【土休日は大混雑】開業直後の宇都宮ライトレールに乗車した~駅施設から見る「今後の野望」(2023/9)

21世紀初となる路面電車の新路線である「宇都宮ライトレール」に乗車しました。開業間もないこともあり、地元の試乗客で大賑わいでした。

21世紀初!路面電車の新路線

「路面電車」というと、自動車の普及に伴う道路渋滞の激化で定時性を失い、地下鉄やバスにその座を譲って廃止されていった過去の遺物、という印象が強いのが正直なところではないでしょうか。一部の地方都市では生き残ってはいますが、富山地方鉄道の一部区間が延伸された以外は、昭和の頃の路線網を受け継いだものばかりです。

ところが、これまで路面電車のなかった宇都宮市に「宇都宮ライトレール」が誕生しました。既存の路線延伸ではない、路面電車の完全な新路線が誕生するのは21世紀初です。同じ区間にはすでにバス路線がありますが、これをLRTに置き換えることで輸送力向上やスピードアップを図るのが狙いだとか。

そんな斬新な新路線に、開業から20日ほど経った9月のある日に乗りに出かけました。予想以上に混雑している上、運賃収受に手間取り遅延が問題になっていると聞いていましたが、実際のところはどうなっているのでしょうか。

新路線の名称は?

湘南新宿ラインで都内から2時間近く掛けて、宇都宮へとやってきました。JRE POINTを使ってグリーン車に乗りましたし、直通だったので楽ではありましたが結構遠いなというのが正直な印象でした。

宇都宮駅に降り立つと、早くも「LRT開業!」の文字が飛び込んできます。ところで、現地に到着するまでずっと気になっていたのが新線の名称です。現地の案内板には「ライトライン」と書かれていて、一見これが正式名称なのかと思ってしまいます。

ところが、「Yahoo!路線情報」など乗り換え案内サイトでは「宇都宮ライトレール」と記載されていますし、宇都宮市のサイトでは「芳賀・宇都宮LRT」と記載されています。

Wikipediaによると『愛称は「ライトライン」。旅客案内上は会社名と同じ「宇都宮ライトレール」のほか、「芳賀・宇都宮LRT」の名称も用いられている。』とのことで、いずれはどれかの愛称に収斂していくのだとは思いますが、利用者の混乱を防ぐためにもできれば呼び名を統一する方向に持っていくほうが良いと思います。

以下、この旅行記では「ライトレール」の呼び名で統一して記載します。

ダイヤは混乱気味も、ほぼ定時運転

案内に従ってライトレール乗り場に向かうと、思っていた以上に多くの人が集まっていました。ライトレール開業に合わせて宇都宮駅東口は新しい駅ビルや広場、ロータリーが整備されていました。広場ではライトレール開業に合わせてなのかイベントが開催され、多くの露店が出ていました。

跨線橋からライトレール乗り場に降りると、ちょうど列車が出て行ってしまいました。列車が出た直後にもかかわらず次の列車を待っている人も結構いて、聞いていた通りかなりの盛況であること実感します。しかも、案内板を見るともう出発したはずの列車が表示されていて、ダイヤの方も乱れているようです。

それでも少し待つと列車が入ってきました。オレンジと黒を基調とした車体カラーで、何だか近鉄特急にも似ています。車内は路面電車としては珍しくクロスシートの割合が多く、3人連れのご家族の座るボックスに相席させてもらう形で座席を確保できました。車内は立ち客多数の状況で発車、前の列車との間隔はちょうど10分強で、本来の列車間隔(12分おき)を一応確保できてはいるようです。

既存の「路面電車」とは異なる車窓

宇都宮駅を出た電車は、芳賀方面へと向かう太い街道上を進んでいきます。途中、国道4号との交差点は立体交差となっていました。そのお陰か渋滞などはなくスムーズに進み、宇都宮大学陽東キャンパスに到着。ここは「ベルモール」という宇都宮でも屈指のショッピングセンターの最寄り駅で、家族連れなどが一斉に下車していきました。

そこを過ぎると線路は併用軌道から専用軌道に変わり、平石に到着。この駅は車両基地が併設されていて、中線が設けられ列車待避も可能になっています。

平石から先は市街地が途切れ、田畑が入り混じるのんびりした車窓に変わります。しばらく走ると、長い橋梁で鬼怒川を通過。その先は鬼怒川の作り出した河岸段丘となっており、高低差のある地形が続きます。最急勾配は登山鉄道レベルの60パーミルもあるそうで、車内から見ても一般の鉄道ではありえないほどの相当な勾配があることが分かります。

清陵高校前からは併用軌道に戻り、背の低い工場群が立ち並ぶ中を進みます。広い空の下を路面電車が進む様子は、密集した市街地を走ることが多い日本の路面電車とはかけ離れていて、まるでサンノゼなどアメリカの都市のトラムのようです。

あとは、各駅のベンチに地元名産の「大谷石」を使っているのも目につきました。東京でも、ちょっと古い民家の石垣などによく用いられていますね。

車両の内装をチェック

この辺りまで来ると車内の混雑もだいぶ落ち着いてきたので、車両の様子を観察してみます。ドア上の行先表示を見ると、行先だけではなく種別も表示されています。そういえば、途中のグリーンスタジアム前では2つ目の行き違い施設を見ました。将来的には快速列車の運行を計画しているのかもしれませんね。ライトレールは現状、14.5kmを50分近く掛かるため速達性という意味では難があり、ある程度乗客が定着すれば快速列車のニーズも出てきそうです。

シートの方は、革とモケットを組み合わせたもので、車のシートのようです。側面窓は上下方向にかなり大きいのですが、日よけのカーテンが設置されています。

1編成に4つあるドアには交通系ICカードの読み取り機が設置されており、乗降時にこれを読み取ることで運賃を精算できます。一方、現金しかない場合は一番前のドアから乗降しなければなりません。宇都宮はJR線や東武線もあるのでICカードの普及率は高いはずで、わざわざ現金で乗り降りする人はそれほど多くない様子でした。

そしてこちらは運転台。路面電車の運転台というと狭苦しいものが多いのですが、そこは流石に最新式車両だけあって広々としています。色々見物している間に、電車は終点の芳賀・高根沢工業団地に到着しました。

復路は往路以上の大混雑

駅周辺は本田技研の工場がある以外はだだっ広い土地が広がるばかりで、静かなところです。ところが、この日は初乗車に来た地元客も多かったようで、ホームは結構な人出です。結局、行きよりも混んだ状態で芳賀・高根沢工業団地を発車します。

その後は途中駅で徐々に客を集め、宇都宮大学陽東キャンパスからは更に乗客が増えて足の踏み場もないほどの混雑となりました。それでもほぼ定刻で宇都宮駅東口に戻ってくることができました。折り返しの便もかなりの客が乗せて発車していきました。これくらい千客万来の状態が続けばライトレールも安泰なのですが、今後どうなることでしょうか。

JRE POINT使用で新幹線が(場合によっては)安い

無事にライトレールの乗りつぶしを終え、あとは東京へと戻ります。「帰りも在来線に乗るのは面倒だな」と思いつつライトレールの車中で新幹線の運賃を調べていると、「JRE POINT特典チケット」を使えば大宮まで2160ポイントで済むことに気づきました。JRE POINTを使わず「新幹線eチケットサービス」を利用すると3190円(通常期)もしますし、普通列車グリーン車でも運賃1342円+グリーン券600ポイントなのでほとんど差がありません。

実はこの時初めて気づいたのですが、JRE POINT特典チケットの交換ポイントは100km未満と100km以上で倍以上も違うようです。例えば宇都宮~上野間は100kmをわずかに超えるため交換ポイントは4620ポイントで、新幹線eチケットサービスでの値段4610円と比べて全くお得感がありません。逆に、100kmや200kmをわずかに下回る乗車距離の時はお得度が高くなります。

乗車距離交換ポイント
~100Km2,160ポイント
~200Km4,620ポイント
~400Km7,940ポイント
401Km~12,110ポイント
JRE POINT特典チケットの交換ポイント表(新幹線の場合)

という訳でE2系「やまびこ」に乗り、宇都宮からわずか24分で大宮へと戻ってきました。これで無事、日本の鉄道全線完乗のタイトルも維持できました。

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