【初心者向け】青春18きっぷはこう使え~乗り鉄歴25年の筆者がおススメの使い方教えます

JRの普通列車が乗り放題となる「青春18きっぷ」。あまり普通列車の旅をしたことのない初心者の方向けに、お勧めの使い方をご紹介します。

(2024年冬シーズンからのリニューアルに伴い、記事を一部修正しました。)

2024年冬、青春18きっぷが変わった

実に20年前の18きっぷ。このフォーマットは過去の物に。

毎年春・夏・冬の休暇シーズンに販売されている青春18きっぷ。その歴史は長く、書籍やネット記事のネタとしては使い古された感もありますが、一応25年に渡って乗り鉄を続けてきた私なりのおススメの使い方を、主に初心者向けにご紹介できればと考えております。(バリバリの鉄道ファンの方にとっては今更な内容ですのであしからず)

18きっぷの価格や基本ルールは流石に知れ渡っていると思いますので、詳しくはこちらのリンク先をご覧ください…っと以前はさらっと流していたのですが、2024年冬より青春18きっぷの販売形態が大きく変わりました。変更点は主に以下の三点です。

  1. 従来の5日間用(12500円)に加え、3日間用(10000円)が新たに販売開始。
  2. 有効期限は使用開始日から連続した5日間もしくは3日間。
  3. 一枚の切符を複数人で同時に使用することは不可

そもそも18きっぷはJRのフリーきっぷの中ではやや異色の存在で、いわば一日有効なフリーきっぷ5枚を1セットで販売するような特殊な形態でした。そのため、1枚の18きっぷを複数人で用いたり、間隔を開けて利用できたりと、フレキシブルな使い方ができるのが利用者にとっては大きなメリットでした。

ところが、今回のルール変更で利用形態が大幅に制限されてしまい(「週末パス」など、JRの他のフリーきっぷの利用形態に近づいたともいえる)、鉄道ファンの間では衝撃が走りました。

筆者は18きっぷをここ10数年ほど購入しておらず、すっかり「卒業」モードだったため個人的には痛手ではありませんが、若い頃は安く帰省する手段(昼間の普通列車を乗り継げば、東京から大阪まで実質2300円ほどで移動できた)として重宝しており、何とも残念な気分ではあります。

18きっぷに代わるフリーきっぷの一覧をこちらにまとめました。

以上の点を踏まえ、これからご紹介する「おススメの使い方」も大きく変更しています。

18きっぷを取り巻く事情~使い勝手は年々悪化している

「ムーンライトながら」末期の姿。
成田や関空を我が物顔で行き交うジェットスターなどのLCC

上記の通り18きっぷに関する書籍やネット記事は多々ありますが、その中には「長距離を格安で移動できる!」という触れ込みが散見されます。それはもちろん間違いではないのですが、私が18きっぷを頻繁に利用していた10数年前に比べると使い勝手は悪化してきているのが現状です。その理由を挙げてみましょう。

夜行快速列車の廃止

かつては「ムーンライトながら」(東京~大垣)、「ムーンライトえちご」(新宿~村上)など、長距離の夜行快速列車がオンシーズンには多数運行されており、これを使うと移動距離を一気に稼ぐことができました。今ではこれらの列車は全廃されてしまっており、18きっぷでは昼行の列車しか利用できなくなりました。

新幹線並行在来線の三セク移行

JR化後に開業した新幹線に並行する在来線の多くが、JRから第三セクターに移行しました(軽井沢~直江津~金沢、盛岡~八戸~青森など)。これらの路線では基本的には18きっぷでは乗車できないため(一部区間は特例として乗車可能)、18きっぷのみで移動したい場合は別の線を使って迂回しなければならず、時間が掛かります。

列車の短距離化、快速列車の廃止

つい数年前までは、岡山~下関、滝川(北海道)~釧路、東京~静岡など、かなりの長距離を走る普通列車が結構あり、乗り換えなしで一気に移動できたのですが、近年の合理化のため年々区間が短縮され、短距離の列車を何度も乗り継がないといけなくなりました。乗り継ぎはそもそも面倒な上、待ち時間が発生することが多く、長距離の移動は年々しにくくなっています。

加えて、「サンライナー」(山陽本線岡山地区)、「アクアライナー」(山陰本線)、小倉~大牟田間の快速(鹿児島本線)といった便利な列車が次々と廃止もしくは縮小されており、これも痛いところです。

高速バス、LCCの格安化

これは鉄道側の事情ではありませんが、近年格安の高速バス会社が続々と登場し、従来に比べると破格の値段で都市間往復ができるようになりました。例えば、東京~大阪間だと3000円台で夜行のバスに乗れてしまいます。筆者が学生だった20年ほど前は、東京~大阪間の夜行バスといえば8000円強の「ドリーム号」しかなく、隔世の感があります。バスの機動性を生かして地方都市同士を結ぶようなニッチな路線も増えています。

また、ジェットスター、PeachなどのLCC路線も年々充実してきていて、成田~関西間だと10000円未満の値段が当たり前となっています。

おススメできない18きっぷの使い方

以上の背景などを踏まえ、以下のような使い方は避けた方が良いと個人的に考えます。

500km以上の長距離移動

途中駅で下車しつつ観光などを楽しみながら移動するのであれば全然問題ないのですが、単なる格安な長距離移動手段として18きっぷを使うのは(重度の乗り鉄を除くと)あまりお勧めできません

500km以上、と書かれてもイメージしにくいと思いますが、例えば東京~盛岡間や大阪~小倉間が500kmを少し超える区間となります。これくらいの距離になると朝から晩まで列車に乗りっぱなし、とイメージして頂ければよいかと思います。また、700kmとか800kmになると一日で移動できるかすら怪しくなってくるため、最悪途中駅での宿泊を余儀なくされ、格安移動という本来の趣旨からすると本末転倒になってきます。

前向きシートの特急型車両ならともかく、通勤型のロングシートやボックスシートに朝から晩まで乗り続けるのは想像以上にしんどいものです。加えて何度も乗り継ぎをしなければならず、混雑時には席にすらありつけない場合もあるでしょう。(特に18きっぷシーズンは日中の列車が混んでいることが多い)上記の通り、格安の移動手段としては夜行バスやLCCもありますので、それらも検討してみるとよいでしょう。

北海道内、本州~北海道間の移動

「18きっぷで憧れの北海道を旅したい!」とお考えの方もおられるかと思いますが、ここ数年JR北海道の普通列車は年々本数が削減されてきており、一日3本とか4本しか普通列車が走らない、という区間が散在しています。そのため、普通列車のみで移動しようとすると途中駅で長時間待たされる可能性が高いです。普通列車しかない区間に乗りたいのならやむをえませんが、それ以外は特急列車を使う方が良いでしょう。そのため、18きっぷではなく特急乗り放題のフリー切符を使う方が得策です。

また、青函トンネルを跨ぐ新青森~木古内間は「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」(4500円)というものを買えば特例として新幹線に乗車できますが、前後の区間(奥羽本線や道南いさりび鉄道)との接続が必ずしも良くなく、本州から新函館北斗まで新幹線に乗ってしまった方がコスパがよい気がします。(道南いさりび鉄道は車窓が素晴らしいので、それ目当てで使うのはありかもしれないが…)

上述の通り、そもそも東京から青森までの移動もハードなので、本州から北海道へのフェリーやLCCといった別の手段も考えた方がいいでしょう。

行き当たりばったりな旅

18きっぷは途中駅で乗り降り自由という性質からか、「18きっぷを使えば行く当てのない気ままな旅が楽しめる」「雰囲気の良さそうな駅でふらりと途中下車」という趣旨の記事をたまに目にしますが、本数の多い(概ね列車間隔が30分以下の)幹線以外で実施するのはお勧めしません。

日中のローカル線は、「お得意様」の通学客の乗車が少ないため、列車の間隔が2時間、3時間空くこともざらにあります。そのような区間にノープランで突っ込むと、駅前に商店もないような駅で猛暑の中何時間も待つ羽目になり得ます。ローカル線巡りをする際は綿密にプランを練っておきましょう。

おススメする18きっぷの使い方

では、おススメの使い方はどのようなものがあるでしょうか。個人的なおススメの使い方を紹介します。

東京~中京・関西間の移動(ただし3日以内で往復する場合のみ)

東京都心から北関東・熱海をダイレクトに結ぶ上野東京ライン・湘南新宿ライン
長距離移動の貴重な手段・223系新快速

長距離移動は避けるべき、と上で書きましたが、例外といえるのは東京~関西の東海道線(加えて横須賀・総武線、上野東京ライン、湘南新宿ライン、常磐線)が絡む乗り継ぎです。これらの路線のうち、関西圏や名古屋圏では転換クロスシートの新快速が頻繁に運転されており、快適である上距離を稼げます。関東各線はロングシートやボックスシート主体ですが、料金を払えばグリーン車に乗車できますし、緩行線が並行している区間は新快速並みに停車駅が少ないため、速達性もあります。

JREポイントがあればグリーン車をお得に使えます

唯一ネックなのが、熱海~浜松間の静岡県内区間(通称:静岡の壁)です。この区間は快速列車がなく、座席もごく一部を除きロングシートなので、中だるみしやすいエリアです。もし一部を新幹線でショートカットするのならば、静岡~浜松間の新幹線料金が自由席ならば990円と安く、運賃1340円と合わせ2330円で済むのでお勧めです。

なお、2024年冬からは切符の有効期限が連続する3日間または5日間となってしまいました。そのため、高速バスなど別手段と比べてコスパ的に見劣りしないのは3日間用(10000円)を買い、3日以内に往復する場合のみといえるでしょう(もちろん、滞在先でたっぷり鉄道を利用するなら5日間用を買ってもペイするでしょうが)。

乗りつぶし、観光列車の旅

磐越西線を走る「SLばんえつ物語」
五能線の名物車両と化した「リゾートしらかみ」

もちろん、純粋に列車の旅を楽しみたい、あるいはJRの乗りつぶし(完全乗車)をしたいという人にとっては18きっぷはありがたいツールです。特に、中国地方や北東北といった、めぼしいフリー切符のないエリアでは18きっぷは大きな威力を発揮します。ぜひ活用しましょう。

また、乗り鉄の際はJR東日本・西日本各地で走っている観光列車を行程に取り入れてみるのもいいでしょう。例えば、「リゾートしらかみ」「海里」「SLばんえつ物語」「SLやまぐち号」などです。これらは指定席券を買えば快適な座席に長時間座れ、車内には飲食物を扱う売店もあるので、18きっぷ旅とは思えない贅沢な時間を過ごせるでしょう。なお、JR九州の観光列車はほぼすべてが特急扱いのため、18きっぷでは乗車できません

もちろんこれらの列車の出発地に18きっぷで行くのは一苦労なので、新幹線や高速バスと18きっぷを組み合わせて使ってもよいでしょう。それでも十分元は取れるはずです。


以上、初心者を若干不安にさせてしまうような記述もありましたが、なんだかんだ言って人生で一度ぐらいは18きっぷで体力の限界までとことん列車に乗ってみる経験をしてみてもいいと思います。飛行機や新幹線では味わえない日本の広さや、土地土地の文化の多様さを体感することができます。とはいえ、いきなり超ハードな行程に挑むと2度と乗りたくなくなってしまう恐れもあるので、自分が旅として楽しめる上限の距離を見極め、まずはその範囲内で移動するのがいいでしょう。

コメント

  1. 福田榮一 より:

    18きっぷ未経験者です、今年は(7/2023)行こうと予定し行き先も何ヶ所か予定しています。貴殿の文中にもありますが、途中までワープし新幹線で超高速に移動する事も考慮しています。

    • rail20000 より:

      コメントありがとうございます。ワープする区間は「在来線の本数が少ない区間」「在来線の快速・新快速列車がなく遅い区間」「在来線の編成が短く、混んでいる区間(これは経験を積まないとなかなか分からないですが…)」に絞られるとよいかと思います。(あまり新幹線を多用するとお得感が薄れてきてしまいますので。)18きっぷ旅を満喫してきてください。

タイトルとURLをコピーしました