モノレール・路線バスなど、ラスベガス・ストリップ地区の公共交通について解説します。ついでに、モノレール全線完乗の様子も紹介します。
ラスベガス・ストリップ地区の公共交通
高くて不便?今一つ存在感の薄いモノレール
以前の記事で述べた通り、ラスベガスの中心部の「ストリップ地区」は、ストリップ通り沿いにカジノホテルがずらっと立ち並ぶ形となっています。それゆえストリップ地区は南北に細長い街で、観光客にとっては南北方向の公共交通が欲しいところです。
その要求に応えてくれるのが「ラスベガスモノレール」で、北部のSAHARAと南部のMGM Grandの両ホテル間を結んでいます。途中、経路上の各ホテルや、ラスベガス最大のコンベンションセンターにも駅があります。(ちなみに、ストリップ通りの左を貫く黒線は「本物」の鉄道ですが、残念ながら現在は貨物専用で旅客輸送はしていません)
…と、一見便利そうに思えるモノレールですが、実は大きな問題があります。駅がストリップ通り沿いではなく、ストリップ通り東側のホテルの裏手に位置しているのです。前の記事で書いた通り、ラスベガスのカジノホテルは巨大なので、ストリップ通りと駅の間は数百メートルも離れており、しかもごちゃごちゃしたカジノを通り抜けなければなりません。それゆえ、ストリップ通りの西側のホテルへのアクセスにはほぼ使えません。
ストリップ通りは幅広いので、大阪モノレールのように道路の真ん中を通しておけばもっと便利だったと思うのですが… あるいは、当初計画されていたという空港への延伸が実現すればもうちょっと使い勝手が良くなるはずですが(MGMから空港へはすんなり延伸できる線形になっているので)、ともかく現状は使い勝手が悪く、モノレールはいつ乗っても空いていることが多いです。
加えて、運賃も一回5.5ドル~6ドル(電子チケットか普通の切符かで異なる)とお高く、2025年1月現在の為替レートだと実に1000円近くにもなってしまいます。一人旅ならともかく、複数人での利用ならばUberの方が安くて便利な可能性が高いです。ちなみに筆者は滞在中、ストリップ地区の中部から北部まで何度かUberを利用しましたが、料金は大体11ドル程度(チップ除く)でした。
ストリップ通りで存在感を示す路線バス”Deuce”
ちなみに、ストリップ通りには路線バスも走っています…というより、公共交通としてはモノレールよりバスの方が存在感が大きく、利用者数も多いです。この路線バスは”Deuce”と呼ばれています。なお、以前は”SDX”という急行バスも走っていましたが、これは廃止されました。
Deuceの運行区間は南はMandalay Bayのやや南のPlemiam Outletから、北はSAHARAのはるか北のダウンタウン地区までとなっています。料金は一回6ドルとモノレール並みに高いですが、8ドルの24時間券もあります。切符はバス停備え付けの券売機で事前に買うか、車内にて支払うこともできます。ただし、車内で支払う際はおつりは出ないそうなので注意が必要です。
車体は2階建てで、2階席からのストリップの眺めはなかなか良いです。ただ、乗降客が多いゆえに各バス停での停車時間が長く、時間が掛かるのが難点です。急いでいるときはタクシーやUberを利用する方がいいでしょう。車内は観光客が多く治安はそんなに悪くないですが、バスで発砲事件があったとの記事を目にしたこともあるので、深夜などは利用を避けた方がよいかもしれません。
系列ホテルの移動に便利、無料トラム
先述した通り、ストリップ通り西側のホテルには公営のモノレールは通っていません。その不便を埋めるためなのか、ストリップ通りの西南部にはホテルが運営する無料のトラムが2本通っています。
ホテル自らがトラムを運営するとは太っ腹ですが、これはあくまでも系列ホテル同士の行き来の便を図るという意味合いが強く、長い距離を移動できるわけではありません。以前の記事で書いたとおりラスベガスのホテルは寡占化が進んでいて、現在無料トラムの走るホテルはいずれもMGMという会社の系列に属しています。
ストリップ通りの一番南にあるMandalay Bay-Excalibur間の路線は、単線の軌道が平行に2本あり、微妙に運行形態が異なります。まず1本目は、Excaliburホテル入り口付近の、ストリップ通りに面したあたり(地図上の”Excalibur North”)が乗り場になっています。そして途中のLuxorには停車せず、Mandalay Bayホテルに直行します。Mandalay Bayの乗り場はカジノフロアに直結していて、Excalibur側の乗り場の位置もいいことから、Mandalay Bayと他ホテルのアクセスに非常に便利です。
もう1本は各駅停車で、Luxorの入り口付近にも停車します。しかし、こちらはExcalibur側の乗り場が何故かカジノフロア奥の妙に入り組んだ場所にあって、あまり便利とはいいがたいです。Excalibur-Luxor間は動く歩道、Luxor-Mandalay Bay間は立派なショッピングモールを介して繋がっているので、 隣のホテルへの移動の際はここを歩いた方が速いでしょう。
次に、Park MGM-Bellagio間の路線ですが、これも結構微妙な存在です。まず、南端にあるPark MGMの乗り場はカジノフロアの奥の殺風景な通路を歩いた先にあり、ストリップ通りからは非常に遠いです。北端のBellagioの乗り場はPark MGMよりはカジノフロアに近いものの、それでもやや距離があります。
唯一の中間駅はARIAのホテル入り口と、Crystalsというショッピングモールの間に挟まる形で設置されていて、両者へのアクセスはそこそこ便利です。トラム自体の距離は短く、並行して通路もありますので、歩く距離を多少短くしてくれる程度の乗り物と認識しておけばよいでしょう。
ラスベガスモノレール全線踏破
筆者は過去の訪問で無料トラムは全て乗車したものの、ラスベガスモノレールは一部区間しか乗車していませんでした。ラスベガスまで来る機会も今後それほどなさそうですし、早起きしてモノレールの全線完乗をしておくことにしました。
駅に向かうと、このような大型の券売機がドンと置かれていました。一回分の切符のほか、24時間券、3日券、4日券が買えるようです。モノレールに乗るのは数年ぶりなのですが、この券売機は変わっていないような気もします。自動販売機で切符を買うと、アメリカでありがちな定期券サイズの磁気券が出てきました。この切符の体裁も、(図柄こそ変わっているものの)2006年から変わってないですね。
次は改札機を通過します。上でも書いた通り、オンラインで買えるQRコード式の電子チケットやGooglePayに対応するようになり、改札機は更新されているようです。
カジノホテルの華やかさとは対照的に、モノレールの駅構内はどこも殺風景で、ラスベガスらしさはありません。どの駅もホームドアは完備しています。
モノレールは4両編成で、車両間に貫通路はありません。車端部分はロングシートとなっていて、まるで空港にあるトラムのようです。
車内の案内板には、主要な観光地やホテルの最寄り駅が書かれているので、これを参考に下車するとよいでしょう。
モノレールはカジノホテルの裏手を走行することになるのですが、地味なバックヤードや駐車場の建物しかなく、ストリップ通り側のきらびやかな姿との落差が面白いです。途中、ホテルの建物の真上を走行したり、ホテル付属のプールを望むことができる箇所もあります。そして、一番の見所は”Sphere”の真下を通る箇所でしょうか。
という訳で、南端のMGM Grandから北端のSAHARAまでの全線を乗車しました。途中、BoingoとWestgateの両駅は停車中に駅名標だけ撮影したので「全駅訪問」ではないものの、長年の懸案だった乗りつぶしを達成できてよかったです。
※本記事は以下の記事を加筆・修正しました。
https://rail20000.jpn.org/foreign/foreign5.html
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