閉幕を目前に控え、駆け込み需要で大混雑の大阪万博を訪問してきました。混雑時でも万博を楽しむコツをご紹介します。
閉幕直前、超混雑の会場の歩き方
筆者は連休谷間の平日・9月22日(月曜日)に大阪万博を訪問してきました(通算11度目)。9月中旬以降、万博は連日20万人を超える来場者が押し掛け、22日も一般入場者数は22万5000人に達したそうです。前回、お盆に訪問した時ですら入場者数は16万人ほどだったので、その1.5倍近い来場者がいたということになります。
ここまで来場者数が増えてしまったため、混雑がピークとなるお昼~夕方の会場内はかつて見たことのない状況となっていました。例えば…
- コモンズ館ですら入場停止(入場待ちの列にすら並べない)が頻発
- 大屋根リング下や静けさの森周辺の通路はまっすぐ歩くことすら困難
- 会場内オフィシャルストア前には、お盆の倍ほどの待ち行列が発生
- 大屋根リングに上がるエスカレーターへの行列が数10mも続く
- 女子トイレばかりか、男子の小用トイレですら行列
といった具合で、この状況で訪問しても心から万博を楽しむのは無理なのでは??と思わざるを得ませんでした。これから訪問される方はどうか覚悟の上で行ってください、としか言いようがありません。
そんな悪条件に加え、筆者は出発2日前に突発的に訪問を決めてしまったため、パビリオンの事前予約は何もなしという有様でした。とはいえ、パビリオンは前回までにほぼ全て訪問を済ませていたため、今回は重箱の隅のようなマニアックな要素を楽しみつつ、楽しかった万博に最後の別れを告げるつもりで訪問してきました。
以下、混雑を極力避けつつ万博を楽しむコツを、訪問記と共にご紹介したいと思います。
パビリオン巡りは9時~12時、18時以降がお勧め

上記の通り、日中はコモンズ館ですら入場停止が頻発していたため、他のパビリオンも同様の状況だったことでしょう。一方、午前中はまだ全ての客が入場しきっていないため、会場内の混雑はお盆の頃とほぼ同じ状況でした。即ちこの時間帯がパビリオン巡りのチャンスですので、頑張って極力休憩なしで目当てのパビリオンを巡るとよいでしょう。
また、18時を過ぎると子供やお年寄りを連れたお客さんが減るためか、混雑がやや落ち着く傾向にあるようでした。この時間帯は花火や噴水、ドローンを見に行く人も多いため、これらに興味がなければパビリオン巡りのチャンスです。
筆者も入場から13時までの間にドイツ館(20分待ち)、中国館(40分待ち)、コモンズD館(10分待ち)を立て続けに訪問できました(この他、日本館も当日予約で訪問)。ドイツ・中国・日本館はまだ勝手の分からない開幕直後に雑に見飛ばしてしまったのですが、改めて訪問してみるとなかなか興味深い展示内容ばかりでした。訪問記はそのうちアップデートする予定です。
空いている上、実は奥深いデジタルスタンプラリー
パビリオンを巡る合間に、各パビリオンにある公式スタンプのうち集めそこなった分を回収してきました。公式スタンプはパビリオンだけでなく、後述する万博サウナやeMover(バス)の乗り場など、なかなかマニアックな場所にもあります。全リストはこちらからどうぞ。(リストにある「カーボンリサイクルファクトリー」は特殊な予約がないと入れないらしいので、取得は困難でしょう)
ところで、館内パビリオンに置かれているスタンプは物理・デジタルの2種類がありますが(図柄は同じ)、筆者はこれまで物理スタンプばかりを集めていました。なぜなら、万博ではパビリオンの当日予約等を確実に実施するため「スマホの充電を温存する」ことが強く推奨されていて、充電を食うデジタルスタンプを利用を控えていたからです。
しかし、今回は必死で当日予約をする必要もないので(日本館はあっさり予約できてしまったし)、デジタルスタンプも可能な範囲で集めてみることにしました。


デジタルスタンプを集めるには、事前に「EXPO2025デジタルウォレット」をインストールし、アカウントを作っておく必要があります。現地ではスタンプ台の周辺か、パビリオン入口付近(コモンズ館の一部ブースのみ)にあるQRコードを読み取ればスタンプをゲットできます。
物理スタンプと比べてデジタルスタンプを集めている人は少ないので、混雑時でもサクサク集められるはずです。パビリオン出口付近の、誰でもアクセス可能な場所にスタンプ台を置いているところも多いので、混雑時はパビリオンに入る代わりにスタンプ集めに励んでみてもいいかもしれません。

スタンプを集めて「ステータス」を上げると、館内の「デジタルウォレットパーク」のラウンジを利用できるようになるそうです。ちなみに、このデジタルウォレットパーク前にも公式スタンプがあるのでお忘れなく。
ところで、万博のデジタルスタンプは「エキタグ」など他のデジタルスタンプのように、サーバからスタンプの画像をダウンロードしてくる単純な仕組みではありません。取得したスタンプは「ミャークン!」というアプリを通じて、NFTとしてブロックチェーン上に蓄積されていきます。
…NFT、ブロックチェーンとなかなか難しい単語を使ってしまいましたが、超ざっくり言うと「絶対消えない台帳上に、唯一無二のアイテムとして保存される」仕組みになっています。将来は通貨や証券のやり取りにも応用が期待されるスゴい技術だそうで、そういう技術が裏で使われていると思えば有難味も増すはずです。
ブロックチェーンはその仕組み上データの更新に時間が掛かるそうで、押印後しばらくは「WAITING」の表示が出ますが気にしなくて大丈夫です。

ちなみに、「EXPO2025デジタルウォレット」内にはSBTという仕組みを使った別のスタンプ帳もあるようで、中身を見てみると生々しいログのような文字列が見れたりします。
混雑時の穴場、フューチャーライフゾーン


13時を過ぎると会場内の混雑が激しくなってきたので、西ゲートの奥の「フューチャーライフゾーン」に移動してきました。ここは会場内でも外れの方に位置するので、人通りもそれほど多くなく、フードコートやトイレも空いています。
筆者も「未来の都市」「フューチャーライフビレッジ」以外はあまり足を運んだことがなく、ゆっくり巡ってみることにしました。海沿いの休憩所からは大阪湾越しに神戸の街が見えるほか、個性的なオブジェも所々に立っています。
以下、フューチャーライフゾーンの施設を簡単にご紹介します。(なお、最後に紹介する「テーマウィークスタジオ」はTECH WORLD横なので場所が違いますが、ついでに紹介してしまいます)
EXPOアリーナ「Matsuri」


アリーナというより広大な広場のようなスペース「Matsuri」では、日によって様々なイベントが行われており、予約なしで誰でも入れる場合もあります。この日は三重県の祭りが一堂に会するというイベントが行われていました。厳粛な祭囃子の演奏の中、「鬼」が入場する様子を眺めます。


会場内では物販や飲食のブースもあって、名物の「さんま寿司」を購入。そういえば、この日もパビリオングルメは食べずじまいでした。並ぶのもうんざりするぐらい混んでいるのと、値段が高すぎてどうしても二の足を踏んでしまいます…
万博サウナ


Matsuriの裏側に隠れるようにひっそりと存在するのが「万博サウナ」です。ここは一日当たりのキャパも小さく、一説によると万博で最も予約が難しいのだとか。よって訪れる人もほぼおらず閑散としていますが、実はここにも公式スタンプがあります。サウナの受付付近にひっそりと置かれており、自由に押すことが可能です。
サウナ手前には、万博を訪れた芸能人のサインが書かれたパネルがこれまたひっそりと佇んでいました。実に多彩な人たちのサインがあるので、これだけでも一見の価値があるかも。
ギャラリーWEST


フューチャーライフビレッジ横の「ギャラリーWEST」では様々なイベントが行われ、この日は国立公園に関する展示をしていました。同様のギャラリーは会場内の至る所にありますが、ここは比較的空いているのでゆっくり鑑賞できます。
ジュニアSDGsキャンプ


Matsuri手前にある白いドームは、「ジュニアSDGsキャンプ」という施設(正式なパビリオンではないらしい)になっており、公式スタンプもあります。時間帯は限られているものの、自由に館内に入ることも可能です。


館内には、子供向けにSDGsに関して解説する展示があるほか、「重すぎるスタンプ」というのがあります。これは重さ12kgほどあるコンクリ製のスタンプで、梃子のようなもので押し上げることで押印できます(その様子を記念撮影することも可能)。

その脇では、無料の「謎解き」が配布されていました。本パビリオン内や万博会場各地を巡って謎を解くというもので、小学生をターゲットとしたものながら結構難しい問題もありました。
テーマウィークスタジオ(TECH WORLD横)

フューチャーライフゾーンを出て、やってきたのはTECH WORLD横にある「テーマウィークスタジオ」です。各種地図にも必ず名前は出てくるものの、一度も見たことがなかったので訪問してみました…が、事務所のようなスペースがあるだけのようで、スタンプだけ押して退散しました。


ちなみに、事務所の目の前はフードコートが広がっていて、今宮戎を模した和風の装飾がされています。

目の前の店で売られた寿司を購入して、思わず一杯飲んでしまいました。
訪問11回、最後にやってきたパビリオンは…
そうこうするうちに18時を過ぎ、会場を離れる時間が迫ってきました(この日のうちに新幹線で東京に戻るため)。数あるパビリオンのうち、最後にやってきたのはコモンズA館です。
18時を過ぎても入場停止が続いており、何としても入場したい来場者と、それを排除するのに躍起な(会場内の導線を確保するためやむを得ない)警備員さんとの間でしばらく神経戦が続きましたが、何とか入場できました。

聞き慣れない国々の雑多な展示が並び、価値があるのかないのか分からないような装飾品を売るブースが立ち並ぶ…コモンズ館の何ともカオスな雰囲気にすっかり魅せられ、最近は万博訪問のたびにA~Dの4館を全部見て回るのが習慣と化していました。(この日はAとDだけでしたが)
さすがに3回も4回も通うと大体の展示内容は見覚えがありましたが、これが本当に最後の訪問なので悔いのないよう丹念に見て回りました。
思い返すと筆者も万博初期の頃は大手のパビリオンを巡るのに躍起で、一見ごちゃごちゃとしたコモンズ館は正直眼中にありませんでした。しかし、一周回ってみるとコモンズ館こそが万博のメインテーマである「多様性」を最も体現していると感じます。スルメのように噛めば噛むほど味わい深いコモンズ館こそが、万博マニアの「終着駅」だと個人的に思います。

コモンズA館は中央のブースで賑やかに洋楽を流しているのが特徴で、この日もDJを囲むように自然と踊りの輪ができていました。
賑やかな踊りの輪を見ていると、「大変な一日だったけど来て良かったな」と思うと同時に、「楽しかった万博ももうお終いなんだ」という寂しさもこみ上げてきました。

コモンズA館を出て、美しくライトアップされた大屋根リングなど会場内の風景を改めて目に焼き付け、一人感慨にふけりながら帰路へと着いたのでした。
何故ここまで万博に魅了された?…大阪万博を振り返る
以下、万博訪問の役には立たない一人語りが続きますので、興味のない方はスルーしてください。
上で述べた通りさすがに9月以降の混雑は激しすぎますし、チケット買っちゃったけど予約が取れない人(未使用券が130万枚も残っているとか…)の来場機会を奪うのも忍びないので、万博訪問は今回で本当に打ち止めにしようと思います。そこで、最後に今回の万博について筆者が思うところを総括します。
テーマパークにはない「多様性」に魅せられて
万博開幕前は、遠く大阪で開催されることもあり「2~3回通って雰囲気を味わえば十分かな」と思っていました。しかし段々と万博に魅せられ、雨の日も猛暑日までも通い続け、その数実に11回(うち3回は家族のアテンド)にまで達するとは全くの予想外でした。
なぜそこまで魅せられたか…その大きな要因が上でも書いた「多様性」でしょうか。例えばTDRやUSJのような大型テーマパークは、全パークを通じて統一された世界観やコンセプトを持ち(エリアごとに多少の違いはあるが)、全体のクオリティがぶれないよう施設の設計や従業員教育がなされています。
一方、万博のパビリオンは各国に設計がゆだねられているため、展示の切り口も様々な上にレベル差も大きかったです。それほど前評判の高くなかったインドネシア館などの素晴らしい展示内容に驚く一方、正直「何じゃこれは」というような内容のところもあって(具体名は挙げないけれども)、まるで「びっくり箱」を開けるかのような新鮮な気持ちで見ることができました。
展示の方向性も、SDGsに振り切った日本館、テーマパーク風のアメリカ館・イギリス館、芸術性を追求したフランス館・イタリア館、博物館のような中国館、サーキュラーちゃんが喋りまくるドイツ館と、主要国だけでも見事にバラバラで、多様性に富んでいました。
GUNDAMやNTT館・三菱未来館など、日本人が日本人向けに作ったパビリオンも安定感があって楽しめたのですが、そればかりだったならばここまでのめりこむことはなかった気がします。
ハイテクに触れてみて、逆にITの限界を痛感
万博開催前の批判としてありがちだったのが、「今はインターネットで世界の事は分かるから万博は不要」というものでした。
コロナ渦で何かとリモート化が図られていた頃もこの手の「IT万能論」が主張されていた気がしますが、万博でVRや裸眼立体視など最新技術に触れてみて、少なくとも今のIT技術ではまだまだリアルイベントには太刀打ちできないと逆に痛感しました。Google検索やYouTubeでできる範囲の「調べ物」はネットで十分できますが、五感で感じる「体験」は無理だなと。
今回訪問する前に「バーチャル万博」なるアプリも少しプレイしてみましたが、やはりまだまだだなと思ってしまいました。
とはいえ、次の大阪万博が行われる50年後ぐらいにはITも格段に進化しているでしょうし、完全バーチャル化しているのかもしれません。筆者はその頃はもう生きていないでしょうし、実際に見ることはないでしょうが…
IT時代らしい「ボトムアップ」の盛り上がり
ITといえば、日々刻々と変化する万博のルールやその攻略法、見どころなどの情報がネット中心に流布し、盛り上がりに一役買っていたのも現代らしいなと思いました。昔はこういうイベントの情報はテレビを中心に世間に流れていたものですが、時代は変わりました。(筆者は関西でのマスコミの報道状況は分からないですけど)
「つじさんの地図」に代表されるように、ユーザ側が公式を上回る便利なツールを作ってしまうというのも今回の万博の特徴でした。弊サイトも5月以降はパビリオンの訪問記を書きまくり(文字数10万、写真1000枚は超えているはず)、それを基に「パビリオン一覧表」「交通アクセス一覧表」を作ってみたところ、かつてないほど多くのアクセスがありました。多少なりとも皆さんの万博訪問のお役に立てていれば幸いです。
「SDGs推し」には違和感も
一方、万博に関して疑問に感じた点もありました。といっても「入場ゲートで待たされすぎ」「住友館の予約が取れない」「チケット予約サイトの待ち時間&エラーが多すぎる」「3日前予約で深夜作業を強制される」といったミクロな事ではありません。(それはそれで改善はして欲しかったですが)
万博のパビリオンでは総じて「SDGs」「持続可能性」が声高に叫ばれていましたが、半年の会期のために多大な建物を作って壊し、人を集めて膨大なエネルギーを消費する万博自体がSDGsの観点からしていかがなものか、というパラドックスにどの展示も向き合おうとしていなかった点は大いに気になりました。
「万博でSDGs・持続可能性を人々に啓蒙して得られるベネフィットの方が、エネルギー浪費によるコストを上回る」という考え方もあるのかもしれませんが、そのあたりの定量化が図られた形跡もなさそうでした。
何でも、次のリヤド万博は大阪の4倍と破格の規模になるだそうで、オイルマネーを注ぎ込んだ豪華絢爛なものになりそうですが、規模が大きくなるほど上記の矛盾を問われることになるでしょう。
現場の皆様に感謝
…と最後は辛口になってしまいましたが、今回の万博は楽しかったですし行って良かったと思っています。関西にお住まいの方は意外に思われるかもしれませんが、関東で「万博に10回行ってきた」というとほぼ確実に変人扱いされてしまいますけれども、それでも全く悔いはありません。
最後に、万博に関わった皆様、とりわけ猛暑や雨天の日も最前線に立っておられたパビリオン運営者や警備員の方々に敬意を表して締めくくりたいと思います。大きな事故なく閉幕を迎えられることを祈っております。
おまけ

新幹線に乗る前、阪神大阪梅田駅に来てみるとこんな表示が…(2年前は横断幕のようなものだったはずですが、今はデジタルサイネージに変わったんですね) リーグ優勝からは2週間も経ってしまいましたが、辛うじて見ることができました。
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