茨城ローカル私鉄の旅

 茨城県というと、連想するのは原発に大企業の工場、あとは水戸納豆といった感じで、目立った観光地は少ない。 そんな茨城県への観光客を誘致するためか、 JR東日本水戸支社は「ときわ路パス」という茨城県内の乗り放題切符を期間限定ながら発売している。 この切符の面白い点は、沿線の鹿島鉄道や茨城交通、鹿島臨海鉄道といったローカル私鉄も乗り放題であることである。 未乗3セクの1つである鹿島臨海鉄道や、廃止が噂される鹿島鉄道に乗っておきたい、ということで、 今回はこの切符を利用して私鉄めぐりをしてみることにした。
 なお、この切符は去年も一度利用したのだが、その時はプランの練り方が悪く、 関東鉄道で取手から下館まで行き、そこから水戸まで行っただけで、 あとは常磐線で帰ってきてしまうというもったいない使い方をした。 今回はそのリベンジの意味も多分に含んでいる。

目次

2006/10/9

■ 北千住7:44発〜取手8:14着

 部活の学生が多い、祝日の朝の地下鉄を乗り継いで北千住へ。 ここから常磐線で取手を目指す。やってきたのは勝田行きの普通列車で、 後ろ7両が鋼製の415系で、前8両がステンレスの415系1500番台だった。廃車が間近といわれる鋼製車に乗り込む。
 荒川を越え、千葉県に入り松戸着。外にはクリームと茶色の古風な色の新京成線が見える。 それにしても、常磐線の主要駅の駅前は、 デパートなどが立ち並び実に立派だ。各停しか停まらない駅でも、マンションが立ち並んでいる。 だが、駅と駅の間など、所々に田舎を思わせる田園風景や雑木林が残っている。 そんな中を東京メトロの車両が駆け抜けるのが面白い。
 柏で東武野田線と少しだけ併走する。柏を過ぎると高い建物が減り、空き地が増えてくる。 と思いきや、我孫子の駅前は大規模なマンションがいくつも造られている。快速停車駅というメリットが大きいのだろう。 E501系や207系など、常磐線固有の車両を見ながらさらに進む。我孫子の留置線を過ぎると天王台、利根川を渡ると取手に着く。

■ 取手8:29発〜石岡9:20着

 わざわざ取手で下車したのは、「ときわ路パス」が茨城県内でしか発売されていないからだ。 都内などでも発売してくれればもう少し知名度も上がると思うのだが。取手からは再び普通列車に乗る。 取手とその次の藤代の間に交直セクションがあり、 昔は車内の電気が消えたりしたのだが、最近は電気が消えないよう改造が行われ、 何も知らないとセクションの存在にすら気付かない。
 一気に田畑が増えた車外を見ながら子貝川を渡り、佐貫に着く。ここで「スーパーひたち」を待避する。 停車中、わざわざドアを手動にするあたりが地方路線らしい。
 佐貫の次の牛久で大分人が降りた。その次のひたち野うしくでは、駅前にスーパーが建設中だった。 荒川沖を過ぎ、土浦へ。ここで前4両を切り離す。自分の乗っている車両は切り離されてしまうので、ここで後ろ11両に乗り換える。 今度は1500番台に乗る。
 土浦を出るとハス田が一面に広がる。普通の田んぼならともかく、ハス田というのは珍しい。 「かすみがうら市」という妙な名前の市にある神立、高浜を過ぎ石岡に到着。

■ 石岡9:52発〜鉾田10:46着 鹿島鉄道

 石岡では30分ほど時間があるので、駅前の観光案内所に行ってみる。石岡は常陸国分寺があった場所で、 かつては常陸国の中心であったようだ。陸橋を通り鹿島鉄道乗り場に行く。 待合室や時刻表など、一気に設備が古めかしくなる。 側線では、いわゆる「湘南型」の前面を持つ古めかしい気動車がアイドリングをしていた。 どうやらこの一本後の列車になるようだ。
 朝の鉾田行きということで空いているかと思ったが、車内には次々と乗客が乗り込んでくる。 ほぼ座席が埋まるぐらいの乗客を乗せ、石岡を発車。乗客は半分が地元の人、半分が観光客と鉄道ファンといった感じだ。 特に、鹿島鉄道の一日乗車券を手にした客が多い。廃線の噂を聞いてやってきたファンが多いだけかもしれないが、 経営状況が厳しいと聞いていたので、うれしい現象だ。
 石岡を出て常磐線と分かれた後、一駅目の石岡南台でいきなり行き違いをする。 駅の名前から想像できるように、石岡郊外の住宅街の中だ。ここから四箇村までは、雑草の生えた線路を延々とまっすぐに進む。 その間の駅間は短く、まるでバス並だ。それぞれの駅で地元客が2,3人ずつ降りていく。
 四箇村でようやくカーブし、常陸小川に到着。 途中駅では、ここと玉造町にしか駅員はいなさそうだった。常陸小川を出てすぐに、 小川高校下という駅に停車。たしかに、すぐ横に高校がある。 その後もまっすぐな線路をしばらく淡々と進むが、突然右手に広い湖が見える。霞ヶ浦だ。 霞ヶ浦というと水が汚そうなイメージがあったが、 車窓から見ると青くきれいだ。そんな湖沿いの桃浦で、カメラを抱えた数人のマニアが乗り降りする。 それにしても今日は鉄道マニアが多い。先ほど駅で古い気動車がスタンバイしていたが、それを狙っているのだろうか。
 浜という駅を過ぎると、やがて霞ヶ浦と分かれ玉造町に着く。車窓からだとそれほど大きな町に見えなかったが、 これまでで最も多くの乗客が下車した。
 玉造町を出ると、これまでとは違って掘割などで丘を切り開いた所を進むようになり、車窓が薄暗くなった。 途中の榎本と巴川は交換駅で割と開けたところにあったが、借宿前と坂戸は薄暗い片面ホームの無人駅だった。 また、このあたりは駅間も長く、 景色も見えないのでやや眠くなった。
そんな所を過ぎ、やがて終点の鉾田に到着。 地方私鉄らしい味のある駅舎が印象的だ。 また、ホームが乗車側と降車側に分かれているのも地方では珍しい。 鉾田から新鉾田まで15分ほど歩き、鹿島臨海鉄道に乗り換える。


石岡に停車する古めかしい「湘南型」気動車。

■ 新鉾田11:17発〜水戸11:59着 鹿島臨海鉄道

 新鉾田駅は鉾田駅と対照的に、コンクリート質の殺風景な駅だ。いかにも近年開業の路線らしい。 やってきた列車は1両編成で、車内は転換クロスシートとなっている。117系電車を思わせる窓割と座席配置だ。 新鉾田を出ると、掘割とトンネルがひたすら続く。景色はあまり見えない。見えても田んぼばかりで海は見えない。 人気の少ない途中駅に停まりながらそんな所をしばらく進むと、 大洗の少し手前で大きな湖が見えた。これが涸沼で、同名の駅もあった。
 ようやく遠くに海を見渡せる場所に出るともう大洗で、 ここから列車は内陸へ向かう。大洗からは水戸へと向かう若者が多く乗ってきた。 そのため車内はローカル線には珍しく、若者の姿が目立つ。
 大洗を出てすぐ、水量の多い涸沼川を渡る。川を過ぎると、田んぼの中を貫くまっすぐな高架を高速で進む。 まるで東北新幹線のようだ。ただ、スラブ軌道である上気動車のため騒音はかなりのものだ。 ただ、途中特に道と交差する訳でもないので、 わざわざ高架にする必要があったのかという点が気になった。
 やがて、高架の上から水戸の町並みが見えてきた。 高架を降り、水戸駅に北側から進入して、上野行き特急ホームの横に到着した。

■ 水戸12:13発〜勝田12:19着

 ここまで何も食べていなかったが、水戸でようやく弁当を買い、食事にありつけた。 買ったのは「鈴木屋自慢」という弁当で、店頭ではただ「自慢」とだけ表記して売られていた。 自慢と銘打つだけあって、普通の幕の内ながら内容は充実していた。


水戸駅弁の「鈴木屋自慢」。

■ 勝田12:37発〜阿字ヶ浦13:03着 茨城交通

 水戸から一駅移動して勝田へ行き、茨城交通湊線に乗車する。 茨城交通のホームはJRホームの片隅にあり、JRとの間を隔てる柵さえなければJRホームの一部のようだ。 ホームには、比較的新型の気動車が一両停車している。
 勝田を出発し、1分ほどのろのろ走ると、 すぐに日工前に到着する。この駅はその名の通り日立工機の工場の目の前にあるが、 ここまでだと勝田駅から歩いても10分もかからないと思う。 利用するのは那珂湊方面から工場に通う人ぐらいだろう。その後しばらく住宅街を走るが、 金上を過ぎると急に周りに何もなくなる。 そして、左右を陸に挟まれた細長い平地を進む。平地には田んぼしかない。 そんな所に、中根の駅がぽつんとある。なんとも寂しい駅だ。
 その後、同じような所をしばらく走ると町になり、那珂湊に到着。 那珂湊を出ると住宅街の軒すれすれを走りながら、左に90度カーブする。 住宅街を走り、殿山駅を過ぎると、住宅の間から所々海が見える。 那珂湊から阿字ヶ浦までは太平洋に沿うように走るため、海までごく近い。
 平磯を過ぎると、周りは一面の芋畑となる。阿字ヶ浦の駅に書いてあったが、 このあたりは干し芋が名産だそうだ。やがて終点の阿字ヶ浦に到着。 海水浴場と書かれた大きな看板が見えるが、時期が時期だけに海水浴客の姿はなく、駅前は非常に静かだ。


ややレトロがかった阿字ヶ浦の駅舎。

■ 阿字ヶ浦13:15発〜勝田13:42着 茨城交通

 乗ってきた列車で勝田へ戻る。途中駅からは、水戸へと向かう若者が次々に乗ってくる。 途中、那珂湊で旧型の気動車とすれ違う。 国鉄のキハ20と似た車両で、国鉄からの譲渡車か自前発注かは分からないが、貴重な車両であることは間違いない。 同型の車両が車庫に沢山停まっているが、今日動いているのは一台だけのようだ。 新型車両もいいが、あちらの方がよかったとも思う。


国鉄のキハ20タイプの旧型車両。

■ 勝田13:52発〜水戸13:58着

 今度はE531系5連の土浦行きに乗車。勝田区から土浦への列車送り込みを兼ねた運用だろうか。

■ 水戸14:03発〜鹿島神宮15:14着 鹿島臨海鉄道

 再び水戸へ戻り、鹿島臨海鉄道に乗る。水戸と大洗の間は、鹿島神宮行きの約2倍の本数の区間便が運転されている。 そのことから分かるように、大洗までの利用者は非常に多い。 水戸発車時は立つ人もいたが、大洗で随分空席が見られるようになった。
 それにしても、この列車の騒音はすさまじい。3m離れた席の人の声が明瞭に聞こえないぐらいだ。 床下からは地鳴りのような轟音がする。 飛行機にでも乗っているかのようだ。軌道の問題というよりは、車両の問題のような気がする。
 ここで、水戸で買った2つ目の弁当を食す。 今度は「将軍」という勇ましい名前の弁当で、油を使わないヘルシーな弁当というのが売りだ。 水戸駅の弁当は幕の内系がほとんどで、個性に乏しい。それだけビジネス客相手に特化しているのかもしれないが。 この弁当も、ごくありふれた普通の幕の内かと思っていたが、写真左上の稲荷寿司のようなものの中に納豆が入っており、 ささやかながら水戸をアピールしていた。
 新鉾田を出ると、北浦湖岸という駅に着く。その名の通り駅からは北浦が良く見える。が、見所はここぐらいで、 あとは田畑の中を淡々と進み、大洋、鹿島灘、鹿島大野と淡々と進む。 唯一変わったのは、線路が高架から地平に変わったことだろうか。 このあたりは工費を節約したのだろうか。車外の田畑を見てみると、作物は稲、サツマイモ、ジャガイモなどで、 ビニールハウスや果樹園もある。これらの多くが首都圏に運ばれているはずで、 もし茨城県を怒らせて食糧の供給を絶たれてしまうと、 首都圏はたちまち食糧不足に陥るのではないか、などと考える。
 長い駅名として知られる長者が浜潮騒はまなす公園を過ぎ、無人の鹿島サッカースタジアム駅を過ぎ、鹿島神宮に着く頃になると、 観光客で車内は結構な混雑になっていた。


本日2個目の水戸駅弁「将軍」。

■ 鹿島神宮15:16発〜成田16:07着

 鹿島神宮を出てすぐ、長い鉄橋で北浦を渡る。この鉄橋、JRの在来線としてはかなり長いほうではないだろうか。 すくなくとも淀川の鉄橋より長い気がする。
 途中唯一大きな町といえる潮来を出ると北利根川を、 吹きさらしのホーム一本の寂しい駅である十二橋を過ぎると利根川をそれぞれ渡る。 カーブを描いて成田線と合流すると、成田まではもう少しだ。
 運賃を節約するため、成田からは京成線に乗り換えて帰った。

私鉄乗りつぶし状況

新規乗車キロ数

会社名路線名乗車区間キロ数
ひたちなか海浜鉄道湊線勝田〜阿字ヶ浦14.3
鹿島臨海鉄道大洗鹿島線水戸〜長者ヶ浜潮騒はまなす公園前48.4
合計62.7

(鹿島鉄道は乗車後に廃止されたため、集計せず)