最終更新日:2020/12/12
年が明けた1月2日、今度は中国地方の広島・岡山両県に残る未乗路線を乗りつぶしに出かけた。 広島や岡山はこれまで何度も訪れており、そのたびに私鉄にも乗車していたので、 残る路線はそれほど多くない。ただ、広島電鉄は非常に入り組んだ路線網を形成しているし、 スカイレールサービスや水島臨海鉄道は新幹線の駅からはやや離れているので、結局一日がかりとなった。
朝一番の新幹線で広島へとやってきた。
まずは、広島市中心部をくまなく走る広島電鉄の乗りつぶしを始めることにする。
広島電鉄の本線と宮島線は以前ほぼ全線を乗りつぶしたので、その他の路線が今回の乗車対象だ。
広島電鉄は市内で複雑な路線網を形成しているが、本線と宮島線を除くと、残る路線は大きく3つに分けられる。
1つは、市南部の広島港に向かう路線。これは広島駅から直接向かう路線と、本線の紙屋町から分岐する路線がある。
次は、山陽本線の横川から南下して江波に向かう路線。これは途中わずかに本線と路線が重複している。
最後に、市中心部の八丁堀から北上して白島に向かう路線。これはわずか1km余りしかなく、
しかも他線と乗り入れることなくピストン運行しており、果たして存在価値があるのか、と思いたくなる路線だ。
それらの路線のうち、まずは広島港へと向かう路線を乗りつぶすことにする。
駅前の乗り場へ向かうと、広島港行の電車が発車を待っていた。単行ながら比較的新しい車両だ。
車内で一日乗車券を買うと、ほどなく発車。車内は座席が軽く埋まるほどの乗車率だ。
しばらくは本線を走るが、的場町で南へと分岐する。
まずは片側2車線の道路を淡々と進んでいく。右手には川が流れ、左手には比治山がそびえる。
やがて、ゆめタウンという大きなショッピングモールを過ぎると、紙屋町からの線路と合流する。
その後も2車線の道をひたすら南下していく。電停の名前も宇品二丁目、三丁目、四丁目、五丁目と単調だ。
海岸通という電停を過ぎると右に曲がり、高速道路と並行して走る。
近代的な高速道路と、前時代の代表と思われがちな路面電車が並走する光景というのは何だか妙だ。
日本でもここでしか見られないのではないだろうか。その後は港湾らしい大味な風景を見ながら進み、
終点の広島港・宇品に到着。
電停の前にはかなり規模の大きなフェリーターミナルがあり、案外多くの客が船を待っている。
初詣で賑わう宮島への便は大幅に増便されているようだった。一方、この前近くまで行ったばかりの松山観光港への乗り場もあった。
その他、江田島など離島への便も出ていた。
今度は紙屋町へと向かう路線を乗りつぶすべく、紙屋町経由広島駅行の系統に乗る。
待っていた車両は「グリーンムーバー」という新型の連接車だった。どうやらこの系統は乗客が多いらしく、
連接車が使われているようだ。
先程来た道を戻り、皆見町六丁目から未乗区間に入る。
今度は片側三車線ほどの広い道を進む。広電本社前を過ぎたあたりからビルが増えていき、市役所前からは高層ビルも目立つようになってきた。
と同時に、車内の混雑も加速度的に増してきて、立つ人も目立ってきた。
乗客たちはデパートなどの商業施設が集中する本通や紙屋町あたりで降りていった。今日は1月2日、初売りに繰り出す人が多いようだ。
そのまましばらく乗り続け、八丁堀で下車する。このあたりも中心街に近く、賑わっている。
八丁堀から、いよいよ気になっていた白島線に乗る。
乗り場でしばらく待つと、古めかしい単行の電車がやってきた。この車両、かつて大阪市電で使われていたものらしい。
また、途中ですれ違った電車は京都市電からの移籍組だった。大阪市電や京都市電の現役時代にはまだ生まれていなかったのだが、
何となく懐かしい感じがした。
5人ほどの乗客を乗せ、発車。距離は1kmほどしかないため、わずか8分で終点についてしまう。
しかも、途中大通りを横切る際に信号待ちをしていた時間が結構な割合を占めていた気がする。
余りに距離が短いことを気にしてか、白島線だけを乗る場合は運賃が100円と安く設定されている。
帰りは一本待って、京都市電の方に乗って戻る。今度はもうちょっと乗客が多く、10人余りを乗せて八丁堀に到着した。
8分間隔で走らせてこれだから、案外需要があるものだと思った。
八丁堀に戻り、残る江波方面の路線を乗りつぶす。
市中心部の八丁堀近辺は電停の間隔が非常に短く、隣の胡町の電停も間近に見えている。
そこで、隣の胡町電停から次の電車に乗ることにした。
次の江波行の電車は遅れていた上に、ものすごい混雑だった。
一両と短い編成の上、JRで広島駅に来て初売りが行われるデパートに繰り出す客が多いのが原因のようだが、
通勤ラッシュのような混雑に辟易とする。幸い、紙屋町あたりで混雑は一段落したが。
電車は本線を進み、土橋で本線から分岐する。分岐するとはいっても、
江波に向かう方が直進であり、本線は細い道に入ってしまうので、あまり分岐するという感じはしない。
あとはまっすぐな道を淡々と進む。市中心部からだいぶ離れても、道沿いには高層のマンションが目立ち、
さすがは百万都市の広島だな、と思う。
だんだんと高い建物が減ってきたところで、終点の江波に到着。
江波は車庫を兼ね備えた駅で、駅の奥の方には留置線が続いている。
電車が遅れていたせいで、駅の様子を観察しているともう横川行きの電車の発車時間となる。
今来た道を戻り、土橋で本線と合流し、次の十日市町で再び分岐する。
ただし、こちらはずっとまっすぐ進んでいるので、こちらが本線のようである。
しばらく進み、太田川を渡ると終点の横川に到着。これで一応広電を全線乗りつぶした。
駅のホームには大きなアーチ状の屋根がかかり、まるでヨーロッパあたりのトラムの駅のようだ。
広電をひとまず乗り終え、次は新交通システムのアストラムラインに乗る。
アストラムラインは、広島の中心部を起点にアルファベットの「J」の字をひっくり返したような路線となっている。
そのため、終点の広域公園前まで往復するとずいぶん遠回りとなってしまう。
幸い、終点の一つ手前の大塚駅付近まで都市高速が通じており、そこを走るバス路線もある。
これに乗れば、あっという間に終点付近まで行け、無駄な往復をしなくて済む。
横川から、都市高速を通って大塚方面に向かうバスに乗る。この路線、正月休みのためずいぶん減便されていた。
プランを練っているときは気づかなかったのだが、下手をすると大幅な時間ロスをするところだった。
やってきたバスは高速仕様の車両で、座席は下手な観光バスよりも立派だ。
横川を出たバスは、しばらく市街を走る。時間調整のためか異様に速度が遅く、途中のバス停で時間調整をしたりしていた。
しばらく走ると、都市高速の料金所が現れた。ここを過ぎると太田川の放水路と山陽本線を高架で一跨ぎし、長い長いトンネルに入る。
トンネルを抜けると、ほどなく大塚駅に到着。みんなこの先の新興住宅街に向かうようで、大塚で降りる人はだれもいない。
大塚から広域公園前まで、一駅だけアストラムラインに乗ってもよいが、駅の間は1kmも離れていないので、
歩いていくことにする。道は山陽道のインターへと続く主要道で、トラックなどがびゅんびゅんと通過していく。
道すがらには、このあたりが開発される前からありそうな古い農家も残っていたりして、人影はほとんどない。
一方、右手の山の上の方に目を転じると、10数階建ての巨大なマンションがいくつも建ったニュータウンが見える。
あれが先程乗ったバスの行き先らしい。どうせならあそこまでアストラムラインを延長したらいいのに、と思うが、
バスの方が市街地までの所要時間が短いのであまり意味はないのかもしれない。
歩いて広域公園前までやってきたが、人影は全くない。一応周囲には大学や、Jリーグの試合が行われるスタジアムがあるらしいのだが、
正月にわざわざ来る人はおらず、駅は閑散としている。
広域公園前を発車すると、しばらくは雑木林ばかりが見える。進路の下には幹線道路が続いているはずなのだが、
線路の位置が高くよく見えない。途中の伴あたりからは周囲にようやく平地が開け、住宅地が見えるようななってくる。
さらに進むとどんどん周囲に住宅が増えてきて、しまいには山の上の方まで家がびっちりという、
横浜の根岸線あたりや神戸の山手の方を思わせる光景も見られるようになってくる。
やがて、可部線との乗換駅である大町に到着。ここから先は10年前に一度乗ったことがある。
大町からは、太田川に沿って広島市街へと下っていく。ただし、川沿いにも山が迫っていて、平地はあまりない。
こうやって見てみると、広島市というのは案外山がちで、山を無理やり切り開いたような住宅地が多いことがわかる。
後で乗るスカイレールサービスもそういった住宅街を走る路線である。
やがて、山陽本線と山陽新幹線の下をくぐりながら地下へと入る。新交通システムの地下区間というのは珍しく、
国内ではここ以外にはないのではないかと思う。やがて、終点の本通に到着。
先程通った紙屋町に近い中心部に戻ってきた。
先程、広電を全線乗りつぶしたと書いたが、実は微妙な箇所が残っている。
広島港方面からの路線が、本通を出て紙屋町で本線と合流する箇所では、広島駅方面と西広島方面のどちらに向かうかによって線路は二手に分かれている。
そして、合流した直後にある駅も、紙屋町東、紙屋町西に分かれている。
そのため、本通〜紙屋町東間と、本通〜紙屋町西間は一見別区間に見え、
先程は前者の区間にしか乗っていないので、後者の方は乗り残したように見えるかもしれない。
しかし、紙屋町東、紙屋町西の両駅は書類上は同じ駅とみなされる。よって、上記の二区間は書類上は同じ区間である。
よって、本通〜紙屋町西間は別に乗らなくても完乗とみなせるのだが、本通から紙屋町西への区間も一応乗っておくことにする。
本通から西広島行きの電車に乗り、紙屋町西の次の原爆ドーム前で下車。
少し時間が余ったので紙屋町界隈を歩いてみるが、初売りに来た客が非常に多くて歩きづらい。
結局大したこともせずに広島駅に向かう。
広島駅から山陽本線に向かい、スカイレールサービスの起点に近い瀬野へ向かう。
瀬野方面に向かう電車は10分近く遅れて到着した。
到着した電車を見ると、驚くほど混雑している。
おそらく宮島に初詣に行った客を乗せているからだと思うが、まるで首都圏の通勤ラッシュのようだ。
車両が2ドアの115系3000番台だったこともあって、途中駅での乗り降りに手間取ったせいで遅れたのだろう。
車内の混雑は広島で落ち着き、広島での停車時間を削ったこともあってほぼ定刻で発車した。
海田市を出ると車窓には山が目立ってきた。「セノハチ」で知られる急勾配区間を目の前に控えた瀬野で下車する。
瀬野駅は比較的新しい橋上駅舎を備えている駅だ。
その橋上駅舎から、スカイレールサービスのみどり口駅に直結している。同じ電車から乗り換える人はいないようだ。
スカイレールサービスは、瀬野駅の山手に広がる新興住宅街と駅とを結ぶ交通機関である。
中央本線の四方津駅の近くにも似たようなロケーションの新興住宅街があり、
あちらは斜行エレベーターで駅との間を結んでいたが、このスカイレールサービスは交通要覧にも記載されたいっぱしの鉄道路線であり、
乗りつぶしに来ないわけにはいかない。
みどり口駅に向かうと、券売機と改札機が1つずつあるだけで、誰もいない。
券売機で切符を買い、改札機を通すと回収されてしまった。どうやら出場時はそのまま出られるようだ。
ホームに上がると、箱根登山鉄道のロープウェイのような小さな車両が停まっていた。
しかし、車両の上部は千葉都市モノレールのような懸垂式モノレールに近い構造になっている。
ロープウェイとモノレールの合いの子のような妙な交通機関である。
車内には父子連れが一組乗車していた。他の乗客は現れないまま発車。
駅を出ると、いきなりものすごい勾配を登り始める。まるでロープウェイ並みだ。
階段状に建ち並ぶ住宅街の間を抜け、唯一の停車駅であるみどり中街駅に到着。
ここまで来ると、瀬野駅ははるか下の方にある。発車すると再び坂を上り、みどり中央に到着した。
みどり中央は新興住宅街の真ん中にある駅だ。時間があるので周辺を歩いてみたが、 駅周辺には商店などはなく、することはない。あまり歩いていると不審人物と間違われそうなので、程なく戻る。 帰りの便では、またしても家族連れと一緒になった。車両が小さいので、何となく気まずい。
瀬野に戻り、山陽本線で広島に戻る。やってきた車両は115系600番台という、 初期の115系サハを先頭車に改造した車両で、もはや滅多に見られない古めかしい内装だった。 到着した車両は何故か瀬野で5分以上も停車していた。このあたりの山陽本線ではもはや優等列車は走っていないのだが、何だったのだろうか。 車内は空いており、広島駅で買った駅弁を食べながら広島へ戻る。広島から新幹線に乗り継ぎ、岡山へ。 岡山からは117系の快速サンライナーに乗り換え、倉敷に向かう。
倉敷からは、水島臨海鉄道という私鉄に乗る。倉敷市の臨海部にある工業地帯へ向かう鉄道で、
私鉄には珍しく今でも貨物営業が盛んだ。もちろん、旅客営業も行っており、地方にしてはそこそこ本数がある。
そして、私にとっては(上野動物園のモノレールを除き)本州最後の未乗路線であり、
また(路面電車やケーブルカー、モノレール等を除く)普通鉄道としても最後の未乗路線である。
水島臨海鉄道にはICカードは導入されておらず、改札も有人改札のみである。
駅に着くとまだ列車が到着しておらず、ホームは吹きさらしで寒いので、駅前のビルで少し時間をつぶした後に列車に乗り込んだ。
列車は気動車の単行ながら車両は大型で、なかなかの収容力がある。実はJRの気動車よりも車長が若干長いらしい。
車内はボックス席とロングシートが半々の標準的な座席配置である。座席が一通り埋まったところで、発車。
すっかり日の暮れた倉敷市の郊外を、列車は淡々と進む。途中駅はいずれも無人駅のようだが、
どの駅周辺もそこそこ人家があり、少しずつ客を降ろしながら進んでいく。
それより何より、乗ってみて驚いたのは列車の遅さだ。ほとんどの区間で30〜40km/h程度しか出ていないようだった。
最初は、強風か何かで徐行運転をしているのではないかと思ったほどだ。
線形は良いので、気動車といえどももう少しきびきび走れそうなものだが、何だかストレスの溜まる走りだった。
そうこうしているうちに、終点の一つ手前の水島に到着。ここで、残っていた4、5人の乗客がすべて下車した。
実はこの水島で住宅街は終わりで、次の三菱自工前まで行くと周囲は完全に工業地帯になってしまう。
かつては水島から先は朝夕しか列車がなく(今は昼間も若干列車がある)、乗りつぶしの隠れた難所だった。
無人の列車に揺られること3分ほどで、終点の三菱自工前に到着。駅舎はなく、1面1線のホームがあるだけの簡素な駅だ。
乗客を降ろすと、列車は回送となってどこかへ行ってしまった。
少し先の貨物駅に車庫があるようで、そこで折り返してくるようだ。
てっきり発車まで三菱自工前の駅に停車しているものと思っていたので、これには困った。
車内で発車を待てばいいかと思ったのだが、このままでは30分以上も吹きさらしのホームで待たねばならない。
仕方ないので、駅周辺を観察してみる。が、駅周辺は大工場しかない。
正月三が日のこの日は当然工場が稼働しているはずもなく、人の気配はない。
途方に暮れたが、このまま待っていても仕方ないので、水島駅まで歩くことにする。
車も一切通らない産業道路をとぼとぼと歩く。わずかな街灯があるだけの、人の気配が全くない道路というのは実に不気味だ。
作り物のお化け屋敷なんかよりもよっぽど怖いのではないか、と思ってしまう。自ずと足も速くなる。
しばらくすると車通りの多い幹線道路に出て、そこから先は住宅街となった。
結局、10分あまり歩いて水島駅に到着。が、水島駅も無人駅であり、人の気配はなく寂しい。
駅のベンチで20分近く待ち、ようやくやってきた折り返しの列車に乗り込む。
帰りは、後部の運転台にかぶりついて、線路を眺めた。貨物が盛んに走る路線だけあって、各駅の側線の有効長が長いのが特徴的だった。
高架化もかなり行われており、非電化単線という姿とのギャップが面白い。
倉敷に戻り、中国地方で増えつつある黄色塗装を纏った115系に乗って、岡山へ。 正月ながら駅構内のショッピングモールは営業しており、夕食を調達して新幹線に乗車した。 ほぼ始発から終電まで17時間列車に乗り続けてさすがに疲れたが、これで中国地方に残る未乗路線をすべて乗りつくした。
会社名 | 路線名 | 乗車区間 | キロ数 |
---|---|---|---|
土佐電気鉄道 | 後免・伊野線 | ごめん町〜伊野 | 22.1 |
桟橋線 | 高知駅前〜桟橋通五丁目 | 3.2 | |
伊予鉄道 | 高浜線 | 高浜〜松山市 | 9.4 |
横河原線 | 松山市〜横河原 | 13.2 | |
郡中線 | 松山市〜郡中港 | 11.3 | |
城北・城南・大手町線 | 上一万〜道後温泉 | 7.7 | |
本町線 | 西堀端〜本町六丁目 | 1.5 | |
花園線 | 松山市駅前〜南堀端 | 0.4 | |
広島電鉄 | 本線 | 紙屋町〜原爆ドーム前 | 0.3 |
宇品線 | 紙屋町〜広島港 | 5.9 | |
江波線 | 土橋〜江波 | 2.6 | |
横川線 | 十日市町〜横川駅 | 1.4 | |
皆実線 | 的場町〜皆実町六丁目 | 2.5 | |
白島線 | 八丁堀〜白島 | 1.2 | |
広島高速交通 | 広島新交通1号線 | 本通〜県庁前、大町〜広域公園前 | 10.3 |
スカイレールサービス | 広島短距離交通瀬野線 | みどり口〜みどり中央 | 1.3 |
水島臨海鉄道 | 水島本線 | 倉敷市〜三菱自工前 | 10.4 |
合計 | 104.7 |