北陸私鉄乗りつぶし(その2)

目次

2010/7/17

■ 富山6:24発〜魚津6:47着

 翌朝、JR富山駅から普通列車に乗る。 やってきた列車は寝台特急電車を改造した419系。元特急型だけあって広いボックス席が特徴だ。 だが、狭い入り口や老朽化などの問題も抱えており、来年には521系に置き換えられて引退するという。 これが最後の乗車になるかも、と思いながら乗車した。
 部活の朝練に行く学生などを乗り降りさせつつ、魚津に到着した。 改札を出て地下道を通り、富山地方鉄道の新魚津駅に向かう。 前に一度来たことがあるので、慣れたものだ。


今日の旅は最後の活躍をする419系から始まる。

■ 新魚津7:12発〜宇奈月温泉7:55着 富山地方鉄道

 新魚津駅の改札口で時刻表を見て愕然とした。次の列車は何と7時12分までないという。 宇奈月7時28分発の黒部峡谷鉄道の列車をインターネットで予約しておいたのだが、 どう考えても間に合わない。原因は出発前に行程をきちんとチェックするのを怠っていたためで、 結果として本来乗るべき列車より一本遅い列車に乗ってしまったようだ。
 とにかく困ったことになってきた。今日中に富山県内の3つの私鉄を乗りつぶし、 「はくたか」で東京に戻るつもりなのだが、本当に今日中に終わるかどうかが怪しくなってきた。 とりあえず切符を買い、普通列車で宇奈月温泉を目指す。
 乗り込んだ元京阪3000系の車内で、リカバリプランを練る。 いろいろ調べた結果、黒部峡谷鉄道の欅平駅で4分で折り返すことに成功すれば、 最終の「はくたか」に間に合いそうだ。だが、インターネットで予約する際、 「欅平での折り返しには最低15分見ておいてください」との旨の注意書きがあったので、 本当に4分折り返しが可能かあやしい。もしこれがアウトだと、 列車だけの乗り継ぎでは最終の「はくたか」には間に合いそうにない。 「夜行急行の能登で帰京」「宇奈月温泉から黒部までタクシー」といった選択肢すら頭にはあった。
 とりあえず今後のプランについて検討し終わったところで、外を眺める。 魚津から結構進んでいるはずなのだが、周辺には水田地帯が広がっている。 そんな水田地帯の間に、ぽつんぽつんと小駅がある。駅舎はどれも木造の古びたものだ。 浦山、愛本といった特急停車駅も、それほど乗客が多そうではない。
 愛本からは急に山深くなり、終点の1つ前の音沢からは無人地帯となる。 宇奈月温泉へ向かう道路と併走しつつ、山の中を進む。 駅間が長いからか急にスピードが出るようになり、山の中を飛ばす。 温泉街が見えてきたところで、終点の宇奈月温泉に到着した。

■ 宇奈月8:17発〜欅平9:33着 黒部峡谷鉄道

 宇奈月温泉駅から3分ほど歩くと、黒部峡谷鉄道の宇奈月駅がある。 駅前にはかなり広い駐車場があり、観光バスなどが停車している。 駅舎は新しく、かなり立派だ。
 早速駅の窓口で往復の乗車券を買う。 これから乗る列車には「特別車両」というのが連結されているので、 いくらか料金をプラスしてこれに乗車することにする。 また、窓口で帰りの便に関する話を聞いた。 曰く、たとえ料金不要の一般車両に乗る場合でも整理券は必要なのだそうだ。 宇奈月行き列車の整理券は欅平駅でしか発行していないので、 現地の窓口で受け取るようにとのこと。プラン遂行のためには、 欅平駅で発車4分前に整理券を出してもらわねばならないのだが、そんな芸当ができるのかは分からなかった。
 改札口には、一般客と団体客が分かれて並んでいる。団体客がおよそ3分の2を占めているようだ。 一般客の方も地鉄で来たという人はほとんどいないようで、黒部峡谷鉄道の客の大半はクルマで乗り付けているようだ。
 しばらく待ち、改札が始まる。今度乗る列車は実に客車10数両もの長大編成だ。 ただし客車1両の長さは通常の鉄道の3分の1ほどしかない。 「トロッコ」と表現するのがぴったりな一般車両を横目に、特別車両に向かう。 こちらは窓のついたボックス席となっている。ただし、窓は開け放たれており一般車両との差はあまり感じない。 ボックスもかなり狭く、強いて言えば座席の背もたれの有無ぐらいだろうか。 ちなみに製造メーカーはアルナ工機で、7000系あたりと同期らしい。 一部のパーツには阪急車両と共通のものも見られた。
 8時17分に宇奈月を発車。同じ車両の客は3人組の家族連れだけだ。 速度は速くないが、振動が結構激しくスピード感はある。 列車はすぐに左にカーブし、黒部川を渡る。後で分かったのだが、 この橋は宇奈月ダムの建設に伴い付け替えられたものらしい。 しばらくすると、ヨーロッパの城郭のような妙な建造物が見えてきた。これは宇奈月ダムに併設された発電所で、 引込み線が延びているのが見えた。
 その後は延々と黒部川の断崖沿いを進んでいく。 トンネルは所々素掘りのままの状態で、壁面がごつごつしている。 また、観光名所が現れると自動放送による案内が流れるのだが、 その声を当てているのは某有名女優だった。富山県出身らしい。
 しばらくすると、柳橋という駅を通過する。 駅とはいっても一般客は乗降できず、信号所の意味合いが強い。 この鉄道の途中駅の大半は一般客の乗降不可で、駅前には何もないか電力関係の施設があるのみである。
 お地蔵様のような形をしているという「仏石」や、 ダムで沈んだ渓谷の両岸を結ぶためのサル専用の吊橋などを見つつ進む。 やがて、一般客が乗降可能な駅の一つである黒薙に到着。 黒薙温泉という秘湯の最寄り駅だが、乗降する客はいない。 たった一人の駅員が手持ち無沙汰そうに座っている。
 黒薙を出ると、黒薙川という沢をかなり高い鉄橋で渡る。 その後も黒部川の渓谷沿いを延々と進んでいく。 窓に下は底の見えないような断崖となっていてスリルがある。 次々と現れるトンネルや鉄橋を観察するのも楽しい。が、一般乗客は必ずしもそうではないようで、 同乗の家族連れなどは途中で思いっきり寝ていた。
 出平駅の手前には、出平ダムがあって勢いよく水が流れているのが見える。 また、冬季にこのあたりが雪に閉ざされた際、電力関係者が歩くための冬季歩道というのが見える。 この歩道経由だと、欅平まで実に6時間も掛かるのだという。 やがて到着した出平駅には、何故かトイレがあった。 乗客の乗り降りできない駅になぜトイレ?と思ったが、その存在理由は後ほど分かる。
 やや時代がかった建物の黒部川第二発電所が見えてくると、猫又駅に到着する。 側線には資材や電力関係者を載せた列車が待機していた。 このあたりの岸壁は百メートル以上はあろうかという高さでそそり立っている。 まさに「秘境」という言葉がふさわしい。
 このあたりまで来ると、それまでダムのせいで滞っていた川の流れが急になってくる。 水の量はかなりのもので、流されたらまず助からないだろう。 梅雨の豪雨のせいで水量が増しているのかもしれない。 そんな急流を鉄橋で渡り、ここから先は左手に黒部川が見えるようになる。 そこで、左側の席に移動する。
 川を渡るとまもなく、列車は鐘釣に到着した。鐘釣温泉というのがある観光地で、 ツアー客の多くがここで下車したようだ。 釣鐘では反対列車と行き違うのだが、この駅は行き違い施設の有効長が足りないようで、 行き違いの方法は複雑だった。
 列車は駅に到着する際、安全側線に頭を突っ込む形で停車する。 そうしないとホームの長さが足りないからだ。発車の際は、一旦最後尾が本線にはみ出る形までバックして、 その後前へと進んでいく。場所が場所だけに地形的な制約がかなり大きいようで、苦心の跡がしのばれる。
 小屋平ダムという、これまた大きなダムのある小屋平駅を過ぎると、 まもなく終点の欅平駅に到着する。 宇奈月から1時間強に渡って延々と険しい渓谷を通ってきたが、 途中飽きることはなかった。乗車時間はそれなりに長いが、鉄道ファンならばきっと楽しめるはず。


黒部峡谷鉄道の宇奈月駅。山の中にあるが非常に立派な駅舎。


もともと電源開発を目的とした鉄道だけに、沿線にはダムが目立つ。


梅雨明けの時期だけあって川の水量は多く、迫力がある。


機関車もミニサイズだが、十数両の客車を引くパワーを持つ。


一般客車は開放的な造りで、探検気分を味わえる。

■ 欅平9:37発〜宇奈月10:59着 黒部峡谷鉄道

 ひとまず予定通り欅平に到着したが、 例の4分折り返しが可能かどうか気が気ではなかった。 欅平駅はおそらく地形的な制約で、到着列車と出発列車が縦列停車の形で停車する。 そのため、到着した列車からホームの端にある改札まではかなり遠い。 走って走って何とか改札脇の窓口にたどり着くと、 直後の列車の整理券を求める客がまだいた。どうやら大丈夫そうだ。
 無事整理券を発行してもらい、機関車や駅の内部などをあわてて撮影して、 列車に乗り込む。かくして、欅平滞在時間わずか4分で折り返すこととなった。
 折り返しの列車では一般客車に乗ったのだが、 こちらは先述の通りトロッコとしかいえない代物で、 側壁やドアはなく、まるで遊園地の豆汽車のようだ。 しかし特別車両より開放感はあって、オープンな分山の空気をたっぷり吸えるし、 空いてさえいればこちらの方がお勧めなぐらいだ。
 帰りの列車でも車窓を満喫しつつ宇奈月へ向かう。 途中行き違う列車はことごとく観光客を満載しており、連休なんだなということを実感する。 途中の出平駅でも行き違いのためしばらく停車したのだが、 本来旅客は降りられない駅にもかかわらず、 ホームにあるトイレを自由に使ってもいいとのことだったのでありがたく使わせてもらった。 ホームのトイレはこういう使われ方をしていたのだ。列車にはトイレはついていないので助かる。
 車内は終始がらがらのまま、起点の宇奈月に戻る。 温泉街が見えてくると、ようやく人里に戻ってきた、という感じがした。


旧線の鉄橋が見えてくると、宇奈月はもうすぐだ。

■ 宇奈月温泉11:17発〜寺田12:32着 富山地方鉄道

 宇奈月に戻ると、11時発の富山行き特急列車が発車していった。 当初乗るはずだった列車だ。これにはさすがに間に合わないので、次の普通列車に乗る。 時間があるので宇奈月温泉の駅前を歩いてみる。 駅前広場には温泉を使った噴水というのがあって、水を触ってみると確かに熱かった。
 しばらく待つと、地鉄オリジナル車両の普通列車がやってきた。 地鉄の車両はほとんどの車両が転換クロスシートを装備しており、 どの車両が来てもなかなか快適だ。10人弱の乗客を乗せ、発車。やはり観光客は多くない。
 先程見た車窓を見つつ、列車は坂を駆け下りていく。 途中駅で乗り降りする客はほとんどおらず、列車は閑散とした状態で進んでいく。 浦山駅を過ぎてしばらくすると、真新しい高架橋が目に入った。昨日も見た北陸新幹線だ。 どうやらこのあたりではかなり内陸部を進んでいるらしい。 地鉄との交差部にも駅ができる予定だそうで、その暁には地鉄にももう少し乗客がやってくるだろうか。
 住宅街の真ん中にある東三日市を過ぎ、やがて電鉄黒部に着く。 古びた大きな駅舎があり、3番線まである大きな駅だ。 JRの黒部駅より、こちらの方がより市街地に近いようだ。
 その後は富山平野の田園地帯を延々と走る。 JRの線路をまたぎ、右に大きくカーブして新魚津に到着する。 新魚津からはJR線に並行して走る。 次の電鉄魚津駅は高架駅であり、駅ビルも併設した立派な駅であるが、 今は駅ビルにはテナントが全くいないようで、廃屋のようで不気味だ。 そんな駅からは親子連れが乗ってきた。
 次の西魚津で行き違いをした後、滑川、中滑川と停車する。 中滑川はJR駅とは隣接していないが、3つもホームがある大きな駅だ。 昔は3つホームがないと追いつかないほど列車の本数が多かったのだろうか。 その中滑川を過ぎるとJR線と離れ、南へ向かう。
 車内は相変わらず空いているが、先頭部には自転車を積み込んだ人が何人かいる。 この富山地方鉄道は、ラッシュ時を除き自転車を車内に持ち込めるようで、 どの列車にも自転車を持ち込む人が結構いた。
 再び北陸新幹線の建設現場とクロスし、 やがて列車は上市に到着。この駅は山の中にあるわけではないが、線形の都合でスイッチバック駅である。 駅構内には「電鉄富山15分 宇奈月温泉45分」と書かれた古ぼけた看板が掛かっている。 地鉄の駅はどこもこんな風で、時間が止まったかのような駅舎や看板類が目立つ。
 上市から3駅で寺田に到着。ここで乗り換える。


地鉄の新塗装はイエローとグリーン。


寺田駅の待合室。こんな趣きある建物が地鉄には健在。

■ 寺田12:35発〜立山13:19着 富山地方鉄道

 寺田駅は本線と立山線が分岐する駅で、3面のホームが扇状に広がっている。 この駅もまた古びていて、ホーム間は構内踏切で行き来する形となる。 特急も停車する駅だが、周囲には水田が目立ち乗降客は多くなさそうだ。
 立山線は、立山黒部アルペンルートへのアクセス路線である。 乗り込んだ列車も連休初日とあって、観光客でほとんどの席が埋まっていた。 朝からこれまでがらがらの電車にばかり乗ってきたので、何だかほっとする。
 寺田を出た列車は、引き続き富山平野を進んでいく。五百石で地元の客を何人か降ろし、 頻繁に途中駅に停車しながらやや勾配のある線路を進んでいく。 やがて列車は岩峅寺に着く。ここは上滝線の分岐する駅で、立山まで行った後戻ってくるつもりだ。
 岩峅寺を出ると車窓は一変し、平野から山の中へと分け入る。沿線に民家や水田は見られなくなった。 横江駅の次には、かつて上横江という駅があったが現在は廃止となっている。 車内の路線図には、上横江駅を削除した跡が残っているためすぐ分かる。 車内から駅の痕跡を探してみたが、よく分からなかった。
 その後も無人の山中を進み、千垣を出ると常願寺川を長い鉄橋で渡る。 観光客の多い列車らしく、この鉄橋の上では徐行するサービスがあった。 上流を見てみると、巨大な砂防ダムが建っているのが見える。 水の流れは青く澄んでいるが、やはり流れはやや多いようだ。
 本宮を出ると、「あと10分で終点の立山です」という放送が入る。 もうかなり山の中を走っているが、ここからさらに10分も掛かるのかと思う。 が、この先の線路は確かにすごかった。急勾配とカーブが連続し、列車は30km/hぐらいの低速でしか進めない。 南海高野線の極楽橋あたりを思い出してしまった。
 そんな所を延々と10分走り、最後は再び常願寺川を長い鉄橋で渡って、終点の立山に着く。 無人の山中にいきなり観光施設が現れるため、かなり違和感があった。


立山線は意外にも険しい渓谷を進む。

■ 立山13:58発〜岩峅寺14:23着 富山地方鉄道

 立山駅はケーブルカーの乗り場の下にあり、半地下のような構造だ。 ほとんどの客がケーブル乗り場に向かう中、駅を出て周囲をぶらついてみる。 かなり山の中にきているはずなのだが、日差しが強く暑い。
 時間があるので、駅前にある立山カルデラ砂防博物館というのに行ってみる。 非常に立派な建物なのだが館内の客はまばらで、建物の脇には国土交通省だかの施設が建っていた。 こういう施設が、一時期話題になった「事業仕分け」の対象になるのか、と思う。
 立山駅の入り口では、地鉄全線の時刻表(無料)と、 地鉄全線が乗り放題となる「電車全線2日フリー乗車券」の案内を見かけた。 どちらも他の駅では見たことがなく、フリー乗車券の方は買っておけばよかったかな、と思う。 ただしフリーきっぷは4400円と高く、元を取るのは大変そうだ。
 立山から今乗ってきた列車に再び乗り、山を下って岩峅寺に戻る。

■ 岩峅寺14:28発〜稲荷町14:55着 富山地方鉄道

 岩峅寺駅も、古びた駅舎に構内踏切、年代物のプラットホームが残る味のある駅だ。 ここから不二越・上滝線に乗って、地鉄の鉄道線の乗りつぶしを締めくくろうと思う。 不二越・上滝線は南富山を境に線名が分かれているが一体の路線として運行されている。 列車本数は地鉄の中でも最も少なく、日中は一時間に一本しか列車がない。
 元京阪3000系車両に再び乗り、岩峅寺を発車。車内はがらがらで、2両目は貸切状態だ。 最初の大山寺駅は、駅全体がコンクリートの落石よけに覆われていて、まるで地下駅のようだ。 次の上滝は線名にもなった駅で、いくらか乗客があった。 その後もこまめに途中駅に停車していくうちに、車窓は田園地帯から住宅地に変わってきた。
 やがて列車は南富山に着く。改札口の脇には路面電車が停車している。 こちらは後で乗ることにし、とりあえず南富山を通り過ぎる。 あとは富山の市街地を走り、幹線道路を長い踏切で渡ったりして、 電鉄富山の1つ手前の稲荷町に到着。これで鉄道線全線を乗りつぶした。


元京阪の車両で、地鉄の電車線を乗りつぶす。

■ 稲荷町15:07発〜南富山15:14着 富山地方鉄道

 稲荷町は車庫の併設された駅で、元西武レッドアローが一部塗装のはげた姿で留置されていたりする。 駅周辺には大きなスーパーや工場もある。駅舎は相変わらず古びていて、真新しい自動券売機が浮いている。 稲荷町から不二越・上滝線の列車に乗り、南富山に引き返す。

■ 南富山15:16発〜大学前15:44着 富山地方鉄道

 南富山から、先程見た路面電車に乗る。 地鉄の軌道線は、昨日乗った富山都心線と、既存の路線からなる。 既存の路線の方は南富山から大学前まで一直線なので乗りつぶしは容易だ。 ただ、半数の路線は大学前まで行かず富山駅前で折り返しとなる。幸い、今度乗る列車は大学前まで行く。
 割と年季の入った電車に乗り込み、発車。乗客は4、5人ほどだ。 富山駅前までは5分間隔で電車が走っており、利便性は高い。 電車は富山駅前へ向かう幹線道路をまっすぐ進んでいく。 途中、「広貫堂前」という電停がある。広貫堂というのは、富山名物の薬メーカーらしい。
 西町を出たところで富山都心線と合流し、繁華街を進む。 乗客はあまり多くなく、終始10人以下のままだ。やがて富山駅前に到着、ほとんどの客を入れ替えてさらに進む。 丸の内で富山都心線と分かれ、右折する。目の前に神通川が近づいてきたところで線路はいきなり単線となり、 単線のまま神通川を渡る。渡ったところにあるのが新富山駅だが、この駅はホームが一本しかなく、 駅の少し先にある信号所で行き違いをする。この単線区間が存在するため、 大学前付近は10分間隔でしか走れないようだ。
 渋滞気味の道路を尻目にしばらく走り、終点の大学前に到着。周囲はごく普通の市街地だった。


在来の軌道線は旧型車両が主力。

■ 大学前15:52発〜富山駅前16:05着 富山地方鉄道

■ 富山16:11発〜高岡16:22着 しらさぎ14号

 富山大学の学生と思われる若者を乗せて、大学前から折り返す。 途中渋滞に巻き込まれないかと心配だったが、ほぼ定時に富山駅前に戻った。
 富山からは15分発のサンダーバードで高岡に行くつもりだったが、 一本前のしらさぎに間に合ったので、乗ってしまう。高岡まではわずか10分で到着だ。

■ 高岡駅前16:30発〜越ノ潟17:12着 万葉線

 高岡駅を出ると、万葉線の乗り場がある。 万葉線は以前一度乗ったことがあり、途中駅の新能町から高岡駅前まで乗車した。 今回は新能町から先の区間に乗車する。2日間に渡る乗りつぶし旅のフィナーレを飾る路線である。
 乗り場には古い路面電車が停車しており、車内にはビール瓶などが転がっている。 こちらは貸切のイベント列車用で、しばらくすると定期列車がやってきた。 車両は前回も乗車した新型の「アイトラム」であった。 前回来たときはまだ本数も少なく貴重な存在だったが、 今はさらに本数が増えて日中の半数以上の運用をまかなうまでになっており、さほど貴重な存在ではなくなった。
 10人弱の客を乗せて高岡駅前を発車する。 高岡駅付近は単線区間が続き、行き違いをしながら通過する。 高岡大仏口という副駅名を持つ坂下町駅付近では、高岡大仏がちらりと見えた。
 そういえば、この電車の車内アナウンスは通常のものとは異なっていて、 観光案内を含んだものとなっている。聞くと、地元出身の某有名落語家が声を当てているそうだ。 富山の私鉄は有名人のアナウンスが好きなのだろうか。 最初はいいのだが、ずっと聞いていると少々うるさい気もしないではない。 毎日利用している地元の人はどう思っているんだろうと考えたが、 この放送が流れているのは土休日だけとのことだった。
 広小路を過ぎると、複線となって幅の広い幹線道路の真ん中を進む。 江尻駅の脇には大きなショッピングセンターがあり、買い物袋を抱えた客が乗ってきた。 新能町を過ぎると、車庫のある米島口に到着。 ここでふと後ろを振り返ると、先程見たビアホール列車がすぐ後ろにいた。 どうやら車庫に回送されて来たらしい。
 米島口を出ると、これまでとは車窓は一変する。 線路は単線の専用軌道となり、高架橋でJR氷見線と貨物線を一気に跨ぐ。 高架を降りたところにある能町口駅は駅舎も古びていて、割と近代的だったこれまでの区間とは印象が異なる。
 能町口を出るとまた併用軌道になるが、道路の幅は狭く路面電車が走るような所とは思えない。 周囲も工場や倉庫が並ぶばかりで、乗客はあまり多くなさそう。 併用区間はすぐに終わり、今度は専用軌道となって住宅街を進む。
 やがて列車は六渡寺駅に着く。ここは今ではごく普通の駅だが、 鉄道線と軌道線の分界点である。鉄道線はかつては富山地鉄の射水線という路線で、 先程路面電車で通った新富山駅を起点にここまで線路を延ばしていた。 今では越ノ潟より富山側は廃線となり、高岡から延びてきた軌道線と一体化している。 この駅が分界点であることは、件の車内放送でも触れられていた。
 六渡寺を過ぎると新湊地区の中心部に差し掛かるようで、下車客が多い。 この辺に住んでいる人にとって、万葉線は貴重な足であるようだ。 中新湊を過ぎると、内川という川を鉄橋で渡る。川沿いには船が何隻も泊まっており、 港町であることを実感する。海王丸を出ると海沿いの緑地が見えてきて、 海が近づいてきたことが分かる。やがて、電車は終点の越ノ潟に到着。 ホームが一本あるだけの何ともシンプルな終着駅だ。


終点の越ノ潟に到着したアイトラム。

■ 越ノ潟17:16発〜高岡18:03着 万葉線

 越ノ潟に着くと、ちょうど渡船が到着したところのようだった。 越ノ潟より先はかつて陸地が続いており、線路は海の向こうの富山市内まで続いていた。 今は港湾開発のため陸地が削られ、陸から海になった箇所を渡船が結んでいる。
 越ノ潟駅の周囲はごく普通の住宅地だが、その向こうには巨大な橋が建設されつつある。 これが陸地を削った部分を結ぶための橋で、先程の渡船はまもなく橋に役割を譲って廃止される運命にある。
 そうやって観察しているうちに、発車時刻となった。 例の車内放送をまた聞きつつ、今乗ってきた線路を逆行して高岡駅前に戻る。 時刻は18時過ぎ、東京への最終にゆうゆう間に合った。 これだけハプニングがあったにもかかわらず、時間内に全路線を乗りつぶすことができ心からほっとした。

■ 高岡18:47発〜越後湯沢20:59着 はくたか25号

■ 越後湯沢21:09発〜東京22:28着 Maxとき350号

 時間が余ったので、高岡駅の売店で土産や夕食の駅弁を買い、最終の「はくたか」に乗り込む。 富山を過ぎ、親不知の海沿いの箇所を通っているうちに日が暮れた。 越後湯沢で上越新幹線に乗り換えるが、指定席はほぼ満席のようだった。 高崎で前8両を増結するというので、増結編成の自由席に行き、がらがらの車内でくつろぎながら東京へ戻った。


この日の夕食は「富山味づくし」。 1000円にしてはおかずが豊富で、名物ますのすしも入る。

私鉄乗りつぶし状況

新規乗車キロ数

会社名路線名乗車区間キロ数
北陸鉄道浅野川線北鉄金沢〜内灘6.8
石川線野町〜新西金沢2.1
えちぜん鉄道勝山永平寺線永平寺口〜勝山16.9
三国芦原線福井口〜三国港25.2
福井鉄道福武線市役所前〜田原町1.3
黒部峡谷鉄道本線宇奈月〜欅平20.1
富山地方鉄道本線新魚津〜宇奈月温泉23.1
立山線寺田〜立山24.2
不二越線稲荷町〜南富山3.3
上滝線南富山〜岩峅寺12.4
軌道線大学前〜南富山駅前6.4
富山都心線丸の内〜西町0.9
万葉線新湊港線越ノ潟〜六渡寺4.9
高岡軌道線新能町〜六渡寺3.9
合計151.5