最終更新日:2021/3/8

「リゾートあわトレイン」に乗る―謎のお座敷・座席兼用車で房総半島をぐるり一周

 2月のある日、またしても暇ができたので列車に乗りに出かけた。 今回乗ったのは「リゾートあわトレイン」という臨時列車で、内房線の君津から安房鴨川(日によっては安房小湊)まで走る。 この列車のユニークな点は「ニューなのはな」という座席とお座敷兼用のジョイフルトレインを使用する点で、 車両の特性を生かし座席の山側はお座敷、海側は座席というレイアウトを組んでいる。お座敷部分はフリースペースとして開放され、 車内の半分がフリースペースという太っ腹なレイアウトとなっている。
 この列車、数年前から運転されているらしいのだが、横浜支社管内の駅によくチラシが置いてあり、気になる存在だった。 パンフレットの効果で実際に乗客が集まっているのか、確認するべく乗りに出かけた。

目次

2015/2/14

新宿9:08発〜君津10:32着 新宿さざなみ3号

 土曜日の朝、中央線ホームの片隅にE257系が停車している。これが土休日のみ運転の「新宿さざなみ」で、 新宿から総武線に直通する。不振の房総特急、しかも閑散期とあって空いているのかと思ったが、 自由席の乗車率は案外よく、通路側の席が軽く埋まるほどであった。
 新宿を発車し、まずは中央快速線を走る。御茶ノ水の手前で速度を落とし、ここで中央緩行線に転線。 駅をゆっくり通過する。程なく、秋葉原に到着。引き続き総武緩行線を走り、錦糸町で快速線へ。 このような経路を走るのは「新宿さざなみ」含め一日数本しかなく、なかなか体験できるものではない。錦糸町を出ると、 あとは千葉方面へと快走する。土日のみ運転のレアな列車ながら、錦糸町や船橋など途中駅から乗ってくる客は案外多かった。
 千葉を出て南下すると、だんだんと風景が田舎びてくる。新宿から1時間余りで君津に到着。


新宿から房総用のE257系に乗るのは初めて。

君津10:40発〜安房鴨川12:27着 リゾートあわトレイン

 君津駅に到着すると、既に「リゾートあわトレイン」が入線していた。 指定された1号車に乗り込むと、先客は子連れの家族2組だけで、終点まで他の客が乗ってくることはなかった。 私のボックス席には当然他の客はおらず、ゆっくり足を伸ばせた。そうなってくるとお座敷の有難みはあまりないのだが、 子供たちは楽しそうに座敷を走り回っていたので、子連れ族にはもってこいの装備だろう。 ちなみに、隣の車両は1両まるまる空っぽだった。閑散期とはいえ、ちょっと少なすぎる。
 列車は君津を発車し、富津岬を横切りつつ南下する。 この辺で、ジャンパーを着た女性が検札に来た。この人はどこかの自治体から委託されているのか、観光案内も兼ねているらしい。 JR九州などの観光列車のように洗練された感じはないが、何とか観光列車として育てていこうという意気込みは感じられる。
 しばらく走ると、列車は佐貫町に着く。この辺からは駅も鄙びた感じになってくる。 そして、線路は海沿いに出る。ここからは東京湾と対岸の三浦半島、さらに奥に伊豆半島と富士山がくっきりと見えた。 この区間の内房線に乗るのは10数年ぶりだと思うのだが、せっかく近いのに長い間乗りに来なかったのを後悔するほどの景色だった。
 そんな区間を走ると、浜金谷に着く。ここは東京湾フェリーとの乗換駅で、 例のチラシにはフェリーとの乗り換え時刻も書かれていたが、あまり乗客はなかったようだ。 その後も時折海を眺めながら南下し、館山に到着。横断幕を持った観光協会かどこかの人が待っていた。 以前は館山か千倉あたりで、乗客向けに地元の物産品の販売もあったようなのだが、最近はなくなったようだ。
 このあたりで、他の車両の様子を見に行く。4号車はフリースペース扱いになっていて、車内全体がお座敷仕様になっていた。 勝浦で開かれる「ビッグひな祭り」というイベントにちなんで、車内には雛人形がいくつか置かれていた。 なお、車内販売は一切ないので、飲食物は自分で持ち込む必要がある。
 列車は千倉から先も海沿いを進むが、トンネルが多くなりあまり海は見えない。 途中、江見と太海の間の海が見える箇所でいったん停車するイベントもあったが、海との間に国道が挟まっており、目の前が海という感じではなかった。 どうせなら、浜金谷の辺でも停車すればいいのに、と思った。
 やがて、列車は安房鴨川に到着。この列車はなぜか安房鴨川を通り越して安房小湊まで行くが、鴨川で下車して始発の普通列車に乗ることにした。


2009年以来の乗車となる「ニューなのはな」。


ボックス席とお座敷が共存するハイブリッドな座席レイアウトが特徴。


「ニューなのはな」のボックスシート。このシートがどういう仕組みでお座敷に変わるのだろうか?


シートをお座敷にした様子。よく見ると、網の裏に青いシートがしまってあるのが見える。


パンタグラフの下は天井の高さをそれほど取れないためか、座席のまま固定されている。


フリースペースには雛人形がいくつも飾られていた。

安房鴨川12:52発〜蘇我14:41着

 人気のないホームでしばらく待つと、千葉行きの普通列車が入線してきた。車両は209系で、この地区としては長い8連だった。 房総エリアといえばついこの間までは113系の天下だったが、しばらく来ない間に一掃され、元京浜東北線の209系に置き換わった。 お古の車両ではあるが、先頭車はセミクロスシートに改装され、内装だけはまるで新車のようだ。
 鴨川を出ると、引き続きトンネルの合間に海が見えるという車窓が続く。この前乗った紀勢本線の尾鷲あたりを思い出した。 勝浦を過ぎると海から離れ、だんだんと平地が目立つようになってきた。 それと同時に、車内もだんだんと混んできた。 上総一ノ宮からは複線となり、りっぱな高架駅の茂原までくると周囲は一気に都会となった。 あとは途中駅で少しずつ乗客を乗せ、蘇我に到着。
 蘇我では一度Suicaを改札機にタッチして駅の外に出る。 ・・・とさらっと書いたが、実は新宿でSuicaで入場して以来、ここまで乗車券について誰にも何も言われることなく来てしまった。 新宿からここまでの経路は東京近郊区間に含まれているため、一筆書きできる経路で来ればいわゆる「大回り乗車」となり、 Suicaで出てしまっても特に問題はない (Suicaの場合、常に最短の経路で運賃を計算してしまうため、大回り乗車と見なせない経路でSuicaを使うと無賃乗車となる)。
 だが、今回の経路は「新宿→蘇我→安房鴨川→蘇我」という6の字型の経路で、 これを大回り乗車とみなせるかどうかは鉄道ファンの間でも解釈が分かれているようだ。 今回は途中誰にも何も言われなかったのであっさり実行できてしまったが。
 蘇我で遅い昼食の後、京葉線で東京に戻った。


京浜東北線から房総にコンバートされた209系。


房総地区の209系の先頭車は座席がボックスシートに変更されている。