世界鉄道案内(サンフランシスコ、サンノゼ編)

 2009年に、仕事の関係でアメリカ南西部のカリフォルニア州にあるサンノゼという場所に長期滞在する機会があった。 サンノゼはいわゆるシリコンバレーの一角をなす街で、北西60kmほどの場所にはサンフランシスコがある。 そのサンフランシスコには、2019年に再訪する機会を得た。
 アメリカというと完全なクルマ社会であり、公共交通は衰退しきっていると聞いていた。 実際滞在してみるとそれは間違いではなく、仕事も買い物もクルマなしではままならず、 逆にクルマさえあれば実に便利な社会であることを実感した。
 公共交通の一端を担う鉄道も衰退しており、 例えばアメリカの長距離鉄道輸送を担うAmtrakも年々路線の縮小を余儀なくされている。 そんな中、まだ比較的鉄道が元気なのがサンフランシスコ・ニューヨーク等の大都市近郊であり、 都心部と近郊を繋ぐ鉄道は日本並みの高密度輸送を行っている。
 鉄道ファンとしては、せっかくアメリカまで行くのだから是非その土地の鉄道にも乗っておきたい。 そこで、休みの日を中心に、観光もそこそこに鉄道に乗車しに出かけた。

目次

サンフランシスコ、サンノゼの鉄道基礎知識

 まず最初に、サンフランシスコの地理を紹介する。サンフランシスコは、 三浦半島よりちょっと大きいぐらいの大きさの半島の先っぽにある都市である。 山がちな地勢も三浦半島そっくりで、サンフランシスコ中心部にも急坂が多い。 名物のケーブルカーが発達したのもその地形によるところが大きい。
 半島の先っぽにあるサンフランシスコから本土までは近く、有名なベイブリッジでつながっている。 ただしベイブリッジは自動車専用で、列車は地下トンネルを経由する。 ベイブリッジの本土側にある町がオークランド(Oakland)である。大リーグのアスレチックスの本拠地だ。 また、半島と本土の付け根には、シリコンバレーを構成するサンノゼ(San Jose)などの街が点在している。
 次に、サンフランシスコ周辺を走る鉄道を紹介する。 路線の長さで分けると、大まかにいって以下の路線が存在する。 Wikipediaに地域全体の路線図が載っているので、こちらを見ながらだとイメージしやすいかもしれない。 (ちょっと分かりづらいが、左上がサンフランシスコ、右下がサンノゼを表している。 また、左上にある茶色の太い帯はサンフランシスコ中心部のMarket Streetを表す。)

 これまで、超長距離のAmtrak以外の路線にはそれぞれ何度か乗車した。乗車記を写真とともに紹介する。

鉄道乗車記(2007年)

Amtrak Capital Corridor号

 AmtrakのCapital Corridor号は、San Joseを起点にOaklandを経由し、州都のサクラメントまで向かう列車である。 休日はSan Jose始発の便が1日7本で、Oaklandから先はもう少し本数がある。 走行距離は数百キロに及ぶが、これでもAmtrakでは短距離路線に分類される。 終点までは3時間ほど掛かるため、車内にはビュッフェコーナーがあり、座席にはメニューが備え付けてある。
 休日のある日、滞在先からクルマでSan Jose駅に向かう(サンノゼ市内は公共交通機関があまりなく、 クルマで行くしかなかった)。 サンノゼはシリコンバレーの中心地であり、全米屈指のハイテクの町で人口も多いが、 駅前には商店などはあまりなく、人気もない。駅舎は相当昔からあるであろう古風なもので、ハイテクには似つかわしくない。 閑散とした駅の窓口で切符を買って、サクラメント方面行きのホームに向かう。
 ホームに出ると、プラットホームの低さに驚かされる。日本の鉄道よりはずっと低く、 路面電車用のホームのようだ。その一方で車両の方はとんでもなく大きく、 5両編成の列車はまるで壁のようだ。ホームと車両床面との段差は1m近くもあり、 急なステップをよっこらせと登らねばならない。バリアフリーには程遠い構造だが、 車椅子マークのついた車両もあったので、何らかの昇降機が付いているのかも知れない。 車両の内部は完全な2階建てとなっている。列車は5両編成だが、乗客はさほど多くない。 座席は自由席なので、空いている4人ボックスを占領してくつろぐことにする。
 San Joseを発車してしばらくすると、列車は広大な湿地帯を走る。 線路沿いには朽ち果てた木造の小屋がある。まるで日本海沿いを走っているかのようだ。 しばらく走り、Fremontという駅に到着。ここは駅前に古い駅舎が再現されている。 鉄道の衰退したアメリカだが、鉄道黄金期を懐古するという文化は残っているようだ。
 列車は田舎びた土地を走る。途中、線路が分岐していく箇所がいくつもある。 アメリカの鉄道は今や旅客輸送より貨物輸送が主で、途中長大な貨物列車(一編成に貨物車が100両以上!) ともすれちがった。
 やがて列車はOaklandに入り、Oakland Coliseum駅に到着。 ここはNFLのレイダーズの本拠地であるスタジアムの最寄り駅で、BARTとの乗り換えも可能だ。 次の駅はOakland。バスでサンフランシスコ方面に連絡している。 Oakland駅を出ると、巨大なヤードを脇に見つつ列車は港湾地帯をゆっくりと進む。
 次のEmeryville駅はAmtrakの通らないサンフランシスコに代わって鉄道の玄関口となった駅で、 シカゴやシアトル、ロサンゼルスといった遠方まで走る長距離列車が発着する。 その割にプラットホームは殺風景で、そっけない感じだ。 引き続き列車は港湾地帯を走り、Richmondに到着。私はここで下車した。 AmtrakのRichmond駅は何と無人だった。運賃は車内で車掌に支払うのだろうか。その辺はよく分からなかった。


ブルーに塗装されたAmtrakの機関車。


車内はゆったりとしたクロスシートとなっている。4人席にはテーブルも備えている。


長距離列車だけあってビュッフェも営業しており、メニューが各座席に置かれている。

BART

 先程述べたとおり、サンフランシスコ都市圏の中距離輸送を担うのがBARTである。 運転形態や路線網は東京の地下鉄とよく似通っていて、中心部では地下を、郊外では高架線を進む。 その路線網は幅広く、Market Streetを中心に南は10km以上離れたサンフランシスコ空港、東はOakland市内を経由して数十kmも離れた郊外に路線を延ばしている。 なお、車内はクロスシートで、日本の地下鉄と違いラッシュ輸送にも余裕があることが想像できる。
 私はAmtrakでOaklandの北のRichmondまでやってきて、ここからBARTに乗車した。 Richmondの駅は日本の私鉄の郊外駅といった風情であった。サンフランシスコ市内までのチケットを券売機で買って改札を入る。 列車は日中15分の間隔で運転されているようだ。
 Richmondを発車し、列車は高架線を進む。沿線には住宅が並び、日本の都市郊外のベッドタウンとよく似た光景が続く。 しばらく走ると線路は地下に入る。最初はがらがらだった電車にも、途中駅からは次々と乗客が乗り込んでくる。 よく見ていると、揃いの黒いユニフォームを着ている。 一瞬何かと思ったが、これは先程述べたレイダーズの試合の観客のようだ。 この列車は試合の行われるスタジアムの最寄り駅を通るため、多くの観戦客が乗ってきたらしい。
 しばらく走ると、列車は再び地上に出る。高速道路に挟まれたMacAuther駅に到着。 ここで、乗客たちはホームの向かい側に停車した列車に大挙して乗り換えていく。 が、例のアメフト観戦客は降りない。アメフトの競技場は、サンフランシスコ方面との分岐点より先にある。 ということは・・・。ここまで考えて、私は向かい側のホームの列車に乗り換えた。 これはどうやら正解だったようで、ここMacAuther駅では別の方面から来たサンフランシスコ行き列車と、 Richmondからの列車が相互に接続を取っているらしい。 長年いろんな鉄道に乗ってきた経験と勘で、無事乗り換えることができた。
 乗り換えた列車は地上に出たり地下に入ったりを繰り返しつつ、やがてサンフランシスコへ向かう海底トンネルに入った。 瀬戸大橋のようにベイブリッジの下層を走るのかなどとも期待したが、違った。 それでも列車は速く、あっという間に海峡を渡りきってサンフランシスコ側に到着した。


日本の地下鉄にもよく似たBARTの車体。


車内にはゆったりとしたクロスシートが並ぶ。

ケーブルカー

 サンフランシスコ市街を色々見た後、サンフランシスコ名物のケーブルカーに乗った。 ケーブルカーは後で述べる路面電車と同様、Market Streetと観光地であるフィッシャーマンズワーフを結んでいる。 ただし、路面電車は両地点の間の山を避けて大きく迂回しているのに対し、ケーブルカーは両地点を一直線に結んでいる。
 ケーブルカーといっても日本の山岳ケーブルカーとは違い、路面電車同様公道の真ん中を走る。 ただし動力はケーブルとなっており、道路下の溝を這っているケーブルにクラッチのようなものを引っ掛けて動力としている。 この操作は実にアナログで、車両の真ん中に陣取った乗務員が大きな梃子を動かしている様子が乗っていると見えた。
 このケーブルカーはかつてはサンフランシスコの町中を走り回っていたそうだが、 モータリゼーションの影響で年々路線は縮小し、今では観光用にわずかな路線が残されているだけである。
 実際に乗ってみたが、休日とあって乗り場は混んでおり、たっぷり一時間近く待たされた。 大行列ができているにもかかわらず係員の動作は緩慢で、空の車両が乗り場で長く停車している場面も見られた。 このあたり、アメリカは良くも悪くもおおらかである。ケーブルカーは先頭となるべき側が固定されているようで、 終点で車体を転回する必要がある。転回作業は完全な人力で、転車台で係員がえっちらおっちらと車両を回していた。
 乗車する際は、写真にあるように車体につかまって乗ることもできる。 普通に乗るよりスピード感が得られそうだが、振り落とされないよう注意が必要だ。 スピードはさほどでもないが、坂が急である(こんな坂に家が建っているのが信じられないぐらいだった)ので、 振り落とされると坂を転がり落ちるかも知れない。


サンフランシスコ名物のケーブルカー。


坂を駆け下りるケーブルカー。 周囲の家と比べると以下に急な坂かが分かると思う。

路面電車

 サンフランシスコには路面電車の路線が複数あるが、 観光客が乗る機会が最も多そうなのがMarket Streetと観光地であるフィッシャーマンズワーフを結ぶ路線である。 この路線はMarket Streetの路上を走る唯一の路線でもある。
 この路線は観光客を主なターゲットにしているせいか、非常にレトロな車両を利用している。 床は木張り、ドアは木製という古めかしい車両で、見た限りいくつかの車種が走っているようだ。
 運賃は乗車時に車内で支払う。この際、おつりは出ないので、高額紙幣しか持っていない場合は注意が必要だ。 これはこの路面電車ばかりでなく、アメリカの公共交通機関ではよく見られる。
 フィッシャーマンズワーフから市街に戻る際に乗車したが、車窓からはサンフランシスコ湾も見渡すことができ、 乗っていて楽しい路線だった。


とてもレトロな路面電車。

Muni Metro

 サンフランシスコ市内の各地を結んでいる路面電車のうち大半は、Muni Metroと呼ばれる路線で、2両編成のモダンな車両が使われている。 私は今回、サンフランシスコの目抜き通りであるMarket Streetと後述するCaltrainの始発駅(4th & King Streets)の間を乗車した。 この路線は基本的に路面を走るのだが、面白いことにMarket Streetの区間では地下を走る。 各路線とも市内各地からMarket Streetに集結する形で運行されるので、 地下区間では次々に電車がやってくる。乗り間違えないよう注意が必要だ。 各車両の先頭部に路線系統を示すアルファベットが大きく書かれているので、それをよく見ておけばよい。
 Market Streetの区間の駅には改札があり、チケットは券売機で事前に購入しておく。 その他の区間では、乗車時に乗務員に運賃を支払うようだ(実際に払ったわけではないので詳細不明)。
 この路線、結構遠くまで足を伸ばしており、市郊外の非常に静かな住宅街にあるレストランを訪れたところ、 いきなり店の目の前に電車が現れて驚いた。


Muni Metroの車両はどれも真新しい。

Caltrain

 Caltrainはサンフランシスコと、南に80kmほど離れたサンノゼとを結ぶ長距離路線である。 なお、平日の通勤時間帯はサンノゼよりさらに南まで足を伸ばすが、休日や平日昼間はサンノゼまでしか行かない。 しかも休日はわずかに1時間に1本しか列車が運行されない。 サンノゼは人口100万近くを擁する大都市で、サンフランシスコとの間にも宅地が広がっていることから、 日本ならばJR線と私鉄が各一本ぐらいありそうなものだが。
 サンフランシスコ側の始発駅(4th & King Streets)は、中心部からやや離れた、サンフランシスコジャイアンツの本拠地の球場近くにある。 駅は新しいが、駅前にはホームレス風の人がうろついていて、夜などはやや治安に不安がありそうだ。 駅構内の券売機で切符を買い、列車に乗り込む。余談だが、券売機で切符を買ったところ、 おつりがあまり見かけない1ドル硬貨で返ってきた。(アメリカでは1ドルは紙幣が一般的である。)
 車内に入ると、内部は2階建て構造となっている。ただし日本などで見られる一般的な2階建て車両とはやや構造が異なっている。 2階の床面は中央部分が欠き取られ、その部分は1階の通路となっている。 その分2階の座席は少なく、一人掛けのシートが通路左右に配置されている。なお、1階は一般的な2人掛けとなっている。 通勤時などに、なるべく多くの客を着席させようという意図がうかがえる。
 5両編成の列車はがらがらのまま発車。高架下の線路をのろのろと進む。最初の駅は22nd street。 ずいぶん場末な位置にあり、利用者がそれほどあるようには思えない。案の定、誰も乗ってこなかった。 列車はトンネルを抜けつつどんどん南下していく。車窓にあまり家々は見えない。 サンフランシスコの港を時折見つつ、海沿いを進んでいく。 車内の停車駅放送は車掌による肉声で、このあたりは日本っぽい。
 やがて列車は、Millbraeに到着。ここはBARTとの乗換駅で、 ここで乗り換えてサンフランシスコ市街や空港方面に向かうことができる。 この駅では少し乗客があったようだ。  列車はサンフランシスコの郊外を淡々と進んでいく。周囲はそれなりの市街地のはずだが、 日本のように線路際まで家が建っていたりはしない。土地に余裕があるので、 わざわざうるさい線路際に住む人などいないのだろう。 途中少しうとうとし、目を覚ますと列車はStanfordという駅に到着した。 あのスタンフォード大学の最寄り駅ということだが、駅前には森が広がっていて大学の建物は見えなかった。
 サンフランシスコから各駅に停車しつつ進むこと1時間半で、終点のSan Jose駅に到着。 80kmで1時間半だから、表定速度は50km/hちょいということになる。鈍行列車なのでそんなものかなと思うが、 都市間を結ぶ唯一の交通機関にしては時間が掛かりすぎかなと感じる。


San Jose駅でAmtrakと並ぶCaltrainの牽引機関車。どちらもかなりの巨体だ。


Caltrainの編成。全車二階建てで、かなりの収容力がありそう。


Caltrainの車内。日本では見られない独自の2階建て構造になっている。

VTA Light Rail

 この他、サンノゼ市内にもVTAという機関(日本でいう交通局のようなもの?)が運営するライトレール (専用軌道を走るが、運行形態は路面電車に近いもの)がある。 しかし滞在中、これに乗ることはなかった。サンノゼには明確な中心部がなく(一応DownTownというところが中心とされているが、 飲食店が多少あるだけで大規模な商業施設はない)、従ってこのライトレールもふつうの住宅地やオフィス街を走るばかりなので、 家や職場が沿線にない限りはなかなか乗る機会がないのが現状だろう。強いて言えば、Great Mallという巨大モールが沿線になるので、そこへのアクセスには使えるかもしれない。 将来、BARTをサンノゼ市内まで延伸する計画もあるらしいので、Caltrain以外にもサンフランシスコ方面に向かう手段ができるかもしれない。

鉄道乗車記(2019年)

日本からサンフランシスコへ

 2019年、再び仕事でサンフランシスコを訪れることとなった。 サンフランシスコ市中心部に数日通う必要があったのだが、ちょうど市内でイベントが開催されている時期で、 中心部のホテル料金が1泊10万円近くにまで高騰しており(アメリカは需要に応じたホテルの料金変動が非常に激しく、こういったことはよくある)、 とても経費で落とせたものではない。 仕方なく、空港近くのホテル(最寄りは1駅隣のSan Brunoという駅)に泊まり、毎日BARTで通勤する羽目になった。
 まずは羽田からのJAL便でサンフランシスコに向かう。脱線するが、JALのラウンジクーポンを入手したので、 羽田空港では(エコノミークラス利用なので)本来入れないはずのサクララウンジでくつろいだ。 高級ホテルのビュッフェを小ぶりにしたような食べ放題の食事と、 ワイン・ウイスキー・日本酒・ビールなど各種の酒が用意され、無料のシャワールームもある。 最近、航空会社のステータスを得るために飛行機に乗りまくる「修行」が流行っているらしいが、ちょっとやってみたくなった。
 羽田からはJALで最も大型のボーイング777-300ERに乗る。JAL国際線利用は久しぶりだったが、ANAに比べてエコノミーのシート幅は少し広く、 心持ちゆとりがあるような気がした。約10時間掛けて、サンフランシスコに到着。 毎回憂鬱な入国審査だが、今回はESTA(電子ビザ)を使用し、かつ同じパスポートで2回目以降のアメリカ入国(いわゆるReturn ESTA) だったので、入国審査は専用端末で質問に答えて指紋を取るだけで終了。案外すんなりとパスできたとほっとしていたら、 手荷物の搬出でトラブルがあったとのことで、ベルトコンベアの前で30分近く待たされた。
 ようやく荷物をピックアップして、空港からの送迎バスでホテルに到着すると時差の関係でもうヘロヘロだったが、 仕事のため市内に向かわねばならない。休憩もほどほどに再出発する。


羽田空港ラウンジの食事。カレーが名物らしい。


サンフランシスコに到着したボーイング777-300ER。

サンフランシスコ空港からBARTで市内へ

 再び空港に出て、BARTに乗る。券売機で切符を買うと、定期券大の磁気カードのようなものが出てきた。 発車を待っていた電車に乗り込むと、車内には1両に1人ぐらいの割合で浮浪者がいる。 これはこの後乗ったどの電車でも同じで、どうやらこの列車に住み着いているようだ。 彼らと1対1で同じ車両にいるのは怖いので、他の「ふつうの」乗客がいる車両に乗り込んだ。 また、座席も所々壊れていて、座面がなくなっていたり破れているシートも散見された。
 そんな電車に乗り、市内へと向かう。しばらくは地下を走るが、駅間が長くかなりのスピードで突き進む。 日本の銀座線や御堂筋線などと同じく第三軌条から集電しており、「カコン、カコン」という独特の金属音が車内に響く。 横に車両基地のあるColmaを過ぎると、しばらく地上区間を進む。この辺からカーブが増えて、スピードもややゆっくりとなった。 横には高速道路が並走するが、これが片道4車線か5車線は有って、道幅の広さに圧倒される。 次のDary Cityは2面3線の駅で、折り返しが可能だ。空港からは15分おきの運転だが、この駅からは列車の本数が増える。
 Balboa Parkからは再び地下区間になる。この辺からは乗客も増えてくるが、 ラッシュ時でも日本のような満員状態になることはなく、うらやましい。 しばらく地下を走って、市中心部のPowell Streetで下車。ホームは殺風景で、おまけに小便臭い。 ホームで寝転がる浮浪者もいる。特に夜間などは、一人で乗るのはかなり勇気が要りそうだ。
 この後は仕事のため市内とホテルをひたすら往復していただけなので詳細は割愛するが、 Uber(スマホアプリで呼び出せるタクシーのようなもの)が非常に便利だった。 ホテルから市内まで、BARTや送迎バスを乗り継ぐと1時間近くかかるのだが、 Uberだと渋滞がなければ20分ほどで行けてしまった。料金もタクシーより安いし、次にアメリカに来るときは積極的に利用しようと思う。

サンフランシスコ、サンノゼ周辺の観光地

 サンフランシスコはハワイやラスベガスのような観光都市ではなく、 わざわざ足を運ぶほどの名所というのは実はそれほど多くない。 中心部には大きなデパートやショッピングモールもあるが、日本の都心にあるようなモールと比べてそれほど違いはない。 そもそも、東京や大阪に比べると都市の規模としてはやや劣る。
 サンノゼはビジネス都市なので見所はさらに少ない。クルマで郊外まで足を延ばせば自然公園がいくつかあるが、 市街地にはほとんど観光できる場所はないといっていい。それでも、いくつか見所を挙げてみようと思う。

フィッシャーマンズワーフ

 フィッシャーマンズワーフは、サンフランシスコ中心部から北上した海沿いにある観光地である。 上述したケーブルカーまたは路面電車で行くことができる。 サンフランシスコに行ったことはなくても、名前ぐらいは聞いたことがあるという方が多いあろう。 とはいえ、特段目新しい施設があるわけではなく、土産物店やレストランが入ったショッピングモールがあるぐらいである。 ただしサンフランシスコ湾の眺めはよく、対岸の山々やゴールデンゲートブリッジを望むことができる。 また、海岸沿いにはアシカが大量に集まってきていて、まるで水族館のようだ。 この他、海沿いということでクラムチャウダーやカニが名物となっており、レストランで賞味するのもいいだろう。


フィッシャーマンズワーフの海沿いには大量のアシカが。

アルカトラズ島と観光船

 アルカトラズ島は、サンフランシスコ湾の真ん中に浮かぶ孤島で、刑務所として使われていたことで有名である。 今は刑務所はなくなり、フィッシャーマンズワーフ近くの埠頭から観光船で訪れることができる。 今でも監獄の跡が残され、ミュージアムとなっている。
 この観光船は、サンフランシスコ湾と外海の境目にあるゴールデンゲートブリッジ付近にも足を延ばす。 ゴールデンゲートブリッジは、明石海峡大橋の3分の2ほどの長さがある巨大な吊り橋で、 戦前にこのような橋ができていたことには驚かされる。


数々の凶悪犯が収容されたことで有名なアルカトラズ島。


観光船からは巨大なゴールデンゲートブリッジが望める。

チャイナタウン

 サンフランシスコは日本はじめアジア各国からの移民を多く受け入れてきたことで知られ、 市の中心部には大規模なチャイナタウンもある。 ここも目新しい施設はあまりなく、土産物店や中華料理店が立ち並んでいる。 横浜の中華街に比べて、やや閑散としている印象を受けた。 サンフランシスコは坂が多く、中心部からチャイナタウンへ行くには結構な坂を上る必要があり、歩くと疲れる。


チャイナタウンのゲート。

日本食スーパー

 アメリカの食事はとにかくサイズが大きくて大味で、一週間ぐらいならいいがそれを過ぎると飽きてきてしまう。 日本人の駐在員が多いサンフランシスコやサンノゼでは、彼らの需要に応えるため日本食を専門で扱うスーパーが複数ある。 サンノゼにはミツワというスーパーがあり、 滞在中は何度も訪れたが、米・味噌・納豆・豆腐・刺身にスナック菓子と、日本の小型スーパーとほぼ同じ品ぞろえで驚いた。 弁当や寿司も売られているほか、日本食レストランや書店の紀伊国屋も併設されている。
 最近はアメリカでも日本食がメジャーになってきていて、回転寿司店もいくつかあるので行ってみたが、 ネギトロにチリソースが入っているなど、アメリカ人向けにローカライズされたものが出てきて困惑した。 その点、ミツワの中にある寿司店は安心で、写真のような本格的な寿司を味わえた。


サンノゼで買える本格的な寿司。