謎の航空会社・ZIPAIRの全貌【2024年版】JAL系列の国際線専門格安キャリア

コロナ禍でのスタートも、徐々に注目度上昇

ZIPAIRの機体(仁川空港にて撮影)

ZIPAIRは、2020年6月に運行を開始した国際線専門の格安航空会社(LCC)です。JALの100%子会社で、機材(ボーイング787)もJALから払い下げられたものを主に使用しています。ちなみに、正式な社名は”ZIPAIR Tokyo”ですが、公式サイトでは”ZIPAIR”と表記されており、本稿でもこの表記に従います。

近年日本にもLCCが定着してきましたが、ほとんどが国内線を主戦場としており、国際線に特化したLCCというのは日本初です。本来ならば最初からもっと着目されてしかるべきだったのですが、ZIPAIRに関する記事や口コミはあまり目にしませんでした。その原因はいうまでもなく2020年に端を発した新型コロナ禍であり、海外への自由な旅行が事実上不可能となってしまったことによる割をモロに食らってしまった形となってしまいました。

そんな波乱の船出となったZIPAIRですが、2022年以降に各国の入国規制がほぼ解除され自由な海外旅行が復活したことで、注目度も上がりつつあります。そこで、ZIPAIRの就航路線やおトク度について調べてみました。

就航路線:観光・ビジネス需要の高い路線が揃う

2024年4月時点での、ZIPAIRの就航地は以下の9か所です。(当初は台北にも就航予定とされていたが、未就航) いずれも日本側の出発地は成田空港です。

  • ソウル-仁川国際空港
  • マニラ-ニノイ・アキノ国際空港
  • バンコク-スワンナプーム国際空港
  • シンガポール・チャンギ国際空港
  • ホノルル-ダニエル・K・イノウエ国際空港
  • バンクーバー国際空港(2024年7月就航予定)
  • サンフランシスコ国際空港
  • サンノゼ国際空港
  • ロサンゼルス国際空港

2022年4月時点ではホノルル・サンノゼ線は全日運航ではなく、曜日を限定しての運行となっています。

価格:JALと比較

LCCであるZIPAIRの最大の売りは、やはり従来キャリアと比べて価格が安いことに尽きるはずです。果たして価格差はどの程度なのか、モデルケースとして以下の旅程を想定した上で公式サイトで調査してみました。比較対象は親会社のJALとしました。シートタイプはもちろんエコノミーです。

成田 6/24(月)発 ~ ロサンゼルス 6/24(月)着
ロサンゼルス 6/28(金)発 ~ 成田 6/29(土)着

  • JAL:298,200 円
  • ZIPAIR:202,720 円

JALはあくまで公式サイト経由で購入した場合の価格ですので、格安航空券や海外発券等々を駆使すればもっと安くなるかもしれません。ZIPAIRの方は、行きは7万円台なのに対し帰りは約13万円と高かったのですが、それでもJALの3分の2ほどの値段で済んでいます。もう少し先の7月ならば帰りも7万円台なので、税金込みで往復16万円ほどで済みそうです。

オプションサービス:ゼロに抑えることはほぼ不可能?

とはいえ、上記の価格はほぼ「理論値」であることに注意が必要です。ZIPAIRは国内線LCC同様、大型荷物の持ち込みや機内食、座席の指定がオプションサービスとなっています。追加料金を払わないと、JALなど従来のキャリアでは当たり前のように享受できたこれらのサービスを受けることはできません。オプションサービスの一覧と、片道当たりの追加額は以下の通りです。(成田→ロサンゼルスの場合)

  • Value 11,000円
    • 事前座席指定
    • 機内食
    • 受託手荷物1個(~30KG)
  • Premium 18,000円
    • 事前座席指定
    • 機内食
    • アメニティセット
    • 受託手荷物1個(~30KG)
    • 機内持ち込み手荷物1個+8KG, 合計15KG

ちなみに、オプションサービスを一切利用しない場合、持ち運べる荷物は機内に持ち込めるサイズの手荷物2個(7KGまで)のみです。韓国あたりならともかく、ハワイや北米まで移動する人は大型のトランクを携行する場合がほとんどでしょうし、機内食も食べない訳にはいかないでしょう。よって、「Value」あたりを追加することが事実上必須になるはずです。先程モデルケースとして算出した運賃に、往復ともValueを追加した場合の運賃は以下のようになります。

フライト:往路61,750円+復路125,608円
オプションサービス:往路11,000円+復路13,336円
税金(入管費用や空港利用料など):往路10,290円+復路5,072円

合計金額 227,056円

このように、25,000円ほど高くなることが分かります。

ちなみに、気になる機内食は以下のリンク先にあるようにカレー、そば、カツ丼、パスタなど多彩なメニューが用意されているようです。サイトを見ると盛り付けが妙にきれいなのですが、現物は他社のエコノミークラス同様、プラスチック製のトレーに盛りつけられてくるようです。

https://www.zipair.net/ja/service/meal

発券:他社との通し発券不可なのは要注意

JAL公式サイトの予約画面。国際線とアメリカ国内線(この場合運航会社はアメリカン航空)の予約をまとめて取ることができる。

JAL, ANAなどアライアンス(航空連盟)に加入する従来キャリアは、国際線で海外到着後に乗り継ぐ現地国内線の航空券をまとめて予約・発券してくれます。これを「通し発券」といい、チェックインは最初の搭乗地でのみ行えばよく、ほとんどの場合は受託手荷物も自動的に最終到着地に転送されます。(アメリカ入国時のみ、手荷物を受け取って税関審査を受けた後、再度セキュリティチェックをやり直す必要あり)

通し発券は日本の国内線と国際線を乗り継ぐ場合も可能で、日本各地から成田や羽田に到着し、国際線に乗り継ぐ際は出入国審査だけ済ませればOKとなります。

ところが、ZIPAIRは他社との通し発券が一切できません。(系列のJALともできない。ただしZIPAIR同士の通し発券はできる) これを業界では「別切り」といい、様々なデメリットがあります。

まず、乗り継ぎ地では受託手荷物を受け取って乗り継ぎ先の航空会社のカウンターまで移動し、チェックインしてセキュリティチェックを受けて…という作業をいちいち繰り返さなければなりません。アメリカはセキュリティチェックがうるさく(靴やベルトまで外させられる)その分検査場はいつも混んでいますし、繁忙期などは最悪乗り遅れるリスクも生じかねません。

また、最初の便が遅延して乗継便に間に合わなくなっても、自分で交渉して便を変えてもらう必要があります。(通し発券ならばJALやANAがどうにかしてくれるのでしょうが)

ZIPAIRの就航地が出発・到着地である人にとっては特に関係のない話ではありますが、地方在住の方や乗り継ぎを予定されている方は念頭に置いておいた方がよいでしょう。

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