最終更新日:2021/2/11

東海地方3セク巡り―帰省ついでに天浜線・愛環・城北線・樽見鉄道に寄り道旅

 2004年の夏は、割と長く休みを取ることができた。 そこで、恒例の帰省は18きっぷで東海道をのんびり下ることにした。 が、18きっぷで東海道を行くのはもう嫌というほど経験してきており、少しマンネリ気味でもある。 かといって、中央本線経由や関西本線経由ももう何度も使っており新鮮味に欠ける。
 そこで、東海道線沿線の未乗の第3セクター線に乗りつつ、西へ向かうことにした。 特に天竜浜名湖鉄道など、完全に東海道線と並行しているため、 中だるみしがちな静岡県を通過する際のアクセントとして利用してみるのも良いのではないかと思う。

目次

2004/8/12

川崎5:39発〜静岡8:26着

 早朝の川崎駅に、ムーンライトながらでおなじみの373系がやってきた。 早朝と深夜の静岡直通列車には、この373系が使われる。 最近では有名になっているようで、18きっぷ利用者を中心にこの列車を狙う客も目立つようになって来た。 とはいっても、川崎の時点ではまだ5時台であり着席は余裕だ。 平日だけあって横浜あたりからはちょっとしたラッシュの様相を呈する。小田原あたりまでは立ち客が目立つ。
 小田原を過ぎ、根府川あたりまでくると相模湾が見える。 年末の帰省だとちょうどこのあたりで日の出が見え、この列車を愛用していた頃は毎年の帰省の楽しみだった。 静岡に近づくとまた通勤通学客が増えてくる。通路までいっぱいになったところで、静岡着。


早朝のみのサービス列車である373系使用の静岡行きでスタート。

静岡8:28発〜掛川9:14着

 静岡からはロングシートの211系に乗る。先程までの373系とは落差が大きいが、6連と編成が長いのが救いだ。 大井川を渡り、金谷で大井川鉄道を見ると、まもなく掛川に着く。

掛川9:21発〜新所原11:38着 天竜浜名湖鉄道

 掛川からいよいよ天竜浜名湖鉄道に乗る。 わずか1両の真新しい気動車で、これだけで幹線から一転して一気にローカル線の雰囲気になる。 掛川市役所前、西掛川と、1kmにも満たない間隔で駅がある。 3セク線は増収のため駅を増設する傾向があるが、この鉄道は特にその傾向が顕著で、掛川〜新所原間に37も駅がある。 並行する東海道線は13しか駅がないから、いかに多いか分かるだろう。
 しばらく走ると遠州森駅に着き、一気に乗客が降りた。この駅は国鉄時代「遠江森」といったが、 「とおとうみ」という部分が長ったるいせいか改名されてしまった。 これはこの鉄道の他の駅についても同様である。
 しばらく走ると、天竜二俣に着いた。車庫などが併設された中枢駅だ。 この駅では10分近くも停車するので、車庫に留置されたトロッコ車両などを見て過ごす。 構内は国鉄時代のままで、ホームも車庫も古びている。
 やがて列車は西鹿島駅へ。構内には遠州鉄道の赤い電車が見える。天竜浜名湖鉄道の弱点として、 この地方の中心地である浜松を通らないという点があるのだが、 遠州鉄道と乗り入れればこの弱点を解消できるように思える。 過去には、遠州鉄道の気動車が国鉄時代の二俣線に乗り入れていた時代もあったそうだ。
 しばらく走り、フルーツパークという駅がある。 実際に駅周辺には果樹園が見える。折しも浜名湖万博が行われており、それ関連ののぼりが目立つ。 気賀を過ぎると、ついに浜名湖が見えてきた。 浜名湖は案外陸に食い込んでおり、湖岸ぎりぎりを進む。リゾートホテルやヨットの姿も見え、リゾート地という感じがする。 しばらく走ると巨大な高速道路が寄り添ってきた。 東名高速の浜名湖パーキングがこの辺りにある。浜名湖とは何度かついたり離れたりを繰り返し、 浜名湖から離れたところで新所原に着いた。


天竜浜名湖鉄道の車両は、更新されたばかりで真新しかった。


広い構内に中心駅としての貫禄が感じられる天竜二俣駅。


天竜二俣駅で見かけたトロッコ列車。


古い気動車の側面を切り取ってトロッコ風にしているようだ。

新所原11:51発〜豊橋12:02着

豊橋12:07発〜岡崎12:28着

 新所原駅のJRの駅舎の脇に、天竜浜名湖鉄道の乗り場がある。 元は1つの駅で、豊橋駅への乗り入れも行っていたが、今は完全に分離されやや不便になった。 豊橋までは普通列車でわずか10分で着く。
 豊橋からは快速に乗車し、岡崎へ。時折三河湾を見ながら快走し、岡崎へ。 岡崎での愛知環状線との接続は悪く、30分近くたっぷりと待たされた後、 次の列車に乗る。


ログハウス風の天竜浜名湖鉄道新所原駅。JR駅に隣接している。

岡崎12:57発〜高蔵寺14:03着 愛知環状鉄道

 今度の高蔵寺行きは、ぴかぴかの新車だった。 翌年に控えた愛知万博に向けて投入された313系の兄弟車である。
 岡崎を出て、しばらく市街地を進む。中岡崎で名鉄と交差し、北上する。 矢作川を渡り、家が少なくなってきたところで北野桝塚に着く。 ここはこの鉄道の車庫があるところで、新旧の車両が広いヤードに留置されている。その後は、高速道路など殺風景な光景が続く。 線路は単線だが、複線分の線路を敷くスペースが全線に渡って確保されている。
 さらに走ると、トヨタの関連工場が次々と現れた。 トヨタの本拠地である豊田市に入ったようだ。 新上挙母で名鉄豊田線の高架をくぐり、新豊田駅へ。駅前には大きなデパートなどもあり、 企業城下町として繁栄を極めていることが分かる。
 豊田市を過ぎると、再び田舎びた光景に戻る。時折新興住宅街や大学のキャンパスなどが見える以外は、 雑木林や産廃処分場、ゴルフ場が入り混じる丘陵地帯が続く。 東京で言えば武蔵野線の車窓に近い。
 やがて、万博の会場となる八草に着いた。今は駅周辺には何もないが、 万博に向けて駅の大改造中であった。視察のためか、県のお役人も乗車してきた。 ここから先は、万博対策か複線化工事が行われていた。 瀬戸市で名鉄瀬戸線と接続し、トンネルで山を越えると高蔵寺に着く。 高蔵寺駅のホームは、中央線のホームに挟まれた妙な位置にあった。


愛知環状鉄道には、JR東海313系の色違いバージョンの車両が投入されている。

高蔵寺14:04発〜勝川14:13着

 高蔵寺から勝川まで、中央線で移動する。この区間に乗車していると、 複線の線路が引ける幅の空き地が、ずっと線路に寄り添っていることが分かる。 これまで乗ってきた愛知環状鉄道と、これから乗る東海交通事業の線路は、もともと国鉄時代、一体の路線として計画されていた。 主に貨物列車を通すための路線として建設が進んでいたが、国鉄解体の煽りを受けて頓挫し、 高蔵寺〜勝川間は結局開業することなく空き地は無為に放置されている。 そんな空き地を見ながら勝川に着く。

勝川14:31発〜枇杷島14:47着 東海交通事業

 勝川からは東海交通事業城北線に乗る。が、JR勝川駅の付近をいくらうろついても城北線には乗れない。 城北線のホームは、JRの線路沿いに300mも歩いた所にあるからだ。 以前は曲がりなりにも2つの駅をつなぐ通路(通路といっても線路際の空き地を柵で区切っただけのものだが) があったが、JRの高架化工事の影響で それも取り壊され、普通の公道を歩いて乗り換えねばならない。
 そんな訳で、暑い中住宅街の路地をえっちらおっちらと歩く。5分ほどで、ぷっつりと途切れた 高架橋が見えた。高架橋の脇に細い階段が設置されており、それを登ると車両の留置線がある。 線路沿いにしばらく歩くと、ようやくホームに到達する。 高架線上に設けられた仮駅のようなホームだ。これだけ不便な位置にあって客から文句の一つも出ないのかと思ったが、 列車に乗車してみて分かった。そもそも乗客が少ないのだ。 不便だから客が少ないのか、客が少ないから不便なまま放置しているのか知らないが、 ともかく列車には先客が1人しか乗っていなかった。
 勝川を発車すると、複線の立派な高架線の上を、高速道路と寄り添うように進む。 なかなか近代的な施設だ。それなのに、走っている列車はローカル線並みの単行気動車というギャップが何ともいえない。 列車は高架線上の殺風景なホームに停まっては、 わずかな客を乗せて発車する。周囲は名古屋市の近郊であり、決して沿線人口が少ないわけではない。 それでもこの閑散ぶりというのが、余計に物悲しさを感じさせる。 なんだか沿線住民から無視されているというか、そんな感じがした。
 見晴らしのいい高架線から名古屋の町を眺めながら進むと、やがて高速道路から離れ、 名鉄線をまたぐ。名鉄線と接続駅が無いというのも痛いところだ。 やがて東海道線の貨物線と合流し、名古屋の一つとなりの枇杷島駅に着いた。


勝川駅手前でぷっつり途絶えた高架線の上に駅がある。


階段を上った先にも、細長い通路が続く。


東海交通事業には、JR東海キハ11の同型車が走る。

枇杷島14:54発〜岐阜15:15着

 枇杷島駅は名古屋の隣ながら静かな駅だ。大阪の隣の塚本や、新宿の隣の南新宿(小田急)のようなものか。
 普通列車に乗り、岐阜へ向かう。ロングシートの211系だ。 この区間は快速で一気に通過してしまうのが常なので、かえって新鮮だ。

岐阜15:18発〜大垣15:29着

 普通列車は岐阜どまりなので、岐阜から快速に乗り換える。 90年代は普通列車は大垣まで走り、快速は途中の西岐阜や穂積を通過していたが、 運転形態が改められ今の形となった。10分ほどで大垣に着く。

大垣16:08発〜樽見17:15着 樽見鉄道

 大垣というと、関が原・米原方面と名古屋方面との乗換駅、 そしてムーンライトながらの始発駅というイメージがあるが、2つの私鉄が乗り入れるターミナルでもある。 1つは近鉄揖斐線、もう1つは第三セクターの樽見鉄道だ。 この線は旧国鉄樽見線を転換したものだ。いかんせん終着駅の樽見自体が無名なので、 全国の三セク線のなかでも一際地味な線だ。
 一両編成の古びたディーゼルカーに乗る。 転換時に導入したと思われる軽快気動車の最初期車で、中はロングシートだ。 大垣駅を発車し、しばらくは東海道線と併走する。最初の駅は東大垣で、屋根も無くホームが一本あるだけの何とも簡素な駅だ。 この駅は東海道線の車窓からよく見え、前を通るたびに気になっていた駅だが、 目の前を幹線の電車がびゅんびゅん通過していくだけに余計に哀愁が漂う。
 東大垣を出て、揖斐川を長い鉄橋で渡る。しばらく田園と住宅の入り混じる平野を走り、 本巣に着く。ここは本巣町の中心で、鉄道の車庫もある。 大垣を出た時点でロングシートを軽く埋めるぐらいいた乗客はここまでで大分減り、軽くなって発車する。
 本巣を出ると、平野から一転して根尾川の渓流沿いに走る。途中、谷汲口という駅がある。 名鉄谷汲線が廃止になり、有名な谷汲山への最寄り駅となっているこの駅だが、 谷汲山へは歩いていけないほど遠く、観光地の感じはしない。
 しばらく走り、神海に着く。この駅は以前美濃神海といい、国鉄時代はこの駅が終着駅だった。 つまり、国鉄時代は樽見線と銘打ちながら樽見まで列車は行っていなかったということになる。 神海からは線路が直線的になり、トンネルが増える。 作られたのが比較的新しいからであろう。時折鉄橋で根尾川を渡る時、きれいな渓流がよく見える。 大垣から一時間ちょっとで終点の樽見に着いた。


初期のレールバスのため、かなり老朽化している樽見鉄道の車両。

樽見17:38発〜大垣18:44着 樽見鉄道

 樽見駅前にはこじんまりした駅舎が建っていた。 また、駅の規模に比べ駅前広場が随分広くて立派な印象を受けた。巨大な謎のオブジェも目立つ。
 しばらく待ち、折り返しの列車に乗る。終点の大垣に着く頃には随分日が暮れてきた。


終着駅にしては明るくさっぱりした印象の樽見駅前。

大垣19:11発〜米原19:48着

米原19:54発〜大阪21:14着

 大垣からはまっすぐ大阪を目指す。まずはいつも通り、普通列車で関が原を越えて米原へ。 米原からは新快速で一気に大阪へ。米原からわずか1時間20分、大垣からでも2時間強で到着した。 やはり寄り道をした分、朝一番に東京を出たというのに大阪に着くともうすっかり夜であった。


夜の米原駅に到着した117系。

私鉄乗りつぶし状況

新規乗車キロ数

会社名路線名乗車区間キロ数
天竜浜名湖鉄道天竜浜名湖線掛川〜新所原67.7
愛知環状鉄道愛知環状鉄道線岡崎〜高蔵寺45.3
東海交通事業城北線勝川〜枇杷島11.2
樽見鉄道樽見線大垣〜樽見34.5
合計158.7