最後の地・間藤

 2006年11月末をもって、岐阜県の神岡鉄道が廃止になった。 奥飛騨の秘境を走る小さな鉄道であったが、貨物輸送の廃止による収入減により廃止となってしまった。
 その結果として、3セク線のうち未乗なのは、いずれも北関東に存在する真岡鉄道、わたらせ渓谷鉄道のみとなった。 路線廃止の結果未乗線が減るのは、何とも複雑な気分がするが致し方ない。
 乗り残した2路線とも、北関東の比較的近い場所にあるので、 どうせなら一気に乗ってしまいたい。が、どちらも盲腸線であり、うまく乗りつぶすにはバスをフル活用する必要がある。 色々調べた結果、まず宇都宮まで行き、バスで茂木に出て真岡鉄道、わたらせ渓谷鉄道の順に乗り、 終点の間藤からはバスで日光に抜けることにした。

目次

2006/12/22

■ 赤羽7:01発〜宇都宮8:18着 快速ラビット

 早朝の赤羽駅から乗り込んだ快速列車は予想外に混んでいた。 ラッシュの逆方向だからと思っていたら、席は全部埋まっている状態だ。 しかも、浦和や大宮から乗客が大量に乗り込んできた。もちろん、上り列車の混雑に比べれば大したことは無いが、 こんなに混むものとは思わなかった。沿線に工場の多い高崎線ならまだしも、宇都宮線でみんなどこを目指すのだろうか。
 大宮を出ると、高崎線と分かれ東武野田線と併走した後、土呂・東大宮を通過。東大宮を出ると急に田畑が車窓に広がる。 このあたり、大宮から随分先まで家が途切れない高崎線とは違う。
 蓮田でも大した下車はなく、白岡・新白岡を通過し、新幹線と併走しながら久喜に到着。 ここでかなりの数の客が降りた。右手の東武線ホームには、東急田園都市線の8500系が停車しているが、 こんな所で田園都市線の車両を見るとかなり違和感を感じる。 久喜を出て、上り線だけ高架という妙な駅・東鷲宮、東武日光線との交差駅の栗橋を過ぎ、 利根川を渡る。しばらく走ると古河に到着。ここでも若干降りた。
 古河は東北本線で唯一、茨城県にある駅だ。茨城県の形を見ると、 下の方に左側に妙に突き出した部分があるが、その先端が古河にあたる。 このあたりは群馬・埼玉・栃木・茨城といろんな県が入り乱れてややこしい。
 まもなく新幹線と再合流し、小山に到着。ここでぐっと客が減った。小山からは高校生も乗ってきた。 時期的に今日が終業式だろうか。 結局、宇都宮までそこそこ客がいる状態のまま到着。浦和や大宮あたりから、 小山や宇都宮まで通勤している人が意外に多いことが乗車してみて分かった。

■ 宇都宮8:50発〜茂木10:01着 JRバス関東

 まずは真岡鉄道を乗りつぶすため、宇都宮から真岡鉄道の始発である茂木へバスで向かう。 通勤時間帯だけあって、宇都宮駅には次々とバスがやってくる。だが、やってくるのは関東バスという会社のバスばかりで、 真岡行きのバスを担当するJRバスの車両は見当たらない。そもそも、バスターミナルには10数個の乗り場があるが、 JRバスの乗り場は2つしかない上、真岡行きのバスに並んでいるのはわずか数人という状況だ。 こんな所に並んでいて、果たして大丈夫なのだろうかという気になる。
 だが、バスは時間通りにやってきた。宇都宮駅の西口を出発したバスは、すぐに方向を変え、線路をくぐって東へ向かう。 宇都宮市街全般に言えることだが、バス専用レーンが整備されており、 バスは渋滞する国道4号との交差点も専用レーンを使ってすいすい進む。
 バスは茂木や水戸へ向かう県道を順調に飛ばす。宇都宮大学前を過ぎ、このまま進むのかと思いきや、バスはやおら旧道に入る。 旧道をしばらく進み、レトロな橋で鬼怒川を越える。 このあたりまでで宇都宮から乗った乗客の多くが下車してしまい、残りは4人となった。
 やがて旧道から本道に戻り、茂木へそのまま向かうかと思いきや、なぜか右折し宝積寺の方へ向かう道へ。 このあたりから窓外に人家が少なくなってきた。「道場宿局前」という、舌をかみそうな名前のバス停を過ぎ、 ようやく茂木に行く道に戻ったかと思いきや、バスはまた旧道へ入る。なかなか目まぐるしい。
 ホンダの工場がある芳賀町の工業団地を超え、しばらく走り祖母井に到着。 ここにはバスの折り返し所もあり、運転の拠点のようだ。 ここで残っていた2人が下車してしまう。別の客が1人乗ってきたが5分ほど乗ってすぐ降りてしまい、 車内は運転手を除くと自分一人きりになってしまった。
 しばらく進むと、市塙駅入口というバス停が現れた。ここからは真岡鉄道の線路と併走する。 真岡鉄道の駅や線路をちらちらと見ながら道路を進むと、まもなく茂木の駅に時間通りに着いた。

■ 茂木10:17発〜下館11:28着 真岡鉄道

 バスから降りると、ちょうど列車が到着した所だった。タイルのような柄を入れた独特の塗装で、 日本でも最も派手な部類に入る車両だと思う。 この真岡鉄道はSLを運転していることでも知られ、駅のホームの横にはSL運転用の転車台と引き回し線がある。
 お年寄りばかり6人ほど乗った状態で発車。最初の駅である天矢場駅は片面ホームの小さな駅で、 先程通った道路に面しているが、バスからは駅の存在に気付かなかった。
 天矢場を過ぎたところで茂木町から市貝町に入る。市貝町というのは、名前からして 市塙と何か別の町が合併したのだろう。次の駅は、先程バスからちらりと見えた笹原田。 この駅は田んぼの間にあり、周りに家はほとんどない。 乗っていて気付いたのだが、この真岡鉄道は急カーブや勾配が少ないためか、ローカル線にしては結構高速で走る。
 次の市塙は交換駅ながら無人駅で、8角形の駅舎が印象的。市塙で行き違い列車と交換した。 それにしても、さっきから車内放送が全く流れていない。車外への放送は流れるので、 何か放送関係の機器の設定が間違っているのではないかと思う。
 相変わらず車外は田畑と雑木林が入り混じる。多田羅を過ぎ、交換施設のある七里につく。 その次は益子焼で知られる益子で、駅舎も新しく非常に立派なのだが、乗降客はない。 益子を出るとやや勾配を登り、ホーム一面だけの北山駅。 その次の西田井は交換駅で、ホームの木造の屋根が特徴的。ここで列車交換するが、向こうはセミクロスシート車だった。
 そういえば、北山を出て以来カーブは全くと言っていいほどない。 景色も相変わらず変化がないが、途中「真岡観光リス村」という施設が線路際にあった。 リスを売り物にしている観光施設は珍しい。
 シンプルな真四角の駅舎がある北真岡を過ぎた所に、ようやくカーブがあった。 その次の真岡駅前はこれまでのどの駅より都会で、立派なスーパーもある。客はここでほぼ全員入れ替わってしまった。 真岡をまたぐ需要は少ないようだ。駅舎もSLをデザインしたものとなっていて、 SLの罐をデザインしたオブジェがあったり、ドアの窓なども動輪をイメージした(?)円形になっている。 併設の車庫にはSL運転で用いる客車や、 廃車になったキハ20やレールバスもある。レールバスには、「ミャンマー譲渡車」と書かれていた。
 真岡を出て、変わった形の駅舎を持つ久下田、何故かひらがな駅名のひぐちを過ぎ、 折本で3度目の列車交換。ここで交換した列車はロングシートだった。 どうも2種類車両が存在するようだが、塗装が特徴的過ぎて区別がつかなくなっている。折本駅の辺りでは国道が並行しており、 快走する車に次々と抜かれていく。やはりローカル線の大敵は車だ。
 二高前という、3セクにありがちな通学客目当てに造られた駅を過ぎると、 終点の下館に着く。茂木を出てから下館まで、何ともあっけなく到着してしまった。 やはり車窓に変化がなく、見所も少ないからであろう。 もし真岡鉄道に乗りたいという人がいたら、個人的にはSL列車に乗る方がいいのではないかと思う。 普通列車だとあまりに車窓に変化がなさ過ぎて、大半の人は飽きてしまうと思うからだ。


真岡鉄道の車両はきらびやかな塗装が目を引く。


茂木駅の構内には転車台を備える。

■ 下館11:32発〜小山11:53着

 下館ではわずか4分の連絡で水戸線の小山行きに接続する。どうやら真岡鉄道のダイヤは水戸線との接続に配慮しているようで、 下調べをしているときの記憶だとこの一本後の列車も水戸線との接続はよかった。水戸線はおよそ1時間に1本しか列車がないので、 接続を取ってくれると非常にありがたい。
 水戸線の列車はステンレス車の415系1500番台だった。途中すれ違った列車も 1500番台だったので、水戸線の全列車が1500番台での運行になったのだろうか。前はそんなことはなかったのだが。 また、駅のホームにはE501系用の乗降口案内のシールが貼り付けられていた。

■ 小山12:07発〜桐生13:01着

 小山からはわたらせ渓谷鉄道の起点、桐生を目指す。車両は115系の4連だった。 ロングシートで編成の短い107系でなかったのでほっとする。 両毛線といえば単線のイメージがあったのだが、 岩舟と佐野の間にいきなり複線区間が現れたのには驚いた。前乗ったときには気付かなかった。
 やはり今日が終業式の学校が多いのだろうか、昼下がりの中途半端な時間なのに学生が多い。 それでも大して混むこともなく桐生に着いた。

■ 桐生13:35発〜間藤15:17着 わたらせ渓谷鉄道

 桐生駅に着くと、既に間藤行きの列車が入線していた。茶色一色の丸っこい車体で、 知っている人は少ないかもしれないが阪急の1100系を思わせる車体だ。 確か、北近畿タンゴ鉄道の車両も全く同じ形状だったはずだ。 車内に入ると、タンゴ鉄道の車両と同じく中は転換クロスシートとなっている。
 発車時間になる頃には、車内は学生で一杯になっていた。逆に言えば、 高校生を除くと10人程度のお年寄りしか乗っていないので、 普段はこの列車は閑散としているのだろう。
 桐生を発車すると、両毛線の複線の右側をしばらく進む。渡良瀬川を渡り、両毛線から分岐した所に下新田の駅がある。 次の相生では東武線との乗換えが可能だ。駅舎は両者で共有しており、 中間改札などはない。相生を出てしばらくすると、上毛電鉄の下をくぐる。 上毛電鉄はこの先で東武線と合流する。運動公園駅からはだんだん渓谷の様相を呈してくる。 眼下に渡良瀬川を見ることができる。
 大間々駅では列車交換を行う。駅には車両基地が併設されていて、イベント用のトロッコなど様々な列車が置かれている。 ここで30人ぐらい降り、車内には大分余裕ができた。
 大間々を出ると、比較的大きなダムがあった。そのダム湖を過ぎると、 今度は平地が全くなくなった。並行する道路すらない渓谷を行く。 そんな所をしばらく進み、わずかな平地が広がる所が上神梅駅で、狭い土地に団地が作られている。 次の本宿駅は渓谷の狭間にあり、外の様子がよく見えない。何人か降りたから上の方に町があるのだろう。 川の反対側の中腹に一本道が走っているが、その一箇所が派手に崩落し、ガードレールがぶら下がっているのが見えた。
 再び険しい渓谷を進んだ後、やや大きな町に出る。ここが水沼の町で、駅には温泉センターが併設されていた。 水沼から再び険しい渓谷を通り花輪、そこからすぐ中野。どの駅もイルミネーションが行われている。 冬期間、観光客誘致のため各駅でイルミネーションを行っているのだそうだ。
 小中辺りまで来ると大分水の量も減り、川までの距離も近くなった。 足尾といえば、かつて銅山から流れ出た鉱毒で山の木が枯れていると聞いていたが、 この辺りはまだ大丈夫なようだ。その次の駅は神戸。「こうべ」ではなく「ごうど」と読む。 ここには「レストラン清流」というレストランがあり、 かつての国鉄グリーン車の車体を利用している。ちなみに、この時は営業はしていたものの客はいなさそうだった。 神戸では行き違い列車が去った後も延々と停まり、なぜか8分も停車してから発車した。 この鉄道、大間々でもやたら長く停まっていたし、長時間停車が好きなのだろうか。
 神戸を出ると長いトンネルに入る。トンネルを抜けると、長大な鉄橋で川を渡る。 次も難読駅の沢入で、ここでも5分停車した。祖折から原向にかけては渓谷が美しい。 こんな渓谷が関東にあったのかと思うほどだ。 川には巨大な石がごろごろ転がっている。 ここで観光案内のテープが流れる。それによると、この石は東村特産の御影石だそうだ。 どうでもいいが、この東村は合併により「みどり市」という妙な名前の市に変わってしまっている。
 通洞に近づくと、どす黒い精錬所がいくつも見える。その上は山がはげている。精錬所の煤煙のせいだろうか。 通洞でほとんどの人が降りた。 通洞駅から次の足尾駅までの間に、足尾の町並みが広がっている。見てみるとそれなりに大きな町だと感じた。 足尾では残りの客がほぼ全員降り、残ったのは自分と女子高生ひとりだけとなった。
 足尾を出た列車は、最後の力を振り絞るようにゆっくりと走り、まもなく終点の間藤に到着した。 ここで運転士さんが、 「この列車の発車は35分です。折り返し乗車されるお客様は2,3分前までに列車にお戻りください」と放送した。 こんなことを地元民の女子高生に言うわけはないから、自分に対して言われているのは明らかだ。 自分が「その筋」の人間であることが見事にバレてしまっていた訳である。 もっとも、間藤からは日光行きのバスに乗るので、運転士さんのご期待に添うことはできないのだが(笑)
 間藤駅はホームに屋根のない開放的な駅で、駅の横に陶芸教室を兼ねた待合室がある。 この待合室には、「ここは間藤 時刻表20000kmの終着駅」と題して、 故宮脇俊三氏のパネルが張られていた。ここは宮脇氏が国鉄完乗を達成した駅なのだ。 そんな由緒ある終着駅で、私も3セク乗りつぶしの「終点」を迎えたことに、 浅からぬ因縁を感じる。
 今回、3セク線を完乗したわけだが、JR全線を完乗した時ほどの感慨はなかった。 が、JR・3セクを完乗した後に残る私鉄・地下鉄の類を乗りつぶする気力・体力・時間はもうない。 こうやって、鉄道に乗るためだけに旅をすることはもうないのだろうな、とは思った。
 改めて、間藤の駅を見回してみる。駅前には銅山関連の工場があるだけで、 人の気配はない。JR完乗時の最後の駅、九頭竜湖に雰囲気が似ているなと思った。 完乗の感慨に浸るには、大都市近郊の駅よりはこういう所の方が感慨には浸れるのではないだろうか。


第三セクター乗りつぶしの最終ランナーは丸っこい気動車。


車窓には美しい渓谷が広がる。


乗りつぶしの最後にたどり着いた間藤駅の様子。

■ 間藤15:37発〜東武日光16:10着 日光市営バス

 間藤からは日光行きの市営バスで一気に日光に抜ける。バスは駅前から発車するが、時間になっても来ない。 このバスは以前、日光から乗車しようとしてバス停の位置が分からず乗り損ねるという苦い経験をした「因縁」のバスである。 そんな訳で、要らぬ心配をしたが、バスは数分遅れで無事やってきた。
 乗ってみると、車内に乗客はいない。 また貸切かと思っていると、途中の「高校前」というバス停で学生が4人乗ってきた。バスは人気のない山中をぐんぐん登り、 足尾と日光の間の山を貫く「日足トンネル」という長大なトンネルを走る。水系も渡良瀬川から鬼怒川へ変わる。 それにしても、こんな長大トンネルで隔てられた足尾と日光が同じ日光市に属しているのも変な話だ。
 いろは坂方面から来る道路と合流し、東照宮の前を通って日光駅に着く。降りるとき、高校生と運転士が仲良く話をしていた。 きっと彼らはこのバスの「常連」なのだろう。このバスでは私は完全に「部外者」であった。
 余談だが、東武日光から足尾へ行かれる方のために、バスの乗り場を紹介しておく。中禅寺湖や奥日光へ行く東武バスは、 駅の目の前のバス乗り場から出ているが、足尾へのバスはこの乗り場には停まらない。駅の出口を出て左手に10mほど進むと、 東武線の線路に沿ってJR日光駅へ行く道がある。この道を5mほど進んだところに、高さ1mぐらいの目立たないポールがある。 そこが足尾行きバスの乗り場である。全くもって目立たないバス停なので、ご注意を。

■ 東武日光16:20発〜(下今市乗換え)〜北千住18:02着 特急スペーシア

 日光からは、JR線に乗り入れ新宿へ向かう特急「日光」に乗ろうかと思っていた。 が、切符売り場に行ってみると運賃、特急料金共に浅草行きの特急に比べて500円ぐらい高い。 JRと東武の運賃を単純に合算するからだろうが、それにしても高い。 あと10分弱で、鬼怒川温泉からの特急に接続する列車が出るので、 それに乗って下今市で乗り換え、鬼怒川発の特急で北千住に行くことにした。 大急ぎで自動券売機で特急券を買い、あわてて列車に乗り込んだ。
 が、ここで大失敗をしてしまった。 購入した特急券は、乗る列車の一時間後のものだったのだ。気付いたときは既に特急列車の中。 車掌さんに切符を再発行してもらい事なきを得たが、何事も慌てるとろくなことがないということを認識させられたのだった。

私鉄乗りつぶし状況

新規乗車キロ数

会社名路線名乗車区間キロ数
真岡鐵道真岡線下館〜茂木41.9
わたらせ渓谷鐵道わたらせ渓谷線桐生〜間藤44.1
合計86.0