2016/5/2
東京8:40発〜仙台10:15着 はやぶさ7号
朝8時半、東京駅へとやってきた。本来なら通勤客でごった返すはずの時刻だが、
今日は連休の狭間の平日とあって心持ち通勤客が少ない。
今日はまず、「はやぶさ」で仙台へと向かう。よくよく考えると、2015年8月に仙台に行った時と全く同じ時刻の列車だ。
あの日と同じく、発車数分前になってようやく清掃が終わり、ドアが開く。ただ、前回は盆の真っ只中で満席だったのに対し、
今回は通路側の席が全て埋まらない程度の混雑だ。
東京を発車し、埼京線と競り合いながら大宮に到着。ここから一気にスピードを上げて北上する。
宇都宮を過ぎると周囲に霧が立ち込めてきた。この日の東北南部は曇り気味で、どんよりとした中を進む。
やがて、仙台に到着。駅前は霧雨が舞い、やや肌寒い。
仙台10:21発〜八木山動物公園11:25着 仙台市交東西線
今回あえて仙台で途中下車したのは、昨年12月に開業した地下鉄東西線に乗るためだ。
地下鉄の新線開業は全国的に見ても2010年代に入って初めてで、また今後数年はない見込みだ。
私鉄全線完乗のタイトルを守るためにも、是非乗っておきたい。
仙台駅の1階から地下通路に入ると、東西線の改札がある。ここで840円の一日乗車券を買う。
そこそこ高いが、仙台から東西線の終点まで乗ると一乗車300円もするので、十分元が取れる。
改札を通ると、長い長いエスカレーターでホームへ。東京の大江戸線あたりを思わせる長さだ。
ちなみに、この東西線は小型車体でリニアモータ駆動という点でも大江戸線と似ている。
すぐにやってきた列車で、まずは西端の八木山動物公園に向かう。列車は4両編成で、座席はほとんど埋まっっている。
平日のこの時間にしてはそこそこ乗っている。
車両の内装はどことなく横浜のグリーンラインに似ているが、同じ仙台の南北線と同じく、
ドア窓が卵型になっているのが特徴的だ。
仙台の繁華街に位置する青葉通一番町を過ぎ、大町西公園を出ると線路はいきなり地上に出て、広瀬川を渡る。
広瀬川はこの辺りで深い谷を刻んでいるため、このような線形になっているようだ。
御茶ノ水あたりの丸ノ内線と似た状況だ。その先の川内、青葉山の各駅はいずれも東北大学のキャンパスに近く、
多くの学生が下車していった。これだけ仙台駅から近いと、福島や一ノ関辺りからなら通学も可能そうだ。
青葉山から八木山動物公園までは、Z字を描くような不思議な線形となっている。
八木山動物公園はかなり標高の高いところにある(136.4mで、地下鉄では一位なのだとか)ので、
高さを稼ぐためにあえて迂回させているのだろうか。
その八木山動物公園駅は「ベニーランド」という遊園地の近くで、子連れ客が何人か下車していった。
また、駅前には幹線道路やバスロータリーもあり、交通結節点にもなっているようだ。
八木山動物公園11:33発〜荒井12:49着 仙台市交東西線
荒井11:33発〜仙台12:49着 仙台市交東西線
八木山動物公園から折り返して、今度は東端の荒井に向かう。
仙台まで折り返すと、列車は何度もカーブを繰り返しながら南東へと向かう。
2つ先の連坊までの間に5つも直角カーブがあるという不思議な線形になっているのだが、
小型車体の東西線は苦もなく進んでいく。
やがて終点の荒井に到着。周囲にバスロータリーはあるが、店舗はほとんどない。
駅前にも関わらず空き地や畑が目立ち、まだまだ発展途上といったところだ。
この辺りは海に近く、東日本大震災で甚大な被害を受けた地区も近い。
駅の中には「311メモリアル交流館」という施設もあるが、あいにく休館日で中は見られなかった。
折り返して仙台駅に戻り、再び新幹線乗り場に向かう。
仙台11:54発〜奥津軽いまべつ13:47着 はやぶさ13号
仙台から再び「はやぶさ」に乗る。仙台を出てしばらく走り、古川辺りまで来ると、
周囲は北上川沿いの田園地帯となる。田んぼには既に水の張られているものもあって、
連休明けぐらいには田植えが始まりそうな気配だ。
盛岡では編成前方の「こまち」を切り離す。もはや見慣れた光景だが、ギャラリーの数は意外に多かった。
(かくいう自分も見に行ったのだが…)盛岡を出ると、左手にまだ雪の残る岩手山が見える。
だが、しばらくすると列車は長い長いトンネルに入る。盛岡から新青森にかけてはトンネル外の区間の方が少なく、
八戸〜七戸十和田間以外はほぼずっと真っ暗である。数少ない地上区間も防音壁に眺めが遮られることが多い。
八戸、新青森と停車するが、降りる客は案外多くない。新青森からの乗客も多くて、
窓側の席の多くが埋まったまま新青森を発車する。乗車率の低さが指摘される北海道新幹線だが、
この列車に限ってはまずまずの乗車率だった。
さて、ここからいよいよ北海道新幹線である。
新青森を出て、これまでもあった車両基地を過ぎると真新しい高架に入る。
まずは、津軽半島のやや内陸寄りを真っすぐに北上する。
右手には津軽湾と、津軽線沿いにある民家が見える。
これまでは、単線の津軽線を右往左往しながら函館へと向かっていたのが、今や新幹線ですいすいと北上できるのだから、
有難い時代になったものだと思う。
しばらくするとトンネルに入り、スピードが落ちる。左右から在来線の線路が合流してきて、三線軌条となる。
ここからは、かつて「津軽海峡線」という在来線だった区間を拝借する形で新幹線を通している。
在来線の旅客列車は廃止されたが、貨物列車はまだ残っており、新幹線が全力で走ると貨物列車に追いついてしまうし、
風圧で貨物が飛ぶ恐れもある。そのため、最高速度は140km/hに制限されている。
東北新幹線内の走りに比べるといかにも遅く、もどかしさを感じる。
やがて、奥津軽いまべつに到着、下車する。かつての海峡線の津軽今別駅や、
津軽線の津軽二股駅と同じ位置に建設された駅だ。ここで降りるのは2003年に津軽線の乗りつぶしに来て以来、13年ぶりだ。
駅は大きく様変わりしていたが、当時もあった道の駅は健在だった。また、周囲の建物の少なさも変わっていない。
新幹線の停車駅とはとても思えないようなロケーションの駅だが、乗降客は案外多かった。
駅の改札口から外に通じる通路からは、駅構内の様子が見渡せる。列車からはよく見えないが、
新幹線ホームを囲むように在来線の線路がある。貨物列車が新幹線を待避できるよう、側線もある。
この通路は線路の上にあるが、線路自体は高架上にあるので、通路から外に出るにはかなりの高さを降りなければならない。
道の駅に行くには一旦外に出た後、さらに通路を歩く必要がある。
青函トンネル記念館14:50発〜体験坑道14:58着 青函トンネル竜飛斜坑線
体験坑道15:27発〜青函トンネル記念館15:34着 青函トンネル竜飛斜坑線
そんな奥津軽いまべつで下車したのは、近くにある「青函トンネル記念館」を訪れるためだ。
青函トンネル記念館は青森側のトンネル建設基地の跡に建てられたもので、ケーブルカーで旧・竜飛海底駅の近くまで行くこともできる。
北海道新幹線に乗る前に、ぜひトンネルを間近で眺めてみようと思って寄り道することにした。
近いとはいっても駅から記念館までは20km以上離れているし、バスも本数が少なく使いづらい。
そこで、一連の鉄道旅では初となるレンタカーを使っていくことにした。
道の駅でクルマを借り、出発する。途中、海沿いを走るところもあって眺めが良いが、
集落の中では意外と道が狭く、運転時に気を抜いていられない。やはり、列車から景色を眺める方が気楽だ。
30分ほどで記念館に到着。
記念館に入り、ケーブルカーの乗車券を買う。発車まで少し時間があるので、併設されている記念館を見る。
こちらはそれほど特筆すべきものはなかったが、トンネルの貫通式で実際に使ったという酒を入れる桝なども残されており、
当時の熱気が伝わってくる。
時間になったので、ケーブルカーに乗る。オレンジ色の、それほど大きくない車体だ。
このケーブルカーは着席での乗車しか認めていないようで、30余りある車内の座席はほぼ埋まった。
時間になると坑道に降りるトンネルのゲートが轟音を立てて開いた後、ケーブルカーはトンネルを降りていく。
海面下140mまで、7分ほど掛けて淡々と降りていく。
トンネルを降り切ったところで、外に案内される。出てすぐのところに、20台ほども自転車が置かれている。
これはトンネル保守員が用いるものらしい。
このケーブルカーはトンネルの保守用として実際に使用されているようで、
帰りの便には作業員の人が便乗していた。自転車置き場を出ると、軌道が引かれたトンネルがある。
どこに向かうのかは不明だがこれが非常に急で、今でも使っているのだろうかと思う。
坑道内は湧き水で床のほとんどが濡れており、空気も湿っぽい。
坑道内には、実際に建設に使用した機材が置かれており、音声により建設の歴史について説明がある。
トンネル建設の歴史はは異常出水との闘いの歴史であり、地盤を強化しつつ20年以上かけて建設が行われたという。
一通り見終わると、旧竜飛海底駅につながるトンネルがある。海底駅の廃止された今は柵がされているが、
かつては海底駅から見学コースに来ることができた。今でも、運がよければ新幹線や貨物列車の通過音が聞こえるらしい。
20分余りの見学を終え、地上に戻る。見学できる部分は、トンネル全体からみればわずかな割合に過ぎないが、
逆に青函トンネルの壮大さを実感できた。これは単に列車で通過するだけでは、なかなか実感できないものだと思う。
記念館を出て、時間が余ったので竜飛岬の方にも行ってみる。聞いていた通り、石川さゆりの「津軽海峡冬景色」の歌碑もあった。
ここからの竜飛漁港の眺めは素晴らしかった。そのはるか向こうには北海道の姿も見える。
よくぞあんな遠くまでトンネルを掘ったものだと思ってしまう。
レンタカーで駅まで戻り、道の駅で買い物などをした後、改札口を通る。ふと見ると、
財布の中にあるはずのクレジットカードがない。航空券などはそのカードで買っているので、
どこかに忘れたのだとしたらこの後かなり面倒なことになる。そういえば、道の駅でレンタカーを借りたときにカードを使った。
その時の係員のおじさんはあまり慣れていないような感じで、カードを返し忘れた可能性がある。
道の駅に戻って確認したいが、歩いて2、3分はかかる。列車が出るまで5分ほどしかない。次の列車は2時間後だ。
しかし、ここで確認しなかったら後悔すると思い、全力ダッシュで道の駅に戻る。だが、カードはないとのこと。
仕方なく、再びダッシュで駅に戻る。とりあえず新函館北斗に着いたらカード会社に電話するしかないなと思う。
途中、エレベータに乗っている間にもう一度財布の中を見ると、普段物を入れない奥の方にカードが入っていた。
以前、新八代から新幹線に乗った時にもこんな騒動があったなと自分自身に呆れながらもダッシュし、どうにか新幹線には間に合った。
青函トンネル記念館のケーブルカー。遊戯用ではなく、一応鉄道要覧にも載っている。
トンネル風を防ぐため、ホームと線路との間にはふだん柵が下ろされている。
体験坑道には自転車が多数留められている。どれも新しく、保守作業員が日常的に使っているようだ。
このような薄暗くて長いトンネルを結構時間をかけて歩き回った。
奥津軽いまべつ17:01発〜新函館北斗17:51着 はやぶさ21号
とんだ騒動があったが、奥津軽いまべつから北海道新幹線の乗りつぶしを再開する。
今度の列車は乗車率10%程度の閑散ぶりで、席も選び放題だった。
列車はいくつかトンネルを抜けると、立派な坑口を持つ青函トンネルへと入る。
相変わらず最高速度は抑えられており、トンネルを抜けるのに25分ほども掛かる。
しかし、20年以上を掛けてトンネルを掘り抜いた人たちのことを考えると、
多少の遅さに文句をつけることが浅ましくも感じられる。もっとも、トンネルの壁を5分も眺めていると飽きてきて、
早く外に出てほしいと思ってしまったが。
25分かけてトンネルを抜け、しばらく走ると在来線と分離して木古内に着く。
先程の奥津軽いまべつもそうだが、ホームの幅が非常に狭く、ホームドアの内側の空間は1mほどの幅しかない。
乗客の少ないことを見込んで、極力予算を削ったということか。
木古内を出ると、防音壁の合間からだが津軽海峡が見える。また、しばらく走ると大きな石の塊のような函館山も見えた。
新幹線には珍しく、要所要所で観光案内放送が入るのも北海道新幹線の特徴だ。
函館山を横に見るうち、列車は左へと大きくカーブする。17時51分、時刻通りに真新しい新函館北斗駅に到着した。
新幹線は空いているように見えたが、下車する観光客の数は案外多く、エスカレーターは客でごった返していた。
次の列車まで少し時間があるので、駅の中を眺める。店舗の数はそれほど多くない。
駅の外もまだ開発途上のようで、レンタカーの営業所以外に目立つ建物はなかった。
新函館北斗18:11発〜札幌21:48着 北斗19号
新函館北斗からはキハ183の「北斗」に乗り、4時間近くを掛け一気に札幌に向かう。
これまでの乗り継ぎで一番の長丁場だ。
指定席に並ぶ客は案外多く、外国人観光客の姿も目立つ。一方、自由席はガラガラで、
運転席の真後ろの席を難なく確保できた。途中から夜になってしまうが、信号がよく見えたりしてなかなか楽しい席だ。
新函館北斗を発車し、しばらく走ると左手に湖が見えてくる。これが大沼小沼の小沼の方で、
しばらく湖岸沿いを走ると大沼駅を通過。ここで、海沿いの渡島砂原を回る線と分かれる。
その後しばらくは駒ケ岳西麓の勾配の多い区間をゆっくり進んでいく。途中の東山という駅は、
周囲に何もないところにポツンと存在する。北海道にはこういう駅が数多い。
しばらく駒ケ岳を右手に見ながら進み、駒ケ岳が後ろに離れると森に着く。ここでは渡島砂原回りの線路も合流する。
森から先は複線となって、長万部辺りまで噴火湾沿いを進む。もうほとんど日は暮れているが、海は何とか見える。
やがて、多くのホームや側線を抱える長万部に到着。いくつものポイントを通過しながらホームに進入する。
ここで倶知安方面へ向かう函館本線と分かれ、しばらく海沿いを走行した後、長いトンネルに入る。
これは礼文華と呼ばれる難所で、海岸線が急峻なためトンネルで山を越える線形となっている。
途中、秘境駅として有名な小幌駅のホームも見えた。一時は今春での廃止が決まっていたが、
自治体の資金援助で生きながらえたという。
トンネルを抜け、海沿いに下ると洞爺に着く。もう遅い時間帯だが、すれ違う列車が意外に多いことが分かる。
特に多いのが貨物列車で、鉄道が本州と北海道を結ぶ物流の大動脈であることを実感する。
東室蘭の一つ手前の本輪西という駅では、立派なイルミネーションを施された吊り橋が見えた。
どうやら、室蘭駅の方に渡るための橋のようだ。前からこんな橋があっただろうかと思ってしまった。
東室蘭ではかなりの乗客があり、閑散としていた自由席が一気に埋まった。その先の苫小牧でも乗車が多く、
窓側の席はほぼ埋まった。そういえば、このあたりで「優駿浪漫」のロゴが付いた日高本線専属車両を見かけた。
日高本線は未だに復旧の目途が立たないようだが、だぶついた日高線用車両を有効活用しているということか。
苫小牧を出ると太平洋岸から離れ、内陸を北上して札幌に向かう。途中の南千歳あたりまで周囲は原野が続くため、
車窓は真っ暗である。千歳から先は札幌の都市圏に入るため、建物が目立ってきた。
途中、前を行く普通列車に行く手をふさがれ徐行運転をしたりもしたが、ほぼ定刻に札幌に到着。
朝からずっと乗り詰めで、さすがに疲労を覚える。
西4丁目22:25発〜すすきの22:33着 札幌市交通局
ようやく札幌に着いたが、のんびりはしていられない。
これから、札幌の市電に乗りに行こうと思う。札幌市電は大通に近い西4丁目と、すすきのを結ぶ路線だった。
ただし最短距離ではなく、札幌市街の南西をぐるっと回る形で結んでいた。
しかし2015年に、西4丁目とすすきのを最短で結ぶ新区間ができ、環状運転が始まった。
その新規開業区間に乗るのが、今回札幌まで足を伸ばした理由の一つである。
札幌駅前のホテルにチェックインした後、時計台やテレビ塔、大通を眺めながら西4丁目電停まで歩く。
しばらく待つと、10人ほどの客が並んだ。そこに市電が到着する。意外と車内の客は多く、30人ぐらいの客が下車した。
市電沿線は主に住宅地のはずだが、この客はどこから来たのだろうか。
西4丁目を発車し、駅前通りを南下する。次の電停は狸小路。札幌で一番賑やかなアーケードで、この時間でも人通りは多い。
そこから少し進むと、すすきの電停に到着する。ゴールデンウィークのさなかだからか、こちらも人出は多い。
夜のすすきのに来るのは久しぶりなので、ちょっと歩いてみる。「無料案内所」などという妖しい看板も目立つが、
疲れていて到底行く気はしない(疲れていなくても行かないが…)。軽く食事をして、ホテルに戻る。明日も朝は早い。