中国四国私鉄紀行(その1)

 2012年の11月、関西に帰る用事ができた。ただ帰るだけではつまらないので、 ついでに広島・岡山・松山に残る未乗の私鉄を乗りつぶすプランを立てた。 観光シーズンのため松山のホテルがことごとく満室であるなどのハプニングもあったが、 どうにか切符等も手配して準備を整えていた。しかし、直前に風邪を引いてしまい、計画はあえなくご破算となった。
 このままでは悔しいので、冬休みを使って先に述べた三県と高知を訪問することにした。 日程の都合で2日に分けて日帰りせねばならず、四国編と中国編に分けて訪れることになったが、 久々に朝から晩まで乗りまくるハードな鉄道旅行をすることになった。

目次

2012/12/27

 この日は四国に残る未乗路線である土佐電鉄と伊予鉄道を乗りつぶしに出かけた。 こう書くと簡単だが、四国は東京から遠く、新幹線や飛行機で日帰りするだけでは時間が足りず、全線を乗りつぶすことはできない。 そこで、行きは新幹線と夜行バスを乗り継いで早朝に高知に入らざるを得なかった。

■ 三宮バスターミナル23:44発〜高知駅前6:00着 西日本JRバス

 新幹線と地下鉄を乗り継ぎ、神戸三宮へとやってきた。 忘年会帰りの酔客がJRや私鉄各線の乗り場へ急ぐのを尻目に、三宮のバスターミナルへ急ぐ。 バスターミナルは「ミント神戸」という、震災後にできた新しいビルの一階にある。 ここに来るのは初めてだったのだが、JRの改札から少し歩くとあっさりたどり着いた。
 しばらく待つと、高知行きのバスが2台でやってきた。高知行きというややマイナーな系統ながらバスは新しく、 椅子も枕がついていたりしてなかなか立派だ。車内はほぼ満席で、年末の帰省ラッシュがもう始まりつつあることを実感する。
 定刻に三宮を出たバスはフラワーロードを南下し、生田川インターから阪神高速に入る。 月見山で山側に90度カーブし、どこをどう走っているか分からないほど複雑な垂水ジャンクションを通過する。 短いトンネルを抜けると、巨大な吊橋を進み始める。明石海峡大橋だ。 橋の上からは、遠くの方に大阪湾岸沿いの工業地帯の明かりが見える。15年ほど前の高校時代、 今はなき大阪〜高知間の夜行フェリーの甲板から見た夜景を思い出した。高知市を訪問するのはその時以来である。
 明石海峡大橋を抜けた所で眠りにつく。目をさますと、バスはサービスエリアに停車していた。 高知からほど近い南国SAである。神戸から高知まではまともに走れば4時間も掛からずに着いてしまうため、 途中長時間停車して時間調整しているのだろう。結局、南国SAには1時間近く停車していたと思う。
 5時半ごろ、バスはおもむろに動き出した。程なく高速を出て、5時50分頃に高知駅前に到着した。 結局10分ほど早着したことになる。


地下鉄に乗って、酔客の目立つ夜の三宮へ。

■ 高知6:06発〜伊野6:20着 あしずり51号

 高知駅はしばらく来ないうちに立派な高架駅になっていた。その一階にある売店で朝食を購入後、 中村方面に向かう特急に乗り込む。列車は気動車ながらなかなか鋭い走りを見せてくれた。 ああ、四国に来たんだな、と思う。
 普通列車並みに頻繁に停車しつつ、15分ほどで伊野に到着した。伊野駅は早朝は無人らしく、 車掌が乗車券を回収していった。

■ 伊野6:31発〜文殊通7:25着 土佐電鉄

 東京を出てから10時間近くを掛けてようやく伊野にたどり着いた。 ここからはいよいよ土佐電鉄の乗りつぶしにかかろうと思う。
 土佐電鉄は、高知市中心部のはりまや橋を基点に十字に路線を延ばしている。 そのうち、東西方面に延びる線が極端に長く、両端の伊野駅と後免町駅はいずれも高知市をはみ出している。 土佐電鉄は全線が路面電車スタイルの車両で運転されており、駅の数も多く時間がかかる。 そこで、両端の駅へのアクセスには並行するJRを使うことにした。
 伊野駅を出て、駅前の国道を渡ると伊野駅前電停がある。 しかし、土佐電鉄の起点はこれとは別の伊野電停である。そちらへ向かおうと周囲を見回すと、 わずか100mほど先に電停があるのを見つけた。これほど近ければ、どちらか片方だけあれば十分な気がするのだが、 これよりもっとすごい電停を後で見つけることになる。
 伊野電停には、木造の新しい駅舎がある。ひとしきり周囲を観察した後、停車中の電車に乗り込む。 乗客は私の他は一人だけだった。伊野を発車すると、電車は国道沿いを進む。 このあたりは道路とは別に専用の軌道敷が確保されている。線路は路面電車には珍しい単線だ。 それだけならいいのだが、行き違いの際には今や貴重となったタブレット交換を行っていた。 もちろん、途中駅に駅員などいないので、交換の際は電車の窓を開けて運転士同士が直接交換を行っていた。
 電車は山と山に挟まれた狭い平地を進んでいく。時間も時間だけに乗客はほとんどいないのだが、 電車は乗客のいない駅にいちいち停車することなく、あっさりと通過していく。 駅の数が多いので、そうでもしないとやっていられない気もする。 このあたりは元々乗客も少ないようで、日中は20分に一本しか電車が来ない。 また、途中にはちょっとした峠越えのような区間もあって、一般的な路面電車とのギャップの大きさに驚かされる。
 やがて、電車は朝倉駅前に到着。ここからは併用軌道となって、2車線道路の一車線を占領する形で進んでいく。 江ノ電の江ノ島駅付近の併用軌道と似た雰囲気だ。このあたりからはようやく乗客も増えてきて、 少しずつ車内の座席も埋まってきた。この辺の電停は安全地帯だけのものも多く、 また駅名票はその辺の電柱に貼り付けられているだけなので、知らない人だとぱっと見駅があるのかすら分からない。
 鴨部を出ると大きくカーブして鏡川を渡り、鏡川橋に着く。ここは市内からの電車の多くが折り返す駅で、 ここからは複線となって幅の広い大通りの真ん中を進む。ようやく路面電車らしくなってきた。
 この日は年末ながら平日だったのだが、乗客は思ったほど多くない。市中心部まで行っても、 車内に立ち客はほとんどいない。学校が休みだからというのもあるだろうが、並行する道路の車もそれほど多くない。 おそらく、普段からぎゅうぎゅう詰めの混雑にはならないのではないだろうか。
 県庁前電停付近からは、城山の上にある高知城の一部が見えた。高知の中心部を進み、はりまや橋に到着。 ここまででほとんどの乗客は降り、車内は閑散となった。がらがらのまま進み、この電車の終点の文殊通に到着。 伊野から後免町まで直通する電車は基本的になく、端から端まで乗りつぶすには途中どこかで乗り換えないといけない。


木製の味のある駅名看板を掲げた伊野電停。


まだ夜も空けきらぬ伊野電停で発車を待つ。


単線区間ではタブレットを使用するため、運転台横にはタブレット置き場がある。

■ 文殊通7:31発〜後免町7:53着 土佐電鉄

 文殊通電停は多くの電車が折り返す駅だが、ごく普通の住宅街にあり、特に見るべきものはない。 すぐにやってきた後免町駅行きに乗り、乗りつぶしを再開する。
 文殊通の少し前から線路は再び専用の軌道敷となり、以降複線のまま後免町まで続いている。 途中の車窓は住宅街ばかりであったが、ユニークだったのは清和学園前という電停だった。 この電停と隣の一条橋電停は、細い川を挟んで50mほどしか離れておらず、 何故わざわざこんな所に電停を作ったのかと思う。学校からの請願で作られた駅だというが、謎だ。
 やがて、電車は後免の市街に差し掛かる。後免西町からは再び併用軌道となり、終点の後免町に到着。 後免町の駅舎は表側がコンビニになっており、一見すると単なるコンビニにしか見えない。


土佐電鉄の車両は年季の入ったものがほとんどだ。後免駅にて。

■ 後免町7:58発〜後免西町8:00着 土佐電鉄

■ 後免8:09発〜高知8:17着 しまんと1号

 後免町電停はごめん・なはり線の後免町駅の目の前にあるが、ごめん・なはり線は本数が少なく、時間が合わないため、 JRの後免駅から高知に戻ることにする。 電車で後免西町に戻り、5分ほど歩くと後免駅に着く。直近の特急列車に乗り、高知駅に戻る。 土佐電鉄だと随分時間がかかったが、特急だと所要わずか8分であり、あっけない。


後免駅はごめん・なはり線の起点駅で、開業時に作られた大きなオブジェが置かれている。


特急列車に乗ること10分弱で、高知駅に戻ってきた。

■ 高知駅前8:23発〜桟橋通五丁目8:38着 土佐電鉄

 高知駅前の土佐電鉄乗り場から、残った南北方面の路線に乗る。 こちらは距離が短く、単純往復してもそれほど時間はかからない。 高知駅から南に延びる道路を淡々と走り、終点の桟橋通五丁目に到着。
 時間があるので電停の周辺を少し歩いてみる。桟橋通という駅名ながら、 海事事務所が一軒ある以外に港を思わせる建物はなかったが、 電停の裏の堤防を乗り越えるとプレジャーボートを係留する小さな波止場があった。 本来当たり前のことなのだろうが、街中なのに海の水がきれいなのが印象的だった。


駐輪場の横にそっけない感じで存在する桟橋通五丁目電停。


桟橋通五丁目の裏はこんな感じ。

■ 桟橋通五丁目8:48発〜はりまや橋8:58着 土佐電鉄

 桟橋通五丁目から折り返し、はりまや橋に戻る。時間があるので、高知の街を少し散策してみることにした。 はりまや橋周辺は商業施設が集積しているのだが、朝早いせいか店がほとんど開いておらず、閑散としていた。 次に、「がっかり名所」として名高いはりまや橋に行ってみた。 橋の地下にちょっとしたギャラリーがあったり、橋周辺の水路にイルミネーションが設けられるなど、 大きく期待しなければ少しは楽しめそうだ。


高知市の名所・はりまや橋。

■ 高知駅前10:20発〜川内インター12:12着 JR四国バス

 土佐電鉄を無事乗りつぶしたところで、高速バスに乗って次なる目的地である松山に向かう。 本来だと鉄道を使うべきなのだろうが、四国の高速道路が愛媛県の川之江をジャンクションとしているのに対し、 鉄道だと香川県の多度津を経由しなければならず、大回りだ。 また、昔は松山高知特急線といって、四国山地を一般道で横断する路線バスもあったのだが、 時間がかかりすぎるため随分前に廃止されてしまった。
 はりまや橋からゆっくり歩いて、高知駅に戻る。 改めて高架化された高知駅を眺めれみる。屋根は木材を筒状に張り上げたもので、 高架駅全体を覆うような形状となっている。また、駅前広場も広くなっており、 坂本龍馬ら高知の英雄の大きな像が並んでいた。
 駅で弁当を買い、ようやくやってきたバスに乗り込む。 バスはそれほど混んでおらず、窓側の席が軽く埋まる程度の混雑で発車する。 バスは高知市街を通り抜け、高知道に入る。行きは夜行だったので景色を見ていなかったが、 この道がなかなかすごかった。長大なトンネル、巨大な鉄橋をふんだんに用いており、 山がちな地形をものともせず直線的に進んでいく。 地形図に適当に書きなぐった線をそのまま道路にしてしまったのではないか、と思うほどだ。 (もちろん、実際には綿密な設計をしているのだろうが。) 吉野川の急峻な流れに沿って細々と進む土讃線とはえらい違いだな、と思った。
 バスはあっという間に瀬戸内海側の川之江に出て、あとは松山道を進んでいく。 この辺で夜行の疲れが出て少し眠ってしまったが、川内インターバス停に着く直前に目を覚まし、無事降りることができた。


高架化され見違えるようになったJR高知駅。


駅の屋根は木造の独特の形状をしている。


駅前広場には高知の英雄である坂本龍馬、中岡慎太郎、武市半平太の像が並ぶ。

■ 川上下の町12:36発〜横河原12:41着 伊予鉄道バス

 川内インターは、松山道の松山インターの一つ前のインターチェンジである。 何故こんな所で降りたかというと、これから乗る伊予鉄道横河原線の終点・横河原に近いからだ。 近いといっても2km以上離れていて、移動は結構面倒なのだが、バスで松山市内に入った後、 また電車で戻ってくるよりははるかに時間を節約できる。
 川内インターバス停で降りた客は私のほかに2人いたが、いずれも迎えの車でどこかへといってしまった。 横河原まで直接歩いてもいいが、結構距離があるので面倒だ。 川内インターは国道11号線に面しているのだが、近くの旧道にバスが走っていて、 これが横河原を経由する。そこで、バスで横河原に向かうことにした。
 10分程歩いて川上下の町というバス停を見つけ、バスを待つ。 田舎のバスは普通そうそう遅れることはないのだが、このバスはなぜか5分ほど遅れてやってきた。 しかし、バスに乗ってしまうとあとは早く、あっという間に横河原に到着。

■ 横河原12:59発〜高浜13:51着 伊予鉄道

 バス停から細い道を少し歩くと、伊予鉄道の横河原駅に出る。 この駅舎がまるで時が止まったかのように古びていて、いい味を出している。 委託駅員ながら駅員さんがちゃんといるのもいい。 ただ、車両の方は元京王井の頭線の3000系であり、まるで東京に戻ってきたかのような気分になる。 よく見ると、車体には「KEIO」のロゴを剥がした跡まで残っている。
 これから乗る伊予鉄道の路線は、郊外電車と市内電車(軌道線)に大別でき、 そのうち郊外電車の方は松山市を起点に3路線が放射状に延びている。 その一つである横河原線をこれから乗りつぶす。車両は中古ながら、、 車内がリフレッシュされている他、足回りもVVVFインバータに改造されていて、 地方私鉄にしてはなかなか先進的だ。他にも伊予鉄道が独自に導入した新型車両も存在し、途中で何度かすれ違った。
 横河原を出た電車は、松山市の郊外の住宅地を淡々と進んでいく。 途中の乗客は割と多く、松山市に着く頃にはほとんどの座席は埋まった。 15分おきに走らせてこの状況なのだから、なかなか盛況だ。また、横河原線の交換駅ではいずれも電車は右側に入線した。 他の線ではそんなことはなかったので、なぜ横河原線だけがそうなのか謎だ。
 やがて、松山市に到着。伊予鉄道のターミナルで駅直結のデパートもあり、繁華街の大街道にも近い。 ここでほとんどの乗客が下車した。しかし、横河原線の電車はほとんどが高浜線と直通運転をしているため、 ここから高浜まで引き続き走り続ける。私も、高浜までそのまま乗っていくことにする。
 高浜線は、松山の外港である三津や高浜へと向かう路線だ。夏目漱石の「坊っちゃん」にも登場する由緒ある路線である。 この高浜線は他の路線と違ってほぼ全線が複線であり、伊予鉄道では唯一と思われる高架区間がある。 また、架線電圧が他線に比べて若干低い(600V)。そのため、 伊予鉄道の電車の運転席には「架線電圧注意」のステッカーが貼ってある。
 松山市を出た電車は、市中心部の幹線道路をいくつも横切りながら進んでいく。 大手町駅では、軌道線とのダイヤモンドクロッシング(直角交差)も見られた。 次の古町は軌道線との乗換駅だが、ここは車両基地にもなっており、 大ぶりな郊外電車と路面電車が入り混じりながら留置される妙な光景が見られた。 その後は再び住宅地を進んでいく。三津を過ぎると、目の前に瀬戸内海が広がってきた。 ここは伊予鉄道でも随一の絶景だろう。やがて、電車は終点の高浜に到着。


趣のある横河原の駅舎。


横河原の駅構内は、地方私鉄の終点駅らしい風情のあるもの。


元京王井の頭線3000系は今や伊予鉄道の主力。


駅の屋根を古い材木が支えていた。

■ 高浜13:58発〜松山市14:19着 伊予鉄道

■ 松山市14:30発〜郡中港14:54着 伊予鉄道

 高浜駅もまた、昔ながらの味のある駅舎が健在だった。駅前からは松山観光港への連絡バスが出ているほか、 駅の目の前の桟橋からは瀬戸内に浮かぶ離島へのフェリーも出ている。
 高浜から松山市に戻り、次は郡中線に乗る。 郡中線は他の路線との直通運転はなく、松山市との間を行ったり来たりしている。今度の車両も3000系だった。
 松山市を発車した電車は、またも住宅地を淡々と進んでいく。ずっと似たような光景が続く上、 昨晩からの疲れも出てきて、けだるい時間を過ごす。松山市から20分余りで、終点の郡中港に到着。 郡中港の駅舎は横河原や高浜とは違って、比較的新しくそっけないものだった。


高浜駅もまた歴史の重みを感じさせる駅舎が健在。


高浜駅を出ると、目の前にフェリー乗り場が。


駅の名前を記した看板も古めかしい。


群中港駅とJR伊予市駅は目と鼻の先にある。

■ 伊予市15:00発〜松山15:15着

 郡中港駅は予讃線の伊予市駅と道路を挟んで目の前に位置しており、同じ駅名を名乗っても違和感がないほど近い。 両駅がこんなに近いとは、私もこの旅行の下調べをするまで全く知らなかった。 伊予鉄道にもそろそろ乗り飽きてきたので、気分を変える意味でも帰りはJRで松山に戻ろうと思う。
 伊予市駅のホームに向かうと、単行の電車が止まっていた。てっきり気動車が来るものと思っていたが、 よくよく考えると伊予市は予讃線の電化区間の西端なので、電車が来ても全く不思議はないのだった。
 伊予市を出た電車は、周囲に田んぼの目立つ線路を100km/hを伺う高速で駆け抜けていく。 途中の駅から乗ってくる人はほとんどいない。 伊予鉄道が昔からの街道沿いに敷かれたのに対し、 予讃線はそんなものにはお構いなしに敷かれたため、沿線人口にこうも違いがあるのだろう。 結局、伊予市からわずか15分で松山に到着。伊予鉄道に比べてずいぶん速い。


なかなかパワフルな走りを見せたJR四国7000系。

■ 松山駅前15:27発〜上一万15:45着 伊予鉄道

 伊予鉄道の郊外電車を乗りつぶし、残るは市内電車のみとなった。 伊予鉄の市内電車はやや複雑な路線網を形成している。 まず、松山市駅前を起点に市内をぐるっと一周する環状線があり、これを一周する系統が1系統となっている。 この環状線から道後温泉に至る枝線があり、環状線と直通している。 また、環状線の円の真ん中を横切る形で短絡する本町線という路線があるのだが、これがなぜか30分に1本と冷遇されている。 これにうまく乗らないと大幅に時間を大幅にロスしてしまうので、要注意だ。
 まずは、松山駅前から環状線を時計回りに回る路線に乗る。 駅前を出てしばらくは普通の路面電車なのだが、次の電停からいきなり単線となり、軌道も専用の軌道敷となる。 すぐに、先程高浜線で通った古町駅に到着。ここでは列車交換も行われる。 路面電車は遅延も多いので、ダイヤが乱れたらどうするのだろうと思う。
 その後は、狭苦しい住宅密集地を単線で進む。家屋の軒をかすめるかのようだ。 途中、道路と交差する際は普通の鉄道と同様に踏切がある。先程までこちらがは路面を走る立場だったはずなのだが、目まぐるしい。 しばらく走ると再び路面に出て、上一万に到着。


伊予鉄道市内線の標準的な塗色は朱色とクリーム色。

■ 上一万15:48発〜道後温泉15:53着 伊予鉄道

 上一万からは、松山を代表する観光地である道後温泉に向かう支線が出ている。これに乗り換えて道後温泉へ向かう。 道後温泉に向かう途中、観光列車である「坊っちゃん列車」とすれ違った。 今回は時間が合わず乗れなかったが、小型のSLと客車を模した車両で、道後温泉を中心に市内線を走っている。
 5分ほどで道後温泉に到着。観光地の玄関口らしく、駅舎はレトロ調だ。 すぐに折り返してもよいが、道後温泉に来るのは初めてだし、これまでの疲れを少しでも癒したいので、 温泉に浸かってみようと思う。
 駅前の商店街を少し歩くと、有名な道後温泉の本館に出る。 なかなか年季の入った建物だ。ここでは単に入浴することもできるが、相応の入場料を払えば館内の休憩所で茶菓が振舞われる。 休憩料金は格式に応じて何段階かに分かれているが、今回は一番安いところにした。
 休憩所でタオルを借り、まずは風呂に入る。お湯は無色透明であった。 浴室も相当古びているが汚らしい感じはしなかった。浴槽の深さがかなりあり、底に尻をつけると顔まで沈んでしまいそうなほどだった。 仕方ないので中腰の体制で温まる。
 風呂というのは5分も入っていれば体が温まるし、いくら道後温泉とはいえ長く浸かっていても仕方ないので、 さっさと服を着て休憩所に戻ると、係の人に「随分早いんですね」と呆れられてしまった。 時間が無くなってきたので、出されたお茶と煎餅を急いで食べ、駅へと戻る。


道後温泉にやってきた車両。先ほどの車両とは微妙な形態差がある。


道後温泉駅の駅舎は新しいながらもレトロ調。


道後温泉の象徴ともいえる本館。


本館の中の休憩所のようなところ。ここも何ともレトロだ。


支払った入場料に応じて、風呂あがりに茶菓も提供される。

■ 道後温泉16:33発〜本町六丁目16:56着 伊予鉄道

 道後温泉駅に着くと、30分に一本の本町線に直通する電車が止まっていた。 本数の少ない路線のはずだが、最新型の低床式車両が停車していた。 これまでJR以外は古い車両ばかりだったので、ちょっと嬉しい。
 道後温泉を出た電車は、上一万から環状線を走る。上一万を出てしばらくすると、 松山一の繁華街である大街道に差し掛かる。このあたりはデパートもあって人通りも多く、 さすがは四国一の大都市だな、と思う。先程見た高知市とは都市の規模が違うな、と感じる。 大街道を過ぎると松山城のお堀に沿って走る。このあたりは県庁や市役所などが集まる要衝だ。
 西堀端まで来ると、いよいよ本町線に入る。線路は単線ながら、沿道にはビルや住宅が密集しており、 それほど需要が少ないわけではなさそうだ。松山駅や松山市駅に直通しない運行形態ゆえに乗客が少ないということか。 すぐ近くに高浜線や環状線が走っていることも影響しているのだろう。 やがて、終点の本町六丁目に到着。


市内線には新型の低床車も結構走っている。

■ 本町六丁目16:57発〜松山市駅前17:12着 伊予鉄道

 最後に、乗り残した環状線の松山駅前〜松山市駅前間を乗りつぶすべく、松山駅を経て松山市駅に向かう電車に乗る。 高浜線とのダイヤモンドクロッシングを通過し、終点の松山市駅に到着。これで無事伊予鉄道の全線を乗りつぶした。
 時間が余ったので、駅前から大街道の方に向かって歩く。大街道まではアーケード付きの商店街になっており、 人通りも多い。若者向けの店も多く、華やかだ。小一時間ほどぶらついた後、松山駅に戻って空港行きのリムジンバスに乗る。 出張帰りと思われる客でほぼ満席だった。松山空港からは、羽田行きの最終便に乗って帰京した。
 東京にたどり着くともうふらふらで、正月にかけてしばらく体調を崩すほどだった。 歳のせいか、一日中電車に乗りまくるのが辛くなってきている。 泊まりではなく、日帰り二回に分けたのはある意味正解だったのかもしれない。