです)

今後、HARUMI FLAGの街開きや環状2号線の工事が完了すれば、東京BRTの運行形態もガラッと変わるものと思われます。

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