小私鉄を訪ねて東奔西走

 真夏の暑さが本格化したある日、静岡県に残る未乗線区である岳南鉄道、静岡鉄道を乗りつぶしに出かけた。 どちらも路線はそんなに長くなく、半日も掛からずに乗りつぶせてしまう。 そこで、先日開業したばかりの「成田スカイアクセス」をあわせて乗りつぶすことにした。 方向は東京の西と東で全く逆だが、まあいいだろう。

目次

2010/7/24

■ 小田原11:56発〜熱海12:25着

■ 熱海12:33発〜吉原13:13着

 小田急に乗って小田原へとやってきた。東海道線に乗りかえ、E231系の伊東行きに乗車する。 小田原を出て、早川を過ぎると相模湾がよく見える。 根府川で特急を待避した後、熱海に到着。
 熱海からはJR東海の313系に乗る。全席ロングシートな上、 3連と非常に編成が短く座席が少ない。そのため、立ち客がかなり多い状態で熱海を発車する。 三島や沼津では降りる人も多いが逆に乗ってくる人も多く、混み具合にほとんど変化はない。
 そんな状態のまま、沼津から4駅目の吉原で下車する。貨物扱いのある駅で、 構内には側線が何本か張り巡らされている。

■ 吉原13:19発〜岳南江尾13:39着 岳南鉄道

 吉原駅のホームからは、普通の出口へ向う階段と、岳南鉄道の乗り場へ向う階段がある。 これを通って乗り場に向うと、そこには一昔前の光景が広がっていた。 古びた窓口で硬券ふうの一日乗車券を買い、改札を通る。
 ホームには前面が緑色に塗られた車両が停車していた。 種車は元京王の3000系である。このところ至るところで見かけた車両だ。 内装は京王時代の肌色の化粧板が残っていた。ただし、運転台は新しく増設したもののようで、 ワンハンドル式のマスコンが設置されている。
 列車に乗ろうとすると、茶色い塗装の古びた電気機関車が入線してきた。 この岳南鉄道は地方私鉄には珍しく貨物輸送が今なお行われており、その牽引機のようだ。 沿線にはカメラを抱えたマニアもいて、結構注目の存在らしい。
 10人ほどの客を乗せて、吉原を発車する。 いくつかポイントを渡って吉原駅の構内を過ぎると、列車は右に90度カーブする。 新幹線の下をくぐって工場地帯をしばらく進むと、最初の駅であるジャトコ前に着く。 ジャトコとはショッピングモールか何かかと思ったら、この駅前に事業所が存在する企業の名前らしい。
 その後短い間隔で吉原本町、本吉原と停車する。次の岳南原田を過ぎると、 線路脇に大きな工場が現れ、その工場に入っていく側線がいくつも現れる。 側線には最近あまり見なくなった有蓋客車も何両も停車している。 また、両脇の工場同士をパイプラインが結んでいて、線路の真上を通過している。 旅客列車がパイプラインの下をくぐる光景というのは、 日豊本線の延岡あたりとここでしか見られないのではないだろうか。
 そんな光景を見ていると、比奈駅に着く。この駅もまたすごかった。 ホームや駅舎は古びていて、線路には雑草が生えている。 そして、乗客を迎える駅員さんは制帽やスーツなどではなく、何とツナギを着ている。 おおよそ日本の光景とは思えない。東南アジアかどこかの駅に紛れ込んだのではないかと思ってしまう。
 次の岳南原田も比奈と似たような感じの駅だ。 ここは車庫の存在する駅で、オレンジ色ベースの単行車両が留置されていた。 あとは須津、神谷と停車し、富士山の裾野が迫ってきたところで新幹線の高架を再度くぐった後、 終点の岳南江尾に到着する。 


湘南顔の前面が緑一色に塗りつぶされ、 オリジナルの京王3000系とはやや印象が異なる。


岳南鉄道には古い電気機関車も健在。

■ 岳南江尾13:42発〜吉原14:02着 岳南鉄道

 岳南江尾は古い駅舎がぽつんと建っているだけで、駅前に商店などはなにもない。 駅前広場と駅の構内との間には柵も何もなく、線路を歩いて横断して列車に乗る人もいた。 こんなところも、何となく日本の近代的な鉄道とはかけ離れている。 最近乗車した地方私鉄は、総じて合理化を進めており、 「贅肉」ともいえる側線や古びた駅舎を可能な限りそぎ落としている感があった。 が、この岳南鉄道は昔ながらの姿をよくとどめていると思う。 首都圏から程近いところに、よくこんな鉄道が残っていたな、と感じた。
 岳南江尾での折り返し時間は3分しかなく、一通り写真を撮るとすぐに発車時間となる。 今度乗った車両はオレンジ色の単行列車で、これも京王3000系の改造車だった。 岳南江尾から20分で吉原に戻る。


岳南江尾駅で並んで発車を待つ列車。


岳南江尾駅には、草生した側線が残る。

■ 吉原14:10発〜清水14:38着

 吉原からは再び東海道線で西を目指す。 また混んでいたらいやだなと思っていると、今度の列車は211系と313系を連結した6連だった。 さっきの倍の編成長ということで列車は空いていた。 これぐらい空いていればロングシートだろうと何だろうと不満はない。
 列車は由比を過ぎると海沿いに出る。 先程の根府川近辺と浜名湖あたり、そしてこの由比あたりが東海道線の車窓の三傑といえるのではないだろうか。 吉原から30分ほどで清水に到着する。

■ 新清水14:48発〜新静岡15:08着 静岡鉄道

 清水駅は真新しい橋上駅で、ガラス張りのコンコースが印象的だ。 そんな清水駅を出て、左手にある駅前商店街を進む。 古びた店が多く、シャッター通りの一歩手前といった感じの商店街をしばらく歩き、 JRの線路を踏み切りで渡ると、やがて静岡鉄道の新清水駅が現れた。 ここまで徒歩で10分弱といったところだろうか。
 静岡鉄道は静岡市への通勤通学路線で、全ての駅に自動改札機を完備し、 そして昼間は6分おきに電車が走るという近代的な鉄道だ。 首都圏でも、6分に一本以上の頻度で電車が来る路線というのは案外多くない。 ちなみに地下鉄千代田線も昼間は6分間隔だ。
 もうすぐ次の電車が発車するというので、慌てて改札を通る。 この静岡鉄道は、何故か関西圏でおなじみのPiTaPaに加入しており、 PiTaPaと相互利用可能なICOCAも、当然利用できる。そこで、手持ちのICOCAで改札を通った。
 乗り込んだ車両は譲渡車ではなく、自己発注の車両のようだ。 車両のディテールはどことなく東急っぽい。新静岡を出ると、 駅近くの川を渡る橋梁の部分だけ単線となった後、その後はずっと複線の線路を進む。 運行間隔が短いだけあって、次々と反対方向の列車とすれ違う。
 駅の間隔はかなり短く、JRだと清水から一駅の草薙までは間に4つも駅がある。 JRと静鉄の草薙駅は近い位置にあり、車窓からもJR駅が見えた。 ホームに「考える人」の像がある県立美術館前駅を過ぎると、県総合運動場に着く。 ここは待避可能な駅で、以前急行が運転されていたときはここで待避を行っていたそうだ。 JR線を高架で乗り越えると、車庫のある長沼に着く。 このあたりは駅前にちょっとした山があり、静岡市近郊とは思えないぐらい静かなところだ。
 長沼を過ぎると、だんだんと沿線にビルが目立ってくる。 途中、結構太い幹線道路を何度か踏み切りで横切る。 列車の本数が下手に多いものだから、道路は渋滞しているようだった。 列車の本数が多いと、こういう弊害もある。
 やがて、列車は終点の新静岡に到着。新静岡に着く頃にはそれなりに客が増えていた。 やはり6分おきに列車を走らせるだけの需要はあるようだ。 新静岡の駅前は再開発中のようで、駅前には空き地が広がっている。


静岡鉄道はなかなか先進的な地方私鉄。

■ 静岡15:36発〜東京16:40着 ひかり474号

 新静岡からJR静岡駅はやや距離があり、暑いしバスか何かで移動できないかと歩いていると、 程なく静岡駅の駅前通りにたどり着いた。これならバスに乗るほどの距離ではなさそうだ。 地下道を経由して、10分も掛からずに静岡駅に着く。
 静岡からは「ひかり」で一気に東京に戻る。 これから都内で所用があるためだ。三島、新横浜、品川と停車し、 一時間強で東京に到着。新幹線の車窓から、先程乗車した岳南鉄道の線路を確認しようと思ったが、 よく分からなかった。これまでもその存在に気付いたことはなかったので、 新幹線からはそもそも見えないのかもしれない。

■ 日暮里17:45発〜成田空港18:24着 スカイライナー51号

 都内で用を済ませた後、新装成った京成日暮里駅に向かう。 これから新型「スカイライナー」で、先週開業したばかりの京成成田スカイアクセス線に乗ろうと思う。 新型スカイライナーは、新線区間を在来線最速の160km/hで走行し、 都内からどうがんばっても1時間は掛かっていた成田空港を40分弱で結ぶ。 これから乗る51号は新線区間を走る最終便で、 以降のスカイライナーは従来のルートを船橋などに停車しつつ進むため、160km/h走行は行わない。
 日暮里駅では、スカイライナーの乗り場がその他の列車とは別ホームに分けられており、 特急券のチェックを受けた客のみがホームに上がれるようになっている。 スカイライナーの乗客専用のホームには広い待合室があるが、乗客であふれていた。 列車に乗ろうとする鉄道マニアはあまり見当たらず、純粋に空港を目指す客がほとんどのようだ。
 やがて、新線開業に合わせて投入された新型スカイライナーがやってきた。 濃いブルーのラインが印象的で、京成らしからぬ垢抜けた車両だな、と失礼ながら思ってしまった。 列車に乗り込むと、車内はなかなかの盛況だった。 座席は最近のオフィスチェアのような薄型のシートで、短時間の乗車なら十分快適そうだ。 足元にはPC用の電源もある。
 日暮里を発車し、しばらくはカーブの多い京成本線を進む。 周囲の風景は完全に下町である。北総線と京成線が分岐する京成高砂に着く頃には、 17時55分ぐらいになっていた。時刻表上ではあと25分程で成田に着くことになっているが、 こんな調子で本当に着くのだろうか、と思ってしまう。
 だが、新柴又を通過して江戸川を越えたあたりからいよいよ本領を発揮しだした。 途中駅を通過しながらトンネルをいくつか抜けると、あっという間に東松戸を通過。 時折減速しつつもそこそこのスピードを維持しつつ新鎌ヶ谷を通過すると、 速度はますます上がった。どうやら常時130km/hぐらいで進んでいるようだ。
 新鎌ヶ谷から先は、非常に幅が広い掘割の中を列車は進む。 沿線にはぽつりぽつりとマンションがあるだけで、空き地が目立つ。 この辺の中心駅である千葉ニュータウン中央駅の付近だけはビルが林立していた。 余裕のある町並みは日本離れしていて、まるでアメリカのようだ。 この千葉ニュータウン中央までは、10年ほど前に用があって来た事がある。 そのためここから先は北総鉄道の未乗区間となる。
 その後も列車はまっすぐな線路をひた走り、北総鉄道の終点である印旛日本医大を通過。 ここからいよいよ新線に入る。ちなみに、印旛日本医大までの区間は京成と北総が線路を共有する形となっていて、 両者がそれぞれ独自に列車を走らせている。 東京メトロ南北線・都営三田線の白金高輪〜目黒間と同じような感じだ。
 印旛日本医大を過ぎると、列車は一気にスピードを上げ、最高速度の160km/hで走行する。 確かに速いが、それほどスピード感はない。あまりに線形が良すぎるからだ。 この区間では、車内のモニタに運転席からの映像が映し出されたが、そちらもあまりスピード感はなかった。 思うに、この線形なら160km/hといわずもっとスピードが出せそうな気がする。 既存区間も改良して、新鎌ヶ谷以東は200km/h運転ぐらいしてもばちは当たらないのではないかと思う。
 印旛沼や水田を眺めつつ進むと、あっという間に成田湯川を通過し、JRの空港線と合流。 ここで160km/h運転は終わる。途中の信号所で上りのスカイライナーとすれ違った後、 空港第2ビルに到着。ここで半分以上の客が下車する。あとは地下線を走って終点の成田空港に到着した。
 新型スカイライナーだが、スピードを売りにしているだけあってその速さはなかなかのものだった。 久々に「すごい列車」が現れたなと思う。


新型スカイライナーで一路成田空港へ。


エクステリアだけでなく、内装もブルーを基調としている。

■ 空港第2ビル18:55発〜京成佐倉19:19着 京成電鉄

■ 京成佐倉19:23発〜ユーカリが丘19:31着 京成電鉄

 成田空港の改札を出ると、検問所が待っている。 初めて来ると焦るところだが、私はこれまで何度も来ているので慣れたものだ。 免許書を出して「見学です」と言うと難なく通過できた。
 渡航の際は第2ターミナルを使うことがほとんどなので、勝手が分からない第1ターミナルを抜け、 ターミナル間連絡バスに乗る。10分弱で第2ターミナルに着き、 今度は慣れた足取りで京成の駅に向かう。
 空港第2ビル駅から、京成本線経由の特急に乗る。 時間があるので駅を観察してみると、ホームは縦方向に2分割されている。 成田空港から都内までの間は、京成線経由と北総線経由とで運賃が異なるので、 改札が分かれているのだ。
 しばらく待ってやってきた列車に乗り、京成佐倉へ向かう。 京成佐倉からは快速に2駅乗り、ユーカリが丘で下車。

■ ユーカリが丘〜ユーカリが丘 山万

 ユーカリが丘で降りたのは、関東では(実質)最後の未乗線区である山万に乗るためだ。 山万はこのあたりを開発した不動産会社で、自社が開発した住宅地と駅を結ぶために開発したのが、 これから乗るユーカリが丘線である。 静岡に足を伸ばしたりしていたためすっかり日が暮れてしまっているが、 どうせ見えるのはマンションぐらいなのでまあいいことにする。
 さっそく乗り場に向かうと、改札口に「只今無料運転中」との看板があった。 改札機の電源も切られている。やや不審に思いながらも、 次の列車まで時間があるのでしばらく時間をつぶした後、ホームへ上がる。 すると、まだ発車時間でもないのに発車ベルが鳴っている。 どうやら、この日は列車が到着するたびに五月雨式に発車させているようだった。
 非冷房で暑苦しい車内から、外を眺める。外は住宅街のようだが、あまり明かりは見えない。 意外に揺れが激しいなと思いつつ2駅進み、公園駅に着く。 すると、公園駅では予想外に大量の乗降があった。 しかも、乗ってきる乗客はみな家族連れで、お祭りに行った帰りのようだ。 実はこの日はユーカリが丘でお祭りが行われており、例の無料運転や臨時ダイヤはこのためだったようだ。
 次の駅は女子大。女子大という駅名なのに実際は女子大などない(ただし、女子大のグラウンドはある)、 というので有名なアレだ。続いて中学校、井野と停車し、お祭りに行く客、帰る客を乗降りさせつつ進む。 公園駅に戻る直前、例のお祭りの風景が見えた。かなり広いグラウンドが人でぎっしりと埋め尽くされており、 かなり規模の大きい祭りであることが分かった。
 公園駅を通り過ぎ、起点のユーカリが丘に戻る。本来はこういう環状線を一周する乗り方はよくないのだが、 今回は無料運転中ということで許してもらおう。


ユーカリが丘線には「こあら1号」「2号」「3号」が在籍。

■ ユーカリが丘20:01発〜勝田台20:05着 京成電鉄

■ 東葉勝田台20:07発〜大手町20:51着 東葉高速鉄道/東京メトロ

 帰りはユーカリが丘から勝田台に出て、東葉高速鉄道で東京に戻る。 西船橋からは快速運転となって、あっという間に都内に戻ることができた。

私鉄乗りつぶし状況

新規乗車キロ数

会社名路線名乗車区間キロ数
岳南鉄道岳南線吉原〜岳南江尾9.2
静岡鉄道静岡清水線新静岡〜新清水11.0
北総鉄道北総線千葉ニュータウン中央〜印旛日本医大8.5
京成電鉄成田空港線印旛日本医大〜空港第2ビル18.1
山万ユーカリが丘線ユーカリが丘〜公園4.1
合計50.9