ソウル郊外の水原からソウル中心部に近い龍山まで、懐かしい客車列車で運転される急行ムグンファ号に乗車しました。車内の様子をお伝えします。
城下町・水原をちょっとだけ観察
永登浦からセマウル号に乗って水原にやってきましたが、来たのは特に何か目的があったからではなく、ソウルから最も手近なターミナル駅だという理由で選んだに過ぎません。ですが、駅前の観光地図を見ると水原は朝鮮王朝時代の城砦が残り、観光地としてもそこそこメジャーなようです。
城砦見学をするほどの時間はないですが、駅周辺を軽く見て回ることにします。
駅前は巨大なバスターミナルやデパート・高層マンションが立ち並び、地域の一大ターミナルと言っていい大きな街です。日本でいえば埼玉の大宮駅に何となく似ている気がしました。
駅の地下には水仁・盆唐線という路線が乗り入れています。この路線は仁川や水原といったソウル郊外の町をぐるりと半周し、ソウル東寄りの清凉里に至る総延長100km超えの長大な路線で、日本でいえば武蔵野線のような存在です。
この他、ソウルからやってきた1号線も乗り入れています。1号線の改札口には日本と同じく行先表示器があるのですが、これがハングルオンリーで何が書いてあるのか全く分かりません。駅の案内板や駅名標、車内の表示器は英語を併記してくれているのですが、なぜか行先表示器だけはどの路線も英字表記がありませんでした。
再びムグンファ号でソウル市内へ
水原16:19発→龍山16:53着 ムグンファ号1422列車
駅に戻り、再びムグンファ号で龍山まで戻ります。運賃は2500ウォンで、30分以上もかかる距離を移動すると考えると格安です。
車窓は行きと同じですが、すれ違う列車を観察しているうちに水原からソウル市内までの線路の使い分け方が何となく分かってきました。水原から九老までは複々線で、電鉄線と長距離列車が線路を使い分ける形となっています。九老の手前ではKTX専用線が地下から出てきて、列車線に合流してきます。九老からは仁川方面からの電鉄線が合流してきて、電鉄線は複々線(列車線と合わせて三複線)となって龍山に至ります。
龍山の手前で、今日3度目となる漢江を渡ります。鉄橋の途中で列車は速度を落とし、すぐ横を走る電鉄線のステンレス車両に追い抜かれました。駅構内のポイントをゆっくりと渡って、龍山駅に到着です。ソウル駅のホームのキャパが限られるためか、一部のセマウルやムグンファはソウル駅の手前の龍山が終着となります。
龍山駅に到着後、車内の様子を少しだけ観察してみます。シートは日本の平成初期の特急型にも似た、クッションが分厚いタイプのもので、ちゃんとリクライニングもします。ドア上のディスプレイは先ほどのセマウル号と同型のもののようです。
デッキとの仕切り扉は自動ドアとなっています。この扉の動きがかなり早く、開閉時はガシャンと大きな音がします。ドアに手を挟まれないよう注意が必要です。
6両編成の1両は、写真のようなフリースペース(という名の実質自由席)になっていました。飲食の可能なカウンターのほか、通勤電車のようなロングシートも並んでいます。ムグンファ号は地方線区では事実上普通列車の役割も担っているので、このような車両も必要なのでしょう。
デッキにはもちろんトイレもついています。利用はしなかったので中の清掃がどうなっているかは分かりませんが…
KORAILの客車列車は風前の灯火?
ムグンファ号・客車セマウル号ともに車両は古めですが、運賃も安く、シートの座り心地も悪くありませんでした。先述の通りお年寄りが多く、客層が悪いということもなさそうなので、のんびりとした汽車旅が楽しめそうです。
KORAILは近年も新型車両をコンスタントに導入しているようで、これらの客車も遠からず消えてしまいそうな予感がします。長項線など地方ローカル線や、ソウルから釜山まで長距離を駆け抜けるムグンファ号で客車列車の旅を楽しむなら今のうちです。
龍山駅から1号線でソウル駅へ
龍山駅はソウル駅の南にあるターミナル駅で、京釜線の長距離列車のうち湖南線や長項線といった支線に乗り入れる一部列車の始発駅です。また、首都圏電鉄の1号線(京元線・京釜線・京仁線)や京義・中央線も乗り入れてきます。日本でいえば新宿、あるいは品川に相当する駅といえます。改札前の、大屋根のかかったスペースはどことなく品川に似ています。
駅には9階か10階建ての大きなロッテデパートが併設されていて、その規模はソウル駅をしのいでいます。一通り歩いてみましたが、書店や飲食店に加えて大規模な免税店も入っています。龍山にわざわざ来る外国人観光客もそう多くなさそうで、免税店の店員さんは暇そうにスマホを眺めていました。店のオープン中にスマホを眺めるとは日本だと考えられませんが、シンガポールも案外そんな感じでしたね…
しばらく駅前をぶらついた後、1号線でソウル駅に行ってみます。空港で買ったまま一度も使っていなかったT-moneyカードを改札機にかざして入場します。
やってきた電車は4ドアロングシートで、日本の通勤電車と言われても違和感がないぐらいに似ています。夕方のラッシュ時とあって車内はやや混んでいました。これはソウルの電車全般に共通なのですが、出発・停車時の動きは日本に比べてもっさりしています。一方、カーブではあまり減速せず、日本に比べて揺れが大きく感じられました。
そして、ソウル駅手前では突然車内の電気が全部消えました。これは交流電化のKORAILと直流電化の地下鉄の間のデッドセクションを通るためです(そのため、1号線は全車両が常磐線のような交直流電車となっている)。知らないとびっくりするかもしれませんが、電車の故障などではないので心配は不要です。
ソウル駅に戻った後は、日が暮れるまでソウル市内をぶらつくことにします。
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