最終更新日:2021/1/1

IC乗車券とクレジットカード

 本ぺージでは、鉄道各社のストアードフェア(SF)サービスについて触れておきたいと思います。 最近導入が進んでいるIC方式SFサービスは、 鉄道各所の発行する各社のクレジットカードと複雑にリンクしているからです。 そのため、クレジットカード事情を完全に把握するためには、 IC方式SFサービスの理解も必要といえる状況となっていると思います。

目次

IC乗車券の比較

 以下の表に、各社のIC方式SFサービスとその利用可能状況をまとめました。 なお今回は、関東および関西地区の鉄道会社が中心となって発行するIC乗車券についてのみ言及することにしました。 その他の地域のIC乗車券(TOICA、Kitaca等)については触れていると切りがなくなるため、割愛します。
 なお、JR東日本のモバイルSuica(携帯電話内蔵のICチップを利用するサービス) は通常のSuicaと利用の形態が全く異なるため、敢えて別物として扱うこととします。

カード名SuicaモバイルSuicaPASMO/モバイルPASMOICOCAPiTaPa
利用可能エリア JR東日本管内の路線(首都圏、仙台圏、新潟圏)、 りんかい線、東京モノレール 首都圏の主な私鉄、バス各社 JR西日本管内の路線(近畿圏、中国圏、北陸圏)、北陸圏の三セク線 近畿圏を中心とした主な私鉄、バス会社
Suicaエリアでの利用
改札機の入出場
券売機でのチャージ(現金)×
「VIEW ALTTE」・カード券売機でのチャージ(クレジットカード) ○(ビューカードのみ)××××
オートチャージ○(ビューカード要)○(ビューカード要)○(交通事業者系カード要)××
電子マネー×
Suicaグリーン券○(モバイル版は×)××
PASMOエリアでの利用
改札機の入出場○※○※
券売機でのチャージ(現金)×○※○※
オートチャージ○(ビューカード要)○(ビューカード要)○(交通事業者系カード要)××
電子マネー×
ICOCAエリアでの利用
改札機の入出場○(関西圏のみポストペイ)
券売機でのチャージ(現金)×
券売機でのチャージ(クレジットカード)×××○(SmartICOCAのみ)×
オートチャージ××××
電子マネー××
PiTaPaエリアでの利用
改札機の入出場○※○※○※○(ポストペイ)
券売機でのチャージ(現金)○※×○※ (ポストペイなのでチャージという概念なし)
オートチャージ××××(同上)
電子マネー××××
その他
携帯電話、スマートフォンからのチャージ×○(モバイル版のみ)××

※:一部未対応事業者あり

Suica

ビューカードとの組み合わせでお得に

 今や日常生活に欠かせないものとなったIC乗車券の「元祖」であるSuicaですが、 他事業者との相互利用も盛んであり、PASMO・ICOCAとは相互利用が可能です。 これは乗車券としてのみならず、電子マネーに関してもいえることです。
 クレジットカードからのチャージは、基本的にはJR東日本系のビューカードからしか行えません。 例外として、一般カードを利用してSuica定期券を購入する際、 同時に一般カードからチャージを行うことはできます。 ビューカードからSuicaにチャージを行うと(オートチャージ含む)、 クレジットカードのポイントが3倍となります。 詳しくは「JR各社のクレジットカード比較」をご覧ください。

クレジットカードからチャージできる箇所は限られる

 ビューカードからSuicaへのチャージは、一部の券売機か、主要駅にある「VIEW ALTTE」から行えます。 この他、「オートチャージ」という機能があり、駅の改札機にカードをタッチすることで適宜チャージが行われます。 オートチャージを行うには、現在主に発行されているSuica一体型ビューカードを利用するか、 手持ちのSuicaと決済用ビューカードを「関連付け」する設定を行う必要があります。 ビューカード以外のカードをオートチャージの決済に用いることはできません。
 Suicaを主に交通系の支払いに利用する場合は、オートチャージで勝手にチャージされていきますが、 駅の売店など電子マネーとしてSuicaを利用してもオートチャージは行われないため、 こちらの利用が多いという人は手動でチャージを行う必要があります。

オートチャージは関東・東北エリアでしか行われない

 オートチャージ機能つきSuicaをPASMOエリアで利用する際は、 Suicaエリアとなんら変わりなくチャージが行われます。 その一方、ICOCAエリアではオートチャージは行われません。 関西圏でひとたびSuicaのチャージを使い果たしてしまうと、 クレジットカードからチャージする手立てがなくなるため、 以降は現金でのチャージを余儀なくされることになります。 関東から関西に出かける前に多めにチャージしておくといいでしょう。

モバイルSuica

チャージの度に通信費が必要

 モバイルSuicaは、いわゆる「おサイフケータイ」の一機能として盛んに宣伝されています。 対応する携帯電話、スマートフォンに専用アプリをダウンロードし、チャージやSuicaグリーン券の購入などはアプリ上で行います。 決済はクレジットカードにて行います。クレジットカードはビューカード、一般カードの両方が利用可能で、 年会費は2020年から無料となっています。
 PASMOやICOCAエリアでの利用については、通常のSuicaと何ら変わりありません。
 その他、モバイルSuicaだけの特徴として、「モバイルSuica特急券」が購入でき、 JR東日本管内の特急列車が場合によっては安く利用できるという点があります。 これについては別ページにて詳しく述べます。
 モバイルSuicaは通常のSuicaとは違い、いつでもどこでもクレジットカードチャージが行える点がメリットで、 (交通系以外の)電子マネーとしてのSuica利用が多い場合は便利でしょう。 ただ、チャージの際に携帯電話等のパケット通信費が掛かる点は気を付ける必要があるでしょう。 パケット通信費はキャリアとの契約形態に依存するため一概には言えませんが、 場合によってはクレジットカードのポイント還元を食いつぶしかねませんので注意が必要です。

PASMO/モバイルPASMO

関東地区以外でも利用可能に

 Suicaの私鉄版ともいえるPASMOですが、Suicaとオートチャージや電子マネー機能を含めて完全な相互利用が可能です。 そのため、関東地区内では両者の違いを余り意識することはありません。
 かつて、PASMOはSuica以外のIC乗車券との相互利用はできませんでしたが、 2013年より全国の主要なICカードとの相互利用が始まり、全国で利用できるようになりました。 ただし、多摩都市モノレールや横浜シーサイドラインなど、一部事業者は全国相互利用に対応していません。

各社固有の運賃割引制度がある

 PASMOは券売機でのクレジットカードによるチャージはできません。 クレジットカードからチャージを行う方法はオートチャージのみとなります。 オートチャージサービスが利用可能なのは、株式会社パスモの「パスタウンカード」か、 PASMO加盟交通事業者系のカードのみです。
 上記のクレジットカードについての詳細な説明は略しますが、 交通事業者系のカードの場合、 その会社の路線に乗車するたびにポイントが得られるなどのサービスを行っているところもあります。
 余談ですが、多くの鉄道会社でSuicaやPASMOを券売機で利用して回数券を購入することが可能です。 オートチャージが可能なSuica・PASMOでこれを行えば、クレジットカードのポイント還元と、 回数券の割引の両方が得られてお得です。(ただし、回数券は全部紙のきっぷで出てきますので管理は面倒ですが。)

モバイル版も登場

 2020年には、スマホ上のアプリとして動作するモバイルPASMOが登場しました。 機能はほとんどモバイルSuicaと同じで、決済用のクレジットカードはほぼ何でも利用可能です。 (オートチャージ利用には交通事業者系カード要) ただし、JR東日本の「Suicaグリーン券」の利用はできません。

ICOCA

SmartICOCAは一般カードも利用可能

 ICOCAは関西圏の他、中国地方にも導入されています。 両エリアはかなり近接していますが、エリアにまたがる運賃の計算があまりに複雑になるためか、 エリアをまたがった利用は現状ではできません。
 以前は、みどりの窓口にてチャージを行うことができ、その際は一般クレジットカードも利用可能だったのですが、 現在では行えなくなりました。
 そのため、クレジットカードからチャージを行うには「SmartICOCA」を購入する必要があります。 SmartICOCAは、JR西日本系のJ-WESTカードの他に、一般カードも決済の際利用することが可能です。 チャージは駅の券売機・チャージ専用機等で行うことが可能で、 これらはICOCAエリア内ではほとんどの駅に設置されているといってよいでしょう。 上記のチャージ操作を「クイックチャージ」と呼びます。 なお、オートチャージには今の所対応していません。
 また、現在ではPiTaPaエリアでも利用が可能です。 ただし、クイックチャージはICOCA圏内でしか行えない点に注意が必要です。 関東に出かける場合や、関西圏内でも私鉄ばかりを多く利用する場合は、 事前にJR西日本の駅でクイックチャージを行っておく必要があります。

PiTaPa

他とは一線を画すポストペイ

 これまで紹介してきたIC乗車券はいずれもプリペイド方式というもので、 使用する前にお金を事前にIC乗車券にチャージしておく必要がありました。
 一方、PiTaPaはポストペイと呼ばれる方法を採用しており、 一月分の利用額を後からクレジットカード引き落としで精算するので、チャージの必要はありません。 通常のクレジットの買い物を、電車の切符代に置き換えたと考えると分かりやすいですね。
 関西圏では、ICOCAがプリペイド、PiTaPaがポストペイと見事に方式が違うのに、 巧みに相互利用を可能にしている点が興味深いところです。
 ただし、ポストペイという性質上、PiTaPaはクレジット加入がサービスの前提となります。 クレジットカードの種類は、鉄道会社系・銀行系など様々であるため説明は割愛します。 クレジット加入が面倒な人や、事情によりクレジットカードを作れない人のため、 「保証金預託制PiTaPa」といって、事前に保証金を支払うことで発行されるPiTaPaもあります。
 余談ですが、上記の通りクレジット加入が前提となることや、定期券に未対応の社局が残っていたこと等により、 PiTaPaはPASMOのような爆発的普及には至っていませんでした。 そのため、2010年代後半まで「スルッとKANSAI」など磁気カードサービスが健在でした。 しかし、磁気カードシステムが更新時期を迎えていたことから、スルッとKANSAIは廃止され、 代わりに私鉄各社がJR西日本のICOCAを発行することとなり、ICカード化へと大きく舵が切られました。

他カードとの相互利用には制約あり

 PASMOと同様、PiTaPaはかつてICOCA以外のIC乗車券との相互利用はできませんでしたが、 2013年より全国の主要なICカードとの相互利用が始まり、全国で利用できるようになりました。 逆に、Suicaなど他社ICカードもPiTaPaエリアで利用できますが、一部バス会社では利用できません(ICOCAのみ、全路線で利用可能)。 また、電子マネーの相互利用もできません。

関東よりも「お客様本位」

 上記のように、PiTaPaはICOCA等の他のICカードと方式が違うため、PiTaPaを関西圏以外のエリアで利用するには、 事前にチャージを行う必要があります。 チャージは現金のほか、オートチャージによりクレジットカードから行うこともできます。
 ただし、オートチャージはPiTaPaエリアの改札機通過時に行われ、 他エリアの改札機を通過してもチャージされないことに注意が必要です。 つまり、関西圏以外での利用ばかりが続く場合は、いつまでたってもオートチャージがなされず、 途中から現金でのチャージを余儀なくされることになります。
 また、PiTaPaにはポストペイ特有の運賃割引制度(月○回利用したら○回目から運賃○%引、など) が多くの社局にて設定されています。 興味深いことに、この割引はPiTaPaを発行する鉄道会社に依存せずに適用されます。 例えば、阪急阪神系のStaciaPiTaPaで京阪線を複数回利用しても、 ちゃんと運賃が割り引かれます。このあたり、カード発行元の鉄道会社利用分しかポイント還元のない関東私鉄に比べ、 「お客様本位」だなと感じます。

まとめ:クレジットカードからのチャージが金銭的に有利

 以上見てきたとおり、IC乗車券に現金をチャージする方法は現金とクレジットカードの両方があります。 (ポストペイ方式のPiTaPaは除きます。)
 しかし、IC乗車券に現金でチャージしていては、毎回券売機で切符を買うのに比べ、 手間こそ大幅に省けますが、金銭的なメリットはまるでありません。 そこで、何らかの方法でクレジットカードからIC乗車券に入金し、 クレジットカードのポイントを獲得することで、ヘビーユーザーにとっては金銭的メリットが出てきます。
 現状、クレジットカードからIC乗車券に入金する際、 利用できるクレジットカード・場所等にかなり制約があります。 上記では、そういった制約について可能な限り説明したつもりです。 自分の利用形態に応じて適切なサービスを選択すればよいでしょう。