中部地方落穂拾い

 2002年の10月はじめ、秋の18きっぷともいわれる「鉄道の日記念きっぷ」を利用して、 新潟に乗りつぶしに出かけた。だが、その後はどこにも行くことのないままきっぷの期限が迫ってきた。 そこで、学校が休みの平日を利用して日帰りで乗りつぶしに行くことにした。
 だが、東京から日帰りできる範囲には最早ほとんど未乗線区は残っていない。 そもそもこの前の新潟にしても、未乗線区の中ではかなりの近場だった。
 そこで、中部地方に残っている未乗線区をつぶしに出かけることにした。中部地方も「大物」はほぼ潰してしまっており、 東京から日帰りできる範囲に残っているのは、中央本線の岡谷〜辰野間、太多線、武豊線、伊東線。 いずれも20kmにも満たない短い区間だ。
 いくら近場といっても、東京から普通列車で名古屋にまで足を伸ばすのだからかなりの強行軍ではある。 本当は今度大阪に帰省するついでにでも乗ろうと思っていたのだが、 きっぷの有効期限に背中を押される形で日帰り旅を敢行した。

目次

2002/10/17

■ 高尾6:15発〜岡谷9:04着 427M 115(6)

 早朝の高尾駅から、松本行き普通列車に乗る。 この列車はこれまで何度となく乗車している愛用の列車である。長距離を乗り換えなしで移動できる点、 しかも早朝なので特急待避がほとんどなく、昼間の普通列車より所要時間も短い点がよい。 長野県まで行ってもまだ9時台なので、時間も有効活用できる。 この列車に乗ると、やはり早起きするものだなと思うと同時に、 普段の寝坊ばかりの生活に後ろめたさを感じてしまう。
 高尾を発車すると、いきなり急勾配で山越えに挑む。次の相模湖まで来ると、周囲はすっかり山の中だ。 ひんやりとした空気が心地よい。その後も、鳥沢橋梁や笹子トンネル、八ヶ岳や南アルプスの山並みなど、 見所がどんどん出現する。小淵沢の次の富士見で最高地点を越え、その後は勾配をどんどん下る。
 そんな山越えの旅を楽しむこと3時間で、岡谷に到着した。

■ 岡谷9:30発〜辰野9:41着 544M 115(3)

 今日最初の乗りつぶしのターゲットは、岡谷から辰野までの区間である。 この区間は、元は特急あずさなども通る中央本線のメインルートであったが、 岡谷からみどり湖を経て塩尻に至る短絡線が国鉄末期に開業し、枝線と化してしまった。 今は、辰野から南に延びる飯田線と一体の運行形態となっている。
 なお、前回このあたりに来た時は辰野まで飯田線でやってきて、 そこから塩尻に一気に抜けてしまった。そのため、岡谷〜辰野間が残ってしまったのだ。
 岡谷で時間を潰し、やってきた飯田線の普通列車に乗る。 飯田線といえば専用車両の119系がほとんどを占めているが、この列車は珍しく115系での運転である。
 岡谷を出ると、列車は左にカーブしてみどり湖経由の本線と別れ、山の間を進む。 これまでの線路と比べ揺れも大きくスピードも出ず、心なしか頼りない感じがする。 そんな線路を右に左にカーブしつつ進み、川岸に着く。 駅には古い駅舎が建っているが、人の気配はない。 川岸を出ても相変わらず山に挟まれた狭い平地を進み、辰野に到着した。
 辰野は先程述べた経路変更で、特急停車駅から普通列車しか来ない駅に転落した。 その補償として2階建ての立派な駅ビルが建てられたというが、 その駅ビルには商店等もあまりなく、有効活用されているとは言い難い気がした。

■ 辰野9:54発〜岡谷10:06着 233M 119(3)

■ 岡谷10:14発〜塩尻10:24着 4051M あずさ51号 183(9)

 辰野までの支線に乗車し、とりあえず第一の目標は達したので、 これから中央西線でさらに西を目指そうと思う。そのためには塩尻に行けばよいが、 辰野から塩尻に直接行く列車はしばらくないため、一旦岡谷に戻ることにする。
 すぐにやってきた飯田線始発の列車に乗り、岡谷に向かう。 岡谷からは適当な時間の普通列車がなかったため、塩尻までは183系あずさに乗らざるを得なかった。


飯田線の専用車両、119系。

■ 塩尻10:38発〜中津川12:33着 826M 313(2)

 塩尻からは中央西線の中津川行き普通列車に乗る。この列車は2両と編成が短く、 夏休みなどは18きっぷで長距離移動をする客でいつも混んでいる印象がある。 この日は平日とあって行楽客の姿はなく、列車は空いていた。
 塩尻を出てしばらくすると、列車は奈良井宿で知られる奈良井に到着する。 この駅を出ると列車は長いトンネルに入り、木曽川の水系へと進む。 ここから先は、木曽川に沿って延々と下っていくことになる。
 先程乗った中央東線は、高原の爽やかさというか、車窓に明るい雰囲気があり、変化に富んでいるのに対し、 中央西線から見る木曽路の風景は陰影に富んでいて、静かに淡々と進んでいく印象がある。 地理的に見ても中央西線の方が平地も狭く、沿線住民も少なそうだ。
 そのような地理的条件ゆえ、途中駅で乗り降りする人も少ない。 木曽福島や上松といった主要駅以外は、昼間にもかかわらず乗降客はほとんどいない。 ただひたすら木曽川に沿って下っていく。
 そんな風景も、途中の南木曽あたりで一変する。トンネルが増え、山を貫いて直線的に進む。 やがて、終点の中津川に到着。ここで乗り換える。


真新しい313系が木曽路を軽快に駆け抜ける。

■ 中津川12:38発〜多治見13:15着 2608M 211(4)

 中津川からは名古屋行きの列車に乗る。編成も長くなり、名古屋に近づいてきたことを実感する。 中津川あたりの中央本線は、上下の線路が大きく分かれていることが多い。 こういう線路の引き方は、東北本線の郡山あたりや上越線の水上あたりでも見られる。
 思うに、極端な山奥でもなく、かつ平地でもないところでこういう線路に引き方が見られると思う。 日本のたいていの複線の路線は、最初は単線からスタートしている。 こういったところを複線化する際、あまりに山奥だと線路の改良を兼ねて、 単線の線路を放棄して改めて複線の線路を引くことが多い。 逆に平地だと、単線の線路の横に用地を確保することが容易なので、単純に従来の線路に横付けする形で増線する。
 いっぽう、中津川あたりのように中途半端な山奥だと、 従来の線路を増線するのも大変だし、かつ元の単線を引きなおすほどでもないため、 追加する線路を少し離れた所に引くことが多い。そのため、上下線が分かれることが多くなるのだと思う。
 そんなことを考えるうち、多治見に到着した。

■ 多治見13:40発〜岐阜14:41着 629C キハ11(2)

 多治見からは、2つ目の未乗線区である太多線に乗る。 太多線は、その名の通り中央本線の多治見と高山本線の美濃太田を結ぶ路線である。 しかし、この路線が作られた理由は今ひとつ謎である。 沿線に鉱山や工場があるわけでもなく、長距離列車がこの線を短絡線として利用しているわけでもない。 単に、名古屋近郊の通勤線として作られたのだろうか。
 駅の売店で昼食を買った後、2両編成のディーゼルカーで多治見を発車する。 沿線には特に見所があるわけではなく、雑木林と住宅が入り混じる地帯を淡々と進む。 途中、名鉄と交差する可児を過ぎても、風景は変わらない。
 さらに進むと、木曽川を長い鉄橋で渡る。ここが、太多線の唯一の見所といえるのではないだろうか。 鉄橋を渡ると、まもなく美濃太田に到着。この列車はこのまま高山本線に直通し、岐阜まで行く。 高山本線に乗るのは数年ぶりだったが、車窓には木曽川ライン下りで知られる渓流が見え、 太多線よりこちらの車窓の方が印象に残った。そんな景色を見ながら鵜沼に到着。 あとは住宅街の中を進み、岐阜へ。

■ 岐阜14:45発〜名古屋15:03着 2338F 313(4)

■ 新名古屋〜知多武豊 名古屋鉄道

 岐阜からは快速電車に乗り、名古屋に向かう。
 名古屋で下車し、名鉄の新名古屋駅へ。新名古屋の駅に来るのは2度目だが、 この駅は名鉄のあらゆる線区の列車が集結するだけあって列車の本数は半端ではない。 次々とやってくる列車のうちの一本に乗り、とりあえず金山に向かう。 本来乗る予定の列車までは時間があったので、金山でしばらく列車を観察しつつ待つ。
 しばらく待って、やってきた知多武豊方面行きの列車に乗る。 途中の神宮前で豊橋に向かう本線と分かれ、南へと進む。 海沿いの住宅街をしばらく進み、太田川へ。ここで常滑行きの線路と分かれて、 知多半島を斜めに横切るように進む。太田川から先は急速に田畑が目立つようになってきた。 田畑と新興住宅地が入り交じる丘陵を進み、知多半田に到着する。 知多半田からは再び住宅街を進み、知多武豊で下車する。


真っ赤な名鉄電車に乗って知多武豊へ。

■ 武豊16:24発〜大府16:55着 1551D キハ75(2)

 いかにも私鉄の郊外駅といった風情の知多武豊駅を出て、住宅街を歩く。 10分ほど歩いたところで、JR武豊線の終点・武豊駅に着いた。
 武豊線は、東海道線の大府駅から伸びる地味な支線である。 いまだに電化もされておらず、複線の線路を持つ名鉄と比べるといかにも見劣りがする。 しかし、この武豊線は非常に由緒正しい歴史を持っている。 もともと、この武豊線は東海道線の建設資材を運ぶため、大府以北の東海道線とともに明治期に開通したという。 大府駅付近の線路を地図で見ると、大府以北の東海道線と武豊線を結ぶとほぼまっすぐにつながることが分かる。
 駅に入ると、キハ75の2両編成が停車していた。快速みえなどに使われているのと同じ車両で、 中はクロスシートとなっていて乗り心地は良い。走行性能も良くて、電車に対抗できるほどの性能を持っている。 そのため、電化されている東海道線内で快速運転をすることも可能だ。
 武豊を出て、単線を進む。 左手には住宅地、右手には工場群が見える。このあたりは大工場が多く、貨物線が時折合流してくる。 半田を過ぎると併走してきた名鉄から離れ、住宅地を進む。 開業時以来の古い駅舎が残るという亀崎を過ぎると、田畑が目立ってきた。 単線非電化の路線には珍しい緒川を過ぎると、終点の大府に到着。


終着駅、武豊の駅舎。


電車にも負けない快速を誇るキハ75。

■ 大府16:57発〜刈谷17:02着 3186F 311(4)

■ 刈谷17:06発〜豊橋17:36着 2100F 313(4)

 大府は新快速が停車する駅だが、平日ラッシュ時に走る特別快速はこの駅に停まらない。 そこで、普通列車で刈谷に出て、そこから特別快速に乗る。

■ 豊橋17:44発〜浜松18:18着 5952M 117(4)

■ 浜松18:20発〜静岡19:33着 798M 113(4)

■ 静岡19:34発〜東京22:39着 366M 373(9)

 豊橋、浜松で普通列車を乗り継ぎ、静岡からは特急型の373系使用の普通列車東京行に乗る。 本当は、残る未乗線区である伊東線を乗り潰してから帰ろうと思っていて、 仮に実行しても家には辛うじてたどり着けることは確認していたのだが、 373系の乗り心地があまりによいので熱海で下車する気がしなくなった。 伊東線は後日に回そうと思い、熱海を通り過ぎた。

2002/10/20

■ 東京7:24発〜伊東9:48着 521M 185(10)

 3日後の日曜日、この日は残る一回分の「鉄道の日記念きっぷ」を片手に朝の東京駅に向かう。 何故わざわざこんな早朝に起き出してきたかというと、東京駅7時24分発の伊東行き普通列車に乗るため。 この列車は、何と特急型の185系が使用されるのだ。もっと早い時間には373系使用の静岡行き普通列車があり、 そちらは割に有名なのだが、この伊東行きは案外知られていないような気がする。そういう私も初めての乗車だ。
 転換クロスシートに陣取り、東京駅を発車。今日は休日なのでそれほど混まないが、 平日は通勤客などでかなり混雑するという。東京を出て一時間ほどで平塚に着く。 ここからはようやく景色が鄙びてきて、山が迫ってくる。大磯や二宮などは駅前の風景がとても東京近郊とは思えず、 いい味を出している。電車区のある国府津を過ぎ、酒匂川を渡ると小田原に到着。 小田原からは速度ががくっと落ち、相模湾沿いの急斜面をそろそろと進む。 トンネルの合間から海がよく見える。
 湯河原の先の長いトンネルを抜けると、熱海に到着。ここからいよいよ伊東線に入る。 熱海を出ると、東海道線と伊東線は並行するように走る。その途中に来宮の駅がある。 東海道線の車窓から何度も見てきたが、来宮には伊東線のホームしかないため、 停車するのは初めてである。なお、熱海は周囲を山に囲まれている関係で留置線がないため、 この来宮は東京方面からの列車の折り返しや留置にも使用されている。
 来宮を出ると、長いトンネルが続く。この伊東線は昭和になってから作られたため、 長いトンネルで直線的に山を貫く箇所が多い。 伊豆多賀、網代と静かな駅を通り過ぎ、宇佐美を出ると線路は海岸沿いを進み、海がよく見えた。
 まもなく、終点の伊東に到着。伊東といえば温泉などがある観光地だが、 特に用もないためさっさと熱海方面行きの列車に乗り、東京へと戻った。

JR線乗りつぶし状況

新規乗車キロ数

路線名乗車区間キロ数
中央本線岡谷〜辰野9.5
太多線多治見〜美濃太田17.8
武豊線大府〜武豊19.3
伊東線熱海〜伊東16.9
合計63.5

累積乗車キロ数

 総キロ数走破キロ数走破率総路線数走破路線数路線走破率
旅行前19860.912404.162.46%1718449.12%
旅行後19860.912467.662.77%1718851.46%

私鉄乗りつぶし状況

新規乗車キロ数

会社名路線名乗車区間キロ数
名古屋鉄道名古屋本線神宮前〜名鉄名古屋5.8
常滑線神宮前〜太田川12.3
河和線太田川〜知多武豊19.8
合計37.9