阪急電鉄京都線の座席指定サービス「PRiVACE(プライベース)」に乗る~料金・乗り心地・混雑状況は?(2024/9)

2024年7月に開始した座席指定サービス「PRiVACE(プライベース)」に実乗し、シートなど車内の設備を紹介するほか、利用率の実態についてもお伝えします。

2024年7月登場、阪急京都線特急・準特急の座席指定サービス

2024年7月より、阪急京都線特急・準特急において座席指定サービス「PRiVACE(プライベース)」が導入されました。サービス開始にあたり、8両編成の特急・準特急のうち、大阪梅田方から4両目に新規に製造した専用車両が連結されました。

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車両のご案内ページです。阪急電鉄京都線 座席指定サービス PRiVACE (プライベース)2024年7月デビュー。

登場からもう2か月ほど経ってしまいましたが、先日関西に出向いた際にサービスを利用してきましたので気づいた点をいくつか紹介したいと思います。

ちなみに、土休日の京阪間の移動ならば料金不要の「京とれいん 雅洛」という選択肢もあります。

プライベースの料金・予約方法は?

プライベースの料金は距離に関係なく一律500円です。淀川を挟んでお隣の京阪電鉄のプレミアムカーも京阪間は500円(短距離だと400円)ですし、東急のQシートなんかも同額ですのでまあそんなものかなという感じでしょうか。

座席指定券の予約方法ですが、事前購入は専用サイトからのみ可能です。その場合、支払いはクレジットカードまたはPayPayにて行います。京阪など他社の類似サービスでは窓口での購入が可能なところが多いのですが、プライベースは駅窓口での購入はできません。スマホ決済の普及を考えての措置でしょうが、時代の流れを感じます。

なお、事前購入をせず直接乗車した場合も、空席があればアテンダントから直接指定券を購入することもできます。その場合、支払い方法は現金または交通系ICカードとなります。

なお、大阪梅田など主要な駅のプライベース乗車位置には、写真のような直近の列車の空席状況を示すモニタが設置されており、空席があるかどうかが把握できるようになっています。

いざ、乗車~車外の様子を観察

9月のとある土曜日、朝一番の新幹線で京都へとやってきました。地下鉄との乗換駅である烏丸駅から大阪梅田駅まで、プライベースで移動してみようと思います(本当は始発の京都河原町から乗りたかったが時間の都合で割愛)。ちなみに、京都線は2022年のダイヤ改正で10連運転がなくなり、かつて10連用に延伸したホームは柵で封鎖されていました。

乗車予定の準特急が来るまで、しばし待ちます。ホームの案内板にも、座席指定車両を連結している旨が表示されていますね。待っているうちに隣のホームには5300系のトップナンバーがやってきました。上部にアイボリーの帯のないマルーン一色の車両も、気づけば希少な存在になってきました。

1つ前の列車で撮影

そうするうちにプライベースを連結した準特急が入線してきました。プライベース車両のドア横にはロゴと共に種別や行先、列車の号数(阪急車内向けに付けられた番号なので、4桁or5桁と長い…)が記載されています。

それにしても、阪急の車両は清掃が行き届いているうえ、色の濃いマルーン塗装は反射しやすいため、うっかりしていると撮影者が写りこんでしまうので要注意ですね。

烏丸駅での停車はわずかなので、車外の様子はほとんど撮影できなかったため、ここからは大阪梅田到着後に撮影した写真を使って解説します。

側面窓は在来の車両と比べて随分小さく、座席ごとに区切られています。京阪のプレミアムシートは既存の車両を改造したものが多く(一部新造車もあり)、シートピッチと窓割が全然合っていない席もありましたが、プライベースは全て新車なのでそのような心配はありません。

ちなみに2024年時点では、プライベース車両を含め全て新造した編成(2300系)が1つ、既存の特急車両(9300系)にプライベース車両を組み込んだ編成が6つ存在します。9300系に組み込まれた車両も2300番台の車番を付けられており、ゆくゆくは2300系のみの編成に組み込まれるようですね。

阪急の電車の車番は通常銀色(古い車両は白色)なのですが、プライベース車両は金色となっているあたりは阪急のこだわりを感じます。

車内の様子・シートの座り心地は?

プライベースのドアはJR九州の783系「ハイパーサルーン」のごとく車両の中間部に1か所配置されていて、車両はデッキを境に半分ずつに分断されています。ホームドアに対応するため既存車両のドア位置に合わせる必要があることや、途中駅での乗降がスムーズに行われることを意図したものと思われます。ドアのガラスが菱形のような形をしているのが特徴的です。

ちなみに、運行中はデッキにアテンダントの方が常に立っておられるため、撮影は大阪梅田での折り返し準備中に行いました。

車内は2列+1列の座席配置となっていて、合計40席が設置されています。シートは阪急伝統のアンゴラ山羊の毛を用いたゴールデンオリーブ色となっています。背もたれは高さがありしっかりしている上、クッションも柔らかくふんわりした座り心地です。

…とまあ、これが関東の私鉄あたりのシートならば素直に「さすがは有料席、一般席とは断然違う!」という感想になったでしょうが、阪急はなまじロングシートでも座り心地が良いので、そこまで違いを感じたかというとそうでもなかった、というのが正直な感想でした(9300系の一般席のクロスシートはやや硬めなので、それとの差は大きいかもしれないが)。

あと、アンゴラ山羊のシートは滑りやすく、電車の加減速の際に体がずり落ちる感じがあったのは少し気になりました。

車内はこれまた伝統の木目調となっていますが、一般車とはちがってパネルは艶消しがなされているので少し違う印象を受けます。ちょっとJR九州あたりの観光列車っぽいというか、「水戸岡列車の大人しいバージョン」という感じでしょうか。

シートは最大で写真の角度まで倒れます。プライベースのシートピッチは新幹線の普通席(1040mm)とほぼ同程度で、リクライニング角度もほぼ同じ程度ではないでしょうか。

シート背面にはマガジンラックとドリンクホルダーがあるほか、ひじ掛けの内側には小さめのデスクが仕込まれています。

ひじ掛けの側面にはリクライニングのレバー、コンセントの他に謎の白いボタンが配されています。一体何のボタンなのかしばらく悩みましたが、正解は「シートの耳の部分に設置されている読書灯のスイッチ」でした。

京都から大阪へ~休日朝の混み具合は?

さて、烏丸を発車した時点で筆者の乗った区画(もう半分はデッキで分断されているため不明)の乗客は3~4人と、随分寂しい状況でした。土曜の朝にしては少ないなと思っていると桂・長岡天神でやや客が増え、10人弱にはなりましたがそれでも乗車率は5割未満でした。高槻市・茨木市ではほぼ乗降客はなく、淡路と十三で半分ぐらいが下車していきました。

そういえば2022年のダイヤ改正で登場した京都線の準特急に乗るのは初めてでしたが、特急の止まらない大宮・西院に停車する上、桂から高槻市までは先行する準急につかえるためか冴えない走りが続きました。

往年の京阪間ノンストップ特急と比べるとずいぶん変わったなあと思いましたが、準特急の京都河原町~大阪梅田間の所要時間は47分で、かつてのノンストップ特急(所要40分)と比べて6つ停車駅が増えていることを考えればほぼ互角の走りなんですね。車両の性能向上と、最高速度の向上(時速110キロから115キロ)の成せる業なのでしょう。

大きな城壁のような新しい高架橋が見えてくると、淡路に到着です。淡路駅周辺の高架化は着実に進んではいるもののまだ橋脚の立ち上がっていない箇所もあり、高架切り替えは2029年春までずれ込むようです。

淡路駅ではアテンダントの方が女性から男性に交代しました。プライベースの場合、アテンダントの業務は検札のみのようで、JR東日本のグリーン車のように車内で飲み物・菓子等を売り歩くことはありません。なので、車内で飲食をしたい場合は持ち込むしかありませんが、プライベースにはトイレがないので過度の飲食は避けた方がいいでしょう。

淡路を出るとあとはそつなく走って、終点の梅田に到着です。梅田駅1号線の先頭部には、プライベースの大きな看板が立っていました。

プライベースの成否はどうなる?

という訳で、京阪のプレミアムカーが盛況であることを受けて導入された(と思われる)プライベース。わずか1度の乗車で判断するのもどうかとは思いますが、そこそこ利用の多い(少なくとも前後の一般車両は立ち客多数だったと思われる)土曜朝にしては思っていたほど乗ってないなというのが第一印象でした。

無論、沿線住民や観光客にまだまだ存在が認知されていないことも一因でしょうが、京阪と阪急の路線環境の違いも大きいのではないでしょうか。京阪は「カーブ式会社」と揶揄されるぐらい線形が悪く、日中の特急でも淀屋橋から京都市内の丹波橋まで41分、祇園四条まで49分掛かります。一方、昭和初期に高速志向で造られた阪急京都線は桂まで35分、京都河原町まで43分(いずれも日中の特急)で着いてしまいます。

考えてみれば大阪梅田から京都河原町までの運賃は410円(桂や長岡天神までならもっと安い)で、そこに500円のエキストラチャージを払うことは利用者にとってそもそも障壁が高いです。阪急京都線は京阪より速くて所要時間が短い分、エキストラチャージをあえて払おうというモチベーションが起こりにくいのかもしれません(あくまで筆者の憶測ですが)。

とはいえ、近年の京都線特急は行楽シーズンの土休日になると十三から京都まで満員、というケースも見られるので、そういった状況なら観光客が飛び込みで利用する可能性も高まりそうです。今後は地元客だけでなく、一見の観光客をどう取り込んでいくかがカギになりそうです。

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