最終更新日:2020/11/3

「SLばんえつ物語」に乗る―遊び心あふれる車両でSLの旅を満喫

 9月のある日、JR東日本の「週末パス」を利用して磐越西線の「SLばんえつ物語」に乗りに出かけた。 ばんえつ物語は運行開始から15年を迎え、JRの観光列車でも老舗ともいえる存在だが、これまで乗ったことがなかった。 また、磐越西線もここ10年ほど御無沙汰している。 5月に九州で「SL人吉」に乗ったが、それと比較してみる意図も含め乗りに出かけた。

目次

2014/9/20

東京7:00発〜新潟8:58着 Maxとき303号

 まずは東京駅から、Maxときの自由席に乗り込む。料金節約のため自由席にしたのだが、 これが予想外に混んでおり、平屋部分の通路側の席を確保するのがやっとだった。 上野駅、大宮駅でさらに客が乗り込み、デッキにぎっしり立ち客が出るほどの混雑となる。
 越後湯沢で「はくたか」に乗り継ぐ客が降りると、ようやく混雑が落ち着いた。 越後湯沢から先は魚沼の米どころを進む。稲は黄金色に色づき、収穫間近のようだ。 長岡、燕三条と停車して、終点の新潟に到着。こうやって新幹線で新潟へ来るのは10数年ぶりだ。


E4系Maxは帯色の塗り替えが進行中。

新潟9:43発〜会津若松13:31着 SLばんえつ物語

 

 新潟駅に到着すると、既にSLが入線していた。発車まではしばらく時間があるので、駅弁を購入したり、 土産物を物色したりして時間をつぶす。しばらくしてホームに向かうと、SLの前にはかなりの人だかりができていた。 SLをひとしきり眺めた後、客車の方を見てみる。先頭車は子供向けの遊戯スペースと展望車となっている。 ただし、会津若松行の場合は機関車の背中しか見えない。
 その次の2、3号車は客車で、改装はされているものの急行型として造られた12系の原型の姿をよくとどめており、 車内には昔ながらのボックスシートが並んでいる。 次の4号車はこれまたフリースペースで、車内の大型モニタに観光情報などが映し出されている。 売店のある5号車を過ぎ、一番後ろの7号車まで行くとグリーン車がある。このグリーン車は大ぶりな椅子が3列に配置され、 専用の展望室もある。この車両の人気は高く、なかなか予約が取れないという。この日も満席で、私も予約がとれなかった。
 ボックス席が一通り埋まる程度の状態で新潟を発車。ごちゃごちゃした駅構内を抜け、新潟車両センターの脇を通り過ぎると周囲は住宅街となる。 SLの注目度は高く、沿線の子供が列車に手を振る姿も見られた。SLにはやや場違いな電化複線の信越本線をゆっくり走り、 新津に着く。そういえば、新津に着くまでの間に若い男性の案内係がやってきて、検札をしていった。 九州ならすかさず女性の客室乗務員が来るところだが、「きらきらうえつ」の時も男性の乗務員だったし、 JR東日本新潟支社はイケメン押しなのだろうか。
 新津駅ではしばらく停車する。駅のホームには弁当の立ち売りが出ていた。 弁当はすでに新潟駅で買ったので、「三色団子」というのを買う。北海道の「大沼だんご」に似た団子だった。 新津を出てしばらくすると、いよいよ阿賀野川の川沿いを走る。とはいっても、肥薩線のように川っ淵を進む機会は少ない。 また、川を頻繁に渡るため、どちら側の席に座っても川をずっと眺めるというのは難しい。
 新津を出てすぐに、沿線の五泉町の人が乗ってきて抽選会をやるというイベントがあった。 逆に言えば、イベントらしいイベントはそれくらいしかなく、あとは随時観光案内の放送があるぐらいだった。 また、車内には10人以上の大口のグループ客が多かった。JR九州の観光列車のように個人客を想定しているのではなく、 団体でわいわい騒ぎながら乗ることを想定しているのかもしれない。この列車はほぼ4両分のボックス席がありキャパが大きいので、 大口の予約にも対応しやすそうだ。
 そんな訳で、適当に車内をうろつきつつ、フリースペースから阿賀野川の流れを眺めた。 SLというのは外から見ると物珍しいが、乗っている分にはそれを実感する機会は少ない。 だが、しばらく席を外した後に戻ってみると、机の上に石炭カスがいっぱい降り積もっており、SLに乗っていることを実感させられた。
 途中、津川では給水のためしばらく停車した。また、山都でもしばらく停車したので、外からSLを眺めた。 やがて福島県に入り、喜多方に到着。観光地であるが下車する人は少ない。ほとんどの客は会津若松まで行くようだ。 そういえば途中の沿線ではSLを撮影する鉄道ファンをかなり見かけた。彼らの間ではこの列車は「ばんもの」と呼ばれ、格好の撮影対象となっているようだ。 喜多方からは最後の力走を見せ、終点の会津若松に到着。乗車時間は4時間近くにもなり、たっぷり乗ったという気がする。


新潟駅のホームで発車を待つSL。


1号車の車内は、展望席と子供向けのフリースペースとなっている。


展望席部分の外観。ほぼ原形の姿はなくなっている。


4号車はフリースペース。売店で買った酒類を持ち込む客も多い。


7号車のグリーン車にも、専用の展望スペースがある。形状は1号車とは少し異なる。


外装はかつての姿から一新され、まるで小田急ロマンスカーのよう。


津川駅での長時間停車の間、SLの姿を眺めるギャラリーが多数集まる。


山都駅ので停車中、乗務員が足回りを丹念にチェックする。

会津若松14:08発〜郡山15:13着 あいづライナー

郡山15:30発〜大宮16:22着 やまびこ144号

 会津若松からは快速「あいづライナー」に乗る。この列車はかつては「ビバあいづ」という特急列車だったが、幾度かの変遷の後、 今は快速列車となっている。使われているのは意外にもかつて東武線直通特急に用いられていた車両で、 車内はきれいにリニューアルされていた。快適なシートでくつろぐこと1時間あまりで、終点の郡山に到着した。 郡山からはE2系「やまびこ」で東京に戻った。


東武直通列車からコンバートされ会津で余生を送る485系。