2005/8/17
八王子6:36発〜小淵沢9:01着 429M
猛暑の時期とはいえ、朝の6時台ともなるとまだ空気は涼しい。
そんな朝早い八王子駅から、中央本線の普通列車松本行きに乗車する。
列車は6連で、早朝だけにがらがらだろうと思いきや、ハイカーや若者で結構混んでいる。
足の長い列車だけあって、18きっぷシーズンのこの時期はそれなりに混むようのだ。
八王子を発車し、小仏峠のトンネルを抜けると、都会から田舎へと風景は一変する。
途中駅でドアが開くたびに、ひんやりとした山の空気が入ってきて心地よい。
そんな空気を味わっているうちに、列車は大月に到着。
とはいえ車内の乗客はまだまだ先を目指すようで、車内の賑わいは相変わらずだ。
大月を出て、元スイッチバック駅の初狩を過ぎると、長い長い笹子トンネルに入る。
トンネルを抜けてしばらく走ると、勝沼ぶどう郷に着く。この駅からの眺めは良く、甲府盆地がよく見渡せる。
この辺の駅から山を目指す人は結構いるらしく、駅に停車するたびにぱらぱらとハイカー達が下車していった。
甲府盆地に降り、塩山に着く頃には車内の混雑は大分落ち着いてきた。
代わって乗ってくるのが、部活か補習に出かける学生たちである。
甲府を過ぎ、韮崎あたりまでは学生の姿が目立った。
韮崎を過ぎると、列車は延々と上り勾配を進む。何せ中央本線最高地点の富士見駅は標高が900mを超える。
ちょっとした山の山頂並の標高だ。列車は、そんな高さにまで居ながらにして運んでくれるわけで、
そう考えると何だか有難く思えてくる。
途中、日野春駅で特急「スーパーあずさ」を待避する。八王子を出て以来、初の特急待避だ。
昼間に中央本線の普通列車に乗ると、待避待ちが多くてやきもきさせられるが、
その点早朝のこの列車はほとんど待避がなくてよい。
日野春を出ると、あとは八ヶ岳山麓の高原地帯を突き進み、小淵沢に到着。
小淵沢9:18発〜中込10:46着 9251D
中込11:22発〜佐久平11:36着 135D
小淵沢からは、2度目の乗車となる小海線で佐久平を目指そうと思う。
小淵沢からの小海線は列車本数が少なく、本来だとしばらく列車がないはずだが、
この日は夏の掻き入れ時だけあって中込までの臨時列車が運転されている。
普通列車からの客と、その後からやってきた特急からの乗継客を乗せると、
車内は結構な混雑となった。列車は小淵沢を発車すると、右に180度カーブした大きな築堤を進む。
この築堤は中央本線からもよく見える。
八ヶ岳らしい森林地帯をしばらく進み、甲斐小泉に停車。
しばらく来ないうちに、駅舎は小さく新しいものに建て替えられていた。
さらに森林地帯を進み、甲斐大泉に停車。こちらの駅舎は古いままだった。
どちらの駅も別荘や美術館が多く点在するリゾート地で、観光客が多数下車していく。
甲斐大泉を過ぎると見所が訪れる。八ヶ岳に鋭く食い込む沢を、Ωカーブで超えるのだ。
これまで淡々と林の中を走ってきたところに、いきなり荒々しい沢が現れ、驚かされる。
そんな箇所を過ぎると、八ヶ岳観光の中心地清里に到着。ここで車内の客の大半が下車した。
清里から先しばらくは、高原野菜の畑が車窓に広がる。
その景色は本州離れしていて、北海道の富良野線あたりから見る風景かと思ってしまう。
そんな光景が信濃川上あたりまで続いた後は、千曲川に沿っての川下りが始まる。
こちらはごく日本的な車窓である。
小淵沢から1時間半ほどで、臨時列車の終点の中込に到着した。
中込は佐久平の南端に位置するが、駅前にはこれといった見所はない。
中込始発の定期列車の発車までは時間があるので、待合室でぼんやりと次の列車を待つ。
中込を出て10分あまりで、真新しい佐久平駅に着く。
新幹線が地平、在来線が高架という妙な位置関係が面白い。
前回乗車したときはこの先さらに小諸まで行ったので、佐久平で下車するのは初めてだ。
佐久平10:47発〜上田10:57着 507E あさま507号
これから先は篠ノ井まで一旦出て、篠ノ井線、中央西線に乗るつもりである。
しかし小海線で小諸まで出て、しなの鉄道に乗っていたのでは所望の列車に間に合わないため、
佐久平から上田までは長野新幹線でショートカットすることにした。
書き忘れていたが、今回の旅行の主体は18きっぷであるため、
佐久平から上田までは特急券の他に乗車券も買わねばならない。
切符を買って新幹線のホームに向かうと、列車が大幅に遅れているという。
その遅れはちょうど1時間程度のようで、幸いにもこれから乗る予定の1時間前の列車が間もなくやってくるという。
ホームに下りると、すぐに列車がやってきた。わずか10分の乗車で、上田に到着する。
上田12:24発〜川中島12:58着 2641M
城下町で知られる上田にやってきたのは初めてだ。長野新幹線開業とともに駅は整備されたようで、
どの施設も真新しい。その片隅に、上田交通の乗り場があった。列車の姿を眺めることはできなかったが、
ぜひ一度乗車してみたいものである。
上田からは、しなの鉄道で篠ノ井に向かう。この区間に前回乗ったのはまだJR信越本線だった頃であり、
しなの鉄道となってからは初めてである。車両は真っ赤な派手な塗装に変わったが、
車両自体はJR時代の115系を継承しており、車内の内装も従来と変わらない。
工場と果樹園が入り混じる車窓を眺めること30分で、篠ノ井に着く。
この駅で下車してもよいが、次の篠ノ井線まで時間があるので、2つ長野寄りの川中島で下車することにした。
川中島13:08発〜松本14:17着 1226M
「川中島」と聞いて真っ先に思い出すのは、川中島の合戦である。
そんな駅名に引き寄せられて下車した川中島駅であるが、駅構内に新幹線の高架が通る以外は、
これといった特徴もない駅であった。
しばらく待って、やってきた松本行き普通列車に乗る。
篠ノ井を出ると、列車は篠ノ井線に入る。この区間、中学生の頃に一度乗車して以来一度も乗っていなかった。
実に十数年ぶりの乗車である。
篠ノ井を出た列車は、山裾を巻くようにぐんぐんと登っていく。
しばらく進むうちに、先程通った屋代付近の市街地を見下ろすようになってきた。
この付近は昔から車窓が素晴らしいことで知られ、「日本三大車窓」の一つに数えられてきた。
やがて列車はポイントを通過し、行き止まりの線路で停車した。
上り勾配の途中にある姨捨駅は、今もスイッチバック構造となっているのだ。
やがて列車はバックし、姥捨駅に停車する。
姥捨では、特急列車との行き違いのためしばらく停車するという。早速、ホームに出てみる。
ホームからはいわゆる善光寺平が見渡せ、まるで展望台のようだ。
景色を見ていると、下の線路を特急「しなの」が慌しく通過していった。
この時ばかりは、特急より普通列車の方がいいな、と思った。
姥捨を発車し、善光寺平の風景が見えなくなると、列車は長いトンネルに入る。
冠着、聖高原といったあたりは山の中を進む。
西条を出ると、松本盆地に抜けるための長いトンネルが連続する。
これらのトンネルは複線規格で作られているが、線路は単線分しか引かれていない。
トンネル以外の部分の路盤も複線分が用意されており、線路を引けばすぐにでも複線化できそうだ。
未成線と並ぶ国鉄時代の負の遺産なのだろうが、篠ノ井線は特急列車が多く走り列車密度も割と濃いので、
この部分だけでも複線化を検討したらどうだろうかと思う。
明科からは松本盆地を進み、終点の松本に到着。
松本14:19発〜中津川16:22着 1832M
松本ではわずか2分の連絡で中津川行き普通列車に接続する。
この列車は2連と短く、18きっぷシーズンはいつも混雑するので座れるかどうか心配だったのだが、
無事席を確保できた。
塩尻からは予想通り多くの乗客があり、混雑した状況で木曽路を進む。
奈良井峠をトンネルで越えると、列車は延々と木曽川の流れに沿って進む。
この区間は車窓も素晴らしいが、複線と単線が入り混じった線路を観察するのも面白い。
よく観察していると、古い単線の線路を放棄した跡なども見ることができる。
南木曽を出ると線路は複線となる。ここも、単線の旧線路を放棄して複線のトンネルを掘りなおしている区間と、
単線のトンネルをもう一つ追加している区間とがあって面白い。
トンネルを越えると、やがて列車は中津川に到着する。
中津川16:38発〜恵那16:49着 2728M
中津川は都市近郊区間と山岳区間の境となる駅で、中央東線でいえば高尾のような役割を担っている。
そのため、普通列車で中央西線を通過する際は、中津川で必ず乗換えをしなければならない。
この駅に降り立つのはもう何度目だろうか。
構内で列車を待っていると、急に雨が激しくなった。
鉄道旅行をしている身には、豪雨は天敵のような存在である。
列車の運転が見合わせになって、ダイヤが乱れる恐れがあるからだ。
中央西線などは山岳地帯を進むため、雨には特に弱い。心配である。
ともかく列車に乗り、2駅目の恵那で下車する。下車すると雨はもう上がっていた。
恵那17:00発〜明智17:49着 17D 明智鉄道
恵那からは明智鉄道に乗る。明智鉄道は盲腸線であり、名古屋から近いようで遠い微妙な位置にあるため、
三セク線の中でも一際地味な路線である。切符を買って列車に乗り込むと、
夕刻だけに車内は学校帰りの生徒が目立つ。
全国どこのローカル線もそうだが、学生は乗客のかなりの割合を占める。
恵那を発車した列車は、延々と急な上り坂を進む。この勾配はかなりのもののようで、
気動車のエンジンはずっとうなりを上げっぱなしである。
途中の飯沼駅などは、日本一の急な勾配上(33.3パーミル)にある駅なのだそうだ。
山の中を進む鉄道のほとんどは、基本的には川の流れと並行に線路が引かれている。
そうすることにより、鉄道が苦手な勾配を比較的抑えることができるからだ。
ところが、この明智鉄道は木曽川に注ぐ何本かの支流を横切るように走っている。
川を五指に例えると、明智鉄道の線路は爪と爪とを結ぶように引かれている。
そのため、これほどまでに勾配が多いのだろう。
勾配と格闘し続け、列車は沿線の主要駅である岩村に着く。
恵那を出る頃にはあらかた座席が埋まるほど客が居たが、ここで随分下車した。
岩村を出ても、勾配はまだまだ続く。車窓はごく普通の田舎といった感じで、特に変わったものは無い。
勾配と格闘し続けること50分、ようやく終点の明智に到着した。
明智18:15発〜瑞浪18:53着 東濃鉄道バス
明智は割と開けた街で、駅前には「大正村」という、明治村の姉妹版のような一種のテーマパークがある。
ただしもう時間が遅いため閉館しており、周囲に人影はない。
他には見所もないので、駅に戻ってバスを待つ。駅には酔っ払いのおっさんがおり、落ち着かない。
しばらく待つと中央西線の瑞浪に出るバスがやってきた。
明智鉄道で引き返すよりもこちらに乗ったほうが名古屋に手っ取り早く出られるので、乗る。
バスに乗っているうちに日が暮れてきてしまったので、バスがどこをどう通っているのかは分からなかったが、
とにかくひたすら坂を下っていくのには驚いた。明智鉄道はこれほどの標高差を登っていたのか、と実感させられた。
瑞浪18:53発〜多治見19:05着 1720M セントラルライナー
多治見19:19発〜高蔵寺19:31着 2628M
瑞浪駅に到着し改札を通ると、既に発車したはずの「セントラルライナー」の時刻が表示されている。
先程嫌な予感がしたとおり、列車が遅れているようだ。
幸いダイヤの乱れはそれほどでもなく、10分弱の遅れで列車はやってきた。
セントラルライナーは310円の乗車整理券が必要なことで一部からは悪評が高いが、
中津川から多治見までの間は普通列車としての役割も持つため、乗車整理券なしで乗車できる。
しかし、今は多治見を越えて高蔵寺まで行きたいので、乗車整理券が必要となる。
310円も取られるのは癪なので、多治見で下車して多治見始発の普通列車に乗り換える。
こちらはほとんど遅れもなく、高蔵寺着。
高蔵寺19:32発〜万博八草19:45着 2538H 愛知環状鉄道
高蔵寺駅に到着すると、向かいのホームに「エキスポシャトル」の字幕を出した列車が停車している。
大慌てで階段を上り下りし、何とかその列車に乗る。
乗車した「エキスポシャトル」は、万博会場に程近い愛知環状鉄道の万博八草と名古屋を直結する列車で、
愛知環状鉄道内はノンストップで運転する。
新しくて規格のよい線路を無停車で駆け抜け、程なく万博八草に着く。
万博八草からは、リニモという万博に合わせて開業した路線に乗り換えて万博会場に向かう。
押し寄せる大量の乗り換え客に対応するため、駅の外には大量のカラーコーンが並んでいた。
しかし私が訪れた時は駅ではほとんど人を見かけなかった。タイミングの問題だろうか。
万博八草〜藤が丘 リニモ
藤が丘〜本山〜八事〜上前津〜栄 名古屋市営地下鉄
万博八草からはリニモに乗る。詳しい原理はよく知らないが、
リニモは営業路線としては日本発の浮上式鉄道である。
車内の内装もどことなく無機質というか近代的で、照明が車体側面部に寄せられているのが面白い。
ゆりかもめなどと同じく無人運転で、各駅にはホームドアもついている。
この時間から万博会場に向かう人はほとんどおらず、ガラガラの状態で発車する。
車外を見つめると、真っ暗である。この路線、終点の藤が丘周辺と万博会場以外にはほとんど明かりが見られず、
万博終了後は採算が取れるのかな、と思ってしまう。
しばらく走り、万博会場の明かりが見えてくると万博会場駅に到着する。
予想通り、ここから一気に乗客がなだれ込んできて、ラッシュ時並みの混雑となった。
万博会場駅を発車してもなお、万博のパビリオンが車窓に見える。
JR東海のリニアモーター館も見えた。
あとは特に乗り降りもないまま、終点の藤が丘に到着。
ここは地下鉄東山線の始発駅である。地下鉄で名古屋市中心部に向かい、
栄の近くにあるビジネスホテルに泊まった。