最終更新日:2021/5/29

会津マウントエクスプレスに乗る―東武・野岩鉄道・会津鉄道で会津へ一直線

 2006年の夏休みは、中国・九州方面へと旅行に出かけた。 行程の都合上、東京から四国の窪川まで普通乗車券を買わざるを得なかった。 そこで、夏休みの直前に前々から乗ろうと思っていた野岩鉄道・会津鉄道に乗ることにした。 JRの乗車券は遠距離逓減制なので、帰りの会津若松から東京までの乗車券を、東京から窪川までの乗車券と繋げることで、 1キロあたりの乗車券の価格を随分抑えることができる。
 野岩鉄道・会津鉄道には、「会津マウントエクスプレス」という列車が走っている。 料金不要ながら元名鉄の特急型車両を使用している太っ腹な列車で、 これに乗るのも楽しみである。

目次

2006/8/6

浅草7:10発〜鬼怒川温泉9:31着 東武鉄道快速

 浅草から、東武線の快速に乗る。快速は北千住を出ると、春日部、東武動物公園と停車し、 その先は数駅に停車するのみで下今市まで行ってしまうという豪快な列車である。 車内もかつての国鉄急行型のごとくボックスシートが並び、長距離列車の風格あふれる列車である。 ただし、2006年春のダイヤ改正で大幅に減便され、大半は東武動物公園以北各駅停車の「区間快速」に変わった。
 ボックスシートに座り、浅草を発車する。急カーブで駅を出て、すぐに隅田川を渡る。 カーブの多い線路を進み、北千住に到着。ここからは立派な複々線となり、 一路鬼怒川を目指す。早朝とあって車内はそれほど混んでいない。 乗客は中高年のハイキング客が多い。彼らにとってこの列車は「御用達」なのだろう、みんな乗り慣れている。
 車内で、浅草で買った「深川めし」を買う。アサリの入った炊き込みご飯の弁当である。 食べているうちに列車は春日部を過ぎ、次第に車窓には田畑が目立ってきた。 栗橋で宇都宮線と交差すると、しばらく利根川の土手に沿って進む。 このあたりまで来ると周囲はすっかり田園風景となる。
 利根川を渡ってしばらく進むと、板倉東洋大前に着く。その後もまっ平らな農地を進み、 新大平下、栃木、新栃木と連続停車する。 次の停車駅である新鹿沼を過ぎると、車窓には日光の山々が迫ってくる。 地形も起伏が出てきて、トンネルも現れる。 途中の駅も多くは短いホームと木造の駅舎があるだけというものとなり、ローカル感にあふれている。
 やがて、下今市に到着。ここで東武日光に行く編成を切り離し、 列車は6連から4連となって鬼怒川線を入る。 急カーブで駅を出て大谷川を渡り、これまでとうって変わってカーブの多い線路を列車はゆっくりと走る。 浅草から2時間20分で、鬼怒川温泉に到着した。 乗ってきた列車はこの先野岩鉄道・会津鉄道に乗り入れて会津田島まで行くが、 今回はここで一旦下車する。


快速列車は、2ドアクロスシートの6050系で運転。

鬼怒川温泉10:01発〜会津若松11:57着 会津マウントエクスプレス

 鬼怒川温泉駅でしばらく待っていると、見慣れない2両編成の気動車がやってきた。 東武線、野岩鉄道、会津鉄道、JRの4社を直通する快速「会津マウントエクスプレス」である。 この列車のユニークな点は、名古屋鉄道より譲渡された8500系という特急型気動車を使っている点である。 元々は特急「北アルプス」としてJR高山線に乗り入れていた車両で、 バブル期に作られた車両とあって車内の内装は豪華そのものである。 運転台のすぐ後ろに、展望の楽しめる「パノラマ席」があったので、そこに座る。
 浅草からやってきた「スペーシア」と接続をとった後、発車する。 車内の客はわずか3人と、夏休みにしては寂しい。
 鬼怒川温泉から少し走ると、新藤原に着く。 ここは東武鬼怒川線最後の駅で、ここから列車は野岩鉄道に入る。 野岩鉄道は旧国鉄の建設線を引き継いだ第三セクター路線で、 山間部を走ることもあってトンネルを多用している。そのため、トンネルの合間からしか車窓は楽しめない。 それでも、時折見える鬼怒川の渓谷は美しい。
 途中の駅は「温泉」と入る駅が多く、沿線に温泉が多いことが伺われる。 トンネルをいくつも通り過ぎるうち、いつしか列車は福島県に入り、会津高原尾瀬口に着く。 ここは秘境といわれる桧枝岐や尾瀬への玄関口で、わずかながら乗り降りする観光客も見られる。
 会津高原尾瀬口からは、旧国鉄会津線を引き継いだ会津鉄道に乗り入れる。 車窓もこれまでとは一変し、川沿いに開けた山村をのんびりと進む。 線路の枕木も国鉄時代からの木製である。それでも、東武からの直通列車に対応するため電化されている。 東京からの直通電車がこんなのどかな山村に乗り入れているというのが面白い。
 電化区間の北限である会津田島を過ぎても、風景は変わらない。 途中、塔のへつりという駅がある。ここは森の中にある静かな駅だが、 待合室の脇に巨大なこけしが立っていて驚かされる。 他にも、「ふるさと列車」との愛称が付いた一般型気動車ともすれ違った。 野口英世の母の手紙から抜粋した文字を車体全体にラッピングしてあるのだが、「耳なし芳一」状態で何だか不気味だった。
 そんな風景を見ているうち、車内にも客が増えてきた。会津若松に向かう地元の客らしい。 西若松で只見線と合流し、程なく会津若松に到着した。
 なお、今回乗車した8500系気動車は2010年春をもって廃車となってしまった。 そこまで足回りが老朽化しているわけでもなさそうだし、非常に快適な車両であっただけに惜しまれる。


名鉄からやってきた「会津マウントエクスプレス」専用車両。


名鉄独特のフォントで記された車体番号はそのまま残る。


車内には座り心地の良いリクライニングシートが並ぶ。


運転台直後のシートからの眺めは上々。


途中ですれ違った「ふるさと列車」。

会津若松12:01発〜郡山13:14着 1230M

郡山13:21発〜黒磯14:23着 2138M

黒磯14:36発〜宇都宮15:27着 1566M

 会津若松ではわずか4分で郡山行き普通列車に連絡している。 改札前の売店で大慌てで弁当を買い、乗り込む。車両は、「赤ベコ」のイラストの入った455系であった。
 弁当を食べつつ、車窓を楽しむ。この日は天気も良く、三角形の磐梯山がよく見える。 田んぼの緑が太陽の光に映え、美しい。
 会津若松から1時間ほどで、終点の郡山に到着した。郡山から先も普通列車の旅を楽しみつつ、東京へと戻った。


磐越西線からは磐梯山の姿が良く見える。


郡山に到着した磐越西線の列車。


郡山からは719系で黒磯へ。

私鉄乗りつぶし状況

新規乗車キロ数

会社名路線名乗車区間キロ数
東武鉄道鬼怒川線鬼怒川温泉〜新藤原3.8
野岩鉄道会津鬼怒川線新藤原〜会津高原尾瀬口30.7
会津鉄道会津線西若松〜会津高原尾瀬口57.4
合計91.9