東海三県乗りつくし

 2月のある日、新幹線に乗って日帰りで名古屋に出かけた。 目的は東海三県の愛知・三重・岐阜に残る未乗線を乗りつぶすためである。 養老鉄道などは、関西への帰省のついでに乗ろうと考えていたのだが、 いつまで経っても実行に移せていないので、業を煮やして今回思い切って乗りに行くことにした。

目次

2010/2/19

■ 新横浜6:11発〜名古屋7:29着 のぞみ99号

 早朝、まだ夜も明けきらぬうちから新幹線に乗る。 乗車したのは本日最初の「のぞみ」号だ。 名古屋に到着するのは何と朝7時半である。 さすがに乗客は多くなく、乗車率は30%といったところか。
 新横浜を出てすぐに夜が明け始め、薄明かりの中に丹沢の山々が見えた。 この日は天気が良かったのだが、富士山は雲に隠れて見えなかった。 新横浜で購入した駅弁「手巻おにぎり」を食べたりしていると、あっという間に名古屋に着いてしまった。

■ 近鉄名古屋7:45発〜桑名8:12着 近鉄

 通勤客が急ぎ足で行き交う名古屋駅の構内を抜け、近鉄の乗り場に向かう。 近鉄はれっきとした関西私鉄であり、PiTaPaとICOCAを使うことができる。 名古屋では発行されていないICOCAを使えるというのは趣味的には面白いものの、 その一方でTOICAは利用できず、不便である。 名鉄や地下鉄がICカードを導入する頃までには改善してもらいたいものだ。
 近鉄名古屋駅も、押し寄せる通勤通学客で込み合っているが、 やってくる通勤電車の編成は6連と短く、車内も東京のようなすし詰めではない。
 準急電車に乗り、桑名へと向かう。 地下の名古屋駅から地上に出て、しばらく関西本線と併走しつつ進む。 途中の駅をいくつか通過し、蟹江に着く。 ここからは各駅停車となって、次の富吉では特急を待避する。 その富吉では、特急が通過してからわずか数秒で発車ベルが鳴った。 さすがに早すぎるのではと思ったが、ドア確認などをしているうちに信号が赤から黄色、青へと変わった。
 弥富を出て、木曽川・長良川・揖斐川を長い鉄橋で渡ると、三重県に入って桑名に到着する。


朝ラッシュの近鉄名古屋駅から出発する。

■ 桑名8:24発〜大垣9:32着 養老鉄道

 桑名駅は、JR、近鉄、三岐鉄道、養老鉄道の4社が乗り入れる駅である。 そのうちJR以外は元々1つの会社の路線であった。 近鉄の赤字ローカル線改革の一環で三岐鉄道、養老鉄道が近鉄より分離して今に至る。 そのような歴史的経緯から、養老鉄道のホームは近鉄の乗り場とホームを共有しており、 ホームの一部に半ば無理やり隔壁や券売機、中間改札を設けていた。
 食券タイプの券売機で養老までの切符を買い、中間改札を通る。 程なくマルーン一色の列車がやってきた。 コスト削減を考えてマルーン一色としているそうだが、 元々近鉄は全線マルーン一色のカラーリングを採用しており、昔からのファンには懐かしいかもしれない。 車両自体も元々近鉄で活躍していたもので、 冷房を装備し、天井の空調吹き出し口はラインデイアとなっている。 蛍光灯のカバーも装備しており、中小私鉄の車両としては非常に豪華だ。
 通学する高校生を乗せて桑名を発車する。しばらくは桑名市郊外の住宅街を進む。 乗車している女子高生は、髪を染め濃い化粧をし、スカートをたくし上げている子が多い。 男子生徒も鶏冠のような髪形をしている。 しばらくすると、左手の山の上に高校が見えてきた。 その近くの下深谷という駅で、高校生たちは下車していった。
 その後は左手に山、右手に田畑や家を見ながら進んでいく。 岐阜県海津市に向かうバスが出る多度や石津でさらに客が降り、 車内はがらがらになった。一時は、先頭車両の客は自分ひとりという状況になる。 このあたりは山と揖斐川に挟まれた狭い平地を進む。そのため駅の間隔も長く、 乗降客も少ない。
 やがて、列車は駒野に着く。駒野は2面3線のホーム配置で、 1つのホームには当駅どまりの列車が留置されている。 駒野を出ると、地形にやや起伏が出てきた。駅の間隔も長く、ローカルムードが漂う。
 雑木林や田畑を見ながら長々と進むと、やがて養老に到着する。 線名の由来にもなった主要駅で、古い駅舎が残っておりホームにはひょうたんがぶら下げられている。 養老の滝伝説にちなんでいるのだろう。
 養老を出ると、だんだんと車内の客も増えてきた。 養老鉄道唯一の高架駅である烏江では、多くの客が乗車してきた。 このあたりからはだんだんと車窓に住宅が増え、駅の間隔も短くなってきた。 大垣の都市圏に入ってきたようで、途中駅からはどんどんと客が乗ってくる。 乗客は圧倒的に女性が多く、男性はお年寄りばかりである。 どこのローカル線もそうだが、若い男性の客はほとんど見ない。
 車両基地と工場が目に入る西大垣駅を過ぎると、JR線、そして揖斐方面に向かう線路と合流し、 終点の大垣に到着。当然ながらほとんどの客が改札もしくはJRとの乗り換え通路に向かった。 揖斐方面に乗り継ぐ客はいないようだ。


マルーン一色が目新しい養老鉄道の車両。

■ 大垣9:49発〜揖斐10:13着 養老鉄道

■ 揖斐10:23発〜大垣10:49着 養老鉄道

 東京から大阪まで普通列車を乗り継ぐ際、さんざん通った大垣駅だが、 この養老鉄道ホームにやってくるのは初めてである。 養老鉄道の線路は大垣でスイッチバックの線形になっているが、 大垣を境に運転系統は完全に分かれており、大垣を跨いで直通する列車は無い。
 狭い待合室でしばらく待っていると、揖斐行きの列車が先程見た車両基地から回送されてきた。 今度も同じ元近鉄の車両のようだが、天井はラインデリアではなかった。
 大垣を発車し、JRと並行してしばらく走る。 先程乗ってきた養老方面への線路と分岐してすぐのところに、室駅がある。 大垣から1kmもないと思うが、ここでおばさんが1人下車した。 しばらく市街地を走ると、JR大垣電車区の脇を走り抜け、東海道線の下をくぐる。 くぐってすぐのところに北大垣駅があり、ここで社員が一人乗ってきた。 養老鉄道は基本的にワンマン運転のようだが、一部の列車では改札のための係員が乗車するようだ。 また、一部の駅には専用のジャンパーを着た委託駅員もいた。
 このあたりの線路沿いには、ずっと土手のようなものが並行している。 一瞬廃線跡かと思ったが、これは水害対策のための「輪中」であるようだ。 また、遠くの方には大理石の産地として知られる金生山が見える。 石の採掘は今も行われているようで、山がえぐられている様が見える。 そんな光景を見つつ進むと、広神戸駅に到着。神戸町の中心駅だが、 側線が撤去されて棒線駅となっている。 その次の北神戸駅の駅前には、真新しい図書館が建っていた。
 風景がだんだんと田舎びてきて、目の前に山が迫ってきたところで、 終点の揖斐に到着する。 木造の駅舎がいい味を出している、典型的なローカル線の終着駅だ。 つい最近まで、大私鉄の近鉄の駅であったことが信じられないぐらいだ。
 駅前に出てみると、各方面へと向かうバスが数台、列車との接続を取って発車していった。 この揖斐にはかつて、名鉄揖斐線も乗り入れていた。 数年前に廃止となって、いまでは養老鉄道が唯一の鉄道となっている。


ローカルムード漂う揖斐駅。


短い屋根がかかるプラットホームで発車を待つ。

■ 大垣10:55発〜名古屋11:26着 新快速

 大垣に戻り、東京までの乗車券を買って新快速に乗り込む。 列車は18きっぷシーズンでもないのに案外混んでいて、 窓側の席は最後尾の車両にわずかしか残っていなかった。 岐阜でほとんどの席が埋まり、尾張一宮では立ち客も出た。
 再び名古屋に戻ってきたところで、下車。

■ 名古屋〜本山 名古屋市交通局

 さて、ここからは名古屋市営地下鉄の乗りつぶしをやろうと思う。 これまでの旅行で確実に乗車済みの区間は、東山線の名古屋〜栄、本山〜藤が丘、 名城線の久屋大通〜大曽根〜八事、鶴舞線の大須観音〜赤池、そして上飯田線である。
 まずは東山線の栄〜本山間を乗りつぶすべく、名古屋から東山線に乗る。 東山線は名古屋駅と栄を直結しており、この区間は名古屋の地下鉄で最も混雑する。 乗車したときは昼間なので混雑はそれほどでもなかったが、さすがに座ることはできなかった。
 そんな混雑も栄で一段落し、あとは着席して本山へ向かう。

■ 本山〜金山 名古屋市交通局

 本山からは名城線に乗る。名城線自体は割と古い路線だが、 これから乗る区間は近年開通したばかりの区間で、駅はどれも真新しい。 また、需要もそれほど多くないせいか運転間隔は10分と長い。 沿線には名古屋大学を始め大学が多く、心なしか乗客は若者が多い。
 まもなく、新瑞橋に着く。この駅、「しんみずはし」と読むのだと思い込んでいたが、 実は「あらたまばし」と読むのが正しいらしい。隠れた難読駅だと思う。 新瑞橋からはやや駅などの設備が古くなり、また乗客もどんどん増えてきた。 かなり立ち客も出た状態で金山に着く。

■ 金山〜名古屋港〜久屋大通 名古屋市交通局

 金山からは名港線に乗る。名港線は元々名城線と一体であったが、 名城線が環状線化されたときに切り離されてしまった。 それでも列車はほとんどが名城線に直通し、日中は大曽根まで走っている。
 栄方面からやってきた列車に乗り、名古屋港へと向かう。 駅の施設はかなり古臭い。10分余り走って、終点の名古屋港に到着。 駅周辺には水族館などもあり、観光地であるようだが観光客らしい客はいない。
 折り返して名城線に入り、久屋大通まで乗車する。これで名城線・名港線は乗り終えた。


ラインカラーの紫帯が巻かれた車両。 名城線・名港線はこのタイプの車両に統一されている。

■ 久屋大通〜中村区役所〜野並 名古屋市交通局

 久屋大通は栄の地下街の一番外れにあり、駅周辺の人通りはそれほど多くない。 久屋大通からは桜通線に乗車する。桜通線は名古屋の地下鉄でも一番影が薄い路線で、 これまで一度も乗車したことはなかった。
 地下深くにあるホームに下りると、ホームの長さが目立つ。 しかし、端のほうは柵で囲われており、使用されていない。 桜通線は現在5両編成で運転されているが、ホームは8両編成ぐらいに対応しているのではないだろうか。 何だか大阪の千日前線を思い出してしまった。
 そんな観察をしていると、列車が入ってきた。 赤い帯を巻いたステンレス車で、東山線や名城線より一回り大きい20m車である。 ユニークな点としては、運転台が右側についている。 これは桜通線がワンマン運転を行っており、かつ全駅島式ホームだからのようだ。
 まずは名古屋駅方面に向かい、終点の中村区役所まで乗車する。 折り返し、野波まで乗車するが、車内はそれほど混雑することなく進む。 ずっと似たような駅が続き、ただでさえ刺激のない地下鉄線にあって殊更単調である。 気づくと居眠りしてしまい、気づくと終点の野並に着いていた。
 これで桜通線を一応乗りつぶしたが、野並から先は延伸工事が行われており、 来年には完成するとのことで、その時にはまた乗りに来なければならない。


桜通線の車両は、運転台が右側についているのが特徴。

■ 野並〜御器所〜上小田井 名古屋市交通局

 野並から御器所に戻り、今度は鶴舞線に乗る。 御器所は「ごきそ」と読み、これも難読駅なのだが、 乗り換え通路がやたらと入り組んでいて迷いそうになった。
 やってきた車両はVVVFの比較的新しい車両だった。 鶴舞線は比較的古い車両が多いという印象があったので、意外だった。 鶴舞や栄で乗客を入れ替えつつ進む。 もう学校が終わる時間になったようで、車内には学生の姿が目立つ。
 一見普通の中間駅である浄心で何故か乗務員が交代し、さらに北上する。 庄内緑地公園を過ぎると地上に出て、代々木上原のような構造の上小田井駅に到着する。 高速道路の高架下にあり、構内はやや薄暗い。


上小田井にて名鉄車両と並ぶ。

■ 上小田井〜名鉄名古屋 名古屋鉄道

 さすがに地下鉄にずっと乗り続けるのにも飽きてきたので、 地上を走る名鉄で名古屋に戻ることにする。
 切符を購入して改札を通り、普通電車に乗る。 中小田井、下小田井と停車すると、有名な枇杷島のデルタ線に着く。 90度カーブして強引に名古屋本線に合流すると、すぐに庄内川を渡る。 この辺の強引な線形は見ていて面白い。
 栄生を過ぎると地下に入り、名鉄名古屋に着く。 改札口にきっぷを通すと、何故かはねられてしまった。 きっぷを改めて見てみると、券面に「地下鉄線」と書いてある。 どうやら上小田井で、地下鉄線の切符を誤って購入してしまったようだ。 たまたま料金帯が同じだったため、気づかなかったらしい。 有人改札に行くとそのまま通してくれたので、事なきを得たが。

■ 名古屋〜高畑〜名古屋 名古屋市交通局

 人の多い乗り換え通路を進んでいると、号外を配っている。 見ると、「男子フィギアスケートで銅メダル獲得」だそうだ。
 いよいよ最後に残った東山線西部を乗りつぶす。 名古屋駅の東山線ホームは、混雑対策のためか上下線ホームがずらして設置してあり、 階段を下りる位置を誤るとホームを延々と歩かされる。
 混雑する東山線とはいえ、名古屋より西は空いており、運転本数も多い。 列車は駅間を豪快に飛ばしつつ進む。 名古屋の地下鉄は全般的に直線区間が多く、 東京の地下鉄に比べてカーブをノロノロ進む箇所が非常に少ないように感じた。 100m道路に代表されるように、道路インフラがしっかりと整備されている分、 その下を進む地下鉄もまっすぐ進めるのだろう。
 名古屋から10分ちょっとで高畑に着き、1分ほどの滞在であっけなく名古屋まで折り返した。 これで名古屋市営地下鉄の全線完乗を達成した。


高畑で名古屋市営地下鉄の完乗を達成し、名古屋へ戻る。

■ 名古屋16:58発〜豊橋17:27着 こだま670号

 今日はこの後、豊橋に向かい豊橋鉄道を乗りつぶそうと思う。 普通ならば新快速か快速で向かうところだが、 途中駅の名古屋から乗ると混んでいて座れないかもしれないし、 そもそも東海道線はこれまで飽きるほど乗っており、あまり食指が動かない。
 そこで、今日は普通乗車券を使用しているのをいいことに、 新幹線で豊橋に向かうことにした。自由席ならば特急料金は1000円を切るし、 懐もそれほど痛まない。 そんな訳で、700系こだまに乗り豊橋へと向かう。

■ 新豊橋17:30発〜三河田原18:05着 豊橋鉄道

■ 三河田原18:17着〜新豊橋18:52発 豊橋鉄道

 豊橋に到着したのは17時27分であった。 新幹線ホームから豊橋鉄道の乗り場はかなり遠く、 3分で乗り換えるのは結構厳しい。通路を走って、何とか間に合わせた。
 豊橋鉄道渥美線は、その名の通り渥美半島を走る鉄道路線である。 路面電車である東田本線とは違い、純然たる普通鉄道である。 電車の運転間隔はおおむね15分で、ローカル線という感はしない。 車両はいずれも元東急の7000系である。中間車は元運転台つきだが、運転機器は撤去されている。
 新豊橋を発車し、しばらくは市街地を進む。最初の柳生橋でさらに乗車し、椅子がほぼ埋まった。 東海道線を跨ぎ、道路の下をやや長い掘割でくぐると、愛知大学前に着く。 その名の通り駅前は大学の敷地となっている。
 高師緑地という大きな公園を抜けつつ、列車は進む。 このあたりからだんだんと田畑が目立ってきた。 とはいえ住宅地も多く、少しずつ乗客が下車していく。 さらに進み、杉山あたりからは右手に平地、左手に丘陵という風景が続く。 と同時に、日も暮れてきた。周囲に家があるかどうかを見るのがやっという状況になってきた。
 やがて、終点の1つ手前の神戸に着き、多くの客が下車した。ここから田原市の市街に入るらしく、 沿線にはショッピングセンターやパチンコ屋が見える。 そうしているうち、終点の三河田原に到着した。
 駅前に出てみると、バスの転回所などがあるごく普通の駅前風景だった。 駅舎は蔵を意識したそこそこ立派なものである。 しばし周囲を観察した後、新豊橋へ戻る。


夜の三河田原に佇む車両。

■ 駅前18:57発〜運動公園前19:19着 豊橋鉄道

■ 井原19:35発〜駅前19:53着 豊橋鉄道

 駅前に戻り、停車していた東田本線の路面電車に飛び乗る。 これから、去年夏に乗り残した井原〜運動公園前間の支線を乗りつぶそうと思う。
 吊り掛け式の古い電車に乗り、運動公園を目指す。 車外の様子などは夏に乗ったばかりなので見なかったが、 東田、井原といった終点に近い駅で降りる客が多かった。
 井原を出ると、日本一の急カーブといわれる直角カーブを曲がり、 しばらく走って終点の運動公園前に着く。 写真を撮ったりしているうちに電車は折り返してしまったので、 井原まで歩き、赤岩口始発の電車に乗る。 今度は元名鉄岐阜市内線のVVVF車だった。


昨夏乗りそびれた、運動公園前までの区間に乗車。

■ 豊橋20:43発〜新横浜21:51着 ひかり530号

 豊橋駅でしばらく時間をつぶした後、貴重な豊橋停車の「ひかり」に乗る。 わずか1時間余りで新横浜に帰着した。


夕食は名古屋駅弁「なごや三昧」。

私鉄乗りつぶし状況

新規乗車キロ数

会社名路線名乗車区間キロ数
養老鉄道養老線桑名〜揖斐57.5
名古屋市交通局東山線高畑〜名古屋、栄〜本山11.8
名港線金山〜名古屋港6.0
名城線金山〜上前津、栄〜久屋大通、八事〜金山11.2
鶴舞線上小田井〜伏見7.0
桜通線中村区役所〜野並14.9
豊橋鉄道渥美線新豊橋〜三河田原18.0
東田本線井原〜運動公園前0.6
合計127.0