【2022年4月デビュー】近鉄特急「あをによし」で奈良から京都へ~座席&売店レポート(2022/6)

奈良から京都へ、「あをによし」でショートトリップ

「しまかぜ」「青の交響曲」など、近年様々な観光特急をデビューさせている近鉄。その近鉄が2022年に新たにデビューさせたのが観光特急「あをによし」です。主な走行区間は、日本を代表する観光地である京都~近鉄奈良間で、一部の列車のみ京都~近鉄奈良~大阪難波間を走行します。近鉄特急のメインである大阪、名古屋、伊勢志摩を結ぶ列車群と比べると走行距離は短く、30分余りの移動を楽しむことに焦点を当てた列車となっています。

この列車の特徴は2名もしくは4名での利用に特化している点です。2名用のツインシートを1名で乗車する場合、1名分の乗車券(640円)・特急券(520円)・特別車両券(210円)に加えて、子供料金の特急券・特別車両券が必要となります。そのため、近鉄奈良から京都まで1人で乗車しようとすると、実に1740円も掛かります。わざわざ趣味で乗りに来たとはいえ、なかなかの出費になってしまいました…

東京にいるとなかなか実感できないのですが(筆者ですら色々下調べしているうちにようやくその存在に気付いたぐらい)、地元関西での注目度は高いようで、この日は平日にもかかわらず午前中の奈良行きの便は前日の時点で満席、乗車した京都行きも満席に近い乗車率でした。ホームでスマホカメラを向ける一般人も多く、関西ローカルの番組などで盛んに紹介されていたりするのでしょうか。

鹿の住む古都奈良からスタート

前回の記事では東大寺周辺を散策したところまでご紹介しました。奈良に来られたことのある方なら分かると思いますが、東大寺の周辺は至る所に鹿がおり、木の下など涼しいところにはこのように群れを作っていました。特に襲ってきたりすることはないですが、鹿せんべいを持っていると「寄越せ」とばかりに追いかけてくるので注意が必要です。

久々にやってきた東大寺界隈で色々見物しているうちに列車の発車時刻が迫ってきたので、路線バスで市中心部に戻り、地下の近鉄奈良駅へ。

「あをによし」体験記~豪華シートの座り心地は?

ホームに降りると、既に「あをによし」が発車を待っていました。まずは外観を眺めます。全体的に濃い紫色に金色の帯が施され、阪急「京とれいん」に少し似ています。車体は新製ではなく、12200系という在来車両を改造しているので、その面影が残っています。車体側面には派手な花びらの文様がペイントされています。

ちなみに「あをによし」は和歌の世界で「奈良」にかかる枕詞で、例えば万葉集には「あをによし 奈良の都は 咲く花の にほうがごとく 今盛りなり」という歌があります。漢字で書くと「青丹よし」で、語源は奈良で青丹(顔料に使われる緑色の鉱物)が採掘されたからとも、平城京の華々しい朱色に木々の緑が映えている様からともいわれています。(以上、Wikipediaの受け売り)

こちらは側面の様子。先述の通り旧型車を改造しているので、行先表示はLEDではなく、どことなく懐かしい「京都ゆき」という方向幕をそのまま使っています。

さて、注目の車内の様子ですが、シックな模様のカーペットが敷かれ、天井の照明もユニークなものが設置されており、雰囲気は上々です。シートも西武特急「ラビュー」にも似た一人掛けの大ぶりなもので、なかなかゴージャスです。…ですが、実際に座ってみると枕周辺の部分が妙に出っ張っており、もたれかかると肩や頭だけが前傾するような妙な感覚を覚えました。「しまかぜ」のシートのような、沈み込むようなフィット感はありませんでした。まぁ、せいぜい30分あまりの乗車時間であればこれでも十分ではありますが。

シートの半分は従来の鉄道車両同様、正対するように設置されています(筆者はこちらのタイプのシートに乗車)。一方、残り半分は側面窓に対し45度の角度をつけた形で設置されています。側面展望を楽しめるように、との配慮でしょうが、京都到着後に少しだけ座ってみたところ、隣のブースの客の横顔が丸見えなのが気になりました。プライバシーだとか、感染予防対策だとかを気にされる方は、通常のシートを予約するのがいいでしょう。そもそも、近鉄奈良~京都間はずっと市街地なので、それほど特筆すべきビューポイントもないですし(大阪~奈良間だと生駒山脈越えのあたりは見どころかも)。窓口ではおそらくシートのタイプを選べるはずですし、近鉄のオンライン予約サイトだとどちらのシートタイプか簡単に判別できるようになっていました。両タイプとも、固定式の大ぶりなテーブルが設置されているほか、窓際にはおしゃれな照明が設置されています。

「あをによし」車内探訪~限定スイーツのお味は?

さて、近鉄奈良を出て程なく、車内改札が始まります。「しまかぜ」は車内販売を兼ねた女性アテンダントの方が改札を行っていましたが、こちらは他の特急と同じく車掌さんが担当します。それが終わったところで、車内を眺めに行ってみました。隣の号車には4人掛けの「サロンシート」があり、全区画が埋まっていました。その横には売店があり、グッズのほか飲食物も扱っています。「しまかぜ」のような食事の類は扱っていませんが、車内販売限定のレーズンバターサンド+コーヒーのセットがあるとのことで、購入してみました。アイスコーヒーを頼むと写真のようなパックのものが出てきました。

専用の立派な箱に入った中身を見てみると、車体と同じ紫色のバターサンドが入っていました。よく見ると細かい金粉が帯状に吹き付けられており、これも「あをによし」の車体をモチーフにしているようです。中のクリームに入っている具材はレーズンとマロンの2種類になっており、お味も本物のケーキのようで上々でした。

あまり見所がないと書いてしまった近鉄京都線ですが、出色なのは向島~桃山御陵前の間にある宇治川にかかる橋梁でしょうか。建築時、陸軍の要請により途中に橋桁を設置することを禁じられ、都市部には似つかわしくない巨大なトラス橋となっています。宇治川を渡ると、後で乗車する京阪本線や京阪宇治線と交差し、さらに北上すると竹田を通過します。ここは京都市営地下鉄の車両基地となっていて、最近導入された新型車両の姿もありました。高架に上がり、東寺の脇を過ぎると京都駅に到着です。

京都駅では最早古豪と言っていい存在のビスタカーが発車を待っていました。この塗装になってから実物を見るのは初めてのような気がします。

そして、JR京都駅の構内を見てみると、湖西線などで活躍する117系の姿が。新快速でデビュー後、流れ流れて今は京都エリアで余生を送っている117系ですが、その姿が見られるのもそう長くはないかもしれません。

この後、再び市バスに乗って東山七条へと向かいます。

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