筆者は東京からの日帰りで、大阪万博のパビリオンを17個巡ってきました。null2やアメリカ館など人気パビリオンに楽に入場する方法などをお伝えします。
雨上がり、決死隊??
筆者は開幕直後に続いて、5月25日に大阪万博を再度訪問しました。前回の訪問で、大屋根リングやパビリオンの外観など全体の雰囲気や、予約システム周りはほぼ把握できましたが、数あるパビリオンのうちごく一部しか巡れていませんでした。
そこで今回は「パビリオンをできる限り踏破する」ことを目的に、食事や休憩を極力とらず夜8時過ぎまで(それを過ぎると新幹線最終に間に合わないので)粘ることにしました。まさに決死の作戦と言っていいでしょう。
もっとも、あまり数こなすことばかり意識しすぎるとパビリオンの記憶も残らないので、個人的には一日6~7館ぐらいをじっくり見るのがお勧めです。ただ、筆者は遠く東京からそうそう来れないので止むを得ませんでした。通期パスで日参できる関西在住の方がうらやましいです…

西ゲートに9時にたどり着けたお陰で、9時17分ごろには入場することができました。朝から降り続いていた雨がやみ空は曇りで、暑すぎず寒すぎず絶好の万博日和なのは有り難かったです。ただ、その分来場者数も多く、この日時点で過去3番目の多さだったみたいです。
そして今回も、つじさんの地図が大活躍でした。会場内で行き交う人の多くがこの地図を持っていて(公式マップよりはるかにシェアが高かった)、思わず苦笑してしまいました。(本来は公式が使いやすい地図を提供すべきなので笑い事ではないのかもしれないが)
それでは、今回巡ったパビリオンを軽くご紹介したいと思います。なお、パビリオン巡りのコツは前回記事を参考にしてください。
今回巡ったパビリオン
null2(待ち時間10分)


西ゲートから入場し、早くも激込みのイタリア館脇を抜けてやってきたのは、独特な建物と謎の反響音で目立っているnull2です。ここは予約難易度が高いパビリオンの1つですが、オープン直後は予約なしでも入館が可能です(運営形態はしばしば変わっているようなので最新情報に注意)。
なお、予約なしで体験できるのは「インスタレーションモード(演出を楽しむモード)」とのことで、予約ありで体験できる「ダイアログモード(対話を楽しむモード)」の短縮版?のような内容だそうです。
筆者は9時20分過ぎに到着し、予約なしで入館しました。内容は…世界観が独特過ぎて呆然と眺めているうちに終わってしまったという感じでしたが、いつかはもう一つのモードも体験してみたいです。
アメリカ館 英語ツアー(待ち時間15分)

null2を見終えてまた慌てて移動し、東ゲート近くのアメリカ館にやってきました。ここは事前予約がなく、日中などは待ち時間がとんでもないことになっていますが、実は1時間に1回「英語ツアー」という枠があって、そちらは通常モードに比べて待ち時間が短いと評判です。
ですが、誰でも英語ツアーで入館できるわけではなく(本来日本語の話せない人向けの枠なので仕方ないですが)、入口で係員が英語力をチェックしているとのこと。
筆者は一応アメリカやシンガポールを一人で訪問できる程度の英語力はあるものの、係員によってはかなり厳しい質問が飛ぶとのことで、戦々恐々としながら入口に向かいました。実際に聞かれたのは以下のような内容でした。
- どこから来たか?(→”Tokyo”と回答)
- アメリカの好きな州は?(→”Nevada, LasVegas”と回答)
あとは所要時間などの説明を受け、無事通過できました。英語ツアーの列に並んでいる人は少なく、通常枠とは雲泥の差です。15分ほど待ち、10時過ぎに入場できました。

ちなみに建物前の待機列付近にある巨大ディスプレイには、アメリカ各地の街の映像が次々と映し出されます。誰もが知っている街から聞いたこともない街まで色々出てくるので、何個知っているかチェックしてみるといいかも。

入場すると、アメリカ人DJによるトークをしばし聞きます。英語ツアーだとここだけは完全に英語ですが、実はこの先は映像を映しているだけなので通常枠と同内容と思われます。ちなみにトークの内容は難しくなく、筆者でも十分聞き取れたので、パビリオン入口での尋問(?)を通過できた人ならきっと大丈夫なはず。


お次は、5面の巨大ディスプレイが並ぶ部屋でアメリカ各地を旅する体験。大谷くんも出てきます。


そして、最後はロケットの発射台の下に潜り込み、発射の様子を観察。その後宇宙空間をさまようのですが、なかなか没入感があって楽しかったです。そして、最後には1970年万博で伝説となった「月の石」が…もっとも、言われなければただの石にしか見えないですが。
ブルーオーシャンドーム(当日予約)


アメリカ館前で待機中、当日予約の方でめぼしいものが取れないかを見ますが、10時には軒並みなくなっているようでした。それでも時々現れるキャンセル枠を狙い、見事「ブルーオーシャンドーム」を引き当てました。
このパビリオンはその名の通り、海の生物を丸い魚眼レンズの中から撮影したものを、巨大な丸いディスプレイに表示するものです。内容はどちらかというと環境保護に主眼を置いたものでした。

この建物は、木材や紙、カーボンなど再生が容易な材料で作られているのが特徴だそうです。メインの建物内は暗くて分かりませんが、お土産物屋さんのある建物内は明るいので構造が見やすいです。
インドネシア館(待ち時間10分)


ブルーオーシャンドームを出て、次どうしようかとさ迷い歩いていると、インドネシア館のお姉さんの「インドネシアの文化を体験できます、今なら空いてますよ~」という陽気な声に惹かれて入場してみることに。
10分ほど待ち、係の方から簡単な説明を受けて入場すると、いきなり熱帯雨林が再現されたエリアが広がります。滝を作り本物の熱帯植物を植え、湿度も高めに保った本格的なもので、この前シンガポールで行った「クラウドフォレスト」のミニチュア版のようでした。


民芸品の展示などの後、「未来の都市」のジオラマとプロジェクションマッピングを組み合わせた幻想的なエリアがありました。そのあとは大型ビジョンで映像を眺めるエリアとなっていて、インドネシアの伝統的な影絵芝居「ワヤン・クリ」の映像が流れていました。この映像がなかなかよくできていて、しばらく見入ってしまいました。
降り口のお姉さんは「空いてます」と自虐的に話していましたが何の何の、この日見て回った海外パビリオンの中では一番の出来だと個人的には思いました。各展示内容がとても充実しているうえ、自然・文化・技術の各要素がバランスよく配置されているのも素晴らしいです。イタリア館やクウェート館のように人気が出ないのが不思議なくらいです。
サウジアラビア館(待ち時間10分)


次にやってきたのはサウジアラビア館。外国パビリオンはプレハブ風の箱型の建物が多い中、ここはアラブ風の小さな建物を組み合わせた形となっていて、建物外を何度か通ります。展示は芸術から技術、スポーツまで幅広い内容が小さな室内に少しずつちりばめられた格好でした。
スペイン館(待ち時間10分)


スペイン館の入口は階段を上がった先にあります。列は途中で分岐していて、片方はステージ前で行われる音楽ショーへ、もう片方はパビリオンに入場する列でした。


まず、2階のテーマは「海洋国家スペイン」で、沈没した古いスペイン船の調査権(?)をアメリカから奪還した話がマンガ仕立てで書かれていたほか(スペインでは有名な話なんでしょうか?)、何やら実験室の一角のようなところで代替資源として藻を育てていたりしました。

1階は一転して、「オレンジルーム」と言っていいほどけばけばしい部屋になっています。ここはスペインの文化に関する展示です。


なかでも、スペインのお祭りや食、伝統文化などを多数の絵葉書で紹介するコーナーはなかなかセンスがあって面白かったです。
タイ館(待ち時間15分)


お次のタイは、鏡を使うことで建物のサイズを倍に見せるユニークな構造です。パビリオン前には木製のゾウもいます。


陽気なお兄さんによる「前説」の後、大型スクリーンでタイの紹介ビデオを見ます。建物と同じくスクリーンも三角屋根のような造りになっているので、なるべく正面に陣取った方が映像が見やすいです。
映像の後はタイに関する紹介ブースに入りますが、テーマは何故か「医療」。タイ=医療というイメージは正直全くありませんでしたが、タイ料理で使われるハーブは医薬品としても使われてきたそうです。館内にはハーブを紹介するコーナーもあって、タイカレーのような香りが部屋中に漂っていました。
夜の地球(待ち時間ゼロ)

今回の万博では基本的に大屋根リングの内側は海外パビリオン、外側は国内パビリオンと分かれていますが、一部国内パビリオンはリング内にあります。噂によると、万博出展をいったん決めたもののドタキャンしてしまった国(ロシアとか…)の用地を流用しているそう。
その中の一つが、「夜の地球」パビリオンです。石川県漁協の大漁旗がはためいているのが目立ちます。


館内では、輪島塗の技術を使って作り上げた地球儀や、世界各都市の地図が展示されています。沈金の技術でここまで細かなグラデーションの表現ができるとはすごいですね…
関西パビリオン(3日前予約)


続いてやってきたのは、関西周辺の8府県の展示を寄せ集めた「関西パビリオン」です。ここは前回訪問した「未来の都市」と同じく、各府県の体験に参加するには個別に列に並ぶ必要があります。しかも人が集まりすぎるのを防ぐため、人気のあるブースは並ぶこともままならない状況で、滋賀と福井のブースは入るのを断念しました。


和歌山、京都、徳島のブースは展示品が並んでいるだけだったので、軽く眺めておしまい。

三重のブースは、熊野古道の映像を大画面で眺めるというもの。


そして面白かったのは鳥取のブースです。10分間の体験のうち前半は虫眼鏡のようなデバイスを渡され、鳥取砂丘の砂が大量に敷き詰められた部屋で鳥取の名物を探す、という趣向でした。(おそらく砂の中にビーコンのようなものが埋められていて、それに反応すると見つけたことになるらしい)

後半は、砂丘の砂に投影された映像を眺めます。ほのぼのとした内容を想像していたら以外にもアーティスチックな映像が流れ、朝に見たnull2を思い出してしまいました。
マレーシア館(待ち時間10分)

続いてやってきたのはマレーシア館。パビリオン前には結構な列ができていましたが、列の進みは案外早くて安心しました。
ここまで各パビリオンを回った経験として、「事前予約の対象ではない」「(光る玉やイヤホンなどの)専用デバイスを用いない」「(定員のあるシアター形式ではなく)ただ展示を見て回るのみ」という3条件に当てはまるパビリオンは、総じて列の進みが早いことが分かりました。


マレーシア館の紹介に戻ると、最初の部屋はペラナカン建築を模した壁に沿って、マレーシア各地の料理のサンプルが多数並べられています。この間シンガポールに行ったときに食べた「ナシレマ」もありました。
その先のエリアはマレーシアの都市計画に関する展示が続きます。「スマートシティ」や「SDGs」など非常にお堅い話が多く、特にお子様にはついていけない内容かもしれないです。そもそも万国博覧会は単なるエンタメの場ではなく、各国の文化・技術のアピールの場なので、こういう展示が本来あるべき姿なのかもしれないですが。


「未来のクアラルンプール」の模型では、現在のランドマークである「ペトロナスタワー」を埋め尽くさんばかりに高層ビルが林立していました。
その次のコーナーでは、「未来のマレーシア」をイメージしたアニメが流れていました。ところどころ作画が怪しい場面もありましたが、それもご愛敬。

そして、パビリオン前のステージでは民族舞踊のショーが行われていました。ここのステージではかなりの頻度でイベントが行われていて、パビリオン内ではあまり触れられていなかった文化面のアピールをステージで補う方針なのかもしれません。
フィリピン館(待ち時間15分)


続いて、大混雑のアメリカ館の脇にあるフィリピン館へ。館内ではイラストの描かれた巨大な麻布を用いて、国内の全地域を紹介していました。一部の布はプロジェクションマッピングと組み合わされていて、なかなか綺麗なのでじっくりと眺めてみてください。

その先では、ディスプレイの前に立つと等身大のフルーツの塊(筆者はパイナップルの塊に化けています)が表示され、自分の動きに合わせて塊も動く、というコーナーがあってお子様に人気でした。
カタール館(待ち時間10分)


パビリオン前の大きな池が印象的なカタール館では、民族衣装を着た男性がギターのような楽器の演奏を行っていました。


かつてカタールは真珠の採取が主要産業だったらしく、その歴史の紹介や国内各地の名所と見所の紹介がなされていました。ドーハはシンガポールにとても良く似ていますね。
アラブ首長国連邦(UAE)館(待ち時間なし)

続いてお隣のUAE館へ。ここは事前予約の対象のはずですが、たまたま空いていたのか待ち時間なくすんなり入れてしまいました。なので、ここで予約枠を消費してしまうのはちょっともったいない気がします。


館内には、葦を組み上げた巨大な柱が並んでいて圧倒されます。その足元には、さまざまな形式の展示が並んでいます。


内容の方はSDGsを中心としたかなりお堅い内容で、まるで博物館のようです。ここまでサウジ、カタール、UAEと中東の国を3つも見たのでだんだん頭がこんがらがってきました…
電力館(当日予約)


電力館はタイトルの通り、光るタマゴを持ってミニゲームに参加し、ポイントを集めていくというパビリオンです。ミニゲームは科学館、大阪だと扇町のキッズプラザあたりにありそうな感じのもので、正直言って大人一人で来るべきところではなかったかもしれません。(当日予約が最後これしか取れず、やむを得なかったのですが)

でも、パビリオンの最後にあるLEDを使った光のショーは美しく、大人でも一見の価値はあります。
オーストラリア館(食事のみ)


この辺で時刻は6時過ぎ、足の方も限界に近いですし、入館後おにぎり1個とカロリーメイトしか食べていないので腹が減りました。そこで、回転の速いオーストラリア館前のフードコートへ。ミートパイ850円にサングリア1300円と高価ですが、ミートパイは熱々ですし、サングリアは疲れ切った体に沁みました。カップにはオーストラリア館のロゴも入っていますね。
インド館(待ち時間10分)


少し休憩したところで、開館が万博開幕から随分ずれ込んだことで話題になったインド館へ。建物前には「バーラト」という表記があって面喰います。実はインドは他国には浸透していないものの、「インド」ではなく「バーラト」と自称しているそうです。
ともかく、入口の若い陽気なお姉さんの声に惹かれて館内へ。アジア諸国(東南アジア・インド・韓国)のパビリオンはどこも愛想のいい人が多く好印象でした。館内最初の部屋では古代のインドについて紹介。


そのあとは技術や文化の紹介となりますが、並ぶのは仏像に鉄道に…


宇宙船に鉱石と、とにかくまとまりがなくカオスです。


さらに進むと、インドのお土産物がテーブルに割と雑然と置かれています。このあたりまで来ると説明用の2次元バーコードは設置されておらず、紙の説明書も英語だけ… おまけに後ろの大型ビジョンに写される映像も妙に解像度が荒かったりと、このパビリオンの完成に至るまでに色んな紆余曲折があったんだろうなぁと想像してしまう内容でした。まあ、そういうカオスさもまたインドらしいのかもしれません。
トルコ館(待ち時間5分)


トルコ館は入り口前でトルコアイスの販売を行っていて、なかなかの行列ができていました。


館内は、国旗を模した太陽と月のオブジェに、謎のしゃべる壁があってトルコの歴史を語ってくれます(日本語の発音は怪しい)。


後は巨大ディスプレイにイスタンブール等の名所の様子が映し出されているくらいでした。奥の土産売り場の衣類や食器類は充実しているので、これとトルコアイスがメインぐらいに思っておいた方がよさそう。
ドイツ館(待ち時間30分)


19時を過ぎ、少しは客数が落ち着いてきたはずのドイツ館へ。入口のお姉さんいわく30分待ちとのこと。各パビリオンで案内される待ち時間はドンブリ勘定というか、もっと短い時間で入れてしまうことがほとんどなので期待していたのですが、今回はきっちり30分かかりました。ここら辺の律義さは流石ドイツ、と妙に感心。
さて、館内では「サーキュラー」というマスコットを持って展示を見ます。このサーキュラー、ただ光るだけではなく館内の特定の場所にタッチすると口から音声が流れ、細かい解説が流れる仕組みになっています。「光る玉」を持って歩くパビリオンはオランダ館など他にもありましたが、こういう使い方をするのはドイツ館だけではないでしょうか。
館内は環境保護に関する話題が中心で、説明の方も込み入った内容が多いのですが、筆者はこのあたりで時間切れが近付いてきたので泣く泣く飛ばします。


環境に関する展示以外にも、さすが大国ドイツのパビリオンだけあって装飾が凝っています。クウェート館のように、寝そべって天井の映像を眺めるコーナーもあります。


そして建物の外には本物の植物を用いた庭園があるほか、ご覧のようにドイツ各州の紹介もなされていました。本当はゆっくり見たかったのですが、新幹線の終電が近いので断念…
という訳で、駆け足ながら実に17ものパビリオンを見ることができました。それでもヨーロッパ諸国や国内企業のパビリオンがまだまだ残っています。どちらも入館のハードルが高いので、ここからさらに入館済パビリオン数を稼ぐのはかなり大変そうですが、折を見て再訪したいと思います。
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