KORAIL ムグンファ号・セマウル号を乗り継いでソウルから水原へ~ヨーロピアンスタイルなソウル駅構内を観察

ソウル駅からセマウル号・ムグンファ号を乗り継いで水原まで、昔懐かしい客車列車の旅をしてきました。運賃や車内の様子などをご紹介します。

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韓国の大幹線・京釜線に乗車

ソウル駅は東京駅と同じく長距離列車が集まるターミナルで、様々な方向へと列車が発着していますが、中でも一番重要な幹線が京釜線です。沿線には大田、大邱、慶州、釜山と大きな街や観光地が集中しており、日本でいえば東海道本線のような位置づけの路線です。

京釜線には並行して高速新線が敷かれており、高速列車のKTXやSRTはそちらを走りますが(一部例外あり)、在来線を走る優等列車もいまだ健在です。高速列車は明日乗る予定なので、今日は在来線の列車に乗ってみようと思います。

13時半過ぎにソウル駅到着した後、次に乗る列車のプランを練ります。案ができたところで乗車券を買いに向かいましたが、1か所しかない窓口は長蛇の列で進みそうにありません。自動券売機は海外クレカや現金は使えないと書いてあるし…

仕方ないので、使い勝手の悪いアプリで今後の列車を予約します。アプリだと発車が20分以上先の列車しか予約できないという縛りもあって、結局最初は14時48分発のムグンファ号に乗ることにしました。

ソウル駅の印象:歌う街宣活動と軍人さん

という訳で時間が余ったので、ソウル駅をじっくり観察してみたいと思います。駅ビルは非常に近代的かつ巨大で、駅構内にはロッテデパートが入居するなどショッピングも充実しています。駅の至る所に「KTX20周年」のポスターが貼ってありました。

駅前に出てみると高層のビルが立ち並んでいて「さすがは首都」と感心したのですが、これでもまだ序の口であることを後々実感することになります。

駅を歩いて気付いたのがまず軍人さんの多さです。ご存じの通り韓国は兵役があり、若い人は一定期間軍隊に入らねばならないのですが、これから軍に入隊するのか帰省してきたのか、若い軍人さんが列車に乗る姿がやたらと目立ちました。

そして、駅前では数組が何やら街宣活動をしているのですが(ハングルが読めないので何をアピールしているのかは不明)、日本だとふつう演説するところを、韓国ではおじさんが延々と熱唱していました。組織をアピールする歌を歌っているのだろうか… 後日見たデモ活動でも何やら歌っていましたし、韓国の方は歌好きであるのは間違いなさそうです。この気質が今日のK-POP隆盛の根底にある…のだろうか。

そして、ソウル駅といって忘れてならないのが戦前に建てられた旧駅舎です。東京駅ほど大きくないですが、よく似た造りの駅舎が今も保存されています。中を見るのを楽しみにしてきたのですが、残念ながら次の展示に向け改装中とのことで中に入ることはできませんでした。

ソウル駅ホーム観察、KTX撮ろうとして怒られる

一通り外観を観察したところで、いよいよホームへと向かいます。ソウル駅は地上部分だけでも14ものホームがある巨大駅です(この他、気づかなかったが京義線ホームというのもあるらしい)。駅ホームは基本的に高さの低いヨーロッパ風で、大屋根で全体が覆われているのもヨーロッパのターミナル駅に似ています。観察しているうちに、KTXがのっそりと入線してきたりして早くもテンションが上がります。

構内に入り乱れる列車たち

KTXは20両編成と長く(ただし連接式なので、客車1両あたりの長さは日本の新幹線に比べて短い)、全長は400m近くもあり、編成を見て回るだけでも一苦労です。それでもぜひ先頭部の写真を撮っておきたいのでホームの先端に向かいますが、ホーム先端に立ち入ったとたんにセンサーが反応し、何やら警報音が。英語のアナウンスで”restricted area”と言っているのが聞こえたので、どうやらホーム先端は立ち入り禁止のようです。捕まってはたまらないので慌てて退散します。

日本だと、鉄道ファンに限らず一般人が新幹線の先頭部を観察したり撮影したりする光景が見られますが、韓国では鉄道を愛好するという文化がそもそも無いようで、鉄道ファンらしき人もほぼ見かけませんでしたし、列車の前で記念撮影したりする一般人も皆無でした。

仕方ないので、編成中間部分を撮影します。停車していたのは「KTX山川」。編成が初代KTXの半分ほどと短く、途中駅で編成分割して湖南線などの支線に乗り入れる運用に主に用いられています。「山川」という名前はどっかの野球選手とは関係なく、山川魚(ヤマメ)にちなんでいるそうです。

駅の一角には、地下鉄1号線や4号線(どちらもKORAILとの直通あり)への連絡改札があります。その改札の右手に、人気のない謎のホームがあります。このホームは、1号線の新昌方面発着の急行列車(日本のJRでいう快速のようなもの)がラッシュ時のみ発着するそうです。1号線の列車は基本全て地下鉄に直通しますが、ラッシュ時のみ例外的な列車があるようです。ホームドアもなく、うら寂れた雰囲気でした。

一方、駅入口付近にはいくつか売店があり、乗客で賑わっています。その中には何と駅弁を売る店もありました(事前に作り置きしておく日本の駅弁と違って、その場で調理している可能性もあり)。ビビンパからプルコギ、ハンバーグと種類も豊富なようです。

懐かしい客車列車で水原へ

ソウル14:48発→永登浦14:57着 ムグンファ号1213列車

そうしているうちに発車時刻が近づいてきたので、ムグンファ号の乗り場へ向かいます。今回乗車するのはソウルの少し先の永登浦という駅まで、わずか10分ほどです。本来ならわざわざ長距離列車に乗るほどの距離でもないのですが、せっかくの機会なので2600ウォンを投じて乗ってみることにしました。

ホームにはすでに列車が入線していました。日本では随分前に見られなくなった客車列車で、客車は6両つながっていました。ムグンファ号は日本では「急行列車」と訳されることも多いですが、韓国の長距離列車では最下級の扱いで、ローカル線ではムグンファ号しか走らないところも多く、「全席指定の普通列車」という位置付けが適切な気がします。

行き先表示はこれまた懐かしい「サボ」が健在です。この列車は遠く釜山まで4時間以上掛けて走り切るようです。一方、車内の方は意外と近代的で、金属やプラスチックの部品が目立ちます。この後、水原からの帰りにもう一度ムグンファ号に乗る予定なので、詳しい車内観察はその時にすることにします。

列車は客車らしいゆっくりとした加速でソウル駅を出発し、複雑な駅構内を通過していきます。駅を出ると左に地下から出てきた電鉄線(1号線)が合流してきて、しばらく3複線の状態で進みます。駅構内を出た列車は次第に加速し、日本でいえば品川に相当する南のターミナルである龍山駅もあっさりと通過します。そして、しばらくすると漢江にかかる鉄橋を通過します。

漢江を過ぎても線路の離合集散は激しく、もはや何複線なのかもわからない状態です。電鉄線の駅をいくつか通過しつつ、割とごちゃごちゃした街並みを抜けると永登浦に到着です。さすがにここで下車する人はおらず、横の席の客にはわざわざ立ってもらう羽目になり申し訳ない気分でした。

永登浦15:31発→水原15:55着 セマウル号1057列車

永登浦という、日本の観光客にはなじみのないであろう駅でわざわざ下車したのは、駅前にあるホテルにチェックインするためです(詳しくは後述)。ホテルで荷物を下ろし、身軽になって駅へ戻ってきました。

ホテルのチェックインは意外に混んでいて、次に乗る列車に間に合うか気を揉んだのですが、何とか発車3分前に駅に戻ってくることができました。隣のホームには赤い塗装が目立つ「ITX-MAUM」が停車中です。京釜線のセマウル号などに用いられている、比較的新しい車両です。

永登浦駅は長距離列車のホームが上下2つずつあり、ソウルや龍山に出入りする列車の順番を調整するためか、列車同士の追い抜き(主にムグンファやセマウルがKTXに追い越される)も行われていました。

程なく、乗車するセマウル号がやってきました。セマウル号は日本では「特急」と訳されることが多く、KTXが走り始める前は最速達列車だったそうです。

先述の通り、京釜線のセマウル号には新しい車両が使われているのですが、これから乗るセマウル号は途中の天安から長項線という非電化の支線に乗り入れる「ローカル特急」で、ディーゼル機関車が客車をけん引するという旧態依然の列車です。客車も年季が入っているようで、塗装のひび割れやその修理跡が目立ちます。行先表示もサボで、長項線の終点である益山(Iksan)と表示されています。

そのような列車ですが、乗ってみると車内は案外快適で、シートの方も厚みがあり座り心地は悪くありませんでした。

各座席にはコンセントとUSBの差込口があり、充電ができるようになっているのはありがたいです。社端部には行き先を表示するモニタがあって、英語での案内もあるので安心です。

永登浦を出発すると、列車は客車列車らしくゆっくりと加速します。加速の際には客車特有の「どん突き」というか、ぎくしゃくとした前後動が感じられます。長らく客車列車に乗っていなかったので、何だか懐かしい感触です。先ほどのムグンファもそうですが、車内の客層はお年寄りが多いです。あくまで一般論ですが、若い人は安い電鉄線に乗り、お金をかけてでも座っていきたいお年寄りは長距離列車を好む、という使い分けになっているように感じられました。

ちなみに乗車券はこちらです。運賃は4800ウォンと、同じ区間のムグンファ号よりは高いですが日本で同じ距離の特急に乗ることを考えれば安いです。

車窓の方は、ソウル郊外の住宅街がずっと続きます。時折防音壁のようなものがあって車窓が見づらくなるのが残念ですが、高層・低層の入り混じったビル街が延々と続いている印象でした。

永登浦からノンストップで20分少々走って、水原に到着です。出発する列車を見送りましたが、非電化区間を走る関係か最後尾には電源車らしきものが連結されていました。

この後は、水原の駅前を軽く巡ってみたいと思います。

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