上州信州ミニ私鉄の旅

 碓氷峠を接して隣り合っている群馬・長野両県には、JR線以外にも私鉄の電車が走っている。 東武や長野電鉄といった規模の大きい私鉄もあるが、規模の小さい地味な私鉄もいくつかある。 これまで乗る機会のなかったそれらの私鉄を、日帰りで乗りつぶしに出かけた。

目次

2010/6/26

 この日は、群馬県に残る未乗線区である上信電鉄、上毛電鉄を乗りつぶしに出かけた。 上信電鉄は高崎から西に伸びる盲腸線で、これを単純往復するのはつまらない。 そこで、東京から下仁田を経由して上田に向かう高速バスを利用することにした。 このバスの東京側の始点は池袋だが、家から池袋は遠いので、 途中経由する川越的場バスストップから乗車することにした。

■ 八王子9:08発〜的場10:15着

 土曜朝の八王子駅は、学生などで混雑している。 その多くは中央線に乗り込み、八高線に乗る人は少ない。 そんな八高線の列車に乗り込み、川越線の的場を目指す。 八高線に乗るのはおよそ4年ぶりである。
 西八王子、小宮で乗客が降り、車内は随分空いた。 多摩川を渡って拝島を過ぎ、八高線の車庫を作る計画があったという箱根ヶ崎に着く。 立派な橋上駅舎に改築されていた。箱根ヶ崎を過ぎると、車窓に山林が目立ってきた。
 やがて列車は金子に着く。この駅は古い駅舎が残り、ホームも昔ながらの古びたもので、 気動車が到着しても違和感がないような雰囲気だった。 東飯能で西武線の列車とすれ違いつつ、高麗川へ。
 高麗川で10分停車した後、川越線に入る。川越線に乗るのはおよそ10年ぶりぐらいだろうか。 3駅進み、的場に到着。


まずは205系から旅のスタート。

■ 川越的場10:30発〜下仁田(高速バス)11:52着 西武高原バス

 的場駅を出て、関越道の方に向かって10分ほど歩く。 ごく普通の住宅街の中に、川越的場バスストップへの入り口があった。 入り口は住宅の玄関用の柵でふさがれていて、これを空けて入る。
 バスストップには、意外にも5人ほどの客が待っていた。 バスは定刻どおりにやってきたが、乗車時に運賃を精算する客が多く、やや遅れて発車した。 車内は4列シートながら、夜行便との共通運用になっているのかシートピッチにはかなり余裕があり、 フットレストも付いている。
 関越道はやや混んでいるが、渋滞はなく90km/h程度で快走する。 上里サービスエリアでの休憩の後、上信越道に入る。 しばらく走ると、高速道路とは思えないほどの急な勾配が続く。 これから乗る上信電鉄もきっと勾配が多いのだろうなと思わせる。
 やがて、バスは富岡インターを出る。長いランプウェイを走って、富岡バスストップに到着。 数人が下車した。再び高速に戻り、ほぼ定刻で下仁田バスストップに到着した。 バス停は意外にも、高速の入り口からかなり離れたJAの直売所の前にあった。


西武高原バスのハイデッカー車。上里SAにて。

■ 若宮12:12発〜下仁田駅12:27着 しもにたバス

 バス停のある場所は上信電鉄の駅からは離れているため、 まずは駅まで移動しなければならない。小雨がぱらついているし、 タクシーがあれば使おうと思っていたのだが、そんな気の利いたものはありそうにない。 そこで、ここから最も近い南蛇井駅までの道を物産館の人に聞く。 畑の間の細い道を降りて、旧国道をまっすぐ歩くといいらしい。 距離は1kmぐらいだそうだ。
 教えられたとおり、畑の間の道を進む。ネギの有名な産地だけあって、横はどちらもネギ畑である。 国道に下りると、「しもにたバス」と書かれたバス停があった。 どうやらコミュニティバスが走っているらしい。 時刻を見ると、あと10分ほどで下仁田駅までいくバスが来るらしい。 携帯電話で調べてみると、このバスに乗れば下仁田駅に12時27分に着け、 30分発の電車に辛くも間に合う。たとえ間に合わなくても、雨の中歩かなくて済むだけでも助かる。 こんな意外な発見があるから、ローカル線の旅はやめられない。
 バスは時間通りにやってきた。ある程度予想していた通り、 バスといっても使われている車両はジャンボタクシーであった。 先客は誰もいない。バスは下仁田に向かう国道をゆっくりと走る。 途中でおばさんを一人乗せ、市役所や病院を経由しつつ進み、 下仁田駅には24分頃到着した。

■ 下仁田12:30発〜高崎13:28着 上信電鉄

 下仁田駅は、地方私鉄の終着駅らしく古びた駅舎が残っている。 がらんとした構内の自動券売機で、高崎までの切符を買う。 他に友人の窓口もあって、そちらでは硬券が買えるのかもしれないが、 あいにく係員はいなかった。
 改札を抜け、ど派手なラッピングを施された2両編成の列車に乗る。 3ドアロングシートの車両で、一見西武からの譲渡車っぽいのだが、 細部が西武の車両とは異なっており、もしかすると自社製造の車両かもしれない。
 5人ほどの客を乗せ、下仁田を発車する。 列車は鏑川の谷に沿ってぐねぐねと曲がりながら進んでいく。 しばらく進むと信号所があって、ここで行き違いをした。 当初のプランで南蛇井から乗る予定だった列車である。 あのコミュニティバスのおかげで、当初予定より一本早い列車に乗れたことになる。
 やがて、最初の駅である千平に着く。 小さな待合室があるだけの無人駅である。とても静かないいムードの駅で、 鉄道写真のロケ地になりそうな駅だ。 その次の駅は南蛇井。珍名駅としてマニアには有名な駅で、ここも古い駅舎が残っている。 古いのは駅舎だけでなく、紺色の板に手書きの文字を書き入れた看板類も健在で、 いい味を出している。
 しばらくは乗客も少なく、鏑川に沿って静かに進んでいたのだが、 上州七日市で高校生の大群が乗ってきてムードは一変する。 やはりローカル私鉄だけあって、ここでも高校生が一番のお得意様なのだった。 車窓も田畑や住宅ばかりが目に入り、もはやローカル線の旅ではなくなった。
 そんな中、所々に古い駅舎が残っているのが特筆される。 上州一ノ宮、上州福島、上州新屋、真庭、山名といった駅に古い駅舎が残っていた。 主要駅の一つである吉井あたりまで来ると高校生たちもほとんど下車し、 車内も落ち着いてきた。
 根小屋を過ぎ、烏川を渡ると目の前に上越新幹線の高架橋が見えてきた。 その高架下に信号所があり、再び行き違いをした。 駅間が大して長くない路線に、これだけ信号所があるというケースも珍しいのではないだろうか。
 信号所を過ぎて南高崎を出ると、高崎はもうすぐである。上信電鉄に初めて乗ってみた印象としては、 全区間を通じてコンスタントにそこそこ乗客があり、 ローカル私鉄にしてはそこそこ栄えているなと感じた。 やがて、列車は終点の高崎に到着。ホームは高崎駅の外れにあり、 JRの乗り場まではやや距離があった。


なかなか趣のある終着駅・下仁田。


上信電鉄の車両はどれも派手な広告が入っている。

■ 高崎13:46発〜前橋13:59着

 群馬県に残るもう一つの未乗線区である上毛電鉄に乗るべく、高崎から前橋へ移動する。 今度の両毛線小山行きは107系、ロングシートの車両である。 この車両のシートは妙に座面が低く、どう座っても腰が痛くなりあまり好きではない。 それでも10分ちょっとで、高架の前橋駅に到着する。ここで下車するのは初めてだ。


およそ8年ぶりに乗った、ロングシートの107系。

■ 前橋駅前14:00発〜中央前橋駅14:04着 日本中央バス

 JR前橋駅と上信電鉄の中央前橋駅はやや離れており、当初は徒歩で移動するつもりだった。 だが、予定が繰り上がったことで14時15分発の電車にぎりぎり乗れるようになり、 その先の乗り継ぎも考えると何とか間に合わせたい。しかし、15分で歩けるかどうかはよく分からないので、 この間をバスで移動することにした。
 駅前のバスロータリーに移動すると、ちょうど「富士見温泉」行きのバスが発車を待っていた。 中央前橋駅を通ることを確認し、乗る。床は昔ながらの板張りである。 途中信号に引っかかったりもしたが、10分も掛からずに到着した。

■ 中央前橋14:15発〜赤城14:53着 上毛電気鉄道

 中央前橋の駅は、地方私鉄の駅とは思えないぐらい立派なガラス張りの駅だった。 赤城までの切符を買い、有人の改札を通る。 停車していたのは元京王井の頭線のステンレス車である。およそ1年ぶりの対面である。
 車内は空いていて、10人弱の乗客を乗せて発車する。 水の流れの豊富な川の横を進み、最初の停車駅である城東に着く。 ここで、一番前の席に座っていたお年寄り2人が下車した。 わずかこれだけの距離の移動のために、30分に一本の列車を待つ人もいるんだなと感心してしまった。 と同時に、1分を争うような私の移動は何なのだろうと思ってしまう。
 その次の停車駅は三俣で、いきなり列車交換がある。 ここですれ違ったのは何とチョコレート色の旧型車両であった。 「団体専用」の看板が掛かっていたので、貸切での運行だったのかもしれないが、 詳細はよく分からなかった。10人ほど乗客がいたようなのだが。
 列車は前橋の市街を徐々に抜け、赤城山の南麓の起伏の多い土地を進む。 この日は天気が悪く、残念ながら赤城山は全く見えない。 途中の駅の半分はホームがあるのみの無人駅で、そういう駅での乗車はほとんどない。 一方、江木や粕川のように有人の駅もあって、女性の駅員が深々とお辞儀しているのが印象的だった。
 やがて、車庫のある主要駅の大胡に着く。 この駅にはライトが張り巡らされ、夏だというのにイルミネーションをやっているらしい。 しかし、失礼ながら周囲はイルミネーションのおおよそ似合わない農村である。
 大胡を出ても、列車は引き続き静かな農村を進んでいく。 途中駅での乗降はほとんどない。上毛電鉄ではサイクルトレインを実施しており、 後部車両には何台か自転車も乗り込んでいたようだが、それでも車内は閑散としている。 地方私鉄であんまり列車が空いていると、先行きが危ういのではないかなどと要らぬ心配をしてしまう。
 そんなことを考えているうちに、列車は赤城に到着した。およそ1年ぶりの訪問だ。


ガラス張りの近代的な始発駅・中央前橋。


井の頭線で活躍した「湘南顔」車両が走る。

■ 赤城15:07発〜浅草16:55着 りょうもう30号

 赤城駅の窓口で浅草までの特急券を買い、この駅始発の特急「りょうもう」に乗り込む。 列車に乗ろうとすると、ちょうど浅草からの列車が到着した。 約1時間後の列車として折り返すらしい。随分余裕のある運用だ。 小田急だと特急列車でも10分で折り返す運用がざらにあるので、違和感がある。
 休日夕方の上り列車なので空いているかと思ったが、 太田や館林でかなりの乗車があり、窓際の席はほとんど埋まった。 16時55分、浅草着。この駅の線路のカーブのきつさには相変わらず感心させられる。


初めて乗車する「りょうもう」で東京に戻る。

2010/7/11

 この日は、長野県に残る未乗線区である松本電気鉄道、上田電鉄を乗りつぶしに出かけた。 松本電気鉄道は松本から、上田電鉄は上田からそれぞれ伸びる盲腸線で、 路線の長さといい、首都圏の私鉄で活躍した車両を使用している点といい、よく似ている。 そこで今回は、この2つの路線をまとめて乗りつぶすべく出かけた。

■ 八王子8:33発〜松本10:37着 スーパーあずさ5号

 この日はまず、「スーパーあずさ」で松本へと向かう。 使用される車両はJR東日本で唯一の振り子式車両・E351系だ。 実は私、この車両に乗るのは初めてである。中央東線はこれまでさんざん乗ったが、 特急に乗ったのは数えるほどしかない。
 八王子から自由席に乗車する。幸い自由席は空いていて、窓側の席を悠々確保できた。 列車は市街地をあっという間に駆け抜け、高尾を通過。小仏峠を目指してひた走る。 さすがは振り子車両、カーブの多いこの区間でもスピードが落ちない。 建設中の圏央道の下をくぐり、小仏トンネルを抜け、相模湖を通過する。
 その後も列車はカーブの多い線路を突き進み、鳥沢鉄橋を走り抜け、 主要駅である大月も通過し、あっという間に笹子トンネルに到達。 トンネル内では謎の徐行があったものの、トンネルを抜けると程なく甲府盆地に降りて、甲府着。 甲府では半分以上の乗客が降り、一気に車内は空いた。
 その後も小淵沢へ向かう急勾配をものともせず列車はひた走る。 普通列車だと、日野春や長坂あたりまで来ると高原のひんやりした空気が車内に流れ込んでくるのだが、 密閉された特急列車ではそれもない。そこで、小淵沢に停車する際にホームに降りてみた。 しかし、10秒もすると発車ベルが鳴り始め、慌てて車内に戻る。 結局、小淵沢をわずか30秒停車で発車した。
 改めて車内を見渡してみると、客室はそれほどではないもののデッキなどは化粧板がかなり劣化しており、 ややくたびれた感は否めない。また、振り子車両ゆえ車体がトンネル等に接触しないよう、上部がすぼめられている。 そのため乗車しているとやや狭苦しい感じがする。
 E351系はもう登場から15年になる。 並行するバスに対抗するためスピードアップを目指して開発されたものの、 必要なコストの割に効果が少なく(おそらくE257系と比べて新宿-松本間で10分ぐらいしか縮まっていないと思う)、 後継のE257系は非振り子車となった。
 やがて、列車は岡谷に到着。しばらくすると単線区間に入り、下諏訪で上り特急をやり過ごしつつ進む。 長い長い塩嶺トンネルを抜けて塩尻を過ぎると、程なく終点の松本に到着する。 遅れることの多い中央線特急だが、この日は2分の遅れにとどまった。


初めて乗車するE351系で中央西線を西へ向かう。

■ 松本10:49発〜新島々11:19着 松本電気鉄道

■ 新島々11:31発〜松本12:00着 松本電気鉄道

 松本からは松本電気鉄道に乗る。松本電気鉄道は松本から各地への高速バスを多数運行しており、 バス会社としての印象の方が強い。鉄道線も上高地へのバス路線の一部という位置づけで、 終点の新島々では上高地行きのバスに連絡している。 そのため、乗客は県外から来た観光客が多い。
 松本電鉄の乗り場は、JR駅の構内にある。ホームは1線だけで、 1つのホームをJRの大糸線と共有している。このホームは篠ノ井線のホームとはやや離れていて、 もともと大糸線も私鉄であったという過去の歴史的経緯も影響しているかもしれない。
 車両は元京王のステンレス車だが、バスと共通の白色ベースの塗装をわざわざ施している。 車体にはレタリングがベタベタ張られ、まるでJR九州の車両のようだ。
 松本を発車し、JRの松本電車区の脇を進む。 電車区の端まで来たところに、最初の駅である西松本駅がある。 小さな上屋つきベンチがあるだけのそっけない無人駅だった。 松本電鉄は無人駅が多くを占めており、たいていはこんな感じの駅である。
 梓川の支流の奈良井川を渡ると、松本の市街地を抜け田畑が多くなる。 無人駅にいくつか停車するうち、新村に着く。 ここは社員配置駅で、古めかしい駅舎が健在だ。 また、脇には車庫もあり、廃車になった「青ガエル」こと元東急の5000系が留置されていた。
 新村を過ぎると、だんだん平野が狭まって山が迫ってきた。 勾配もなかなか急だ。ボロボロの駅舎が残る森口、田んぼのど真ん中にある渕東を過ぎると、 終点の新島々に到着だ。観光客を中心に、10数人の客が残った。
 列車を降り、前方を見てみるとしばらく信号が続いている。よく見ると、 もう使われていない信号機も立っていた。 かつて、新島々から少し先の島々まで線路が延びていたが、災害のため廃止となってしまった。 その名残が今も残っているようだ。
 立派なバスターミナルとなっている新島々駅を出て、少しだけ周囲を歩いてみる。 すると、国道の向こう側に「旧島々駅」の看板を掲げた古い駅舎が建っていた。 今は物産館として使っているようだが、本当に旧島々駅から移築したものかは分からない。
 10分ちょっとの滞在の後、松本に戻る。 帰りは観光客も行きより多く、地元の人も乗ってきて立ち客の出る盛況だった。


「アルピコカラー」を纏った、元井の頭線のステンレス車。


新島々は上高地観光の拠点となっている。

■ 松本12:05発〜長野12:54着 (ワイドビュー)しなの7号

 松本からは、383系「しなの」で長野を目指す。 実は383系に乗車するのもこれが初めてだ。駅弁を買って自由席に乗り込むと、 松本で降りる人が多いせいか車内は空いていた。 シートの色は濃いグリーンで、ほぼ同じ時期に登場した373系の真っ赤なシートに比べて随分落ち着いた印象だ。
 列車は梓川に沿ってしばらく走る。明科で飯田線に直通する313系をやり過ごした後、長い長いトンネルに入る。 トンネルを抜けると、梓川から離れた盆地をしばらく進む。 聖高原で上り特急と交換し、冠着を出ると再びトンネルへ。
 トンネルを抜けると、姥捨の景勝地に出る。 ちゃんと観光案内放送もあって、「田毎の月」で知られる棚田の紹介もあったのだが、 この特急は肝心の姥捨駅を通過するため、棚田は一瞬で目の前を通過していった。
 地平に降りると程なく篠ノ井で、ここでしなの鉄道や長野新幹線と合流する。 新幹線と併走しつつ進み、長野に到着。 383系に乗った感想だが、同じ振り子のE351系に比べて随分揺れが少ないなと感じた。 何か違いがあるのだろうか。


こちらも初乗車となる383系で長野へ向かう。

■ 長野13:02発〜上田13:15着 あさま526号

 長野からは、長野新幹線に一駅乗る。篠ノ井からしなの鉄道でも別によかったのだが、 「しなの」と新幹線を乗り継ぐと、前者の特急料金が半額になるので、 トータルの値段はこちらの方が安い。
 先程地平から見た景色は、今度は高架から眺めつつ進む。 線路沿いには岩山のようなものも見え、こんなものが長野駅の近くにあるとはさすが山国だな、と思う。 篠ノ井駅を通過すると程なく長いトンネルに入り、上田に到着。

■ 上田13:46発〜別所温泉14:13着 上田電鉄

 上田は真田一族の暮らした上田城などで知られ、 最近は真田一族を前面に押し出して観光客誘致を図っているらしい。 そのため、観光用のチラシやお土産物も真田一色である。
 そんな中、上田から別所温泉へ向かう上田電鉄に乗ろうと思う。 上田を通るのは初めてではないが、これまで何だかんだで乗る機会がなかった。 去年長野電鉄に乗りに来たときに、ついでに乗ればよかったのだが、何となく面倒臭くて乗らなかったのである。
 上田電鉄の上田駅は、近代的な高架駅である。 また、車両も元東急の1000系に置き換えられており、中小私鉄にしては珍しくVVVF車を運行している。 上田電鉄は東急との関わりが強いようで、他の私鉄より優先的に新しい車両を譲渡してもらったのだろうか。 そういえば、駅改札には東急の社内誌「SALUS」を置くためのホルダーもあった。
 列車に乗ろうとすると、係員が大量の手荷物を乗務員室に積み込んでいた。 往年の手荷物輸送を思い出させる光景だったが、あれは何だったのだろうか。
 十数人の乗客を乗せ、上田駅を発車。 発車すると左へ大きくカーブし、千曲川を鉄橋で渡る。渡ってすぐのところにあるのが城下駅だ。 屋根も何もないシンプルな駅である。上田電鉄も松本電鉄同様、そっけない無人駅が多い。
 しばらくは上田の市街地を進むが、3、4駅もすると市街地が尽きてきて、周囲には田畑が目立つようになる。 無人駅で少しずつ乗客を降ろしつつ進み、やがて下之郷に着く。 ここは列車交換が可能なほか、車庫も併設されていて運転上の重要な拠点である。 車庫には、レトロ調のラッピングをした元東急7000系が留置されている。
 下之郷で列車交換をし、発車。別所線の線路は下之郷で90度にカーブしているため、 面白いことに交換した列車をしばらくの間車窓から眺めることができる。 駅の周囲が田んぼばかりで、視界を遮るものが無いからこその眺めだろう。
 そういえば、上田電鉄はここに限らず急カーブが非常に多い。 路面電車並のカーブを恐る恐るといった感じで進む箇所が随所に見られる。 勾配も急で、昔の旧型電車はさぞ苦労しただろう。
 中之郷の次の中塩田駅は、無人駅ながら古い洋館風の駅舎が健在だった。 上田電鉄の中間駅では、中之郷とここにしか昔の駅舎は残っていない。 列車は降り出した雨を突いて進み、田んぼのど真ん中にある舞田駅を過ぎて、 終点の別所温泉駅に到着した。別所温泉駅も、中塩田と似た感じの駅舎が残っていた。 また、駅の外れには「丸窓電車」として親しまれた旧型車両が、 あまり状態はよくないものの残っていた。


上田電鉄は元東急1000系を導入し、近代化が図られている。


アルファベットの駅名表示がモダンな別所温泉駅。


別所温泉駅で発車を待つ1000系。

■ 別所温泉15:04発〜上田15:33着 上田電鉄

 別所温泉は古刹や古くからの公衆浴場があり、 その落ち着いた雰囲気から「信州の鎌倉」と呼ばれているらしい。 別所温泉の駅も、玄関口にふさわしくとても風情のある駅である。 駅では袴をはいた女性が観光案内をしていて、彩を添えている。
 このまますぐ折り返すのでは、電車に乗る以外余りに何もしていないことになるので、 至近の列車を一本落として観光をしてみることにした。 すぐ折り返しても、長野新幹線との接続がよくないことも理由の一つである。
 駅は温泉街からやや離れているので、小雨の降る中駅前通りをとぼとぼと歩く。 10分弱歩いたところで、「大師湯」という古めかしい公衆浴場がある。 時間に余裕があれば是非入ってみたかった。
 次に、安楽寺というお寺に行く。ここは鎌倉時代から続く古刹で、 国宝に指定されている三重塔があるというので、行ってみることにした。 寺にたどり着くと、まず目に入ったのは苔むした石段だった。 この石段の雰囲気は素晴らしく、来てよかった、と思った。
 立派なお堂の脇に、三重塔の入り口がある。拝観料を払って山道を登っていくと、 想像していたよりは小さな塔があった。それでも、細かい木の部品を組んだ塔は精巧だった。 その後、北向観音というお寺に行く。それほど大きい寺ではないが、 長野の善光寺と同じぐらい由緒正しいお寺なのだそうだ。
 慌しい観光を終え、別所温泉駅の写真をいくつか撮った後、上田電鉄で上田に戻る。


安楽寺の苔むした風情ある石段は、 京都や鎌倉の寺院にも引けをとらない。

■ 上田15:40発〜大宮16:46着 あさま534号

 上田からは長野新幹線に乗り換え、東京へ。 自由席は空いていたが、軽井沢から団体客がわんさか乗り込んできて一気に騒然となった。 やはり今でも軽井沢は一大リゾート地に変わりないようだ。

私鉄乗りつぶし状況

新規乗車キロ数

会社名路線名乗車区間キロ数
上信電鉄上信線高崎〜下仁田33.7
上毛電気鉄道上毛線中央前橋〜赤城19.6
松本電気鉄道上高地線松本〜新島々14.4
上田電鉄別所線上田〜別所温泉11.6
合計79.3