【初心者向け】青春18きっぷはこう使え~乗り鉄歴25年の筆者がおススメの使い方教えます

夏の18きっぷシーズン到来!

実に20年前の18きっぷ。フォーマットはこの頃からほぼ変わっていない。

6月の旅行記の執筆も進まない中ではありますが、少しでも旬のネタをということで、今回は去る7月20日から利用開始となった青春18きっぷについて記事を書こうと思います。18きっぷは古くから販売されており、書籍やネット記事のネタとしては使い古された感もありますが、私なりのおススメの使い方を初心者向けにご紹介できればと考えております。(バリバリの鉄道ファンの方にとっては今更な内容ですのであしからず)

18きっぷの利用期間や発売期間などは、以下の公式記事をご参照ください。価格や基本ルール(5回分が1セット、特急列車は使用不可、など)は流石に知れ渡っていると思いますので、割愛します。

お得なきっぷ|青春18きっぷ
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18きっぷを取り巻く事情~使い勝手は年々悪化している

「ムーンライトながら」末期の姿。
成田や関空を我が物顔で行き交うジェットスターなどのLCC

上記の通り18きっぷに関する記事は多々ありますが、その中には「長距離を格安で移動できる!」という触れ込みが散見されます。それはもちろん間違いではないのですが、私が18きっぷを頻繁に利用していた10数年前に比べると使い勝手は悪化してきているのが現状です。その理由を挙げてみましょう。

夜行快速列車の廃止

かつては「ムーンライトながら」(東京~大垣)、「ムーンライトえちご」(新宿~村上)など、長距離の夜行快速列車がオンシーズンには多数運行されており、これを使うと移動距離を一気に稼ぐことができました。今ではこれらの列車は全廃されてしまっており、18きっぷでは昼行の列車しか利用できなくなりました。

新幹線並行在来線の三セク移行

JR化後に開業した新幹線に並行する在来線の多くが、JRから第三セクターに移行しました(軽井沢~直江津~金沢、盛岡~八戸~青森など)。これらの路線では基本的には18きっぷでは乗車できないため(一部区間は特例として乗車可能)、18きっぷのみで移動したい場合は別の線を使って迂回しなければならず、時間が掛かります。

列車の短距離化、快速列車の廃止

つい数年前までは、岡山~下関、滝川(北海道)~釧路、東京~静岡など、かなりの長距離を走る普通列車が結構あり、乗り換えなしで一気に移動できたのですが、近年の合理化のため年々区間が短縮され、短距離の列車を何度も乗り継がないといけなくなりました。乗り継ぎはそもそも面倒な上、待ち時間が発生することが多く、長距離の移動は年々しにくくなっています。

加えて、「サンライナー」(山陽本線岡山地区)、「アクアライナー」(山陰本線)、小倉~大牟田間の快速(鹿児島本線)といった便利な列車が次々と廃止もしくは縮小されており、これも痛いところです。

高速バス、LCCの格安化

これは鉄道側の事情ではありませんが、近年格安の高速バス会社が続々と登場し、従来に比べると破格の値段で都市間往復ができるようになりました。例えば、東京~大阪間だと3000円台で夜行のバスに乗れてしまいます。筆者が学生だった20年ほど前は、東京~大阪間の夜行バスといえば8000円強の「ドリーム号」しかなく、隔世の感があります。バスの機動性を生かして地方都市同士を結ぶようなニッチな路線も増えています。

また、ジェットスター、PeachなどのLCC路線も年々充実してきていて、成田~関西間だと10000円未満の値段が当たり前となっています。

おススメできない18きっぷの使い方

以上の背景などを踏まえ、以下のような使い方は避けた方が良いと個人的に考えます。

500km以上の長距離移動

途中駅で下車しつつ観光などを楽しむのであれば全然問題ないのですが、単なる長距離移動手段として18きっぷを使うのは(重度の乗り鉄を除くと)あまりお勧めできません。

500km以上、と書かれてもイメージしにくいと思いますが、例えば東京~盛岡間や大阪~小倉間が500kmを少し超える区間となります。これくらいの距離になると朝から晩まで列車に乗りっぱなし、とイメージして頂ければよいかと思います。また、700kmとか800kmになると一日で移動できるかすら怪しくなってくるため、最悪途中駅での宿泊を余儀なくされ、格安移動という本来の趣旨からすると本末転倒になってきます。

前向きシートの特急型車両ならともかく、通勤型のロングシートやボックスシートに朝から晩まで乗り続けるのは想像以上にしんどいものです。加えて何度も乗り継ぎをしなければならず、混雑時には席にすらありつけない場合もあるでしょう。(特に18きっぷシーズンは日中の列車が混んでいることが多い)上記の通り、格安の移動手段としては夜行バスやLCCもありますので、それらも検討してみるとよいでしょう。

北海道内、本州~北海道間の移動

18きっぷで憧れの北海道を旅したい!」とお考えの方もおられるかと思いますが、ここ数年JR北海道の普通列車は年々本数が削減されてきており、一日3本とか4本しか普通列車が走らない、という区間が散在しています。そのため、普通列車のみで移動しようとすると途中駅で長時間待たされる可能性が高いです。普通列車しかない区間に乗りたいのならやむをえませんが、それ以外は特急列車を使う方が良いでしょう。そのため、18きっぷではなく特急乗り放題のフリー切符を使う方が得策です。

北海道フリーパス|JR北海道のおトクなきっぷ
JR北海道内の在来線特急列車の普通車自由席及びジェイ・アール北海道バス(一部路線を除く)が7日間乗り降り自由なきっぷです。普通車指定席も6回まで利用できます(「SL冬の湿原号」除く)。北海道をくまなくご旅行される方におトクなきっぷです。※北...

また、在来線のない青函トンネル区間は「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」(2490円)というものを買えば特例として新幹線に乗車できますが、前後の区間(津軽線や道南いさりび鉄道)との接続が必ずしも良くなく、時間が掛かります。そもそも東京から青森までの移動もハードなので、フェリーやLCCなど別の手段も考えた方がいいでしょう。

行き当たりばったりな旅

18きっぷは途中駅で乗り降り自由という性質からか、「18きっぷを使えば行く当てのない気ままな旅が楽しめる」「雰囲気の良さそうな駅でふらりと途中下車」という趣旨の記事をたまに目にしますが、本数の多い(概ね列車間隔が30分以下の)幹線以外で実施するのはお勧めしません。

日中のローカル線は、「お得意様」の通学客の乗車が少ないため、列車の間隔が2時間、3時間空くこともざらにあります。そのような区間にノープランで突っ込むと、駅前に商店もないような駅で猛暑の中何時間も待つ羽目になり得ます。ローカル線巡りをする際は綿密にプランを練っておきましょう。

おススメする18きっぷの使い方

では、おススメの使い方はどのようなものがあるでしょうか。個人的なおススメの使い方を紹介します。

グループでの日帰り旅行

関東各地から熱海へとダイレクトに結ぶ上野東京ライン・湘南新宿ライン。

例えば、東京~熱海間を5人で往復しようとすると19800円かかります。これが18きっぷならば12050円。実におよそ4割引きです。18きっぷならば普通列車グリーン車も利用できるので、特急並みのシートを楽しむことも可能です。

往復旅行の場合、片道71kmを超える区間であれば元が取れるようです(本州の幹線の場合)。ちなみに片道だと、141km乗れば元が取れます。ただし、1枚の18きっぷをシェアする際は全員同一行程でなければならないという縛りがある点は気を付けましょう。

東京~中京・関西間の移動

長距離移動の貴重な手段・223系新快速。

長距離移動は避けるべき、と上で書きましたが、例外といえるのは東京~関西の東海道線(加えて横須賀・総武線、上野東京ライン、湘南新宿ライン、常磐線)が絡む乗り継ぎです。これらの路線のうち、関西圏や名古屋圏では転換クロスシートの新快速が頻繁に運転されており、快適である上距離を稼げます。関東各線はロングシートやボックスシート主体ですが、料金を払えばグリーン車に乗車できますし、緩行線が並行している区間は新快速並みに停車駅が少ないため、速達性もあります。

唯一ネックなのが、熱海~浜松間の静岡県内区間(通称:静岡の壁)です。この区間は快速列車がなく、座席もごく一部を除きロングシートなので、中だるみしやすいエリアです。もし一部を新幹線でショートカットするのならば、静岡~浜松間の新幹線料金が自由席ならば990円と安く、運賃1340円と合わせ2330円で済むのでお勧めです。

乗りつぶし、観光列車の旅

磐越西線を走る「SLばんえつ物語」
五能線の名物車両と化した「リゾートしらかみ」

もちろん、純粋に列車の旅を楽しみたい、あるいはJRの乗りつぶし(完全乗車)をしたいという人にとっては18きっぷはありがたいツールです。特に、中国地方や北東北といった、めぼしいフリー切符のないエリアでは18きっぷは大きな威力を発揮します。ぜひ活用しましょう。

また、乗り鉄の際はJR東日本・西日本各地で走っている観光列車を行程に取り入れてみるのもいいでしょう。例えば、「リゾートしらかみ」「海里」「SLばんえつ物語」「SLやまぐち号」などです。これらは指定席券を買えば快適な座席に長時間座れ、車内には飲食物を扱う売店もあるので、18きっぷ旅とは思えない贅沢な時間を過ごせるでしょう。なお、JR九州の観光列車はほぼすべてが特急扱いのため、18きっぷでは乗車できません

もちろんこれらの列車の出発地に18きっぷで行くのは一苦労なので、新幹線や高速バスと18きっぷを組み合わせて使ってもよいでしょう。それでも十分元は取れるはずです。


以上、初心者を若干不安にさせてしまうような記述もありましたが、なんだかんだ言って人生に一度ぐらいは18きっぷで体力の限界までとことん列車に乗ってみる経験をしてみてもいいと思います。飛行機や新幹線では味わえない日本の広さや、土地土地の文化の多様さを体感することができます。とはいえ、いきなり超ハードな行程に挑むと2度と乗りたくなくなってしまう恐れもあるので、自分が旅として楽しめる上限の距離を見極め、まずはその範囲内で移動するのがいいでしょう。

コメント

  1. 福田榮一 より:

    18きっぷ未経験者です、今年は(7/2023)行こうと予定し行き先も何ヶ所か予定しています。貴殿の文中にもありますが、途中までワープし新幹線で超高速に移動する事も考慮しています。

    • rail20000 より:

      コメントありがとうございます。ワープする区間は「在来線の本数が少ない区間」「在来線の快速・新快速列車がなく遅い区間」「在来線の編成が短く、混んでいる区間(これは経験を積まないとなかなか分からないですが…)」に絞られるとよいかと思います。(あまり新幹線を多用するとお得感が薄れてきてしまいますので。)18きっぷ旅を満喫してきてください。

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