2013/5/10
青森16:54発〜函館18:53着 スーパー白鳥27号
約4年ぶりに青森駅へとやってきた。駅の様子は、新幹線開業後も特に変わりはない。
まずは青森から「スーパー白鳥」に乗り、函館を目指す。列車は8連に増車されていたが、この日は特に何もない平日だったので、車内は空いている。
北海道が描かれたドアを通り過ぎると、自然と気分が高揚してくる。
青森駅を発車すると、青い森鉄道や奥羽本線と分かれて、津軽線を北へと走る。しばらくすると青森運転所の脇を通り過ぎるが、
ここには首都圏をお払い箱になった651系や211系が何本も留置されていた。
津軽線は単線だが、北海道へ向かう特急や貨物列車、それにローカル列車も行き交い、列車密度は濃い。
そのため、交換可能な駅では必ずと言っていいほど行き違いがある。線路のすぐ脇まで家が迫るローカル線然とした車窓とは対照的だ。
田畑や民家が並ぶのんびりした車窓を眺めながらしばらく進むと、右手に海が迫ってきた。
海の向こうには下北半島が見える。海を眺めているうち、列車は蟹田に到着。ここで乗務員がJR北海道の人に交代する。
ちっぽけなホームが一本あるだけの中小国を過ぎると、新中小国信号場に差し掛かる。ここからは海峡線に入る。
信号場を抜けると、目の前には巨大な高架橋が見えてきた。
建設中の北海道新幹線である。列車は、真新しい高架橋に取り込まれるような形で合流する。
新幹線が開通すると、今走っている線路は主に貨物列車が使用することになる。
線路規格の低い津軽線から、新幹線規格の海峡線に入ると列車は人が変わったかのように速度を上げた。
途中の津軽今別では、新幹線関連の工事が行われていた。この駅は新幹線開業後、奥津軽という新幹線停車駅になる予定だ。
しかし周囲はほぼ無人地帯で、こんなところに停める意味はあるのかと思ってしまう。ある意味、安中榛名よりも「すごい」駅になりそうだ。
あっという間に青函トンネルに入ると、トンネルを140km/hの高速で飛ばす。もっとも、車窓が見えず、線路も継ぎ目のないロングレールを使っているので、
速いかどうかは分からない。また、最深部を知らせる緑色のランプもなくなっていた。
青函トンネルを抜け、何やら工事が行われている知内を過ぎると、木古内に到着する。
ここは新幹線の駅が併設される予定で、駅の建設工事が進んでいた。
木古内を出てしばらく、左手には真新しい高架橋が並行する。北海道新幹線の工事はかなり進んでいるようだ。
一方右手には海が見える。列車はかなり長い間、海岸線ぎりぎりを地形に忠実に曲がりくねりながら進んでいく。
そういえば、これまで何度も青函トンネルを通過しているにもかかわらず、明るいうちに江差線区間を通過するのは初めてだ。
そのため江差線は、函館にたどり着く前のかったるい区間、という印象しかなかったが、明るいうちに乗ってみるとなかなか景色は良い。
北海道新幹線が開業すると、この区間にはローカル列車しか走らなくなってしまう。手軽に景色を味わうならば今のうちだ。
海を眺めながら走るうち、海の向こうに函館の市街が見えてきた。
本線がトンネルの外、待避線がトンネルの中にあるという変わった構造の信号所でしばらく停止した後、
上磯を通過すると函館まであと少しだ。五稜郭に停車した後、頭端式の函館駅に滑り込んだのは19時前のことだった。
日の長い時期とはいえ、もう日が暮れかかっている。
函館駅前19:00発〜谷地頭19:12着 函館市交通局
谷地頭19:15発〜十字街19:23着 函館市交通局
函館では3時間ほど時間がある。この間に函館市電の未乗区間を乗りつぶしたい。
15年近く前、函館空港に行く際に函館駅前〜湯の川間は乗りつぶしたので、残る函館駅前〜函館どつく前・谷地頭間が未乗である。
まずは駅の観光案内所に行き、一日乗車券を買う。「10時過ぎが終電ですけど、いいですか?」と至極当然な質問をされた。
確かにこんな時間に買う人は普通まずいないだろう。
駅前の電停に向かうと、ちょうど谷地頭行の電車がやってきたので、乗る。VVVF制御の割と新しい車両が来た。
ほとんどの乗客は函館駅前で降りてしまい、駅前から乗る客を含めても谷地頭方面へ向かう乗客はそれほど多くない。
駅前を出ると、片側2車線の道路をまっすぐに進んでいく。車の数は少なく、あっという間に函館どつく前方面への分岐点である十字街電停に着く。
十字街を出ると、周囲はビル街から住宅地へと変わる。家々の敷地は北海道らしく広々としている。
このあたりは函館山の山麓で、起伏が多い。途中の青柳町電停あたりは周囲より少し高くなっており、ちょっとした峠越えのようになっていた。
また、谷地頭の手前には函館公園という広い公園があり、ここは桜の名所らしい。おりしも、函館は桜が開花し始めた時期であり、
公園には提灯がぶら下げられているのがちらりと見えた。ただ、電車で花見に行く人はいなさそうだった。
やがて、終点の谷地頭に到着。住宅地の真ん中にある静かな駅だった。すぐに折り返して十字街に戻る。
十字街19:23発〜函館どつく前19:30着 函館市交通局
十字街では到着と同時に函館どつく前行きの電車が来るはずだが、函館どつく前行きは少し遅れていたため、無事乗り継ぐことができた。
一連の乗りつぶしの最後となる電車である。今度もVVVF制御の車両だった。
十字街を発車すると、左手にはハリストス正教会などの洋館がある元町の街並みが広がる。
そしてその向こうには、はるかに見上げるように函館山の展望台が見える。函館随一の観光エリアだ。
そのエリアを通り過ぎると、周囲は再び住宅地となる。十字街から3駅で、終点の函館どつく前に到着した。
電車を降りて周囲を見回してみる。駅は住宅地と港湾地帯の境目にあって、目の前には函館どつくの工場が広がっている。
しかし開いている店はなく、駅に降り立った乗客たちもあっという間にいなくなってしまい、静寂の中ぽつんと一人だけ取り残されてしまった。
しばらく周囲を見回していたが、電車は遅れていたためすぐに折り返してしまうようだった。
これで日本の私鉄を乗りつぶしたんだ、という感慨に浸る間もなく折り返しの電車に乗り込んだ。
函館どつく前19:34発〜湯の川20:19着 函館市交通局
湯の川20:28発〜函館駅前20:59着 函館市交通局
乗ってきた電車で、函館駅前方面へと戻る。途中の駅から高校生のグループが乗ってきて、にぎやかな状態で函館駅前に到着。
函館から湯の川まではすでに乗車済みなのだが、いかんせん乗ったのが15年も前なので車窓の記憶が全くない。
そこで、湯の川までの区間も一応乗車することにした。
函館駅前を出ると、しばらくは住宅地を進む。やがて、沿線に飲食店や小売店が目立つようになると五稜郭公園前に着く。
JRの駅と街の中心部が大きく離れている都市というのは結構あるのだが、函館もその例に該当するようで、
本来の中心部は五稜郭のあたりであるようだ。五稜郭公園前を過ぎると、再び住宅地を進む。
沿線に商店や温泉地にありがちなスナックなどが目立つようになると、間もなく湯の川に到着する。
湯の川では10分ほど待って、函館駅前に折り返す。
函館21:48発〜上野9:38着 北斗星
駅前の店でこの後の飲み物などを購入した後、改札口を通ってホームへ向かう。
すぐに、DD51に牽引された「北斗星」が入線してきた。10年前と同じく、函館からの途中乗車である。
車内の客たちは浴衣に着替え、もう寝ている人もいる。
先頭部での機関車連結作業を眺めたのち、これまた10年前と同じくB寝台「ソロ」に乗り込む。
個室内はだいぶ古びてきているものの、オーディオもついていて居住性はなかなかのものだ。
まだ夕食を食べていないので、車掌から個室の鍵を受け取るとそそくさと食堂車へ向かう。
かつては、長距離特急列車にはたいてい食堂車が連結されていた。
しかし、食堂車の連結されている定期列車は「北斗星」のみである。
北斗星の食堂車は予約制のコース料理がメインだが、この時間帯は「パブタイム」として予約なしでも利用できる。
その食堂車に行ってみると、先客は誰もいなかった。2人いるパーサーも手持無沙汰そうだ。
適当な座席に座り、カレーライスとピザを注文する。料理を待っている間に客が来たが、シャワーカードを求める客だった。
食堂車は売店も兼ねていて、シャワーカードや飲み物を求めに来る人が時々やってきた。
そうしているうちに料理が来た。味はいい意味で値段相応だと感じた。
今や列車の中で温かい料理が食べられること自体貴重である。噛みしめるように頂いた。
食べているうちに食堂車にもようやく客が来た。飲み物を注文した夫婦と、私と同じく食事に来た初老の男性の計3人である。
食べながら外を見ると、海の向こうにかすかに光が見える。函館の市街のようだ。函館山の展望台と思しき光も見える。
食事を終えると、列車はもう青函トンネルに入っていた。料金を払い、部屋に戻る。
食堂車と個室の間にはシャワールームとロビーカーがある。既に22時半と遅いためか、どちらも人の気配はなかった。
部屋に戻り、外がよく見えるように電気を消して車窓を眺める。先程乗った「スーパー白鳥」に比べて列車の速度がかなり遅いので、
トンネルを抜けるのに随分時間がかかった。海峡線区間を抜け、列車は先程通った新中小国信号所でしばらく停車する。
ここで下り「はまなす」とすれ違った。真っ暗な中津軽線を南下し、青森に到着する。ここでは再び方向が変わるため、
機関車を付け替えているはずだが、数分の停車であっけなく発車する。
青森を過ぎると青い森鉄道に入る。車窓はJR時代と変わらないが、駅名標が独自仕様となっているのが目につく。
だが、いつまでも車窓を見ているときりがないので、このあたりで就寝することにする。就寝準備のため洗面所、トイレを使用したが、
共に(おそらく「北斗星」デビュー時に)リニューアルされているものの、今となってはだいぶくたびれた感がある。
先程の食堂車もパッと見綺麗だが、天井のクロスがはがれているのをビニールテープで止めてあったりして、老朽化は否めない。
種車は昭和40年代製と古いことから、おそらく北海道新幹線開業の頃には今の車両は退役するのではないかと個人的には予想している。
その暁には、「カシオペア」の後継に当たる新型車両をぜひ導入してもらいたいものだ。
翌朝、目を覚ますと列車は仙台に停車していた。仙台到着は4時台とさすがに早すぎるのでもう一眠りし、郡山を過ぎたあたりで起き出した。
折角の機会なので、食堂車で朝食も食べておこうと思い、黒磯を過ぎたあたりで食堂車に向かう。
すると、意外にも車内はほぼ満席であった。昨日のパブタイムの閑散ぶりとは大違いである。
思うに、北海道から帰る観光客は、道内で美味いものを食べてから乗る人が多いため、わざわざ食堂車に行く人が少ないのではないだろうか。
東京発だともうちょっと利用客が多いのかもしれない。
朝食は和定食と洋定食から選べるが、食堂車に入ったのが割と遅かったため洋定食はもう品切れだった。
そんな訳で和定食を食べたが、旅館の朝ご飯をコンパクトにした感じでおかずが綺麗に盛り付けられており、なかなかよかった。
おかずとご飯、味噌汁にコーヒーとデザートがつき、値段に見合った内容だと思う。
走行中、味噌汁やコーヒーなどの汁物がこぼれないかと不安だったが、意外と大丈夫だった。
ただ、宇都宮停車時にガクンと大きく揺れ、コーヒーが少しこぼれた。
食事を終え、最後ののんびりした時間を楽しんでいあると、大宮に着く。
大宮を過ぎると、だんだんと雲行きが怪しくなってきた。荒川を越える頃には雨が降り出した。
この後、上野動物園に行って最後に残ったモノレールを乗りつぶしてしまおうかと考えていたが、天気が悪いので今度にすることにしようと思う。
9時38分、定刻通りに上野駅に到着。先頭の機関車を一応カメラで写した後、通路を通って山手線のホームに上がると、
いつもの見慣れた東京の風景が広がっていた。
函館まで「北斗星」を牽引してきたDD51はここでお役御免となる。
B個室寝台「ソロ」は広さも十分で機能的だが、だいぶ年季が入っている。
個室のルームキーには、「北斗星」ロゴの入った革製のキーホルダーが付く。
2013/6/15
上野動物園東園〜上野動物園西園
そして一か月後、再び上野へと出かけた。
観光客でにぎわう上野公園を抜け、入場料を払って動物園に入る。ここに来るのは初めてだ。
子供たちが歩き回る中を抜け、モノレールの東園駅へ。子連れを中心に結構混んでいて、一便待たねばならないようだ。
150円の乗車券を買い、列に並ぶ。ぱっと見は遊園地のアトラクションにしか見えないこのモノレールだが、
看板等に「東京都交通局」の文字があって、そのことを話題にしている人もいた。
並んでいる間に、モノレールの構造を観察する。
モノレールの桁は、脇から延びたアーム式の柱で支えられていて、桁の下には車体への給電用の電線が敷設されている。
レールは下からだと見えないが、桁の上にあるようで、車体側面から延びたアームでぶら下がる形になる。
国内の他路線では見ることのない独特の構造だ。
しばらく待つと、モノレールがやってきた。車体には動物のイラストが描かれ、
車内は原色のプラスチック椅子が並んでいる。重量の制約が厳しいのか、
定員を越えて客が乗らないよう人数チェックをかなり厳密に行っているようで、立って乗る人はいない。
駅を発車すると、まずは森の中を進む。森を抜けると周りの標高が一気に下がって、公道の上をまたぐ。
ほどなく不忍池が見えてくると、右にカーブして西園駅に到着した。
一人で乗っているような客は他にはいないので、そそくさとモノレールを後にする。
西園と東園の間は通路でつながっており、別にこのモノレールでなければ移動できないということはない。
実際に歩いてみると、大人の足だと3分ほどで移動できてしまった。並ぶ時間も考えると、歩いたほうがよっぽど早い。
鉄道要覧にも載っているこのモノレールだが、このように交通機関としての価値ははっきり言って全くないといっていい。
しかし、私にはこのモノレールを馬鹿にする資格はない。これまで散々、大金をはたいて乗らずもがなの鉄道に乗り続けてきたのだから。
これで、未乗の鉄道を求めて全国をさまよう旅は終わった。一応、ケーブルカーは未乗で残っているが、
これはさすがにもう乗りにいかないと思う。とはいえ、旅すること自体が終わったわけではない。
これからは鉄道の乗りつぶしに縛られるのではなく、バスやクルマを使った旅、あるいは普通の観光旅行など、いろんな旅をしてみたいと思う。