特急王国近鉄が誇るフラッグシップ列車
大阪、京都、伊勢、名古屋の各方面に路線網を延ばし、運転本数・車両数・車種ともに私鉄界でナンバー1の層を厚さを誇る近畿日本鉄道。その近鉄が2013年に満を持して送り出したのが「観光特急しまかぜ」です。デビューから数年間は特急券がなかなか取れないほどの人気を誇り、私も手を出せずにいました。この日は平日であり、コロナ禍もあって最近は流石に人気も落ち着いてきたのか、今回は乗車前日にあっさり席を確保することができました。
京都市内から京都駅に戻り、いよいよこの列車に乗車します。
駅に着くと、既に「しまかぜ」が最上段に表示されていました。案内表示にもあるとおり、「しまかぜ」は全席特別車ゆえ特急券の他に「しまかぜ車両券」なるものが必要です。京都から大和西大寺まで乗車する場合、運賃570円、特急券520円、しまかぜ車両券740円で、合計1830円… たった30分の乗車で1830円とは、鉄道趣味者の私でもさすがにちょっと躊躇する額です。ちなみにしまかぜ車両券は京都~賢島間で1160円なので、距離が長くなっても大幅に高額になることはありません。
こちらは列車の両先頭部です。車体の一番上までガラス張りとなっています。このおかげで、先頭車はハイデッカー構造であるものの前面展望は良好です。発車まであまり時間もないので、急いで写真を撮り車内に乗り込みます。
30分で下車するのが勿体ないくつろぎシート
車内に入ると、1列+2列のシートがずらっと並んでいました。今回は1号車の前から4番目の座席に座りましたが、先ほど述べたようにハイデッカーかつ前面展望も良いため、とても気分が良いです。シート自体もどっしりとした革張りの高級感あるもので、シート幅・ピッチも先ほど乗った新幹線グリーン車に匹敵するほどです。
肘掛け部分にあるこちらのスイッチで、電動で座席背面&フットレストを動かせます。前の写真に少し写っていますが、カーテンもスイッチで上下させることができます。座面とフットレストを適度に倒すと、座席に吸い付けられるようなフィット感で全く疲れを感じません。このまま賢島まで乗り続けたいな、と思わせるほどでした。「出る」「もどる」「リズム」のボタンを押すと、腰の部分がゆっくりと前後します。この機能はあまり意義を感じませんでしたが、長く乗るのであれば腰をほぐすのに有用かもしれません。テーブルは前の座席に据え付けられたものと、インアームテーブルの両方があり、食事とドリンク、おつまみを展開しても余裕がありそうです。
座席の前ポケットにはこのようなメニューが備え付けられています。これらはワゴンで販売されるほか、編成中央のカフェ車両で購入しその場で食べることも可能なようです。カフェ車両は軽く眺めただけですが、近鉄伝統の2階建て構造となっており座席数もそこそこ確保されています。ピラフ、カレーなど本格的な食事も準備されており、JRではほぼ消滅した定期列車での食堂車が近鉄で復活したといっていいでしょう。今度乗車した時はお食事も味わってみたいものです。
列車を眺めるだけでも楽しい大和西大寺駅
車内では検札の際、日付のスタンプの入った記念乗車証「しまかぜ」のロゴが入ったおしぼりを頂きました。(同じ写真に写っているのは「あをによし」の記念乗車相と京阪の広報紙) 座席でのんびりしてると程なく大和西大寺に到着です。後ろ髪を引かれるような気分で下車し、再び先頭部を眺めます。大和西大寺は京都、大阪、奈良、橿原の各方面からの線路が平面交差で合流する駅で、ダイヤ調整のためしばらく停車する列車が多いです。今回乗車した「しまかぜ」も例外ではなく、数分停車した後に発車していきました。
それにしても大和西大寺駅を出入りする列車の数は半端ではなく、ホームで列車を眺めているだけでも楽しいです。車種も近鉄車だけではなく、乗り入れ先の京都市営地下鉄や阪神の車両までやってきます。たまたまやってきた阪神1000形はド派手なラッピングを施されていました。
列車をしばし眺めた後、奈良行きの各駅停車に乗車します。なかなか古そうな車両ですが、車内の化粧板などは更新され乗り心地は良好でした。大和西大寺を出ると、列車は広大な平城宮跡を横切ります。この区間は将来的に平城宮跡の外側に付け替え、地下化することが計画されているようですが、実現するのはかなり先のようです。新大宮に停車すると地下トンネルに入り、近鉄奈良駅に到着です。ここにやってくるのは高校生の時以来なので、およそ四半世紀ぶりになります。
奈良駅では京都・大阪難波・神戸三宮の三方向に向かう急行列車が並ぶ光景も見られました。運行範囲の広い近鉄ならではの光景です。
修学旅行・遠足の生徒に交じって奈良観光
近鉄奈良から折り返しで乗車する列車の発車時刻までは1時間以上あるので、軽く奈良観光に出かけることにしました。まずは奈良の代名詞である東大寺へ向かいます。歩いても行ける距離ですが、時間節約のため路線バスに乗車します。5分ほどで東大寺の程近くのバス停に到着しました。
東大寺に来るのはおそらく小学生の遠足の時以来なので、およそ30年ぶりでしょうか。この日は平日ということもあり、普通の観光客はあまりおらず、目立つのは修学旅行や遠足の生徒ばかりです。外国人観光客の激減した今、奈良や京都の経済を回しているは彼らだといっても過言ではないでしょう。
入場券を買って境内に入ると、やはり大仏殿の大きさにやはり圧倒されました。大仏殿の中では、ガイドさんが生徒たちに向かって「大仏は平安時代と戦国時代に2度焼失して、当初のまま残っているのは台座の部分のみ…」という説明をしているのを脇で聞きつつ、大仏を眺めます。改めてみてみると、奈良の大仏は鎌倉大仏と違って立派な光背があり、背中が露出していないことに気づきました。
次に、お水取りで有名な二月堂にえっちらおっちらと登ります。ここからは奈良の市街地を一望でき、京都の清水寺とよく似た造りになっています。次に広大な境内を歩いて、国宝の正倉院へ。ただし建物の内部は公開されていないため、ただ外観を眺めることしかできず、そのためか観光客の姿はほとんどありませんでした。
その後は大仏殿の手前にある東大寺ミュージアムへ。ここには生徒たちの姿はなく静まり返っており、ピンと張りつめた空気が流れていました。あまり時間はなかったものの、貴重な仏像や絵画などを眺めることができました。
この後は再び近鉄特急に乗って京都へと戻ります。
コメント