2022年に12月に阪急全線でダイヤ改正が行われます。「快速急行」が「準特急」に変更となるほか、朝ラッシュ時の10連運用の大半が廃止となります。
近年例を見ない3線同時のダイヤ改正
先日、2022年に12月に実施される阪急のダイヤ改正について告知がなされました。阪急のダイヤ改正は神戸線、宝塚線、京都線といった路線単位で行われるのが通例で、3線同時かつ今回ほどの大規模な改正というのはここ数十年ありませんでした。(2021年にコロナの影響で全線の最終列車を繰り上げたことはあったが、深夜以外の変更はなし)
https://www.hankyu-hanshin.co.jp/release/docs/dd2e3f9dbc4759095b47e378f4d54e59336a79ac.pdf
そして、内容も(趣味的には)なかなか衝撃的なものが含まれていました。通常、本サイトではニュース速報的な記事はあまり取り上げていませんが、今回はこのダイヤ改正について、懐かしい蔵出し画像(写真は素人なので大した画像じゃないですが)を交えつつ掘り下げてみたいと思います。なお、筆者は阪急沿線から離れて久しく、乗車する機会もほとんどないため、この改正の妥当性に関してはコメントを差し控えたいと思います。
ダイヤ改正の中身は?
【神戸線】朝ラッシュ時の特急への神戸三宮駅での増結廃止
【宝塚線】朝ラッシュ時の通勤特急を増発&10連から8連へ
【宝塚線】箕面線から大阪梅田への直通列車廃止
【京都線】【神戸線】「快速急行」が「準特急」に名称変更、増発
京都線の快速急行は特急停車駅に加え西院・大宮に停車する列車で、朝夕ラッシュ時に運転されていますが、これが準特急という名称に変わります。準特急はかつて京王電鉄で運転されていたことがありましたが、その名前が阪急で復活することになりました。京都線では2024年に座席指定サービスを開始しますが、「特急の名の付く列車」=「座席指定サービスあり」として分かりやすさを狙ったようです。また、朝夕の通勤特急の大半が淡路に停車するようになり、これも準特急に変更されます。 この動きに合わせて、神戸線の快速急行も準特急に名称が変更されます。神戸線の快速急行は早朝や深夜のみ運転される影の薄い種別で、他の優等列車が停まらない六甲に停車するのが特徴です。1980年代に神戸線で初登場し、一時は宝塚線でも運転されていましたが、今後は種別名として使われなくなります。【京都線】「快速」が「急行」に名称変更
【京都線】快速急行の10連運転廃止
そして、京都線でも快速急行の10連運転が廃止されます。京都線の10連運転は、京都河原町駅の1号線で桂から回送した2連を8連に増結して、大阪梅田まで走行し折り返した後、途中の桂で切り離すという形で行われていました。これが消滅することで、本線上での増結&切り離しの光景が阪急では見られなくなることになります。【京都線】「京とれいん」運転終了
【全線】21時~23時台の列車削減
ご多分に漏れず、阪急でも深夜の利用者が減少しているとのことで、これに合わせて減便が行われます。21~22時台が12分ピッチ、23時台が15分ピッチでの運転となります。近年どの鉄道会社でも行われているこの手の減便ですが、夜遅くに帰宅するサラリーマンにとっては地味に堪えますよね。。
【能勢電】朝ラッシュ時減便&川西能勢口~妙見口直通廃止
阪急と関連の深い能勢電鉄でも同日にダイヤ改正が行われ、朝ラッシュ時の一部列車が廃止されます。能勢電鉄には昭和30年代製造の1700系がしぶとく生き残っていますが、ダイヤ改正で所要本数が減ることから全廃もしくは大幅減となる見込みです。
また、能勢電鉄の普通列車は途中の山下から日生中央・妙見口の各方面に向かう便がそれぞれ半数ずつ運転されていましたが(いずれも山下始発の折り返し運転列車に接続)、本改正からほぼすべての列車が日生中央行きとなり、川西能勢口~妙見口間の直通列車はほぼ消滅します。これも開業以来初の事態かと思われます。
歴史的ダイヤ改正の背景に「ホームドア」
以上のような大規模な改正の裏には、安全対策として一定以上の乗降客のある駅にホームドアやホーム柵の設置が求められるようになったことがあると思われます。阪急では現在十三と神戸三宮にしかホームドアが設置されていませんが、一時的な運賃値上げにより費用を捻出することで、全駅へのホームドアやホーム柵の設置を行うことを表明していました。
https://www.hankyu.co.jp/files/upload/topics/220803/2022-08-03_bl.pdf
その際、ネックとなるのが使用頻度の低いホームです。朝しか使わない宝塚線・京都線の10連用ホームや、箕面線の8連用ホームにホームドア等を設置するのは得策ではなく、これらの使用を停止してしまうことで設置費用を削減できます。
また、箕面線から宝塚線への直通列車は石橋阪大前駅で4号線を使用しますが、宝塚線のホーム(1,2号線)や箕面線内列車用のホーム(5号線)とは離れていて、専用地下道で繋がっています。使用頻度の低いこの地下道にはバリアフリー設備がなく、これを機に使用停止してしまいたいという意図もあったと思われます。
加えて、「京とれいん」に使用される6300系はドアが車端部に寄せられた構造となっていて、他車とはドア位置が大きくずれており、ホームドア設置駅に停車することは困難です。十三以外の主要駅へもホームドアを設置する方針となったことで、廃止へ舵を切ることになったと想像できます。
そもそもオーバースペックだった「10連運転」
上述した通り阪急の10連運転は1982年の宝塚線を皮切りに、1980年代に各線で開始されました。その頃は阪急の乗降客数も右肩上がりで増加しており、列車の編成も年々長くなっていて、ゆくゆくは日中以降も10連運転を行う計画だったのかもしれません。西宮北口・神戸三宮など、10連対応のために大改造をした駅も少なくありませんでした。しかし、バブル崩壊や少子高齢化に加え、阪神大震災の発生やJRの輸送改善により阪急の乗降客数は1990年代以降減少に転じたため、結局本線系の列車の大半は8連に落ち着き(京都線の一部のみ7連)、10連運転は朝ラッシュ時のみ細々と行われることになりました。
朝ラッシュの1往復の増結のためだけに専用の増結車をわざわざ準備しているような事例は他社ではほとんどなく、1995年に投入された8200系などは西宮北口~梅田の片道しか仕事がない時代もあったりして、コストパフォーマンス的にもよろしくないのは明らかでした。阪急としても意地で続けていた面もあったのかもしれませんが、コロナ禍でとどめを刺される形で大幅削減と相成りました。
今後、運用を失った神戸・宝塚線の増結用2連は適宜組み合わせて今津北線や伊丹線、箕面線、あるいは能勢電鉄に回るのでしょうか。朝しか拝めなかった車両が終日見られるようになるため、活躍に期待したいところです。一方、京都線の2連はこれといった用途もなく、今後の行く末が気になります。(1両だけ余っている7300系中間車と組んで7連化か?)
まとめ
という訳で、お隣の京阪電鉄のような日中の大幅な減便は幸いにして無く、一般の方への影響は案外大きくなさそうなダイヤ改正となりましたが、
- 宝塚・京都線の10連運転終了
- 本線上での増結・切り離しの終了
- 箕面線から大阪梅田への直通運転終了
- 「快速急行」「快速」の廃止
- 6300系の京都線からの撤退(「京とれいん」編成は廃車?)
と、阪急ファン的にはなかなかインパクトの大きい改正となりました。特に「京とれいん」の廃止は個人的には残念で、最後に一度乗りに行きたいところですが、ちょっとスケジュール的に難しそうです。
追記(2022/11/23)
「日中の大幅な減便はなさそう」と書きましたが、後日発表された全列車時刻表を見ると京都線の朝夕ラッシュ時は結構減便されるみたいですね…
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