京都線での運用から一時は完全に撤退した阪急6300系であるが、
2010年のゴールデンウィークには6連に組み替えの上、嵐山線直通特急として運用された。
しかしこれは、車両の検査期限が切れるまでの一時的なものだろうと思っていた。
ところがその後、6300系の内装を大改造した観光特急を京都線にて走らせるという、
耳を疑うようなニュースが入ってきた。高度成長期以降、通勤・通学輸送に重きを置いてきた阪急にあって、
中古車とはいえ観光専用列車を保有するのは極めて異例である。
そして2011年5月、その車両は「京とれいん」という愛称を与えられ、ついにデビューした。
当初は梅田〜嵐山間で運用されていたが、2011年8月現在では土休日に梅田〜河原町間を4往復している。
登場後のフィーバが一段落した2011年8月、ついに「京とれいん」に乗車することができた。
その外装・内装を写真とともに紹介したいと思う。
なお、このページの写真については大きいサイズの画像を用意しました(一部を除く)。 写真をクリックするとポップアップします。
先頭部は若干のラッピングが施された以外、原形を保っている。 伝統のマルーンカラーはもちろん堅持。
ラッピングは扇と、金銀の波状の帯である。連結器や、 ライト周りの形状は以前のまま。
サイドビューに目を転じると、嵐山線の車両と同じく車番の上に新CIが入るようになった。 再度にも金銀の帯と「京とれいん」の文字が。
一方の出口の脇には、大きな金色の扇が描かれる。
反対側の扉には銀色の扇が描かれている。 後で述べる車椅子スペース付近の窓には、その旨を示すステッカーが貼られる。
車両端部には「京とれいん」の文字と号車番号が配される。 転落防止柵の形状は従来のまま。
いよいよ車内に入ってみる。こちらは京町家をイメージしたという3、4号車で、 最も大きく手を入れられた車両である。
客室とドアの間には京町家を思わせる壁が新たに設けられ、ドア付近は簡易デッキ構造となった。 ドア付近の照明は外され、ダウンライトが新設された。
座席は全て入れ替えられ、1+2列のボックスシートに変更された。
近鉄「伊勢志摩ライナー」のサロンカーに類似した座席配置である。
こちらは一列シートの方で、背もたれの高さはかなりのもの。
枕カバーの下に張られているのは何と畳である。
その他、木製のひじ掛けと小さなテーブルが設けられている。
こちらは2列のボックスシート。シートピッチは従来の窓割りに合わせてあるのでそれほど広くはないが、 座席幅の広さはかなりのもの。料金不要列車とは思えないほどだ。 座席の上には半透明の仕切り板が設けられ、個室ムードを演出する。
日よけの鎧戸は撤去され、代わりにカーテンが設けられた。 カーテンは障子紙のような風合いのもの。 窓自体はパワーウィンドウには変更されておらず、以前のまま。
屋根の照明まわりも大きく変更され、9300系と類似した間接照明となった。 空調の吹き出し口は原型のまま。
網棚はブロンズ色のものに変更され、車内の落ち着いた雰囲気にマッチしている。
妻面には以前補助椅子があったが、完全に撤去されてフラットになり、 京都の観光ポスターと小テーブルが新たに取り付けられている。 アルナ車両の新しい銘板も取り付けられた。
ドア横の額には、和紙に幾何学模様を施したような装飾が設置されている。
別の妻面にはマガジンラックが設けられ、京都の観光パンフレットが設置されている。 日本語だけではなく、中国語、韓国語版もある。
1人がけシートは一部取り払われ、車椅子スペースとなっている。 車椅子スペースは手すりが設けられ、網棚がない。
こちらは京都寄りの5、6号車である。 車内設備はほとんど原型と変わっておらず、化粧板とモケットが張り替えられたぐらいである。 後年取り付けられた吊革もそのまま。
この部分には補助椅子があったが、撤去されている。 こうして見てみると、内装には3種類の化粧板を使っていることが分かる。 床はコンクリ打ちっぱなしのようにも見える灰色。
座席モケットを近くで見てみる。 六角形を組み合わせたような、不思議な柄だ。
一方、こちらは大阪寄りの1、2号車である。 蛍光灯は昼白色に交換されているので、原型よりも温かみのある雰囲気となっている。
座席はモケット以外原型のまま。手すりは革張りになっている。 枕部分のビニールはJRの223系のものに似ている。
モケットの柄は、文字とも花びらともいえない独特の文様。
こちらの妻面は、補助椅子が撤去された以外は形状が変わっておらず、フラットにはなっていない。 妻窓も拡大されておらず、以前のまま。
妻面には専用の路線図が張られている。6300系は車体規格の違いから神戸・宝塚線には入れないので、 路線図は京都線だけ。
こちらの車両にも、和紙のような飾りがドア横に飾られているが、 紋様がやや異なる。
3、4号車以外はカーテンへの変更がなされておらず、鎧戸がそのまま残る。 優先席も今までどおり設定されている。
よく見ると、窓上には座席番号のプレートが張られている。 定期運用では全席自由席なので存在意義はないが、貸切列車での運用を念頭においているようだ。
ドアは化粧板の張替え以外、原型のまま。
運転台後ろのロングシートも原型と変わらず。 運転台内部は濃い茶色の化粧板が張られている。
京とれいんは「快速特急」という種別として運転される。 快速特急は2007年に一度廃止されたが、京とれいん登場に合わせて定期列車としては久々に復活した。 梅田駅では6300系の「定位置」の1号線ではなく、3号線からの発車。
他の車両と乗車位置が異なるため、足元には専用のシールが張られている。
十三を発車し、京とれいんは一路京都へと向かう。
時間の都合で梅田〜十三間しか乗車できず、かなり急ぎ足で見物することになった「京とれいん」であるが、
その内装の豪華さは期待にたがわぬものであった。特に3、4号車は、
料金不要列車としては破格の設備といえるだろう。JR九州の「水戸岡改造」(?)に見られる奇抜さはないが、
質の高さでは引けをとらないと思う。
次は、大阪から京都まで乗り通してみたい。