2016/5/3
札幌7:00発〜釧路11:00着 スーパーおおぞら1号
翌朝、今度は「スーパーおおぞら」の始発に乗り、一気に道東の釧路に向かう。
この日の札幌は日中20度以上に気温が上がるとの予報だったが、朝方はまだ肌寒い。
今日は3連休の初日であるためか、朝6時代ながらも駅は人出が多い。
列車の方もなかなかの盛況で、新札幌を出た時点で空席は1両に5個程度であった。
列車は札幌を出て、南千歳までは昨日来た道を折り返す。
南千歳からは石勝線に入る。石勝線は駅が少ない分、行き違いのための信号所がやたらと多く、
次の追分までの間に早くも2つも信号所がある。こんなに必要なのかと思うが、
ダイヤ乱れ時に柔軟な運用を図るために必要なのかもしれない。
信号所の前後のポイントは、雪除けのためのドームに覆われているのも特徴だ。
追分の先の川端から、いよいよ山深くなる。列車は夕張川に沿ってぐねぐねとカーブしながら進む。
石勝線は昭和末期に開業した比較的新しい路線で、トンネルを駆使して極力直線的に線路が引かれている。
しかし、追分〜新夕張間だけは既存の路線を流用したため、カーブが多い。
この区間は駅から信号場に降格になったものも多い。
新夕張で夕張行きの線路と分かれ、トンネルの多い区間に入る。沿線は占冠周辺以外、ほぼ無人地帯である。
トンネルの合間から時折だが、渓流が見える。最初のうちは日本海に注ぐ夕張川の水系だが、
途中から太平洋に注ぐ鵡川水系に変わる。占冠を過ぎ、数少ない人工物である道東道と時折交差しながら進むと、
トマムに着く。巨大なホテルが立ち並ぶリゾート地だが、乗降客はいない。レンタカーで来る客が多いのだろうか。
トマムを出てしばらくすると、列車は新狩勝トンネルに入る。トンネルに入ってすぐに、
富良野方面から来た根室本線と合流する。注意深く聞いていると、ポイントを通過する音がするので分かる。
トンネルを抜けると、列車はジグザグにカーブしながら十勝平野に下っていく。はるか下の方に十勝平野の丘陵が見える。
トンネルを抜けてすぐの信号所で、富良野方面へ向かう普通列車とすれ違う。その次の広内信号所は、
珍しく3本線路のある構造となっていて、札幌行き特急との行き違いと、帯広方面への普通列車の追い越しを一気にやってのける。
勾配を降り切ると新得に到着。十勝平野の外縁にあるのどかな町だ。
新得からはしばらく十勝平野を進む。線路も直線になり、勾配も緩やかになる。
しかし、列車は石勝線で力を使い果たしたとばかりに、直線をやや流して走る。
この辺の線路では、枕木を木製からコンクリ製に交換する工事が盛んに行われていた。函館本線で貨物列車が脱線した時、
木製枕木が槍玉に挙がっていたから、その影響だろうか。
列車はやがて帯広の市街に入り、高架の帯広駅に到着。沿線屈指の都市だが、降車する客は案外少ない。
釧路まで乗り通す客が多数派のようだ。その後もしばらく十勝平野を走り、池田の手前で3号車のデッキに向かう。
この池田ではステーキ駅弁が名物となっており、電話で予約すれば列車まで持ってきてくれる。
(時間によっては車販への積み込みもあるんだろうか?)受け取った弁当はできたてで、
早速ステーキをいただく。1080円の駅弁にしてはなかなかボリュームがある。
弁当を食べているうち、浦幌あたりで十勝平野が尽き、列車はちょっとした山越えに差し掛かる。
石勝線をパワフルに走っていた頃の勢いは最早なく、ローカル列車のようにゆっくりと峠を通過する。
峠を過ぎてしばらくすると列車はいよいよ太平洋岸に出る。と同時に、晴れから曇りに変わり、霧も出てきた。
その後もいったん内陸に入ると天気が晴れたので、海沿いだけ霧が出るらしい。
厚内から白糠にかけては、断続的ではあるが比較的長く海沿いを走る。海は鉛色で荒れており、まるで冬の日本海のようだ。
白糠を過ぎると釧路まではあと少しだ。海沿いにも工場など人工物が増えてきた。
札幌から4時間かけ、ようやく釧路に到着する。たっぷり乗ったという気がするが、この後すぐに別の列車に乗らねばならない。
釧路11:13発〜根室13:22着 快速ノサップ
「スーパーおおぞら」を降りて隣のホームに向かうと、2本の列車が待っていた。
釧網本線の塘路に向かう「ノロッコ号」と、花咲線の根室行きだ。
2006年に釧路に来た時もどちらに乗るか悩んだものだが、今回も前回と同じく後者を選択した。
これから5時間ほど掛け、根室を往復する。なかなかハードというか、阿保らしい行程だ。
根室行きの列車はいつも通りのキハ54単行で、車内は元特急用の簡易リクライニングシートを装備している。
窓側の席が一通り埋まったところで、釧路を発車。最初のうちは釧路の近郊なので、頻繁に停車する。
武佐という駅はホームの長さが短いらしく、車両の後ろ半分がはみ出す形で停車した。
その次の別保を過ぎると周囲は無人地帯となる。釧路までの区間はどんなに寂れたところでも、
道路や農地など何らかの人工物があったが、
ここは鉄道設備以外の事項物は本当に何も見えない。ここで早くもエゾシカと遭遇する。
列車はけたたましく警笛を鳴らしながら進む。
また、水場にはヤチボウズの群生が見られる。一瞬、生首が大量に並んでいるように見えなくもない。
15分ほど走ってようやく上尾幌に着く。しばらく農村地帯を走った後、厚岸の手前で海沿いに出る。
とたんに空が曇ってきた。ちなみにこの辺りは厚岸湾の中にあるため、先程見たほど海は荒れていない。
やがて、沿線最大の駅である厚岸に到着。下車する人は意外に少なく、根室前で行く長距離客が多いようだ。
厚岸を出ると、しばらく厚岸湖に沿って走った後、湿原の真ん中を進む。
釧路湿原のような大規模なものではないが、北海道でしか見られない雄大な車窓だ。
2006年の同じ時期に来たときは、残雪・フキノトウ・水芭蕉がとにかく目についたものだが、
今年は残雪は全くなく、フキノトウや水芭蕉は成長が進んでしまっていた。たまたまなのか、温暖化の影響なのかは分からない。
しばらく進むと、茶内に到着する。ここでは上り列車と交換するが、その上り列車が30分も遅れているという。
朝方発生した地震の影響とのことだった。そのため、ここでしばらく待ちぼうけを食らう羽目になった。
仕方ないので、外に出て駅周辺をぶらぶらする。こんな駅で降りることも今後ないだろうから、ある意味貴重な経験だ。
駅前には商店がいくつかある他、民家も結構あって、この列車の沿線では割と大きい方の駅だと思われる。
30分遅れでようやく茶内を発車し、列車は浜中、厚床と停車する。この辺りは大規模な牧草地が多く見られる。
ホルスタインが群れている光景も何回か見た。さすがは酪農で有名な根釧台地だなと思う。
厚床はかつて標津線が分かれていた駅で、広かったであろう構内の跡地や、標津線の廃線跡がまだ残っていた。
厚床の次の初田牛を過ぎると牧草地も尽き、低木がまばらに生えるだけの荒涼とした荒れ地が目に付くようになる。
途中の落石あたりで再度太平洋岸に出るが、この辺は非常に霧が濃く、眼下にかろうじて波打ち際を確認できたに過ぎなかった。
以前乗ったときは、海に突き出した落石岬が鮮明に見えたのだが。ちょっと残念だった。
このあたりまで来ると気温が低いせいか、水場には水芭蕉が咲いていた。
西和田を過ぎると農地や家が増え、だんだんと根室の市街地に近づいてくる。
日本最東端の東根室駅を過ぎると列車はくるっとカーブし、終点の根室に到着。
結局遅れはほとんど回復しなかった。運転士さんは慌ただしく折り返しの準備をしているようだった。
列車が折り返すまでほとんど時間がないので、駅前に立って辺りを見回してみる。
以前来た時とほとんど景色は変わっていないようだった。
DE10がけん引する「ノロッコ号」。かつて知床斜里〜網走間で乗ったことがある。
こちらは客車の方。加古川線の103系がこんな感じだったような。。
根室13:32発〜釧路15:51着
根室では本来10分ほど時間があるはずだったが、結局ほとんど何もできないまま折り返す。
今度は5〜6人しか乗客がおらず、空いていた。
帰りはさすがに見るものもないので、駅弁を食べたり旅行の記録をつけたりして時間をつぶす。
途中、上尾幌の先ではまたもエゾシカに出くわした。しかも、その数は尋常ではない。合わせて20頭ぐらいは見ただろうか。
シカを撥ねてしまうとお互い不幸なので(事故処理でさらに列車が遅れる可能性が高い)、
無事通過することを祈る。幸い、ぶつかることはなかった。茶内での遅れを引きずり、結局釧路には10分少々遅れて到着した。
釧路駅前17:40発〜釧路空港18:25着 阿寒バス
釧路空港19:10発〜羽田空港20:55着 AIRDO 74便
釧路では少し時間が余った。駅前の和商市場で土産を買ったりして時間をつぶしたが、それでも時間が余った。
しかし、釧路の駅前は飲食店なども少なく、無為に過ごさざるを得なかった。
ようやくやってきた連絡バスで空港に向かう。国道を大楽毛駅のあたりまで東に走った後、北上する。
途中、道路の看板を見ると「道東道」の文字が見える。もう釧路まで高速が伸びていたのかと思う。
駅前から40分ほどで空港に着いた。
釧路から羽田まではAIRDOで15000円弱、2時間ほどで到着する。
東京から釧路まで列車で30000円、丸一日以上かけてやってきたのが馬鹿馬鹿しくも思えてくる。
もう年齢も年齢なので、2日間もハードな乗り回しはやるものではないと実感した。
今後はただ列車に乗るだけの旅から、普通の観光も交えた旅行に方針転換を図ろうかな、とも思った。
どうせなら家族も連れて行ってやりたいが、そうなると列車に乗る時間の割合をもっと下げねばならないだろう。
ますます鉄道から縁遠い旅になってしまいそうだ。
ともかく、北海道新幹線の乗りつぶしは無事終わった。いつでも乗りに行ける関東・関西の通勤路線や、
わざわざそれだけのために乗りに行く気がしない地下鉄・モノレール・路面電車の類を除くと、
次の新線開業は2022年度の北陸新幹線・九州新幹線(長崎ルート)になりそうだ。
それまで、しばし列車旅も休止ということになるかもしれない。