2009/9/1
「きたぐに」の遅延のせいで、予定よりも2時間近く大阪到着が遅れてしまった。
この日の予定は、最近運転を始めた「天空」に乗ることぐらいである。
逆に言うと他の列車の時刻はほとんど調べておらず、「アドリブ」の旅となる。
総じて列車本数の多い関西圏だけに、何とかなるだろう。
ちなみに、この日は「スルッとKANSAI 2Dayパス」を利用した。
実はお盆の関西帰省の際、実家に着く前に関西私鉄の乗りまわしをやろうと買っておいたのだが、
帰省する日の早朝に静岡県で強い地震があり、新幹線が全面ストップしてしまった。
何とかその日のうちに関西にはたどり着けたのだが、
2Dayパスはそのまま宙に浮いてしまう形となった。
今回はそのリベンジの意味も多分にある。
新大阪8:42発〜大阪8:46着 新快速
大阪8:55発〜新今宮9:09着 関空・紀州路快速
新大阪駅の列車線ホームでしばらく待つと、新快速がやってきた。 これに1駅だけ乗り、大阪駅で関空・紀州路快速に乗り換える。 快速はラッシュ時ながらそれほど混んでおらず、下手をすると座れてしまいそうなほどだった。
新今宮9:17発〜橋本10:00着 こうや1号
新今宮で下車し、南海電車の改札口に向かう。
窓口で特急「こうや1号」の特急券を購入した後、
改札機に先日使いそびれた「スルッとKANSAI 2Dayパス」を通す。
次々とやってくる通勤電車に混じって、特急「こうや」がやってきた。
本当はこの列車の一本前の快速急行に乗りたかったのだが、「きたぐに」の遅れで間に合わなかった。
早速乗り込むと、平日朝の下り列車とあって車内はがらがらであった。
新今宮を出た列車は、天下茶屋、堺東と都心近くの駅にこまめに停車する。
北野田を過ぎると田畑が目立ち始め、三日市町から先は金剛山地越えにかかる。
かつては三日市町から先はズームカーと呼ばれる山越え専用の形式しか乗り入れられなかったが、
今は橋本までの複線化が完了し、一般車も乗り入れができるようになった。
車窓をよく見ると、複線化前の旧線を所々に見ることができる。
和歌山県側のニュータウンである林間田園都市を過ぎると、
まもなくJR和歌山線と合流して橋本に到着する。
「きたぐに」の遅延を取り戻すべく、「こうや」で先を急ぐ。
橋本10:13発〜極楽橋11:01着 天空1号
これから乗るのは、この夏から高野線の橋本以南で走り始めた観光列車「天空」である。
これまで大手私鉄では、近鉄の「楽」「あおぞら号」のような団体専用列車はあったが、
個人客をターゲットにした観光列車は近年なかった。
JRの「リゾートしらかみ」等の観光列車、
そしてかつては自社路線であった和歌山電鉄の「いちご電車」等の改造車の成功に刺激される形で、
このような列車を走らせることになったのではなかろうか。
橋本駅に着くと、急いでホーム上にある「天空」指定券売り場へと向かった。
この「天空」の座席予約方式は独特で、事前に予約センターに電話して席を押さえる必要がある。
そして当日窓口に出向き、そこで初めて席番の入った指定席券を受け取ることになる。
南海は既に「ラピート」「こうや」等の座席指定特急を運転しており、
同じシステムを用いて座席管理をすればよさそうなものだが、
このようなアナログな手法を用いているのは、
グループが極力近い席に座れるように座席を調整するためらしい。
で、なぜこれまでこんなに急いでいたかというと、電話予約の際に
「発車30分前までに窓口に来て下さい」と言われたからである。
しかし「きたぐに」の遅れのせいで、発車30分前を大きく過ぎてしまった。
席がキャンセルされていたらどうしようと思いつつ窓口に行くと、
特に文句を言われることもなく指定席券を受け取れた。
高野山駅の「天空」窓口には「発車40〜10分前に指定席券を発行します」との掲示あったので、
最悪10分前までに行けば大丈夫らしい。
先程のこうや号が発車すると、まもなく「天空」が入線してきた。
この車両は古いズームカーを改造したもので、通勤型共通の塗装から、
緑をベースとした、昔の南海電車に先祖返りしたかのような塗装に変更されている。
車内に入ると、車両中心部はロングシート、車端部はボックスシートという配置になっている。
ロングシートは、どの席に座っても景色の良い側を向くよう、劇場の椅子のような配置となっている。
内装は木目調に改装されているが、天井の空調噴出し口が古いままだったり、
座席まわりも所々金属板がむき出しになっているなど、
JR九州あたりの改造車に比べると徹底されてない箇所もあるが、まあ仕方ないか。
指定された席はロングシート部分の窓から遠い席で、やや景色が見にくいのが残念ではあるが、
ともかく橋本駅を発車する。この便はどうやら満員御礼のようである。
なお、座席に空きがあれば電話予約なしでも当日指定席券を発行してくれるらしいが、
満員だった場合は「天空」編成の後ろに連結された一般車両に乗ることが可能だ。
満員の乗客を乗せ、「天空」は橋本を出発した。
右にカーブして紀ノ川を渡ると、山裾に沿って勾配を上り始める。
学問路、九度山に停車し、高野下を通過すると、周囲は険しい山となる。
列車は50パーミルに迫る急勾配を登り始め、車内にはカーブを車輪がこする際の金属音が響き渡る。
線路に直線部分はほとんどなく、先頭部からも前方の線路がわずかな距離しか見えない。
まだ人が来ないうちに、展望デッキに行ってみる。
展望デッキといっても、かつての特急に連結されていたような本格的な展望デッキではなく、
既存の乗降ドアに高さ1メートルほどの柵を設け、外の空気に触れられるようにしている。
なお、客室との間には透明なパーティションが設置されており、外気が直接客室に入らないようになっている。
席に戻ると、フリースペースを使って車内販売が行われている。
商品は主に「天空」のグッズで、食べ物などは売られていない。
乗車時間が1時間に満たないので、ゆっくり飲食する余裕がないためだと思われる。
また、トイレが付いていないので、下手に飲食するとトイレに行けず困るかもしれない。
席に戻り、景色を眺める。車窓に映るのは相変わらず険しい谷だが、
その谷底や、あるいははるか高みにある山の傾斜に集落があったりする。
そんな集落の近くに、簡素な駅がある。
利用者はどう考えても少なそうだが、それでも駅員が常駐していてホームで旗を振っている。
車内では、女性乗務員による観光案内がある。
それによると、座席のモケットに描かれたカエルの柄は、
高野山に多くするモリアオガエルをかたどったものだそうだ。
行き違いのために2度ほど運転停車しつつ、列車は急勾配を登っていく。
やがて、列車は力が抜けたようにスピードを落とした。終点の極楽橋に到着したようだ。
ここから先はケーブルカーに乗換えとなる。
関西私鉄初の観光列車とあって、乗客からの注目も高い「天空」。
車端部はテーブル付きのボックス席。椅子や机の木目がよく目立つ。
中間部は座席間のパーティションが付いたロングシートとなっている。
かつての乗降ドアを利用した展望室。ここから乗降することはできない。
極楽橋〜高野山〜極楽橋
今回は「天空」に乗りにきただけなので、高野山を観光する予定はなかった。
しかし時間が余ったので、ケーブルで高野山駅まで登ってみることにした。
「2Dayパス」ならケーブルカーも乗り放題だ。
ケーブルカーで山上に登ると、やはり空気がひんやりしている。
この日は晴れて残暑が厳しい日だったが、下界とは大違いである。
ケーブルカーを降りた客は、続々とバス乗り場に向かっていく。
少し時間があるので、高野山駅を観察することにする。
2階に待合室があるというので行ってみると、床は板張りで古い講堂のようなスペースであった。
室内には古いポスターや写真、かつて電車の先頭に掲げられていた行先表示板のミニチュアなどが展示されていた。
駅の窓口で帰りの特急券を買った後、下りのケーブルに乗る。
高野山の玄関口らしく、木造ながら大きく立派な高野山駅。
極楽橋12:00発〜天下茶屋13:17着 こうや4号
極楽橋に戻り、改札口の外に出てみる。
この極楽橋は電車とケーブルカーの乗り換えのためだけに存在しているような駅で、
駅前には平地は一切なく、小川が流れているだけである。
再び「こうや」号に乗り、大阪に戻る。
この列車も乗客はわずかだった。橋本を過ぎると大阪へ急ぐ客が少しずつ乗ってきて、
車内は少し賑やかになった。天下茶屋で特急を降り、地下鉄に乗り換える。
改札を出ても獣道しかない極楽橋駅。
天下茶屋〜南森町〜東梅田 大阪市交通局
天下茶屋からは堺筋線に乗る。
堺筋線には何度か乗っているが、天六から日本橋までしか乗ったことがなかった。
天下茶屋までは乗ったことがなかったので、今回思いつきで乗ってみた。
これで堺筋線を乗りつぶし、大阪市営地下鉄で乗っていないのは谷町線の南部と長堀鶴見緑地線の末端部
(中央線の本町〜堺筋本町間も怪しいが)のみとなった。
南森町で谷町線に乗り換え、東梅田に出る。
梅田〜西宮北口〜六甲 阪急電鉄
阪急六甲〜六甲ケーブル下 神戸市営バス
高野山から梅田まで戻ってきたわけだが、まだ時間が余っているので、
もう一つ「山登り」をしようと思う。
神戸から程近くにありながら、1000m近い標高を誇る六甲山である。
昼食を摂った後、阪急梅田駅から神戸線の特急に乗る。西宮北口で普通に乗り換え、六甲へ。
六甲からは六甲ケーブル下に向かう神戸市バスに乗る。
六甲駅周辺にはバス停がいくつもあり、どこに乗り場があるのかやや迷う。
中には六甲山上に向かう阪急バスの乗り場もあり、これなら2Dayパスでタダで乗れるのだが、
六甲山のどの場所で降ろされるのか分からないので、やはり当初の予定通りケーブルで行くことにした。
ようやくバス停を見つけ、やってきたバスに乗り込む。
長いこと関西に住んでいたが、神戸市バスに乗るのは初めてかもしれない。
バスで六甲ケーブルの乗り場を目指すが、その途中は鶴甲という住宅街になっている。
海岸線がはるか下に見下ろすような形で見え、こんな所にまで住宅地が広がっているのかと思う。
六甲ケーブル下15:40発〜六甲山上15:50着 六甲ケーブル
六甲山の麓の、住宅街が尽きたところに六甲ケーブルの乗り場がある。
このケーブルには2Dayパスがつかえないので、ケーブルと山上バス、
有馬へ抜けるロープウェーがセットになった乗車券を買う。1700円であった。
改札を通ると、ケーブルカーが発車を待っていた。
この車両、なかなか面白い作りとなっていて、
2両連結のうち下側の車両は窓ガラスがなくオープンな構造となっている、
もう1両もメルヘン風の凝った作りで、六甲山観光の入口にふさわしい車両となっている。
平日の午後だけに乗客は10人にも満たないまま発車する。
ケーブルが動き出すと、山の涼しい空気が車内に入ってきて心地よい。
途中にはトンネルや橋梁もあって、車窓にはメリハリがある。
所要時間も10分と長く、先程の高野山ケーブルに比べて倍近い距離があるのではないかと思う。
六甲山上駅にたどり着き、長い階段を登って出口へと向かう。
後ろを振り返ると神戸市街の眺めが見事だ。
住宅街の一角に、六甲ケーブルの乗り場がある。
下半分がオープンな六甲ケーブルの車両。
六甲ケーブル山上15:55発〜ロープウェー山頂16:08着 六甲山上バス
ケーブルを降りると、六甲山上バスが停車をしている。
このバス、以前は六甲山上を循環運転していたのだが、
この9月1日からルートが変わり、環状運転をしなくなった。
バスに乗る前に、駅前の広場から改めて下界を眺める。
神戸の街の向こうに神戸港、そして淡路島も見えた。
ケーブル駅を出たバスは山道を進み、記念碑台というバス停に着く。
先程の阪急バスはここを通るようなので、あちらに乗っても良かったようだ。
その後はホールオブホールズ、高山植物園、ガーデンテラスといった観光地を通りつつ、
ロープウェーの六甲山頂駅に到着した。この時点でバスの乗車しているのは私一人だった。
ケーブル山上駅からは、大都会神戸の町並みが一望できる。
六甲山頂16:13発〜有馬温泉16:25着 六甲有馬ロープウェー
六甲山頂駅からは、北側の有馬温泉に向けてロープウェーが伸びている。
かつては先程通った六甲ケーブル山上駅まで通じていたのだが、
その区間は今は休止中で、六甲山上バスが穴を埋めている。
バスを降りて乗り場に向かうが、他の客は誰もいない。
結局客一人、添乗員一人の合計二人で大きなロープウェーの車体に乗り込んだ。
車窓には六甲山系の険しい山々が見え、見事な眺めだ。
そうやって形式を眺めていると、添乗員さんが話しかけてきた。
曰く、今日はこんなに空いているものの、夏休みは子連れを中心にかなりの乗客があったそうだ。
また、このロープウェーは主に有馬温泉にやってきた観光客が利用するそうで、
湯治客の多い春や秋も客が多いらしい。
しばらく前、神戸で新型インフルエンザ騒動があったときは神戸全体で観光客が激減し、
このロープウェーも相当影響を受けたとのこと。
そうやっているうちに、目の前に市街地が見えてきた。
手前が有馬の温泉街、右手奥が西宮市の山口地区だそうだ。
甲子園球場があることで知られる西宮市がこんな所まで広がっているとは驚かされる。
話をしているうち、添乗員さんに「お仕事ですか?」と聞かれる。
「神戸電鉄と北神急行に乗りに来ました」と真実を話しても良かったのだが、
話がややこしくなりそうなので適当に誤魔化しておいた。話の中で、
「有馬温泉には金の湯・銀の湯という公衆浴場もあるので是非立ち寄って下さい」
と言われた。本当は有馬温泉に寄り道する気はあまりなかったのだが、
折角なので寄っていこうかと思い始めた。
ケーブルを降りると、駅前に小さなボンネットバスが停車していた。
温泉街を循環するバスで、もう発車するというので慌てて飛び乗る。
温泉街の狭い道をゆっくり走り、神鉄有馬温泉駅に向かう。
走らせているのは神鉄バスで、2Dayパスは「使えない」とのこと。
駅に着いた後、5分ほど歩いて「金の湯」に向かう。
最近建て替えられたばかりのようで、結構新しい施設である。
温泉に鉄分を含んでいるため、独特の黄土色の湯となっていることがその名の由来である。
このお湯に浸かるのは2度目だが、鉄分を含んでいる割に鉄臭い匂いはしない。
有馬温泉のイメージに合わせ、和風に改装された有馬温泉駅。
有馬温泉17:09発〜有馬口17:13着 神戸電鉄
有馬口17:14発〜谷上17:24着 神戸電鉄
温泉を出ると、ちょうど5時ごろであった。
慌てて服を着て駅へと急ぎ、何とか9分発の電車に間に合った。
有馬温泉駅は、神戸の湊川から延びる神鉄有馬線の終点だが、
現在は有馬口から三田へ伸びる三田線が本線のような顔をしており、
有馬口〜有馬温泉間は実質支線となっている。
有馬温泉を出ると、時折高速道路の下をくぐりながら森の中を進む。
有馬口に着くと、すぐに新開地行きの電車に接続する。
やってきたのは5000系という車両だったのだが、内装は木目調の化粧板にグリーンのモケットという阪急に酷似したもので、
驚いてしまった。神鉄と阪急は資本関係があるので、不思議な事ではないが。
有馬口を出た電車は、最大50パーミルという急勾配を何事もないかのように進む。
勾配だけ見れば先程「天空」で通った高野線末端部に匹敵するのだが。
やがて列車は谷上に到着する。
有馬温泉からは、有馬口行きの短距離列車に乗る。
谷上17:35発〜三宮17:45着 北神急行/神戸市交通局
谷上からは北神急行電鉄に乗る。北神急行は谷上〜新神戸間の一区間しかない、
芝山鉄道と並ぶミニ私鉄であるが、六甲山を貫通する長いトンネルからなっており、
その長さは7kmもあって丹那トンネルに迫るほどだ。
北神急行は神鉄のバイパスとして作られ、有馬・三田線沿線と三宮を短絡する目的で作られた。
しかし、運賃の高さなどから乗客数は伸び悩んでいるらしい。
例えば有馬温泉から三宮まで、実に900円も掛かる。
通常は神鉄との接続は非常に良いのだが、このときはたまたま接続が悪かったらしく、
10分近く待ってようやく列車がやってきた。車両は地下鉄の3000系だ。
谷上を出て、長い長いトンネルをひた走ること8分、ようやく新神戸に着く。
さらに一駅走って三宮に到着。
今回は乗り継ぎが悪かったが、このルートだと有馬温泉から三宮まで通常30分弱で着いてしまう訳で、
ずいぶん近いものだと思った。
神戸市営地下鉄の3000系。六甲山脈を2度縦断し、西神中央に向かう。
三宮17:58発〜山陽明石18:30着 直通特急
さて、関西私鉄の旅の締めくくりとして、山陽電車に乗ろうと思う。
明石までの区間は海沿いを走るため、夕日が見えるのではないかと思ってのことだ。
阪神三宮駅に行き、直通特急に乗る。車両は阪神8000系で、
中間車両に転換クロスシートが設置されたリニューアル車が来た。
三宮を出て、元町、高速神戸、新開地と停車する。
これらの駅では乗客の入れ替わりがかなりあるため、窓側の席を手に入れることができた。
高速長田・板宿に停車し、トンネルから地上に出る。
その後もかなりの頻度で駅に停車する。2駅か3駅ごとに停車するという有様で、
はっきり言ってとろくさいという印象は否定できない。
並行するJR神戸線の、各駅停車に匹敵するほど停車駅が多いのではなかろうか。
それでも山陽須磨を過ぎると、海が見えてきた。
もう日は沈んでしまっていて夕日は見えなかったが、それでも明石海峡大橋はくっきりと見える。
須磨付近ではJRの方が海に近いが、こちらは高台を進むので遠くが見やすいというメリットがある。
やがて、列車は山陽垂水に着く。隣にはJRの駅がある。折りしも快速が到着したところで、
多数の帰宅客がホームに吐き出されている。一方、山陽電車の方も乗客はそれなりに多く、
明石まで立ち客が絶えることはなかった。
舞子公園付近で明石海峡大橋の下を通過すると、まもなく明石に到着する。
もう夕暮れが迫ってきたので、大阪方面へ折り返すことにする。
夕暮れの空に浮かぶ明石海峡大橋。
明石18:35発〜神戸18:47着 新快速
大阪方面に戻る際、山陽電車にまた乗るのもつまらないので、
神戸までJRに乗ってみることにした。JR乗り場に向かうと、
タイミングよくすぐに新快速が来た。
新快速は明石から神戸までノンストップであり、100km/hを越える高速で爆走する。
よく停まる直通特急では、スピード面ではもはや勝負にならないといった感じで、
直通特急が26分も掛かった神戸〜明石間を、新快速はわずか12分で駆け抜けてしまった。
高速神戸18:54発〜甲子園19:19着 直通特急
甲子園19:23発〜梅田19:39着 急行
神戸からは再び直通特急に乗り、大阪に向かう。
駅に着くとちょうど列車がやってきた。
今度も阪神8000系リニューアル車が来た。中間車のクロスシートに座る。
高架化工事のため仮線に切り替えられた青木駅付近を眺めつつ、東へ向かう。
やがて、列車は甲子園駅の副本線に停車。ちょうど甲子園球場で阪神戦が行われているはずだが
(この日は京セラドームで巨人戦もあったので、阪神の運転課はおおわらわだっただろう)、
まだ試合中なのでそれほど乗客はいない。
ふと隣のホームを見ると、9300系の急行が停車している。
もう新車とはいえない9300系だが、まだ乗ったことがない。
結局、少し遅くなるのを覚悟で乗り換えた。
内装は8000系リニューアル車とほぼ同等である。急行は直通特急と奈良行き快速急行を待避した後、発車。
車内は終始空いたまま梅田へと到着した。
2Dayパスの方だが、利用した分の運賃の合計は発売価格の3800円を1000円以上越えた。 一応もう一日分残ってはいるが、十分に元を取ったといえるだろう。
オレンジの車体が印象的な阪神9300系。後継の1000系も現れ、今や中堅の域に。
2009/9/2
この日は、大阪から東京に帰る以外は特に予定はない。 18きっぷが余っていることだし、運賃節約のため久々に普通列車を乗り継いで行くことにした。 とはいえ、普通列車一本槍というのもつまらないので、ちょっとは寄り道をするつもりだ。
大阪8:21発〜米原9:46着 新快速
朝ラッシュで混雑する大阪駅から、新快速に乗る。
ラッシュ時だけに混んでいるかと思ったが、大阪・新大阪で降りる客が多く、あっさり座れてしまった。
京都を出るとガラガラになり、車内で駅弁を食べる余裕すらあった。
食べた駅弁は、大阪駅で古くから売られている「八角弁当」である。
見た目は普通の幕の内だが、多くのおかずがぎっちりと詰め込まれ、その質は高い。
出張帰りのビジネスマンにも人気があるそうだ。
大阪駅名物の「八角弁当」。
米原9:53発〜豊橋12:00着 新快速
米原からは名古屋圏の新快速に乗る。
乗り場に行くと、既に結構な人が列車を待っていた。
結局ほぼ全ての席が埋まった状態で米原を発車する。
名古屋に近づくにつれて混雑は増してきて、名古屋に着く頃には立ち客多数という状態だった。
名古屋を過ぎると流石に混雑も落ち着き、12時ちょうどに豊橋に着いた。
行先表示がLEDの313系5000番台は、ほぼ快速列車専用である。
豊橋駅前12:11発〜赤岩口12:33着 豊橋鉄道
豊橋で下車したのは、まだ一度も乗車したことのない豊橋鉄道に乗るためだ。
豊橋鉄道は、豊橋から延びる軌道線と鉄道線からなる地方私鉄である。
今回はあまり時間を掛けたくないので、お手軽に乗れそうな軌道線に乗車してみることにした。
この軌道線、正式名称は「東田本線」という。
ちなみに、東海道本線の駅前を発着する路面電車としては今や唯一の存在である。
JRの駅を出て駅前の歩道橋を歩き、路面電車の乗り場へ向かう。
乗り場には白い新型車両が停車している。
だが、歩道橋を降りたところにある乗降ドアは開いていない。どうやら入口は向こう側のようで、
車体を反対側にぐるっと回り込まないと入口にたどり着けないようだ。
ちなみに、発車直前に来たおばさんは最後まで入口が分からず、
みすみす目の前の列車を見送る羽目になってしまっていた。
もう少し案内を工夫してもらいたいものだ。
ともかく豊橋駅前を発車する。ちなみに正確な駅名は「駅前」だけなのだが、
分かりにくいのでこのページでは「豊橋駅前」と表記する。
発車してしばらくは、太い道路の真ん中に敷かれた軌道を走る。
専用のホームも整備され、なかなか立派な施設だなと感心する。
最初の駅である駅前大通駅で2、3人乗客があり、車内の客は10人ちょっとになった。
列車は交差点を何度か曲がりながら進む。最初は太かった道路も、
東八町駅あたりからは徐々に細くなり始め、そのうち軌道は昔ながらの石畳に転じた。
駅のホームも進むにつれだんだんと細く貧弱になっていき、
東田などは路上にペイントがなされているだけといった有様である。
競輪場前を過ぎると、ついに軌道は単線になった。あたりはただの住宅街で、
軌道が走っている道も歩道すらないような道路である。
単線区間で列車同士がぶつからないよう、単線区間の入口には信号機があった。
やがて、列車は井原に着く。ここで赤岩口に向かう本線と、運動公園前に向かう支線とが分かれる。
とはいえ、どちらに進んでもあと1区間しかない。
今乗っている列車は赤岩口行きなので、とりあえず赤岩口に向かう。
路面電車にしてはけっこう長い駅間を進み、終点に赤岩口に到着。
車庫の併設された駅で、周囲はごく普通の住宅街といった感じだ。
駅に張られている時刻表を見ると、
今乗ってきた「ほっトラム」という愛称を持つ新型車両で運転する列車に印がついている。
1時間に1本程度の運行のようなので、一発で乗れたのは非常にラッキーなことだったようだ。
白い車体が映える「ポートラム」。
井原12:48発〜豊橋駅前13:07着 豊橋鉄道
赤岩口の周囲には特に見るものもなさそうなので、豊橋駅前に戻ろうと思う。
が、今乗ってきた列車にそのまま乗るのも芸がない。
そこで、井原方面に歩いてみることにした。
住宅街を7、8分歩くと井原駅に到着。
本当は運動公園前まで歩いて軌道線の乗りつぶしをしたかったのだが、
運動公園前を出る列車にぎりぎり間に合わないタイミングで、
15分ぐらい待たされそうだったのであきらめた。
井原駅のホームで軌道を眺める。赤岩口への線路はまっすぐ、運動公園前への線路は右にカーブしているのだが、
そのカーブがとんでもなく急だ。
実はこのカーブは日本の鉄道線で日本一急なカーブなのである。
こんなごく普通の住宅街にレコードホルダーが存在するというのがまた面白い。
そんなカーブを曲がって、電車がホームに滑り込んできた。
廃止になった名鉄の軌道線から転属してきた車両のようだ。
行きとは違い、今度は途中から高校生が乗り込んできて車内は賑やかになった。
出発してからおよそ1時間で、豊橋駅前に戻ってきた。
日本一の急カーブは、ごく普通の住宅街にさりげなく存在している。
豊橋13:27発〜浜松14:00着
再度JR豊橋駅に戻り、東へ向かう。 やってきた浜松行きは転換クロスシートの311系であった。 この区間はロングシート車も結構やってくるので、ラッキーである。 浜名湖を眺めつつ、浜松に向かう。
浜松14:10発〜静岡14:31着 ひかり472号
浜松からは新幹線に乗り静岡に向かう。 普通列車に飽きてきたのと、この区間はロングシートの313系3連ばかり来るので、 混むのではないかと思ったからだ。 タイミングよく浜松・静岡間ノンストップのひかり号が来て、わずか20分で静岡に着いた。
静岡15:25発〜熱海16:42着
静岡で遅い昼食を食べた後、熱海行きの普通列車に乗る。
今度の列車はロングシートながら6連と編成が長く、先頭車は結構空いていた。
興津を過ぎてしばらくすると、太平洋を間近に見ることができる。
普通列車で通過するとうんざりするほど時間の掛かる静岡県だが、
この車窓は見所だと思う。
熱海からは快速アクティーに乗り、東京に戻った。