九州、D&S列車の旅

 近年、全国の鉄道で個人の旅行客をターゲットにした観光列車が次々と登場している。 その先駆けとなったのがJR九州で、今では9種類もの観光列車(JR九州は「D&S列車」と呼称)が走っている。
 これまで、JR九州の観光列車には何度も乗車してきたが、今回は2日間をかけて5つの観光列車に乗車してみることにした。 本当は全部に乗ってみたかったのだが、 観光列車の中にはいわゆる「盲腸線」を走るものもあり、これを2日という短期間で乗車するのは難しく、やむを得なかった。
 今回乗車した路線はいずれも既に複数回乗車した経験があるが、いずれも絶景を誇る路線であり、 飽きるどころかむしろ楽しみである。

目次

2014/5/1

■ 博多9:24発〜由布院11:34着 ゆふいんの森1号

 朝一番の飛行機と地下鉄を乗り継ぎ、まだ通勤客の行き交う博多駅へとやってきた。 博多駅の駅ビルは九州新幹線開業に合わせて建て替えられたばかりだが、その横では早くも別の新しいビルを建築中であった。
 ここから、まずは「ゆふいんの森」に乗るのだが、その前に駅コンコースの駅弁売り場に向かう。 ここでは九州各地から集められた選りすぐりの駅弁が売られており、その種類は20を超えていただろうか。 さんざん迷いながら、何とか2つの駅弁を選び出し、購入する。実はこの後列車の中でも弁当を買うかもしれないのだが、 あいにく今後の行程で博多による機会はないため、思い切って2個も買ってしまった。
 駅弁を抱えてホームに上がり、これから乗る列車を迎える。ホームには団体を含む多くの観光客が待っていた。 程なくやってきた列車をひとしきり撮影し、列車に乗り込むと、車内は予想外に混んでいた。車内放送によると今日は満席だという。 3日前に指定席券を買ったときはかなり空いていたので、これは想定外だった。どうも台湾からの団体客が大挙して乗り込んでいるらしい。 向こうの国でも「ゆふいんの森」の人気は高いのだろうか。
 博多を発車した列車は、しばらく鹿児島本線をややゆっくり進む。二日市を過ぎたあたりで、車内を見学に行く。 まずはデッキだが、この車両はハイデッカー構造となっているのが特徴で、ドアを入ってすぐの所に階段がある。 座席周りは木目調の内装なのに対し、デッキは金属むき出しの内装となっているのが特徴だ。 隣の車両に行くと、ビュッフェがある。ビュッフェは久留米を出たくらいから営業するんだよな、と思っていると、すでに営業を開始していた。 そこで、ゆふいんの森車内限定の駅弁と、由布院サイダーというのを買う。 ビュッフェの前にはハガキ大の乗車記念証というのがあるので、貰っていく。これは表が列車のイラスト、裏がスタンプ台紙となっているもので、 この後乗った他のリゾート列車にも同じようなものが置かれていた。
 列車は久留米から久大本線に入り、筑後川沿いの平野を進んでいく。しばらくすると平野が狭まり、川っぷちを進むようになる。 夜明で日田彦山線と合流し、やがて日田に着く。ここでの下車はあまりなく、みな由布院を目指すようだ。
 この列車は単なる物見遊山のための列車ではなく、久大本線の速達列車という側面もあるためか、この後の列車のように客室乗務員が頻繁に回ってくる、 ということはなかった。それどころか、「慈恩の滝」という紙を掲げにやってきたのは初老の車掌さんだった。客室乗務員の数が不足しているせいだろうか。 その慈恩の滝を過ぎ、相変わらず廃墟のような豊後森の機関庫を見ると、由布院まであと少しだ。 前回乗ったときは曇って見えなかった由布岳がはっきり見えるようになると、程なく由布院に到着する。


「ゆふいんの森1号」の車両は、入り口を入ってすぐに階段がある独特の構造。


由布院駅で多くの観光客を吐き出す「ゆふいんの森」。

■ 由布院11:44発〜大分12:42着

 久々にやってきた由布院駅は駅舎がすっかり新しくなり、豪華寝台列車「ななつ星」専用の待合室ができるなど、 すっかり様変わりしていた。ここからは普通列車に乗り換え、大分を目指す。「ゆふいんの森」の客の大半は由布院で下車するようで、 普通列車に乗り継ぐ客はほとんどいない。2両編成の気動車はがらがらで由布院を発車する。
 列車は由布岳を脇に見ながら、山の中を進んでいく。途中の駅での乗降はほとんどなく、のんびり雰囲気が流れる。 途中、今乗っているのと同じキハ200とすれ違ったが、乗車している車両は昔からあるオール転換クロスシート車両なのに対し、 あちらは最近投入された車両で、半数の車両がロングシートだった。JR九州の最近の車両は、 バスのような大きな行先表示器が印象的。
 途中の向之原あたりからは沿線に住宅が増え、乗車してくる客も増えてきた。やがて、終点の大分に到着。

■ 大分13:02発〜豊後竹田14:25着

■ 豊後竹田14:27発〜宮地15:09着

 大分駅に降り立つのは6年ぶりだが、しばらく来ないうちに駅が高架化されてすっかり様子が変わっていた。 しばらく駅の中をぶらついた後、ホームに戻る。すると、駅の中が何やら騒がしい。日豊本線内で人身事故があり、 「ソニック」が遅延しているらしい。今日は北九州空港から九州入りし、「ソニック」で大分に向かうプランも考えていたため、 そちらを選ばなくて本当に良かったと思った。
 大分からは豊肥本線の普通列車で阿蘇を目指す。車両はまたもオールクロスシートのキハ200だった。 絶景で知られる豊肥本線だが、大分口は割と普通のローカル線の車窓が続く。 がらがらの車内で、大分で購入した駅弁を食べるなどしてのんびり過ごす。
 やがて、終点の豊後竹田に到着、ここで宮地行きの列車に乗り換える。 この列車はキハ200の単行で、車内はロングシートであった。そこで、運転台の直後に立ち、車窓を眺めることにする。 車内の客はわずか5人ほど。途中駅で降りた客を除けば、あとは皆趣味者のように見受けられた。
 豊後竹田を発車した列車は、阿蘇の外輪山を越えるべく、30パーミルを越える急勾配を延々と上り続けていく。 SLの時代は大変な難所だっただろうが、新性能の気動車は急坂を難なく進んでいく。 途中、所々擁壁や路盤が新しい箇所がある。2012年にこのあたりで大規模な水害があり、今乗車している区間は1年ほど不通になる被害を受けた。 その際に修復を行った跡である。やがて、列車は外輪山を長いトンネルで越える。このトンネルも例の水害で被害を受け、 流れ込んだ濁流で線路が押し出されてしまった。押し出された線路が出口付近でとぐろを巻いていた光景は新聞でも大きく取り上げられた。
 トンネルに入ると、それまでとは一転して下り勾配となり、走りも軽快になる。 トンネルを出てすぐの所で、阿蘇のカルデラ盆地が一望できる。トンネルの合間から一瞬見えるだけだが、見逃せない絶景だ。 あとは坂を転がるように下り、終点の宮地に到着する。


豊後竹田〜宮地間は閑散区間のため、普通列車は単行である。

■ 宮地15:40発〜熊本17:13着 あそぼーい!

 宮地駅では少し時間があるので、駅舎で休憩する。駅舎の一角は例の水害の記念館となっており、 ぐにゃぐにゃに曲がった線路の一部が展示されていた。
 やがて、これから乗る特急「あそぼーい!」が入線してきた。使用されているキハ183は、 幾多の改造を経て「オランダ村特急」「ゆふいんの森」といった観光列車として利用された後、 今はこの「あそぼーい!」に落ち着いている。改造前を含め、この車両に乗るのは今回が初めてだ。
 席に座る前に、車両をいろいろ観察してみる。まず外観は、黒い犬のイラストがいくつも貼られている。 車内は基本的に化粧板や座席のカバーを張り替えただけのようだが、3号車は内装が一新されていて、 目玉となる「白いくろちゃんシート」が設置されている。これは親子連れで座ることを想定したシートで、 子供が窓際に座れるよう回転式のシートではなく、あえて転換クロスシートにしたというエピソードがNHKの某番組で紹介されていた。 この車両には他にも、売店や子供向けの遊具スペースが設置されていた。一応列車の中ということで安全上の問題があるためか、 遊具は係員がいるときにしか利用できないことになっていた。あと、従来のリゾート車両と同様、車内に絵や工芸品などが数多く飾り付けられている。
 乗車記念証を貰いがてら売店を覗いてみると、列車オリジナルの弁当も売られていたが、 もう既に3つも駅弁を食べた後で満腹状態のため、くまモンサイダーを買うにとどめる。
 宮地を発車する頃は車内の客はまばらだったが、阿蘇、赤水と停まるうちに客も増え、それなりの賑わいとなった。 有名な立野のZ型スイッチバックや、阿蘇の外輪山を刻む白川の渓谷など、豊肥本線のこのあたりの車窓は何度見ても飽きない。 車内では例によって客室乗務員による観光案内があるが、子供向けという列車のスタイルを意識してかクイズ形式となっていた。
 肥後大津を過ぎ、市街地をのんびりと走っていると、「並走するSL人吉に手を振りますので、興味のある方は集まってください」という放送が流れた。 何のことかよく分からないので行かなかったのだが、熊本駅の手前の鹿児島本線との合流部分で、本当にSL人吉が現れた。 向こうの車内では子供たちがこちらに手を振っている。並走は1km近く、2分ぐらいは続いただろうか。 わざわざ両列車が並走するよう絶妙なダイヤを組んでいるわけで、見事な演出に感心させられた。車内もこの瞬間が一番盛り上がっていたようだ。 それと同時に、明日SL人吉に乗るときは熊本から乗りたいな、と思い始めた。当初の予定だと新八代から乗るつもりだったのだが、 それでは一部の「演出」を見逃してしまうかもしれない。そこで、熊本駅に着くとあわててプランの練り直しにかかった。


豊肥本線に新たに投入された観光列車「あそぼーい!」。


車体にはマスコット「くろちゃん」のイラストがふんだんに貼られている。


この列車の目玉は、独特の形状をした「親子シート」。


親子シートのある車両には、子供用の遊戯スペースもある。

■ 熊本17:47発〜新八代17:58着 さくら417号

■ 新八代18:01発〜八代18:04着

■ 八代18:30発〜新水俣19:29着 肥薩おれんじ鉄道

■ 新水俣20:09発〜鹿児島中央20:40着 さくら567号

 ひとまず成案ができたところで、熊本駅から新幹線に乗車する。本来だとこのまま鹿児島中央に直行するつもりだったが、 プランを変更し新八代で下車。在来線で八代に向かう。
 本来のプランだと、翌朝鹿児島中央から肥薩おれんじ鉄道経由で新八代に向かい、途中からSLに乗るつもりだった。 それをやめ、おれんじ鉄道のうち八代〜新水俣間の乗車を今日に回すことにしたのだ。明日は川内から出水までおれんじ鉄道に乗り、 出水から新幹線で熊本に向かえばSLに間に合う。それに、今の時間だとちょうど八代海に沈む夕日を拝めそうだ。
 学校帰りの高校生に混じり、八代を出発。次の肥後高田でさらに高校生を乗せ、2両のディーゼルカーはかなりにぎやかになった。 日奈久温泉を過ぎると、いよいよ海沿い区間を走る。八代海の向こうに、天草上島がうっすらと見える。 この区間はおれんじ鉄道、いや九州島内でも屈指の絶景区間だと思う。そして期待通り、天草の島影に沈む夕日を見ることができた。
 このあたりでは比較的大きい街である佐敷あたりで日が完全に沈み、何も見えなくなった。程なく新水俣に到着。 新水俣は、想像していた通り周囲に何もない駅だった。唯一駅前にコンビニがあり、ここで買い物をしたり、 博多で購入以来食べる機会を逸していた駅弁を食べたりして、新幹線に乗り継ぐまでの時間をつぶす。 そうして、ようやくやってきた「さくら」に乗り、鹿児島中央へ。ここで一日目は終了。


久々の乗車となる肥薩おれんじ鉄道の車両。


有明海に沈もうとする夕日。

2014/5/2

■ 鹿児島中央6:32発〜川内6:44着 つばめ308号

■ 川内6:57発〜出水8:03着 肥薩おれんじ鉄道

■ 出水8:27発〜熊本8:59着 さくら544号

 翌朝、新幹線で鹿児島中央から川内へ向かう。乗車した車両は800系の後期車で、 妻面に金箔を貼り絵を飾るなど、JR九州らしい独特の内装が印象的だ。
 川内からは昨日に続き肥薩おれんじ鉄道に乗る。川内を出てすぐの薩摩高城から牛ノ浜までは海沿いの区間を走り、 絶景を眺められる。もっとも、昨日八代あたりで見たのとそれほど変わるわけではないので、わざわざ無理に早起きして乗らなくても良かったかな、 とも思った。このあたりの区間では国道3号線がずっと並走しているのだが、これが片側1車線の貧相な道で、 天下の一ケタ国道とは思えない光景だった。
 折りしも通学時間帯でもあり、各駅で高校生を乗せながら列車は進んでいく。 野田郷、西出水といった駅で高校生が下車していき、出水に着く頃には車内は一気に閑散としてしまった。 出水から再び新幹線に乗り、一気に熊本へ向かう。

■ 熊本9:44発〜人吉12:13着 SL人吉

 熊本駅に戻ると、既にSLが入線していた。 群がる観光客に交じって一通り写真を撮った後、車内に入る。 内装はこれまたJR九州らしく凝ったものだ。昔の客車の「ダブルルーフ」を思わせるような天井が特徴的。 座席もボックスシートながら机が備え付けられた重厚なものだ。 ちなみに、座席は2人用と4人用が入り混じっており、2人席の場合は向きに当たり外れ(進行方向向きか逆向きか)があるので、 座席はよく吟味しておきたい。
 一通り座席が埋まったところで、発車。SLらしいゆっくりとした発車で、発車時の衝撃は全くない。 しばらく進むと熊本の車両センターがある。ここには以前乗った「あそ1962」用の気動車がボロボロの姿で放置されていた。 真っ平らな熊本平野をゆったりとした速度で進むうち、客室乗務員の女性がやってきて、挨拶。 ここで、沿線の見どころを記載した紙が配られた。また、近年沿線では、SLに対し手を振る運動というのをやっているので、 手を振り返してあげてくださいとのこと。確かに、お年寄りや子供を中心に列車に手を振る人がいた。
 しばらくしたところで、乗車記念証を貰いがてら売店を覗いてみる。すると、車内限定の駅弁というのを売っていたので、買ってみる。 「おごっつぉ弁当」といい、大きなおにぎりが2つ入った豪快なものだった。
 やがて列車は新八代に着く。ここで早くも降りる人がいたのが意外だったが、乗ってくる人もいて車内の座席は埋まったままだった。 次の八代ではしばし小休止。先頭部にはSLを撮影しようとする人が群がっていた。 八代からはいよいよ肥薩線に入る。球磨川の清流に沿って走る絶景の区間だ。
 ぼんやり車窓を眺めているだけでも楽しいが、一般の人はやはりそうはいかないようで、 客を飽きさせないように途中いろいろとイベントがある。 まず、球磨焼酎を使ったアイスというのを売りに来た。思わず買ってみたがなかなか良かった。 また、停車駅では比較的長く停車するのでSLの撮影もできる。汽笛を鳴らして黒煙を上げてくれるサービス付きだ。 そして、恒例の写真撮影も行われた。何となく断り切れずに1枚撮ってもらう。
 そうしているうち、列車は鉄橋を渡って川の反対側を進むようになり、席から川の流れが見えなくなった。 そこで、この列車の名物の展望スペースに行ってみる。先頭には子供用の小さな椅子が据え付けられていて、実際に座っている子供もいた。 ここにもアイスの車内販売が来て、結構売れているようだった。
 やがて列車は一勝地に着く。ここでは駅構内に出店が来ていて、地元の名産品を売っている。 焼酎の試飲というのもあり、一杯飲んでみる。試飲だけして帰るというのも何なので、「いきなり団子」を1つ購入した。 この列車に乗って以来、こういう「買い食い」がやたら多い。 車窓の球磨川は上流部に差し掛かり、流れが急になってきた。球磨川下りの観光船が運航するのはこのあたりで、最近はラフティング体験もできるという。
 やがて車窓に街が広がってきて、終点の人吉に到着。2時間半の長丁場だったが、途中の楽しいイベントのおかげであっという間に感じられた。 駅のホームには今や数少なくなった駅弁の立ち売りがいたので、今後のことを考え一つ購入する。 名物の「栗めし」は何度も食べたので、あまり見たことのないのにしておく。


八代駅で発車を待つSL。


座席は重厚な造りで座り心地も上々。


最後尾はガラス張りの展望スペースとなっている。


展望スペースの様子。ここにずっといる客も多い。


黒煙を上げて発車を待つ。

■ 人吉13:21発〜吉松14:47着 いさぶろう3号

 人吉では1時間余り待ち時間がある。人吉といえば温泉地であり(くま川鉄道の人吉駅は「人吉温泉」と名乗っているほど)、 待ち時間を活かして一風呂浴びていこうと思う。駅の観光案内所で聞くと、駅の近くに日帰り入浴のできる旅館があるというので、 行ってみることにした。
 風呂に入ると、先客は誰もいなかった。お湯につかると、肌に大量の小さな泡がまとわりついてきた。そういう泉質なのだろうか。 しばらく浸かっていると、同い年ぐらいの男性が入ってきた。するとその男性に「SLに乗ってましたよね」と話しかけられた。 話を聞くと、彼は千葉から来ていて、昨日の大分から私と同じ行程(肥薩おれんじ鉄道のあたりは除く)で旅しているらしい。 そういえば、豊肥本線の豊後竹田〜宮地間で見かけたな、と思い出した。 そして、今日はこれから私と同じ列車で鹿児島に出て、明日は宮崎に移動して日南線の「海幸山幸」に乗るそうだ。 海幸山幸は私も乗ってみたかったので、うらやましい限り。それにしても、似たようなことを考える人がいるものだ。
 駅に戻ると、既にこれから乗る「いざぶろう」が入線していた。列車はかつては1両で走っていたのだが、 今日は3両の長い編成で、人気が定着してきていることが伺える。 車窓については以前の旅行記に書いたので詳しくは述べないが、ほとんど地元の利用のない途中駅、 スイッチバックやループ線など今となっては冗長な設備群、剥製のような姿で矢岳の機関庫に眠るSL、 これらの姿を見ると「無常」という言葉が浮かんでくる。こういった「枯れた」雰囲気がこの区間の魅力だと思うのだが、 横に座った家族連れの子供たちはつまらなさそうにしていた。子供に理解しろというのはさすがに無理があるか。
 この日は天気は良かったがガスがかかっていて、真幸駅手前の展望ポイントから桜島は見えなかった。 前回は見えたのだが、見える方がむしろ珍しいのかもしれない。人吉から1時間余りで、終点の吉松に到着。


いざぶろう3号は九州横断特急から接続を取って発車。


昔にタイムスリップしたかのような矢岳駅。

■ 吉松15:03発〜鹿児島16:27着 はやとの風3号

 吉松では2度目の乗車となる「はやとの風」に乗り継ぐ。実はこの列車、事前に指定席券を買おうとしたところ何故か満席で、 仕方なく自由席に乗る心づもりでいた。ところが当日の朝、鹿児島中央駅で調べてみると何故か空席が3席もあった。 海側の窓際の席も空いていたので、無事席を抑えることができた。 何らかの理由で確保されていた「調整席」が、当日になって解放されたのだろうか。
 そこまで気を揉んだ列車だったが、実際に乗ってみると自由席もそれほど混んでおらず、指定席にもわずかながら空きがあった。 列車に乗り込むと早速、予約しておいた駅弁「かれい川」を受け取る。予約分しか残っていなかったようなので、 予約しておいたのは正解だった。ちなみに本州から駅弁を予約する場合、通信販売を利用する必要があり、駅弁代のほかに郵送料が別途かかる。 これが結構高額なのが困りものだ。ちなみに、乗車日の2日前までに九州入りすれば、JR九州のみどりの窓口等で買える。 予約は2日前までに行う必要があり、今回は通販に頼らざるを得なかった。
 車窓の方はこれまた前回と変わらないので割愛するが、大隅横川や嘉例川といった古い駅舎が残る駅では停車駅が多めに取られており、 見学ができた。嘉例川などは知名度が上がり、いっぱしの観光地になりつつあった。 嘉例川から隼人にかけては深い森の中を進むが、このあたりは30パーミルもの勾配になっていて驚いた。 実は、勾配のきつさでは人吉〜吉松間の山線区間に引けを取らないのだった。
 隼人を過ぎてしばらくすると、鹿児島湾に沿って海沿いを走る。この列車の目玉といっていいだろう。崖の下にある竜ヶ水駅を過ぎ、 海の眺めを堪能したところで、鹿児島駅に到着。市の代表駅のような名前を持ちながら実は中心部からは外れているというので有名な駅だが、 何故かここで下車する。先程風呂で話した男性に軽く挨拶して、外に出た。


嘉例川駅は「はやとの風」の客以外も訪れる観光スポットと化していた。

■ 鹿児島港16:50発〜桜島港17:05着 桜島フェリー

■ 桜島港17:45発〜鹿児島港18:00着 桜島フェリー

 鹿児島駅で下車したのは、ちょっとした時間つぶしを思いついたためである。 駅から10分ほど歩いて向かった先は、桜島へ渡るフェリーの乗り場。このフェリーはかなりの頻度で運航しており、 今の時間は10分間隔とバス並みの頻度である。そのため、気軽に海の散歩を楽しめる。
 乗り場に着くとちょうどフェリーが出た直後だったが、程なく桜島の方から別の船がやってきた。 この船は普通の船と違って、フェリーの両側に操舵室があるのが特徴だ。普通の船だと、到着か出発の際に船を180度回転させてやる必要があるが、 運航頻度の高いこのフェリーではそんな時間はない。そのため、こんな構造になっているのだろう。
 乗ってみると船室は2階建てで、その上にはデッキもある。かなり収容力はありそうだ。 せっかくなのでデッキの先頭に立ち、海を眺める。船からは、先程通ってきた竜ヶ水のあたりがよく見える。 見てみると、鹿児島湾にあたる部分だけが深くえぐれたような地形になっているのがわかる。 確か、鹿児島湾自体が阿蘇や箱根と同じくカルデラになっている。その火口にあるのが桜島である。
 そうして海を眺めているとだんだん桜島が目の前に迫ってきて、桟橋に到着する。 近くの海沿いに公園があるというので行ってみると、海の向こうに鹿児島市街が見えた。 活火山のほど近くに、これ程大きな都市があるというのも、何だか不思議な感じだ。 そして、公園には30mもの長い足湯がある。足を浸してみると、熱くて10秒と入っていられない。すぐに入るのを諦めた。 足湯の「下流」の方に行くと、温度が低くぬるま湯のようになっていたので、ちょうどいい温度の場所を吟味する必要がありそうだ。
 再びフェリーで鹿児島市街に戻り、路線バスで鹿児島中央に戻った後、今度は高速バスで鹿児島空港に向かう。 鹿児島空港は先程通った嘉例川駅の近くにあり、市街からだとずいぶん時間がかかった。 空港では時間が余ったので、食べる機会を逸していた駅弁「かれい川」を食べる。時間が経ってしまったのでやや味が劣化していたが、 それでもどのおかずも美味しかった。次来る機会があればまた買ってみたい。
 羽田行きの最終便で東京に戻る。今回の旅行は短期間だったが、なかなかハードだった。


桜島フェリーは折り返しの効率を上げるため前後に2つの操舵室がある。