乗りつぶしの極意5か条
以下では、どんな地域を乗りつぶす場合でも当てはまる極意を箇条書きで述べる。 以下の例では出発地が関東であるケースを書いているが、 居住地が関東以外の方は適宜読み替えて頂きたい。
乗りにくい路線から乗ろう
例えば、東北地方の路線に乗ったことがない人がいたとする。
こういう人が乗りつぶしの最初のターゲットとして「東北新幹線・秋田新幹線・山形新幹線」を選ぶのは、
あまり得策でない。
なぜなら、こういう便利な路線はその後の乗りつぶし旅行などで乗車する機会があるからだ。
例えば東北新幹線なら、北海道への出入りの際に使えるし、
秋田新幹線だと秋田より奥のほうの路線、例えば五能線や男鹿線に乗りに行く際に使える。
それよりは、最初から五能線や男鹿線といった、乗りにくいローカル線を乗りつぶしのターゲットとしておき、
そこまでの出入りに適宜新幹線を使うといったプランの組み方をした方がよい。
地域内で固めうちしよう
北海道や九州など、遠隔地に行くのは時間的にも費用的にも何かと大変である。
そんな所に、一本だけ未乗の路線を残したりすると後から乗りに行くのが大変だ。
各地にばらばらに未乗線区が残ってしまうと、最後になって落穂拾いをする羽目になり、手間が非常に大きい。
そうならないように、一つに地域に行った際にはその地域内を全て制覇するようにした方がいいだろう。
例えば、九州に出かけたら九州島内の路線を全部制覇、それが無理なら南九州の路線を全部、
といった目標を立ててプランニングをするとよい。
プランに余裕を持たせよう
例えば、北海道の全線を5日間かけて全部制覇しようとした場合、
5日間いっぱいいっぱいにプランを詰め込んでいないだろうか。
無理に行程を詰め込むと、もし事故などでダイヤが乱れた場合、回復ができなくなる。
そのせいで北海道の奥地に乗り残した線区が残ったりすると、もう悲惨である。
そうならないよう、5日間のうち最後の1日、短くとも半日は「予備日」を残しておこう。
無事行程を消化できたら、予備日は観光なり別の線区の乗りつぶしなりに回せばよい。
あまり無茶な乗りつぶしをやると体にも良くないので、その意味でも「休養日」をどこかに挟む方がいい。
フリーきっぷを使おう
JRの路線網は網の目のように張り巡らされており、一筆書きの行程で乗りつぶすことはできない。
おのずと、一つの線路を行ったり来たりすることになる。
そういった路線網を、普通に切符を買って乗りつぶそうとすると、
短距離の切符を何枚も買うことになり、費用が非常に掛かる。
そこで有効なのが、JR各社が発行する「フリーきっぷ」。
代表的なのが、全国のJR線の普通列車が乗り放題となる「青春18きっぷ」だ。
18きっぷは乗りつぶしにおいて極めて重要なツールで、私も何度となくお世話になったが、
発売時期が限られる点と、特急に乗れない点が難点である。
その難点を解決するのが、特定地域の特急列車が乗り放題(あるいは料金別払いで利用可能)となるフリーきっぷの類だ。
「周遊きっぷ」なき今、発売地域は限られているので利用できるのは一部の地域のみだが、
あれば非常に役に立つ。詳しくは下の方で述べる。
乗車記録を残そう
JRの路線は全部で20000kmもあり、路線数も170を超える。
それらの路線にただ漫然と乗っていると、どの路線に乗ってどの路線がまだか、というのが分からなくなる。
特に、路線網が複雑な首都圏などはちゃんと記録をとっておかないと訳が分からなくなるだろう。
乗車記録を管理する方法としては、Excelなどに記録するか、
単純にJR時刻表の路線図にマーカーで色を付けていくなどでも良い。
その際、乗車日も記録しておくと旅の思い出になるだろう。
また、JRのどの路線を乗車の対象とするかも定めておく必要がある。
詳しくは「私の乗りつぶしルール」の項を見ていただきたい。
地域別 乗りつぶしの極意
以下、日本の各地域を乗りつぶす場合のお勧めのきっぷ、プランの仕方などを紹介したいと思う。 2013年5月の時点での情報を元に記載している。 (なお、地震・豪雨等の災害の影響で長期運休中の路線が発生しています。 出発前に運転状況や、切符の発売状況をよく確認してください。)
北海道地方:特急乗り放題のフリーきっぷを使おう
北海道はご存知の通り広大で、人口密度も低い。
そのため地域輸送を担う普通列車の需要は札幌圏などを除き多くなく、本数も少ない。
しかも各路線の距離が長いので、普通列車で道内くまなく旅をしようとするとえらく時間が掛かる。
従って、普通列車のみで北海道の乗りつぶしをやるのはあまり得策でない。
一方、道内の特急はキハ283などの振り子車両を導入し、かなりの俊足を誇るため、
利用することでぐっと乗りつぶしがやりやすくなる。
そこで役に立つのが、特急が乗り放題となるフリーきっぷだ。
往復に「北斗星」が使えた「ぐるり北海道フリーきっぷ」や、周遊きっぷはなくなってしまったものの、
道内のみ有効の「北海道フリーパス」は健在だ。
7日間有効なので、フルに活用すれば北海道全線走破も十分可能だ。
なお、以前は札幌から道内各地に向けて夜行列車が走っていて、宿代わりにできる上、
乗りつぶしの効率を挙げるのにも役立ったが、道内の夜行は青森行きの「はまなす」を除いて廃止されてしまった。
東北地方:どう使う?「ウィークエンドパス」と「スリーデーパス」
東北地方、特に北東北は北海道同様、普通列車の本数が少ない。
その一方で、東北地方には東京から東北新幹線が延びており、これを東北へのアクセスに利用したくなるのが人情だ。
そこで便利なのが、JR東日本の宮城・山形以南の全線が2日間乗り放題となる「ウィークエンドパス」と、
JR東日本全線が3日間乗り放題となる「スリーデーパス」だ。
これらのきっぷは従来の「土・日きっぷ」「三連休パス」と違い、
新幹線を含む特急料金は別途支払う必要があるということで、鉄道ファンからの評判は概して悪い。
しかし、東京からフリー区間の北端まで往復乗車券を買うよりは安いし、
ローカル線の乗りつぶしをやっていると、新幹線など優等列車に乗る機会は案外少ない。
そのため、乗りつぶし派には十分有益なきっぷといえるだろう。
なお、これらのきっぷはその名が示す通り「ウィークエンドパス」は休日のみ、
「スリーデーパス」は3連休(飛び石連休も含む)しか利用できない。
注意すべき点として、東北地方の日本海側は、冬場強風などで運休やダイヤ乱れが起こりやすい。
天候の悪い時は旅行を避けるか、プランに十分余裕を持たせた方が良い。
関東・甲信越地方:土休日が「吉」
関東・甲信越地方でもやっぱり便利なのは「ウィークエンドパス」。
関東・甲信越地方は結構隅々まで特急列車が走っていて、
料金の安い「B特急料金」が適用される区間が多いので、特急列車にも乗れるというのはやはり便利だ。
普通列車の本数も多いので、プランニングに苦労することもないだろう。
むしろ乗りつぶしに手こずるのは、首都圏の通勤路線ではないだろうか。
何せ路線網が入り組んでいて、自分がどの路線に乗車したかを把握するのも大変だ。
加えて、首都圏の列車はラッシュ時ともなると猛烈に混んでおり、
車窓が大して面白くもない事もあってますます乗る気が失せてしまう。
そんな首都圏だが、お勧めのフリーきっぷが「ホリデーパス」だ。
東京近郊の路線が乗り放題で、2000円強と安い。
土休日しか利用できないが、先程述べたように首都圏は土休日に乗るほうが何かと都合がいい。
東海地方:東西を行き来するついでに
日本のちょうど中央に位置する東海地方。
降り立ったことはなくても、通り過ぎたことはあるという人も多いのではないだろうか。
この地域の鉄道路線の特徴として、行き止まりの線は少なく、東西を横に結ぶ線が多いことが挙げられる。
そこで、18きっぷもしくは普通乗車券で東西を行き来する際に、経路に取り込むことで乗りつぶしが可能だ。
中には飯田線や身延線のように南北を結ぶ線もあるが、これも東西を行き来する際にルートに取り込めないこともない。
飯田線や紀勢線のように、走破するだけで一日がかりという路線もあるが、うまく乗車したい。
この地域のフリーきっぷであるが、東海地方にはあまり有効なきっぷはない。
強いて言えば名古屋地区が乗り放題の「青空フリーパス」ぐらいだろうか。
関東の「ホリデーパス」のような位置づけのきっぷである。
北陸地方:東京・名古屋からだと「吉」
北陸地方のJR線は、軸となる北陸本線からいくつもの枝線が伸びる形の路線網となっている。
そのためフリーきっぷだと乗りつぶしやすいが、残念ながらあまり種類はない。
そんな数少ないフリーきっぷの一つとして、東京発に限定されるものの「北陸フリー乗車券」がある。
北陸三県のJR線が乗り放題となる他、
フリーエリアまでの往復には新幹線+「はくたか」が利用できる(特急料金が別途必要)。
また、同じようなきっぷとして名古屋発の「北陸観光フリーきっぷ」もある。
その他の地方からだと、有効なフリーきっぷの類は無い。
関西地方:観光や私鉄線乗車も交えよう
関西地方は山地が面積の多くを占めているため、その面積や人口の割にはJRの路線は少ない。
この地域は過疎ローカル線も少なく、大阪近郊などは料金不要の快速列車が充実しているため、
乗りつぶしは割と容易だ。
ただし、有効なフリーきっぷはあまりない。
選択肢としては18きっぷを使うか、節約派は大阪近郊区間の乗車経路を任意に選べることを利用した「大回り乗車」を利用するか、
といったところか。
しかしながら、この地域は文化財の宝庫で、京都や奈良など駅のすぐ近くが観光地という所も多い。
また、関西は古くから「私鉄王国」と呼ばれ、特急列車が充実する近鉄や南海、ジェットカーや2階建て車両、
5扉車両など独特な車両が豊富な阪神や京阪、とにかく車両が茶色い(?)阪急など、ユニークな面々が揃っている。
私鉄の方はフリーきっぷが非常に充実しているので、JRだけでなく私鉄にも乗車してみると良いだろう。
中国地方:乗りつぶし最大の難所!
中国地方は、乗りつぶし最大の難所だと個人的に思っている。
中国山地の路線の多くは特急も走っておらず、過疎地を走るので普通列車も少ない。
こういったところを効率よく乗りつぶすのは至難の業で、プランニングの際は非常に苦労させられる。
加えて、便利なフリーきっぷの類も全くといっていいほどなく、もっぱら18きっぷに頼るしかない。
山陽本線筋は、特急が走っていないのは同じながら、普通列車については本数が多い。
ここも18きっぷで攻めるのが良いだろう。一方の山陰本線には、かなりの俊足を誇る気動車特急が走っている。
当然ながら18きっぷは利用できないため、普通乗車券を買う必要があるが、一気に乗りつぶせるのは便利だ。
ともかく、中国地方に関しては18きっぷ利用以外の攻略法が思いつかないのが現状だ。
四国地方:フリーきっぷで一網打尽に
四国地方は、最近になって開通した高速路線網に対抗するため、振り子式の特急が主要都市間に走っている。
牟岐線や徳島線などのローカル線にも特急が走っているので、
特急が利用可能なフリーきっぷを持っているとプランが組みやすい。
JR四国は多数のフリーきっぷを発行しており、選り取りみどりと言ったところだ。
中には特急のグリーン車にも乗り放題な「四国グリーン紀行」というきっぷもあるが、
主要都市間の特急しかグリーン車を連結していないため、ローカル線にも乗らねばならない乗りつぶしでは、
その恩恵をあまり受けられないかもしれない。
いずれにせよ、四国に関しては2日もあれば全線完乗が可能だ。18きっぷでのんびり、というのも良いが、
特急に乗れるフリーきっぷで一気にカタを付けたい。
九州地方:特急を利用したいが…
JR九州といえば、多彩な顔ぶれの特急列車群が有名だ。
九州まで行って、これらの特急車両に乗らない手はない。
だが九州には、常時発売している特急乗車可のフリーきっぷはない。
ただし、誕生月限定ながら九州島内の特急に乗り放題のフリー切符「HAPPY BIRTHDAY♪KYUSHU PASS」が2013年から発売されている。
利用条件は厳しいものの、特急乗り放題のフリーきっぷは本当にこれしかないので、何とか利用したい。
九州には「指宿のたまて箱」「いざぶろう・しんぺい」など、観光列車がいくつも走っている。
一人で乗車しても十分楽しめるので、うまくプランに取り込んで乗車してみたい。