日本の国内線の「最高峰」
飛行機の座席クラスは様々なタイプが存在しますが、国内線の最高峰ともいえる存在なのが「JAL国内線ファーストクラス」です。以前、ANAの「プレミアムクラス」には乗ったことがあり、比較対照のためJALファーストクラスにも乗ってみようと思い立ちました。
プレミアムクラスの乗車記はこちらです。
https://rail20000.jpn.org/others/others39.html
とはいえそこは最高峰、乗るのはそう容易ではありません。まず、ファーストクラスが存在する機材はエアバス350やボーイング787といった大型機に限られており、これらが投入されるのは主に幹線(羽田~伊丹・那覇・福岡・新千歳など)です。また、座席数も少なく、エアバス350で12席、ボーイング787だと6席しかありません。よって、直前の予約だと満席であることも少なくありません。
また、お値段も「最高峰」で、早期購入割引(「先得」など)により大幅に安くこともありません。唯一使い物になるのは株主優待割引ぐらいでしょうか。(ただし枠はかなり少なく、沖縄線などはかなり先まで満席になっていることが多い) それ以外の割引(「特便」など)を使う場合、一般席との差額は羽田~伊丹間だと約10000円程度ですが、羽田~那覇・新千歳間だと20000~30000円にもなり、庶民にはなかなか手が出せないレベルの金額になってきます。
今回、庶民でも何とか手を出せる羽田~伊丹間でファーストクラスを体験してきました。果たして10000円の価値はあるのでしょうか。
チェックイン:専用検査場を見逃す…
3月末のある日、朝の羽田空港第1ターミナルに到着へとやってきた。普段はANA利用が多く、第1ターミナルの出発ロビーに来たのは数年ぶりである。前回ANAプレミアムクラスを利用した際は専用のカウンター・手荷物検査場が使えたので、JALにも専用カウンターがあるはず…とその辺の案内図で探してみるが、見当たらない。今回はWebチェックイン済みで、普通の検査場も空いているので、諦めて手近の検査場を利用する。関係ないが、JALアプリに表示される搭乗券代わりのRFIDが妙に小さく、検査場入口での読み取りにえらく難儀した。画面いっぱいに拡大してあげると読み取れたが、できれば改善をお願いしたいものだ。
無事検査場を通過し、この後搭乗するボーイング787の機体を撮影すると、すぐさまファーストクラス客(+JALステータス保持者)が利用可能なラウンジに向かう。入口の立派な自動ドアを通り抜けたその先には、専用の検査場が…。やはりちゃんと探せばあったようだ。事前のリサーチ不足であった。
ラウンジ:ANAラウンジよりも「非アルコール派向け」
ラウンジ入口では例によってうやうやしい出迎えをうけた。JALの国内線ラウンジは「ダイヤモンド・プレミアラウンジ」「サクララウンジ」の2つに分かれている。前者はファーストクラス乗客と「ダイヤモンド・JGCプレミア」のステータス保持者、要するに高レベルのステータスを持っている客専用で、サービス内容もより豪華であるようだ。
中に入ると、駐機するJALの飛行機が良く見渡せる窓際のカウンター席と、オフィスのような一人用のテーブルがずらりと並んでいた。ファミリーや団体客よりも、移動の合間も仕事に追われる忙しいビジネスマンを指向したような内装で、実際の客層もビジネスマン風の人が多い。奥の方のスペースには数台のマッサージチェアも置かれていた。
時間もないので早速、飲食物の置かれたカウンターへ向かう。ドリンク類はコーヒー・紅茶・緑茶・トマトジュースの他、何種類かのビールサーバー、それにウィスキーが一種類のみ提供されていた。ビールは飲まなかったが、エビスやプレモルなどハイブランドが並んでいて感心。ただ、ANAのラウンジは日本酒や焼酎が数種類ずつ並んでいるなど酒の種類が豊富であるのに対し、こちらは意外とあっさりしている。
一方、食べ物の方は豊富で、「メゾンカイザー」のパン2種(クロワッサンと種類不明の甘いパン)、おにぎり1種、スープ2種(味噌汁とコーンスープ)、ハーゲンダッズのアイス2種(緑茶とプリン)、おつまみと飴が数種類。以前利用した羽田の国際線ラウンジにはさすがに劣るが、海外の下手なラウンジに比べればそんなに見劣りしないのではなかろうか(画像で見ただけなので憶測だが)。この後に機内食も控えているので程々にしておこう、と思いつつもパンやおにぎりをついつい全種類食べてしまうあたり、お里が知れている。
シート:フットレスト&バイブレーション機能付き
出発15分前にようやくラウンジを出て搭乗口に向かう。既に一般席の搭乗が始まっており、もちろんファーストクラスの客たる私はすぐに搭乗できた。ファーストクラスは機体の最前方に6席(2-2-2配列)並んでいる。今回は予約が直前だったので、内側の席しか取れず。
席に座ろうとすると、アメニティがいくつか並んでいた。スリッパ、(単なるイアフォンではなく)ヘッドフォン、それにテンピュールの小さなクッション(私は腰にあてがう形で使っていた)、それにこの後出てくる機内食のメニューが各席に置かれている。スリッパは使い捨てとは思えない立派なもので、小さいながら靴ベラもついていた。
肝心のシートだが、黒い革張りの大ぶりなもので、座ってみると腰の左右に拳が入るほどの余裕がある。実は後述するとおり時間的余裕がなく、リクライニングをフルに倒してみる余裕はなかったのだが、後ろの壁までの距離から想像するに新幹線グリーン車ぐらいには倒せると思われる。そして、これも試せなかったものの足元にはフットレストもある。先頭ということで目の前は当然壁なのだが、フットレストをフルに引き出しても十分に余裕があるぐらいの距離が確保されていた。壁に取り付けられているモニターも、国際線ビジネスクラス並に大きい。ただし、国際線のように長編映画やゲームは楽しめず、国内外のドラマや民放のバラエティが何種類かずつ見られるだけのようだ。
ちなみにリクライニングはスイッチ操作により電動で行える。その操作ボタンの脇に、座席とフットレストをバイブレーションさせるボタンが付いており、少し気持ちがいい。数分使い続けると慣れてきてしまい、ほぼ何も感じなくなってしまったが…
機内食:国際線ビジネスクラスを彷彿(乗ったことないけど)
座席でしばらく待つと、ファーストクラスは6席全てが埋まった。後方のクラスJも満席に近い搭乗率であるようだ。ファーストクラスの客を見渡すと、いずれも初老の男性である。中でも隣の席に座った紳士は、スーツをびしっと着込み、席に座るとモニターには目もくれず書類に目を通していた。こういう人は乗るべくしてファーストクラスに乗っているわけで、背伸びして乗っている私とは訳が違う。いつかはこういう大人になりたいものだ(?)。
そして、全員の座席にCAさんがやってきて「○○(私の名前)様、本日はご搭乗ありがとうございます。本日担当させて頂きます△△と申します」とのご挨拶を受ける。飛行機の上級クラスに乗ったことのない私は、「本当にこういう挨拶してくれるんだ…」と頭の中では感心しきり。
搭乗に手間取ったのか予定より10分弱遅れてドアが閉まり、プッシュバックの後、沖合いの滑走路までごろごろと転がっていく。ようやく飛び立ち、シートベルトサインが消えたところで早速機内食の提供が始まる。料理と、事前にオーダーしておいたシャンパンが程なく届けられた。表面の銀紙を全部めくってみると、前菜3種、肉料理と野菜の盛り合わせに温かいパンとバター、小さな焼き菓子が並んでいる。皿は全て陶製で、カトラリーもステンレス製であった。ちなみに、正式なメニューは以下のとおりである。(メニュー表から抜粋)
時間もないので、観察もそこそこに食べ始める。どうしても時間が気になってしまい(航路図を見て「今静岡上空」「もう渥美半島まで来ちゃった」と心の中で叫んでいた)、シャンパンで肉を流し込むような慌ただしい食事になってしまったが、味はよかった。機内食というと妙にぱさぱさだったり逆に水っぽかったりと水分量の調整に失敗しているケースが多いが、今回のはそういったことはなく、一般レストラン並みによくできていた。おそらく、下手な海外キャリアのビジネスクラス以上のクオリティといえるのではないか(憶測)。もっとも、ローストポークは肉厚で脂も多くガツンとした食べ応えがあり、初老の紳士たちにはやや重かったかもしれない。
料理を食べ終え、焼き菓子と食後のコーヒーを急いで飲み食いすると、ちょうどベルトサインが点灯した。気付くともう奈良上空まで来ていたようだ。ANAプレミアムクラスに乗った時は5分ばかりフルリクライニングにして寝転がってみたのだが、今回そこまでの余裕はなかった。羽田~伊丹線は気軽にファーストクラスを味わえるのだが、所要時間が短すぎ、サービスに余裕がないところがネックである。シートも快適だし、できればこのまま那覇か台北、何ならシンガポールあたりまで飛んでいってほしいと思ってしまった。
もちろんそんなことが起きるはずもなく、飛行機はあっさりと伊丹空港に着陸。ファーストクラスの役得で一番先に外に出られた。
まとめ
初のJALファーストクラスは、短かったものの大変すばらしい体験でした。先程、羽田~伊丹間のファーストクラス追加料金は約1万円と書きましたが、果たしてサービスに見合ったものなのでしょうか。私のどんぶり勘定でサービスを価格化してみると、
- 座席:「EX予約サービス」東京~大阪間普通車とグリーン車の差額:4770円
- ラウンジサービス:国内線サクララウンジの利用料が3000円なので、+1000円で4000円
- 食事:レストラン並みの食事+シャンパン付きなので3000円
となり、これを足すと11770円となり元の値段を大きく超えます。フライト時間が短くてとにかく慌ただしいのが難点ですが、価格に見合った価値はあると個人的に考えます。
それに、ラウンジに入り浸ったり機内食を食べたりすることで、コロナ禍でお預け状態の国際線フライトに乗った気分になれるのも大きいです。国際線フライトに飢えている方は是非一度乗ってみてはいかがでしょうか。
コメント