2023年8月30日より、東急はクレカのタッチ機能またはQRコードを直接かざすことで改札機を通過できる新サービス「Q SKIP」の実証を開始したので早速試してみました。
クレカタッチ or QRコードで改札できる新サービス
2023年8月30日より、東急電鉄はクレジットカードのタッチ機能、もしくはQRコードを直接かざすことで改札機を通過できる新サービス「Q SKIP」の実証を開始しました。タッチ機能やQRコードを用いた改札機能は、大手ではJR九州が既に一部の駅で導入を開始したほか、JR東日本や東京メトロも導入を表明しています。実際に導入されるのは関東の鉄道では初めてとなります。
日本の鉄道では、Felicaを用いた交通系ICサービスが既に幅広く普及しています。JRや東京メトロは、タッチ機能やQRコードの導入により、訪日客などFelicaを持たないユーザの利便性向上を期待しているようです。
一方、東急は生活路線中心でインバウンドでの需要はそれほど多くありません。以下の記事を見ると、現在主に紙ベースで発行しているフリーきっぷをタッチ機能やQRコードに移行し、より柔軟な商品設定および若年層への訴求を見込んでいるようです。
まずはスモールスタート・一部改札機に限定
とはいえ、現時点でのQ SKIPサービスはまだ実証段階であり、利用可能路線は田園都市線と世田谷線、東急バスに限定されています。当然ながら他社線と通しでの乗車には対応しておらず、改札口で駅員さんに手動で精算してもらう必要があります。
【2024/1/10追記】2023年12月より、東急線全線にも対応しました。
また、乗車券の種類も一日乗り放題のフリーきっぷのみの対応となり、事前に専用サイト上でクレカによる電子チケットの購入・決済を済ませておく必要があります(クレカを改札機にタッチした瞬間に決済する、いわゆる「タッチ決済」はできない)。加えて、田園都市線では利用可能な改札機は各改札口に1基ずつ設けられたワイド改札機に限定されます。世田谷線や東急バスでは乗務員に券面を提示することで通過できます。
2023年12月時点での券種は以下の5つです。(いずれも大人運賃、子供運賃には未対応) カッコ内は紙のきっぷで発行した場合の価格です。
- 東急線ワンデーパス:740円(780円)
- 東急線・東急バス 一日乗り放題パス:1020円(1070円)
- 東急線トライアングルパス(渋谷-自由が丘-二子玉川のエリア内):450円(470円)
- 池上線・東急多摩川線ワンデーパス:440円(Q SKIP限定)
- 世田谷線散策きっぷ:360円(380円)
そんなQ SKIPサービスを体感すべく、「田園都市線・世田谷線ワンデーパス」(注:Q SKIP開始直後のみ設定されていた券種で、現在は設定なし)を購入して沿線各地を回ってみました。筆者の手元にタッチ決済可能なクレカが無かったため、今回はQRコードを利用しました。(クレカタッチで改札を通過するにはタッチ決済対応のクレカを用いる必要があり、クレカ情報をスマホに乗せる「Apple Pay」「Google Pay」などのサービスは利用できませんのでご注意を。)
改札口・改札機の様子は?
この日は所用のため、半蔵門線内からの直通列車で田園都市線の某駅に向かいました。使用したきっぷが、地下鉄線内は「東京メトロ24時間券」、東急線内は「田園都市線・世田谷線ワンデーパス」という組み合わせだったため、下車の際はいきなり有人改札での対応となりました。有人改札には専用のタブレットとQRの読み取り機、クレカのタッチ機が設けられ、スムーズに対応して頂けました。
用事を済ませ、今度はQRコードで改札を通過してみます。先述の通り、各改札口に1つある「ワイド改札機」がQ SKIP用に改造され、白いステッカーが張られています。そしてきっぷの読み取り部分には、白いQRコード読み取り機と、黒いクレカタッチ機(QR読み取り機と磁気きっぷ投入口の間にあって目立ちませんが)が追加されています。磁気きっぷやSuicaの口も残されているので、なかなかゴツい見た目になっています。
【2024/1/10追記】2023年12月以降にQ SKIPに対応した駅の改札機は、上記の写真のように少しだけ機器類がスマートになっていました。
改札通過は基本スムーズだが、コツも必要
スマホでQRコードを表示し、読み取り機に恐る恐るかざしてみると…思いのほかレスポンスが速く、スムーズに入場できました。この手のQRコードを使ったシステムは往々にして読み取りがうまくいかなかったり、レスポンスが遅かったりするものですが、Q SKIPはそんなことはありませんでした。この日、改札機を40回程度通過しましたが、読み取りに手間取ることは一度もなく、QRをかざしてから読み取り音がするまでの時間も交通系ICカードよりワンテンポ遅い(体感だと0.5秒未満)程度で、ほとんど見劣りしないと言っていいでしょう。
ちなみに、今回のサービスにはQ-moveというシステムを利用しているようです。Q-moveは既に九州の鉄道各社や地方の鉄道・バス会社での導入実績を積み重ねているようですね。
とはいえ、交通系ICカードと違って色々気を付けないといけない点もあります。まず、QRコードは表示後1分間のみ有効であり、1分を過ぎると改札でエラーとなってしまいます。よって、改札機を通る直前にブラウザ上のQRコード表示画面をリロードする必要があります。QRコード下の数字(上記の画面例だと「00:32」)が、無効になるまでの残り時間を表しています。
なお、一度改札通過時に使用したQRコードは、表示後1分以内であっても再使用できないようです。(改札の出入りを1分以内に繰り返す人はまずいないと思いますが…)
QRコードをブラウザ上で表示し続けると、時々Q SKIPサイトへのログイン状態が切れ、再ログインを要求されることがあります。その場合QRコードが画面から消えてしまいますが、メニューの「マイチケット」を選択すればQRコードを再表示できます。誤ってブラウザ上のQRコード表示画面を閉じてしまった場合もこの方法で再表示が可能です。
Q SKIPに対応している改札機がまだ少ない点も注意が必要です。各改札口に1つずつ設けられているワイド改札機の大半がQ SKIPに対応しているのですが、ごく小規模な改札口は未対応の場合もあるようです。写真は藤が丘駅の南口改札ですが、ご覧のようにQ SKIP対応の改札機は設置されていませんでした。
また、ワイド改札機はいずれも両方向から利用が可能なのですが、それゆえ人の流れが多いと一方向からの流れが全く途切れず、利用しようにもなかなか利用できないという状況に陥りがちです。渋谷や二子玉川などターミナル駅では特にその傾向が顕著で、乗降客の多い駅では人の流れが途切れるまで2分近く待つケースもありました。あくまで実証実験なのでやむを得ない面もありますが、ターミナル駅での乗車の際は列車に乗り遅れないよう、時間に余裕をもって改札を通過する必要がありそうです。(朝の渋谷駅とか大丈夫なのだろうか…)
おまけ:QRコード × QRコード?
で、田園都市線沿線で一日何をしていたのかというと、またしても例のコレをやっていました。相変わらず参加者は多くない(少なくともこの日は一度も出会わなかった)ようです。Q SKIPを使用している人とも全然出会わなかったので、Q SKIPで改札を通過しつつ「すたんぷポン」をこなしたのは、おそらく私が史上初ではないでしょうか。
Q SKIPと比べると、「すたんぷポン」のQRコードの読み取り精度は相変わらずよくなく(特に、スマホカメラに手汗が付くと全く読み取れなくなってしまう)、読み取ってからスタンプが表示されるまでの時間も長く掛かります。あと、QRコード読み取り時に無料WiFi(おそらく東急が無料で提供しているやつだと思われる)と繋がった状態だと高確率で読み取りに失敗するので、ラリー中はスマホのWiFi機能をOffにしておくことをお勧めします。
QRチケット表示と、すたんぷポンの両方でスマホブラウザを使うため、シーンによってブラウザ上でタブを何度も入れ替える必要があり、最初のうちは混乱してしまいました。その結果、下車して別の用事を済ませているうちにスタンプを押し忘れてしまい、慌てて戻る羽目になるという凡プレーを犯してしまい意気消沈。
そんな凡プレーを取り返すべく、色々策を練りました。例えば、高津~二子新地間は改札口間の距離が500mほどしか無いので、10分ほど後の列車を待つ間に隣の駅まで歩いてしまいました。高架下には歩行者用の通路が整備されているので、6分ほどで歩き切ることができました。下からこの区間の高架橋を見ると、半分は大井町線の溝の口延伸の際に増設されたものなので、柱部分の古さが全然違うことがよく分かります。
田園都市線の駅は造られた時期がどれもほぼ同じで、駅前風景を含めてもあまりバリエーションがありません。(街の賑わい度合いに優劣はありますが) そんな中、宮前平駅はホームドアが妙に内側によっているのが特徴的です。まだ6ドア車が存在していた時代に無理やり設置したためこうなったそうです。
「すたんぷポン」の田園都市線編は、電車とバスの博物館、世田谷線の下高井戸駅、こどもの国駅と行きにくい場所が多い上、溝の口~長津田間の日中の普通列車が10分おきと(東急にしては)少ないため、地味に一番難易度が高い気がします。私も時間の都合上一日では全駅を回れず、次回に持ち越しとなってしまいました。
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