2003/12/29
三次6:13発〜浜原7:43着 444D キハ120(1)
翌朝、昨日降った雪が薄く積もる道を歩き、早朝の三次駅に向かう。
今朝はまず、西日本でも一二を争う超閑散線区である三江線に乗車する。
三江線は一日の運転本数がわずかに4〜5本で、この列車を逃すと次は10時まで列車はない。
そのため、昨日はわざわざ深夜に三次までやってきて宿泊したのだった。
三次駅の片隅の、屋根もないホームに三江線の列車は停まっていた。
車両はまたしてもキハ120である。4〜5人の乗客を乗せ、発車。
列車はまだ薄暗い中を進む。しばらくすると、江の川の河岸に出た。
川の周囲には平地はほとんどなく、幅の広い江の川の川岸を淡々と進む。
途中、長谷という駅がある。川べりに小さなホームがあるばかりの駅で、周囲には集落等はない。
しかも、この列車は普通列車にもかかわらずあっさり通過してしまった。
ただでさえ少ない列車が通過してしまうというのも、あのロケーションを見れば頷ける話だ。
その後も江の川沿いをひたすら下り、口羽に到着する。
昭和後期に浜原まで開通する以前は終着駅だったという駅だが、
周囲の集落も小さくひっそりとしている。
口羽を出ると、これまで江の川の川べりを走っていた線路が一変し、
トンネルや高架が多くなった。蛇行する江の川に見切りをつけるかのように、直線的に進む。
ここから先は鉄建公団により割と最近になって建設された区間なのだ。
スピードも心なしか増したようだ。
そんな中、途中に宇津井という駅がある。江の川から離れた谷地にある駅で、
かなりの高さがある高架上にプラットホームがある。
地上からは階段しかなく、お年寄りは列車に乗るのもひと苦労だ。
また、ホームの幅はとても狭く、強風が吹いたら吹き飛ばされやしないかと思う。
そんな宇津井を出ると、再び線路は江の川沿いに戻る。
ただし川べりではなく、川を見下ろすかのように高いところを進む。
最後に長いトンネルを抜け、浜原に到着した。ここで鉄建公団による建設区間は終わる。
まだ夜も開けきらぬ中、三江線から2日目の旅がスタート。
浜原7:57発〜江津9:23着 446D キハ120(1)
浜原駅に着くと、江津からやってきた列車が停車している。
これが折り返し江津行きとなるようだ。逆に、今まで乗ってきた列車は三次へと折り返す。
車両はどちらもキハ120単行なので、お互いの列車が終点まで直通すればいいのにと思う。
浜原からは、再び江の川の川べりを進む。
三次を出た頃に比べて川幅も広くなり、中国地方一の大河の風格が出てきた。
しかし、川沿いに平地は相変わらず少なく、乗り降りする客も少ない。
もう少し平地が形成されていたら、三江線の乗客も増えていたのだろうが。
石見川本を過ぎると、少しずつだが乗客が増えてきた。
乗客を見ると、お年寄りが多い。全国どこのローカル線でもそうだが、
朝7時から8時は学生、9時から10時は病院通いのお年寄りが乗客の大多数を占める。
今日はもう年末なので、病院は休みなのかもしれないが。
その後も江の川を下り、いよいよ河口が見えてきた。
山陰本線の長い長い橋梁が見えると、列車は左にカーブして山陰本線と合流する。
程なく、終点の江津に到着。時刻はもう9時を過ぎている。
江津9:35発〜出雲市11:06着 324D キハ120(1)
江津駅でしばらく待つと、出雲市行きの普通列車がやってきた。
車両はまたしてもキハ120である。車内はロングシートの割合が多く、
仕方ないので出入り口直後のロングシートに座り、前面眺望を楽しむことにする。
江津を発車すると、列車は結構なスピードで飛ばす。
いくら山陰本線が「偉大なるローカル線」とはいっても、
流石は幹線だけあって三江線とはスピード感が違う。
車両も小ぶりなキハ120とはいえ、新しいだけあって加速はなかなかよい。
途中の駅で少しずつ客を広い、車内もそれなりに賑やかだ。
途中、主要駅である太田市で乗客を入れ替え、列車はさらに東へと進む。
ここから先の車窓はなかなかよかった。
日本海の海岸沿いをかなり長いこと進むのだ。
太平洋岸とは違って埋め立てなどの開発はほとんどされておらず、自然のままの海岸線が見える。
冬の日本海というと暗いイメージがあるが、この日は割と天気がよく、海も青く綺麗に見えた。
出雲市に近づくにつれて、だんだんと乗客が増えてきた。
見回すと若者が多い。これから街へ遊びに行くのだろうか。
立ち客も出るほどの盛況となったところで、終点の出雲市に到着する。
出雲市11:41発〜宍道11:57着 3452D アクアライナー キハ126(2)
出雲市駅は、大都市圏の駅かと思うような高架駅だった。
山陰地方には松江、鳥取と、立派な高架駅が多いように思う。
出雲市駅では30分ほど時間が余ってしまった。出雲市といえば出雲大社が有名であるが、
駅からはかなり離れているため行くことはできない。
仕方ないので、駅の中のそば店で出雲そばを食べた。
次に乗る列車は、快速「アクアライナー」である。
山陰本線の高速化に伴って現れた列車で、車両は新型の気動車が用いられる。
車内に乗り込むと、座り心地の良いボックスシートが並んでおり、なかなか良い車両だと思った。
一応ワンマン運転にも対応しているようで、車内には運賃表示機が設置されている。
さて、この後は米子に向かって境線を往復した後、伯備線で新見に出て、
昨日乗り残した芸備線の備後落合までを乗りつぶす予定だ。
芸備線は本数が少なく、その後のことを考えると新見16時27分発の列車に乗りたい。
そこから逆算すると、米子に13時4分までに着かねばならないが、
この快速に乗り続けて米子に行ったのでは間に合わない。
そこで、この快速を宍道で追い越す特急「やくも」に乗り換え、先を急ぐことにした。
宍道12:03発〜米子12:42着 1026M やくも16号 381(6)
という訳で、この旅行2度目となる宍道駅に降り立った。
程なく、特急「やくも」がやってきた。
空いている自由席に乗り込むと、早速車内改札があった。乗車券と特急券を購入する。
18きっぷで旅をしている時、特急に乗車すると乗車券まで購入せねばならず、結構痛い。
まあ、元が安いので仕方ないが・・・。
宍道を出て、県庁所在地の松江で少し乗客を乗せ、米子へ。
宍道を出て40分ほどで到着した。
381系には2種類のカラーパターンがある。
こちらは紫色の「スーパーやくも」カラー。
米子13:04発〜境港13:43着 1653D キハ40(1)
境港13:51発〜米子14:34着 1656D キハ40(1)
境線は山陰地方では唯一の盲腸線で、米子から海沿いの境港を目指す非電化の路線である。
盲腸線ではあるが米子の近郊を走るということで比較的列車本数は多い。
米子駅の駅舎の脇に、境線専用の乗り場がある。
境線は近年、アニメ「ゲゲゲの鬼太郎」とのタイアップを行っており、
境線を走る列車にもアニメのキャラクターが描かれている。
前照灯や後部標識灯の部分に「目玉おやじ」のイラストを描くなど、ユニークだ。
座席が7割ほど埋まったところで、発車。
境線は駅間距離が平均1km程と大都市の私鉄並に短い。
そこを加速の悪い気動車で運転するため、あまりスピードが出ず時間がかかる。
車窓はこれといって目立つものはない。
境線はほぼ全線が弓ヶ浜という、天橋立を巨大にしたような半島の上を走っているのだが、
特にそれに気付くことはなかった。
途中、大篠津という駅の目の前には米子空港がある。
しかし、駅名も「空港前」といったものではないし、空港アクセスに境線が利用されているかは疑問だ。
やがて、終点の境港に到着。20kmにも満たない路線ながら、40分掛かった。
盲腸線の終点とあって、さえない駅舎を想像していたが、想像とは大きく違った。
駅は対馬へのフェリー乗り場と一体化しており、新しく非常に立派であった。
まさに「対馬への玄関口」といった感である。
短い折り返し時間の間に駅前に出てみる。境港は「ゲゲゲの鬼太郎」のキャラクターによる町おこしを行っており、
駅前にはキャラクターのブロンズ像が建つなど、「それ一色」であった。
時間がなかったので駅前しか見られなかったが、ブロンズ像は100体以上もあるそうだ。
今乗ってきた列車でそのまま折り返し、米子に戻る。
国鉄色をベースに、アニメのキャラクターが描かれた気動車。
米子14:42発〜新見15:53着 1030M やくも20号 381(6)
米子からは特急「やくも」で新見に向かう。
伯備線は普通列車が少なく、また特急で先を急がないと芸備線の列車に間に合わないので、やむを得なかった。
空いている自由席に乗り込み、米子を発車する。伯耆大山で山陰本線と別れ、
伯備線に入る。左手に大山を見つつ、列車は日野川という川沿いに登っていく。
最初は平地が続いたが、根雨、生山と進むにつれ周囲の山々は険しくなってきた。
それと同時に、周囲は雪景色となってきた。畑などは真っ白である。
生山を過ぎてしばらく走ると、短いトンネルを抜ける。
それが実は日本海側と太平洋側の分水嶺で、あとは山の中を新見方面へと下っていく。
かなりカーブが多いものの、振り子式特急電車は時折速度を落としつつも、結構な速さで飛ばす。
足の遅い鈍行に乗りなれた身からすると、景色の移り変わりがめまぐるしく感じられる。
やがて、これから乗る芸備線の起点である備中神代を通過する。
ここは分岐点ではあるものの周囲の民家は少なく、特急は通過してしまうので、一旦新見まで行かざるを得ない。
備中神代から10分ほどで新見に着く。
新見16:27発〜備後落合17:37着 441D キハ120(1)
備後落合18:16発〜新見19:27着 446D キハ120(1)
新見は、伯備線・芸備線・姫新線が十の字に交わる鉄道の要衝である。
その割に周囲の集落は大きくなく、駅の裏手には山が迫っている。
山からは冷たい風が吹き降ろしており、寒い。
次に乗るのは、芸備線の備後落合行きである。
この区間はひたすら中国山地の山中を進む路線であり、例によって列車本数は非常に少ない。
車両はまたしてもキハ120である。岡山支社カラーのオレンジ色の帯を纏っており、
この色の車両に乗るのは初めてだ。
30分ほど待った後、新見を発車する。最初は伯備線を走行し、布原に着く。
この布原は面白い駅で、伯備線上にあるにもかかわらず伯備線の列車は全て通過し、
芸備線に直通する列車のみ停車する。そのため、列車本数は非常に少ない。
しかし駅周囲にはほとんど民家はなく、これだけ列車本数が少ないのも頷ける話だ。
次の備中神代で伯備線と分岐し、芸備線に入る。列車は川沿いの渓谷を進む。
川からやや高いところを進んでいるようで、川面はあまり見えない。
代わりに、併走する中国道の姿はよく見える。前にも述べたように、
中国山地の路線をこれほどの閑散線区に追い込んだ原因の一つである。
木製の枕木の上のか細い線路をコトコト走る気動車をあざ笑うかのように、
高速道路の上を自動車が快走している。
高速道路を見ながら走り、東城に到着。ここはこのあたりの沿線でも随一の大きな駅で、
10数人ほどいた客の半数が下車した。この東城から先は、ますます列車の本数が少なくなる。
東城を出ると、中国道はどこかへ行ってしまうが、沿線の風景は変わらない。山また山である。
乗っていて思ったのだが、この芸備線を含む中国山地の路線はどこも風景が似ており、
乗っても乗っても同じところを進んでいる感じがする。
それほど高い山がなく、険しい渓流がないのが原因なのかもしれないが、だんだん風景に飽きてきた。
そんな車窓を見ながら進み、やがて終点の備後落合に到着する。
昨日以来の訪問だが、やはりわずかな乗り換え客がいる以外は閑散としている。
折り返しまでの時間が結構あるのだが、駅の外に出ても何があるわけでもないし、
何より寒いので列車内で発車を待った。
乗ってきた列車で新見へと折り返すうち、日が暮れてしまった。
オレンジ色の帯を巻いた、岡山支社バージョンのキハ120。
新見19:38発〜津山21:16着 872D キハ40(2)
今晩は岡山に宿泊する予定である。新見から岡山へは、伯備線の特急を使えば1時間ほどで着くが、
今日はこの後さらに姫新線の一部と津山線を乗りつぶすことにしている。
そのため、岡山に着けるのは23時近くとなる予定である。
新見駅では、津山行き普通列車がキハ40系2連の編成で待っていた。
車両は綺麗に改修され、JR西日本特有のグレー系のリニューアル色となっている。
車内に乗り込むと、他の客は誰もいない。この時間に中国山中を旅する人などいないのだろうか。
暇なので一度ホームに出ようとすると、小学生ぐらいの少年がドアの前でぽつんと待っている。
この車両は半自動ドアとなっており、ドアボタンを押さないと扉が開かないのだが、
そのことに気付いていないようだ。
車内からドアボタンを押してやると、少年はようやく乗り込んできた。
結局、発車までその少年以外の乗客は現れずじまいだった。少年がどこで下車したのか知らないが、
途中駅からの乗客はなかったので、この列車の乗客数は最高で2人ということになる。
新見を発車するも、もちろん車窓には何も見えない。もし明るければ、
先ほどの芸備線と同じく中国道が併走しているのが見えるはずなのだが、よく分からない。
何せ途中駅から誰も乗ってこないので、どの駅が主要駅なのかさえ分からない。
結局、車内では本を読むなどして時間をつぶし、津山に到着する。
津山21:37発〜岡山22:57着 967D キハ40(1)
津山は岡山県北部でも最大の町であるが、この時間の駅構内に人影は少ない。
津山には明日の昼間またやってくる予定なので、その際に街を観察しようと思う。
今度の列車はキハ40単行であった。先程の車両と同じく、リニューアル済みである。
津山から岡山までの最終列車なのだが、車内には10人以上の乗客がいる。
さすがは大都市の岡山に向かう路線だけあって、こんな時間にしてはよく乗っている。
津山を発車するも、もう外は真っ暗である。
途中駅で乗り降りする客もなく、終電特有のけだるい空気が流れる。
今日も朝から乗りっぱなしだし、早くホテルで寝たい。
そう願いながら、ただひたすらボックスシートでぼんやりする。
ようやく岡山にたどり着いた頃には、もう23時近かった。
昼間は賑やかな駅構内も、今は閑散としている。
新幹線のある側とは反対の、裏口といっていい小さな出口の近くにあるホテルが今晩の宿である。
明日も朝早いので、遅い夕食を食べ、シャワーを浴びると速攻で眠りについた。