スタンプ収集家は西武鉄道へ急げ?~2023年6月配備開始の全駅スタンプを集めてみた

2023年6月、西武鉄道全駅の改札口にスタンプが配備されました。期間限定のフリーきっぷを使って、都内を中心に駅スタンプを集めてきました。

全駅スタンプが「サイレント配備」

東京メトロや都営地下鉄の全駅スタンプを集め終えるなど、駅スタンプ集めがちょっとしたマイブームになっています。地下鉄やJRのをあらかた集め終え、次は私鉄路線、と思ったのですが、東京近郊の私鉄で全駅にスタンプを配置している駅はそれほど多くありません。大手私鉄では小田急ぐらいで、それも改札係員にお願いしないといけないそうで若干面倒です。

そんな中、西武鉄道が6月頭頃から全駅(メトロ管轄の小竹向原は除く)にスタンプを配備し始めたというのがネット上でひっそりと話題になっているのを目にしました。(飯能~西武秩父間のみは前から配備されていたらしいですが。)

というのも、公式なニュースリリースは一切出しておらず、同時に行われているアニメとコラボしたラリー(下記)の方ばかりが目立っており、全駅スタンプは今のところ「知る人ぞ知る」存在になっているようなのです。

西武鉄道Webサイト
西武鉄道のWebサイト。時刻表、路線図、運行情報、乗換案内、運賃表など西武線のご利用案内から、特急ラビュー・特急レッドアロー号・S-TRAIN・拝島ライナーのご案内、レジャー情報、沿線での暮らしやおでかけ情報、企業情報などを提供しています。

この手のスタンプはゴムでできているので、押せば押すほど摩耗し印影が不鮮明になります。加えて、配備されて最初のうちはインクの方も高頻度で補充されているのが、年を経るに連れてだんだん補充の頻度が下がり、カラカラのまま放置されていく傾向にあります。(あくまで「傾向」ですので、西武鉄道さんはしっかりメンテしてくれると期待しています。)なので、きれいな印影を求めるならなるべく早いうちに行った方が良い訳です。

幸い、アニメのスタンプラリー開催中は全線一日フリーきっぷ(ただし、高麗~西武秩父駅間と多摩川線は乗れない)が1000円で発売されるようなので、これを片手に数日をかけて東京近郊の駅を回ってきました。なお、一日乗車券は同時に開催されている謎解きイベント用のも同額で売られており、こちらは9月3日まで発売中です。もちろん、イベントに参加しなくても利用できます。

集めたスタンプの一覧表をご覧になりたい方はこちらから。

一日目午前:西武新宿から新宿線を巡る

西武新宿駅で最初の押印

とある平日の朝7時、西武新宿駅へとやってきました。西武新宿駅のスタンプは改札口横の券売機付近に設けられた台の上にありました。駅スタンプは基本的に、以下のどこかの場所にあるので見つけるのはそんなに大変ではないはずです。

  • 改札横の案内カウンター内
  • 改札外の特急券販売窓口の前
  • 券売機付近に設けられたスタンプ台

案内カウンターに入ると駅員さんが出てきてしまうので(室内にセンサーか何かが仕込まれているらしい)、「スタンプ押させて下さい」と一声掛けましょう。2つ以上改札がある駅では、基本的には駅員が常駐している乗降の多い方の改札口を探せばよいです。ただし、池袋・高田馬場・所沢は例外で、乗降の少ない方の改札口にあります。

スタンプは直径10㎝近くある大型サイズで、スタンプ台のいらない「シャチハタ式」です。そのため、強く押しすぎるとインクがにじんでしまったり、この写真のように空白部分にまでインクが付いてしまったりします。しかし、サイズが大きいので四隅に力をかけないと端の方が欠けてしまうことも… 一発でうまく押すのはなかなか難しいので、3回ぐらいトライできるよう台紙を多めに持っていくとよいでしょう。

昔ながらの駅が多い新宿線

改札を入ると、いきなりやってきたのが写真の「ドラえもん号」。西武鉄道とドラえもんにどういう縁があるのか分かりませんが、とにかく車内はドラえもん一色です。貫通扉は「どこでもドア」風にラッピングされています。

西武新宿線は日中普通列車は10~12分おきと本数はあまり多くないですが、この時は朝ラッシュ時とあってもう少し本数がありました。各駅で淡々と下車し、スタンプを集めていきます。西武新宿線は後日乗る池袋線と違って橋上駅は少なく、上下各ホームにそれぞれ改札口があるスタイルの駅が多いです。スタンプはどちらかの改札にしかないため、運が悪いと通路でホームを移動する必要があります。下りホームにスタンプがある駅が多かったので、西武新宿から田無方面に進んでいく方が集めやすいでしょう。

中でも上井草駅は、ホームを繋ぐ通路すらなく、一旦改札を出て踏切を通らないと隣のホームに行けません。構内には昔ながらの長い木製ベンチも健在でした。このベンチはスタンプの題材にもなっていましたね。また、途中の待避駅は待避線が1本しかない駅がほとんどで、ダイヤを組むのが大変そうです。

このように設備面では池袋線に比べて冷遇されがちな新宿線ですが、車両の方は写真の30000系や20000系、地下鉄直通から外れた6000系といったVVVF車の姿が目立ち、西武おなじみの黄色い電車は8連の各停中心に細々と生き残っている状況でした。あと5年もすれば、本線から完全に姿を消してしまうのかもしれません。

熱いぜ!ライオンズ愛

久々に西武線を乗り歩いて驚いたのが、各駅に「本日の試合速報」というボードが設置されている点。試合が始まると駅員さんがスコアをリアルタイムで書き込んでいくのですが(ただし、ホームでの試合開催時だけのようです)、スマホで速報が簡単に見られるようになった今でも残っているとは思いませんでした。阪神電鉄ですらここまではやっておらず、それだけ西武鉄道のライオンズ愛が強いということでしょう。

また、駅ごとの「推し選手」が定められ、選手のポスターが掲示されていました。ポスターにはデジタルスタンプラリー用のQRコードが貼り付けられ、アプリで読み込むと選手のデジタルスタンプがもらえるとのこと。私は集めませんでしたが、ファンの方は駅スタンプと共に収集してみてはいかがでしょうか。

難所・西武園線もあっさりクリア

上石神井から先は準急が各駅に停車するため、ペースアップして田無に到着します。田無は駅前に大きな商業施設が目立ち、地域の拠点駅になっているようです。田無あたりから先は戦後に開かれた街だからか、駅の造りもゆったりした駅が目立ちます。更に進み、高架化工事中でカオスなことになっている東村山に到着。すると、目の前に西武園行きの電車が停まっており、慌てて乗り換えました。西武園線は日中20分に1本しかなく、乗り継ぎがうまくいかないと大きなタイムロスになるため、ラッキーでした。

西武園駅は競輪場があることぐらいしか知らなかったのですが、意外と地元住民の行き来が多く、それなりに乗降客はいるようでした。東村山に戻ると、目の前に本川越行きがいたのでまたしても急いで乗り換えます。東村山のスタンプを取り損ねましたが、いずれ通る機会はあるだろうと判断しました。所沢の少し先の新所沢まで進んだところで一旦休憩します。

一日目午後:西武の「迷宮」で泥沼へ

「下山口→西武園ゆうえんち」チャレンジ失敗…

西武鉄道ホームページより抜粋

昼食後、本数の非常に少ない秩父線を除けば最大の難所である多摩湖・国分寺周辺の支線群のスタンプ集めに挑みます。(西武園のみ午前中に収集済み) この辺りは6つもの支線がぐちゃぐちゃに入り乱れており、路線図を見ないと位置関係が全く把握できません。個人的には東京メトロの大手町や銀座あたりよりもややこしいと感じています。しかも、日中は運転間隔が20分にまで減る路線もあり、どう攻略するかが非常に悩ましいです。

まずは池袋線の西所沢に向かい、狭山線に乗車します。やってきたのは3ドアの新101系。ちょっと前までは本線でも3ドア車が当たり前のように走っていたものですが、今や支線区でも淘汰が進み、多摩川線と狭山線にしか走っていないようです。シートモケットは色鮮やかなものに張り替えられていますが、車内の造作はやや古さを感じます。これに1駅乗って下山口へ。狭山線唯一の中間駅ですが、意外と乗降客は多いです。

狭山線は20分おきにしか電車が走っておらず、次の西武球場前に向かうにはまるまる20分待たねばなりません。そこで一計を案じ、直線距離で1kmほど南にある山口線の西武園ゆうえんち駅まで歩くことにしました。17分後に西武球場前行きの列車があり、これに乗って西武球場前で押印後すぐに折り返せば20分早く山口線をクリアできます。しかし、西武園ゆうえんちへの道はやや迂回していた上、上り坂が連続していて歩く速度が上がりません。結局、わずか1分差で列車を逃してしまいました…

仕方なく20分待ち、次の列車で西武球場前に向かいます。山口線は普通鉄道ではなく新交通システムのような独自規格を採用していて、「レオライナー」の愛称を持っていますが、これに乗るのも20年ぶりぐらいな気がします。以前は全車白地に赤青緑のラインが入った「ライオンズカラー」を纏っていましたが、最近は深緑色に塗り替えられた車両もいるようです。西武球場前に着いたのは15時前でしたが、早くも18時からのナイターに備えて球場の前で並んでいる熱心なファンが結構いました。

西武球場前ですぐに折り返して多摩湖に向かい、今度は多摩湖線に乗車します。やってきた9000系は何故か「真っ赤」で、びっくりしてしまいました。確か京急とのコラボで赤色に変更した車両が編成短縮して、多摩湖線に流れ着いたんだった気がします。

「迷宮」で迷走

多摩湖の次の武蔵大和で下車しますが、ここも日中は20分おきにしか電車が来ません。どうしようかと途方に暮れていると、目の前に東村山行きのバスがやってきました。「そういえば東村山駅はまだ押印してなかったな」と思い、反射的に乗ってしまいました。地域のご老人を乗り降りさせつつ、10分あまりで東村山駅に到着です。バスの車内で、「残りは拝島線と国分寺周辺の駅だけだな」と思って路線図を確認すると、多摩湖線の八坂駅を押し忘れていたことに気づきました。どうしようか…

とりあえず東村山に戻り、駅の案内板を見ると国分寺線の列車が発車間近なので、これに乗って小川に向かいます。小川は南北に走る国分寺線と、東西に走る拝島線のホームが並行に並ぶという非常にややこしい駅です。

そもそも現在の西武鉄道の路線で最初にできたのは国分寺線(と新宿線の東村山以北)の原型となる川越鉄道で、実に明治28年(中央線開業のわずか6年後)の開業です。昭和に入ってすぐに多摩湖線(多摩湖鉄道)ができ、戦後に工場への引き込み線などを半ば無理やり繋ぎ合わせる形で拝島線ができました。そのため、「ややこしさ」の原因は主に拝島線にあるといってもいいでしょう。

小川からその拝島線に乗車します。拝島線は歴史が新しいこともあり、京王相模原線などのような「ニュータウン鉄道」の趣です。写真の東大和市駅はいかにも「昭和のニュータウン駅」な高架駅ですし、武蔵砂川や西武立川の駅前は広々としています。あと、すっかり存在を忘れていましたが、玉川上水には多摩モノレールも乗り入れていて、乗換駅として賑わっていました。

フリーきっぷ vs 自動改札機?

この辺りまで来ると、朝から乗り降りを繰り返しまくった影響で私も疲労困憊の状況でしたが、「相棒」のフリーきっぷの方も限界を迎えつつありました。改札機を何十回も通したうえ、尻ポケットに突っ込んだりと雑な扱いをしたせいか、改札を通すと「この切符は使えません」というエラーがしばしば出るようになりました。それでも無理やり改札機に突っ込むと、ついに派手に券詰まりを起こして駅員さんに回収してもらう羽目に。破れはしませんでしたがぐにゃぐにゃに曲がってしまい、以降は有人窓口で駅員さんに見せて通過するしかなくなりました。

拝島で折り返して萩山に戻りますが、ここは小川駅以上に複雑で、拝島線と多摩湖線がホームを共有している上、国分寺行きの発車するホームは一定していない(そのため、「次の国分寺行きは○番線発です」という専用の案内板がある)というややこしい駅です。しかもラッシュ時間帯のためホームにはすごい人… 何とか乗り換えて、先ほど忘れていた八坂駅に向かいます。多摩湖線はラッシュ時に運転間隔が10分おきになるため、タイムロスはそれほどありませんでしたが。

その後、某駅で例のフリーきっぷを駅員に見せたところ「多摩湖線ではこの切符は使えません」とワケワカランことを言われたりしているうちに(多摩川線と多摩湖線を間違っているのではなかろうか?)後の用事のためタイムアップ。結局、国分寺周辺の数駅は取り残してしまいました。肉体的にも精神的にもボロボロの状態で西武線を後にします。

記事は2ページ目に続きます。

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